「特任CxO」──地域の課題解決に関わる外部のプロフェッショナル人材

▲左:地域おこし協力隊の横山 暁一/右:企画政策部 地方創生推進課 係長の山田 崇

今までにないスピードで社会が変化する中、地域の抱える課題は多様化かつ複雑化しています。しかし、自治体としての予算は限られ、職員の人的工数や専門性も不足しており、課題解決が困難な状態にありました。

そこで塩尻市では、自治体にて外部の副業人材を活用するという構想を打ち出し、2020年1月に「副業×短期間×リモート」で塩尻市の地域課題解決プロジェクトに携わる「特任CxO」というしくみを確立。まずCMO(Chief Marketing Officer)とCHRO(Chief Human Resource Officer)の2名を募集しました。

103名もの応募者の中から、CMOには、マーケティングとブランディングに長年携わり、現在ボルボ・カー・ジャパン株式会社に所属する関口 憲義が就任。CHROには、人事畑で顧問やスタートアップ企業の立ち上げなどを手掛けてきた、カフェ・カンパニー株式会社取締役の田口 弦矢が就任しました。

そうして、プロフェッショナルな人材が「副業×短期間×リモート」で成果を出せるかどうか実証を行うことに。

結果、CxOの2名は、市の中期戦略提言や新法人設立など、短期間ながらも高い成果を残すことに成功し、2020年5月には追加で5名が特任CxOに着任しました。2020年現在は全7名が、各々の専門性を生かした課題解決や戦略立案に関わっています。

自分の町に住み続けられることを大切に。リモート×副業というスタイル

▲山田とCMO関口の打ち合わせ風景

塩尻市は2016年1月「MICHIKARA」という地方創生協働リーダーシッププログラムをスタートさせました。

これは、行政が民間企業や市民と連携し、協働しながら課題解決していくためのもの。このプログラムにより塩尻市の交流人口は増えましたが、プロジェクト完了とともにメンバーとの関係が途切れてしまうことが多く、いかに継続して関わり続ける人(関係人口)を増やすかが課題でした。

山田 「外部の方とは、のべ100名以上とやり取りさせていただきました。中には、プロジェクト終了後も個人的に関わり続けてくれる方々がいて。また塩尻に訪れてくれたり、土日でもいいから継続してコミットしたいと言ってくれていたんです。

そのとき“行政と個人”というしくみに可能性を感じました。個人であれば、その方の心の温度を大事にしつつ、長期にわたって、ともに歩むことができると思ったんです」

その考えから、「リモート×副業」で関わる外部人材を増やすという構想をスタート。それまでは、地域の課題解決に関わりたいと考える方がいても、地域おこし協力隊など移住や就職をともなった制度しか存在せず、実現までのハードルが高いことが課題でした。しかし「リモート×副業」の構想は、こうした現状にもよい変化を与えていきました。

山田 「『リモート×副業』にこだわったのは、その方の住んでいる場所や大好きな仕事を離れなくても塩尻と関わることができることを大切にしたいと思ったからです。

労働人口が減少しているこの時代に、人材を取り合うのではなく、その人が自分の街に住み続けながらも、自分の時間やスキルをシェアし、新たな体験ができるということが重要だと考え、『リモート×副業』のしくみを採用しました」

2019年4月から、横山がパーソルキャリアで時短勤務したまま、塩尻市役所の地域おこし協力隊に複業で着任し、課題解決の可能性を示していたことも、この構想を実現する上で後押しとなりました。

そこで、小さくても実行することが大切だと考え、最初はCxOを2名に限定し採用することに。横山が所属しているパーソルキャリアの「iXハイクラス副業」と連携して募集を行った結果、103名もの方から応募をいただきました。

山田「応募してくださった方々一人ひとりへ電話やメールでお礼を伝えました。お話しさせていただく中で、感謝があふれると同時に、こんなに想いを持ってくださる方々がいるのに、2名分のポジションしかないのは非常に勿体ないことだと感じました。ですから、もし今回ご縁がなかったとしても、絶対に範囲を広げるので、どうか待っていてください、とも伝えました」

