目の前の困っている人を助けたい──卒業式オンライン配信への挑戦

▲卒業式のオンライン配信リハーサルの様子。さまざまな場所にカメラを設置し、映像でも臨場感を感じられるように

新型コロナウイルスの影響を受け、2020年は多くのイベントが中止に。そんな中、株式会社ガイアックスでは、リアルのイベントができず困っている人々を助けようと、オンライン配信事業部を立ち上げました。

きっかけは、当時社内イベントのオンライン化に取り組んでいた木村 智浩のもとへ舞い込んだ、横浜にある公立中学校の先生からの相談でした。

木村 「今年は卒業式の縮小が余儀なくされ、保護者や在校生に参加制限がかけられていました。そこで、『卒業式をオンライン配信できないですか?』と、ある先生からご相談をいただいたんです。

もともと社内の働き方改革として、2018年から、どこにいても行事に参加できるよう社内イベントのオンライン配信に取り組んでいました。そのため、その知識や経験を応用すれば卒業式もオンライン配信できると思ったんです。とくに難しい機材を使わなくても、安価にオンライン配信ができることを先生方にお伝えすると、『やりたい』とおっしゃってくださいました。しかし、学校内や教育委員会の理解が得られず、なかなか進められなくて……」

オンラインに慣れていない学校にとって、オンライン配信のイメージを共有することは難しく、トラブル時の対処や当日の配信手順など、学校側には懸念が多くありました。また、1校だけオンライン配信を行うのは不平等につながるのではないか、という懸念も……。

そのため、2週間前から準備を進めていたものの、最後まで学校側の実施の判断が下りず、最終的に実施が決まったのは卒業式の前日でした。

前日に急遽リハーサルを行い、保護者に配信URLを送付し、なんとか200名の保護者がオンライン参加できる準備が整いました。

木村 「短い準備時間で実施できたことは、私たちの自信になりましたね。

オンラインで参加した保護者の方からは、『最前列に座っている感覚で見られたのはありがたかった』『もともと卒業式に参列できずに諦めていたけれど、職場から見ることができたので良かった』など、嬉しいお声をいただきました」

社員の想いが原動力となり始まった、オンライン配信の広がり

▲芸者ショーサービス「Meet Geisha」では、オンラインで芸者ショーが楽しめるように

卒業式のオンライン配信の成功を受け、他の学校にもこのオンライン配信を広めるため、教育委員会よりも上層の議会関係者に説明したり、他の公立・私立のPTA関係者向けに事例紹介したり、オンライン配信の理解が得られるように、全国の学校内外のさまざまな関係者へ丁寧に取り組みを説明していきました。 

その結果、木村のもとには卒業式や授業のオンライン化に関する相談が数多く舞い込むように。学校の先生やPTA、全国の地方議員などに向けて、さまざまなイベントに登壇して、自らの経験やノウハウを発信していきました。

2020年5月末には、学校の先生2000人が集まるイベントのオンライン開催を支援。その内容は、参加者の先生方によって、書籍化までされました。

一方社内事業に関しても、オンラインへの転換を助けてほしいという声があがっていました。中でも芸者ショーサービスの「Meet Geisha」や体験マッチングサービス「TABICA」は売り上げが減少し、オンライン化の策を検討していました。

そこで、オンライン配信に携わったことのある社内メンバーに声が集まり、それぞれボランティアでオンライン化のサポートを始めたのです。

木村 「社員がそれぞれの事業を助け合いながら、オンライン配信のノウハウを貯めていきました。オンライン配信は世の中に広がり始めたばかりで、正解がありません。やってみないとわからないことだらけだったので、とにかくたくさんトライして、技術を磨きあげていきました」

社内にオンライン配信のノウハウが貯まっていくにつれて、社外からオンライン配信イベントの依頼も増加。1万人の親子を集めた“親子でオンライン体験フェス”や、5万人以上の視聴者を集めた“青森夏祭り”の配信など、大規模なイベントも成功させました。

想いを形に、ゼロから立ち上げたオンライン配信事業部

▲スタジオでオンライン配信を行う事業部メンバー

大学在学中から既に多くのビジネス経験をもつ矢部 立也はガイアックスに入社後、コロナ禍で困っている人のために、「みんのみ」というオンライン飲み会プラットフォームを立ち上げました。

矢部 「ニーズを考えてから事業をつくるのが一般的ですが、この変化の激しい中で、まずはアクションを起こすことを最優先に考えました。オンライン飲み会のプラットフォームとして立ち上げたのですが、このサービスが派生して、スポーツ業界や芸能関係からもオンラインイベントを助けてほしいと問い合わせをいただくようになったんです。なので、ジャンルを問わずどんな案件に対しても、できる限り対応しました」

こうして気づけば、オンライン配信の依頼数は事業として成り立つほどに。そこで、矢部が事業部長となり、新卒1年目のメンバーを中心にオンライン配信事業部が立ち上げられました。

矢部 「毎年こんなにもイベントが行われていたのかと驚くほど、多くのイベント事業者が困っていました。しかし、限られたリソースの中ですべての依頼には応えきれず、悔しい想いをしました。そこで、ビジネスとして収支をしっかりと追いかけながら事業化することが、世の中の期待に応えられる方法だと思ったんです。

しかし、新しい領域なので、市場価格はいくらなのか、こういった業界の人材の給料はいくらなのか、わからないことばかり。そこを一つひとつ自分たちで決めていかなければいけないのは、大変でした」

もともと社内にイベント支援やオンライン配信の事業部は、一切ありません。それでも、ゼロから事業部を立ち上げられたのは、個人の想いから始まった活動をそれぞれが応援しあい、想いを尊重し合った結果でした。オンライン配信事業部の熱心さは、社内外の多くの人を巻き込んでいきました。

木村 「社会人1年目のメンバーは、入社してから出社もできていない中で事業をつくりあげてくれました。彼らの事業立ち上げのプロセスは、『物事の源泉とは情熱でしかない』と教えてくれましたね」

ゼロから始まったオンライン配信事業部が、気づけば業界をリードする存在に

▲海外、国内複数拠点をつなぐ大規模カンファレンスのライブ配信を担うまでに成長しました

2020年現在では、1カ月に30件の相談やお問い合わせをいただけるほどに。企業の社員総会や内定式、自治体イベント、国際機関のカンファレンス、芸能イベントなど、さまざまなジャンルのイベントのオンライン配信を行っています。また、本社にスタジオも開設され、本格的にオンライン事業部がスタートしました。

矢部 「オンラインに求められるクオリティは、どんどん上がっています。オンライン化はすでに世の中にかなり浸透してきたため、次のフェーズとして、オンラインでどんな新しい体験を提供できるのかが重要になってきています。その体験をいち早くつくり出し、ガイアックスが業界を引っ張っていくリーダーを担っていきたいですね」

ボランティア活動が気づけば事業に。この事業立ち上げのプロセスは、個人の想いを尊重するガイアックスならではだと木村は語ります。 

木村 「ガイアックスは一人ひとりの想いを尊重します。想いから始まる一歩をとても大事にしており、その一歩から始まった活動を必要とする人がいると確信したからこそ、今回も前に進めたのだと思います」

世の中が必要としていることに応え続けた結果、業界をリードするまでに成長したオンライン配信事業部。

原点である「困っている人を助けたい」という熱い想いを胸に、これからも時代のニーズに応じた新しい価値を提供していきます。