新卒社員のモチベーション低下──原因はマネージャーにあった

▲マネジメントスタイル策定プロジェクト事務局の人事部メンバー(左:人事企画グループ マネージャー 川口 裕明、中央:人事部長 中久木 健大、右:人事企画グループ 安井 美穂)

エイチームは、日常生活に密着したWebサービスやスマホ向けゲームなど、インターネットを軸に多様な事業を展開する総合IT企業です。同社は2012年の東証一部上場以降、事業領域と規模の拡大に伴い社員数を増加する拡大フェーズへと入りました。

2015年に約500人だった社員数は、2019年には約1,000人超へと倍増。新卒採用数も2017年までは毎年37名ほどだったのに対し、2019年は92名の採用と、一気に組織の規模は大きくなりました。

しかし、会社の規模が大きくなる一方で、拡大フェーズに入社した新卒社員のモチベーションは入社半年後には大きく下がっていることが明らかになりました。

川口 「入社3年目までの新卒社員にヒアリングしていくと、モチベーション低下の原因はマネジメント層への不満や不安にあることが判明しました。メンバーが指示を欲しいときに、具体的な指示が出せてなかったり、任せてほしいというメンバーに対してマネージャーが口を出してしまったりするなど、メンバーの想いとマネージャーの対応との間にずれがあることがわかったんです。

新任マネージャーの数は増えましたが、企業の成長スピードに対してマネジメント層への教育が追いついておらず、マネージャーたちは今まで自分が体験してきたやり方を参考に、マネジメントをするしかないという状況でした」

次にマネジメント層にもヒアリングを実施すると、マネージャーたち自身もマネジメントの仕方がわからず悩んでいるという実情が判明。

その背景のひとつに、経営層とマネジメント層との距離が遠くなり、経営層から直接、人材育成や組織づくりへの考えや想いを聴く機会が少なくなっていることがあげられたのです。

エイチームには「良くないマネージャー12カ条」というマネージャーのファールゾーンを言語化した社内基準は存在していましたが、ビジネスパーソンとして基本的に求められる振る舞いに関する要素が多く、マネージャーだからこそ求められる役割や意識・行動を今まで以上に明確にする必要がありました。

そこで、2019年11月に、マネージャー以上の役職者に求める意識や行動、スキルなどを言語化した「エイチームマネジメントスタイル」を策定するプロジェクトが動き出しました。

エイチームらしい価値観を要素として取り入れ、独自の指針を作成

▲エイチームマネジメント検討の流れ

「エイチームマネジメントスタイル」を策定するため、まずは新卒社員やマネジメント層へのヒアリングをもとに経営層と人事部を含むコアメンバーでの検討会が開かれました。

川口 「エイチームとしてのマネジメント指針を具体的に言語化するため、取締役には、現マネージャーの中から素晴らしいと思う人をあげてもらい、そのマネージャーの共通要素を抽出しました。

一方でコアメンバーでの検討においては、最初からマネージャーに求める要素を抽出するのでなく、まずは『会社・事業の方向性』『会社の強みや特徴』から議論を始めました。こうした会社としての持続的な成長に不可欠な方向性を念頭におき、その上で、望ましい『組織の在り方』『社員に求める価値観・行動』『マネジメント層が意識すべき価値観・行動』を抽出しました。

取締役が出した要素と合わせると、この段階では全部で100個ほどのキーワードが抽出されていました。

それらを最終的に、コアメンバーで10個の指針へとまとめていったんです」

「エイチームマネジメントスタイル」の10個の指針はそれぞれ「主文・副文」のほかに、「行動例」や「意識してほしいこと」などの具体的な内容も記されています。

最後には「自分は常に未熟であることを認識しながら、誰より真摯・誠実・謙虚に学び続ける」など、マネジメント層だけではなく、全社員に向けた指針も掲載されました。

川口 「このマネジメントスタイルは、エイチームとしての価値観や考え方を軸につくりあげていきました。とくに、マネージャーに経営視点を持ってもらいたいという想いから『事業や社会と向き合い、儲ける』という要素が入っているのですが、これはエイチームならでは、だと思います」