総務省の事業に採択され、事業を加速。「塩尻CxO Lab」を立ち上げる

▲CxOに協力いただいた「シオジリオンライン未来会議」の様子

最初に着任したCxOの2名は、市の中期戦略提言や新法人設立などに短期間ながらも高い成果を残しました。その結果、2020年3月にはさらに追加で5名の方に、CxOに着任いただくことに。現在CxOの7名は、戦略立案やイベント・コミュニティ運営、プロモーション企画など、専門性を生かしながら多岐にわたる業務を推進しています。

また、本取り組みは新型コロナウイルス感染拡大前からリモートで実施しており、塩尻と都会との接点が減る中でも活動を止めることなく継続することができました。

さらに、2020年6月には「ハイクラス人材×副業」の事例をもって、総務省の「関係人口創出・拡大モデル事業」全国25の採択団体のひとつにも選出。事業のスタートとして、CxOの7名をゲストにオンラインイベントを計8回開催しました。

結果として、総計250名以上を動員。塩尻市の関係人口拡大の一端を担っていただくと同時に、オンラインコミュニティ形成のための基礎をつくっていただきました。

2020年8月には参加する人から参加費(15,000円/半年)をいただくというチャレンジングなしくみを導入した「塩尻CxO Lab」を立ち上げ、現在26名もの人材が参画しています。

プロジェクト開始時には塩尻市について何も知らなかったCxOもいましたが、「塩尻市に何度も足を運ぶ中で人や文化に触れ愛着が湧き、いつの間にか思い入れのある地域になった」と話し、今では塩尻市への愛着を持ってくれています。このように、 個人が地域への愛着やサードプレイスをつくり出すことにも大きく貢献しています。

“塩尻モデル”を起点に。その輪を全国で同じ課題を持つ仲間へと広げていく

▲塩尻市に位置する奈良井宿。重要伝統的建造物群保存地区として、当時の町並みが保存されている

塩尻では2021年度から第三期中期戦略がスタートするため、より勢いを増して関係人口を増やしていく予定です。2020年10月にも、5つのプロジェクトで新しい求人を出し、71名もの方から応募をいただきました。

横山 「塩尻には魅力がたくさんあります。そのひとつは、産業の種類が多いことです。レタスやぶどう、ワインなどの生産、林業や木曽漆器といった伝統産業、そして近代的な工業まで多くの産業があるので、いろいろな視点で関わっていただくことができます」

また、塩尻にいるメンバーが多彩で、一人ひとりおもしろいことも魅力のひとつ。CxOをはじめとし、塩尻には地方の課題解決に情熱を持ったメンバーが集まっています。

山田 「塩尻で、地域課題の解決に挑戦し、そのノウハウを自分の地元に持って帰りたいという方も増えてきました。塩尻の人口は約6万7千人ですが、5~10万人規模の自治体は全国に多く存在しているんです。

つまり、塩尻で課題になっていることは、他の自治体でも困っている可能性が高い。だからこそ、塩尻を良くすることを通して、自分の町も良くできる、そんなサイズ感の場所で挑戦できることが価値だと思います」

横山 「自分自身がパーソルキャリアでの仕事と塩尻市役所での地域おこし協力隊の仕事を複業として実践する中で、これまでの経験、所属会社のリソースが地域にとって大きな活力となること、自分の想いが地域の課題解決につながることに大きなやりがいを感じています。

これまでまったく縁のなかった塩尻市が、今では自分の大切な場所になり、もっとここで全国の地域課題解決につながる活動をしたいと思っています」

これまでの取り組みが評価され、認知度が高まってきた塩尻市。さらにその規模は広がりを見せ、すでに本取り組みには、長野県辰野町・埼玉県春日部市といった他自治体も共同参画しています。

山田 「関係人口創出の取り組みを、“塩尻モデル”として全国でともに地域課題へ挑む仲間へ届けていきたいと考えています。これまでCxOが塩尻に伴走してくれたように、今度は塩尻が各自治体の伴走者、パートナーになりたいです」

塩尻市は、今後もよりいっそう関係人口を増やし、課題解決を加速させていきます。そして、それを塩尻だけに留めることなく、全国の他の自治体に届けられるよう、山田と横山の挑戦は続きます。