ついに完成した「エイチームマネジメントスタイル」

▲全社ミーティングでは、全社員に向けてエイチームマネジメントスタイル策定の背景や目的を共有しました

約30時間をかけて言語化された「エイチームマネジメントスタイル」。社内で発表すると、多くのマネージャーから「こういうものが欲しかった」と、好意的な声が寄せられました。

川口 「今まではみんながそれぞれぼんやりとしたマネージャー像をもとに、探り探りでマネジメントしていました。しかしエイチームマネジメントスタイルができたことで、その基準がはっきりしたんです。

また、このマネジメントスタイルはマネージャーたちが目指す、経営層とともにつくったため、『この指針に沿って進むことで、経営層が実践している判断や行動に近づける』と、マネジメント層の方々がポジティブな受け止め方をしてくれている点も良かったです」

マネジメントスタイルの策定後には、メンバーへのサーベイを行い、その結果をもとにマネジメント層向けの研修を実施。

「マネジメントスタイルに沿ってどの程度実践できているか」「今後何に注力してほしいか」についてのメンバーの回答を匿名で公開し、マネージャーたちはその結果をもとに次の改善アクションにつなげていきました。

サーベイの結果を受けて、初めてメンバーの想いを知ったマネージャーも少なくありません。

川口 「とても優秀で周りからの評価も高い、あるマネージャーのサーベイを取ってみると、意外にもメンバーからの評価は低い結果となりました。プレーヤーとしてはとても優秀ですが、実はその下にいるメンバーをうまくマネジメントできておらず、メンバーが苦しんでいたという実情が見えてきたんです。

スコアとコメントを受けて、彼は研修で自分自身と向き合い、その後の1on1でメンバーへ自身のサーベイの結果と行動を変える決意を伝えました。その決意を有言実行した結果、半年後のサーベイでは、メンバーからの評価もかなり良くなっていました。

こういった機会がなければ、きっとメンバーのリアルな反応はわからず改善につなげることもできなかったと思います。これもマネジメントスタイルの大きな成果だと感じました」

マネージャー間の連携が加速!マネジメント力はさらなる高みへ

▲イキイキと働くマネージャーとメンバーたち

「エイチームマネジメントスタイル」の誕生により「マネージャーの接し方が変わり、業務が進めやすくなった」とメンバーからも変化を感じる声があがっています。

マネージャーが積極的にマネジメントという業務に向き合いメンバーとの接し方が変わったことで、サーベイのスコアが下がっていた新卒3年目のメンバーたちのモチベーションも徐々に改善が見られるようになりました。

「エイチームマネジメントスタイル」プロジェクトのコアメンバーである川口も、マネージャーのひとりとしてメンバーとの関わり方が変化したといいます。

川口 「私自身もサーベイの結果に向き合うことは簡単ではありませんでした。しかし、メンバーからの声が実際に自分の目の前に見えたことで、同じ悩みをもつマネージャー同士で相談しやすくなりました。

さらに自分が他のマネージャーにアドバイスすることもありますが、そのまま自分へブーメランとして返ってきます。マネージャー同士で『恥ずかしいけど、この振り返り内容はメンバーに開示しよう』という事例も出てくるようになり、自身の課題やアクションプランをメンバー自身に開示することができました。

結果として、マネージャー同士のコミュニケーションの頻度や深さにも良い変化が生まれましたね」

他のマネージャーと知見を高め合い、エイチームのマネジメント力はさらに高まっています。今後はこのマネジメントスタイルを使い、現マネージャーだけでなく次期マネージャーの育成にも役立てていく予定です。

会社の規模が拡大する中で、独自のマネジメントの形をつくりあげたエイチーム。このマネジメントスタイルは、エイチーム全体の組織力を上げる鍵となることでしょう。