エンジニアが社会課題解決に挑戦!持続的なProject Based Learning発足の背景

▲各地域に入る前に、参加者全員事前研修を行います

エンジニア集団として活躍する株式会社VSN。エンジニア×課題解決を掲げ、日々クライアントのものづくりをサポートしています。

しかし、これからITを用いた社会課題解決が必要とされていく世の中で、現在行っているビジネス領域だけではエンジニアの課題解決能力の向上に限界があると、種畑は危機感を感じていました。

種畑 「今後少子高齢化が進み、医療や介護の問題はもちろん、農業を中⼼とした第⼀次産業従事者の高齢化など、解決しなければならない社会課題は多く出てきます。そういった社会課題にエンジニアが立ち向かわなければならなくなったとき、ITの技術力だけではなく高い課題解決能力も必要です。

ただ、民間企業の課題はどうしても同じようなところに帰結してしまいがちで、売り上げや効率化に目がいってしまうので、本質的な課題解決の力を身につけるには限界があります。エンジニアがフィールドに赴き、実際の社会課題に触れ、課題解決能力を上げる機会が必要だと思っていました」

業務の性質上、社外に出ることが少ないエンジニアは、視野が狭くなりがちで、自らが関わっている製品やサービスの価値、自身の価値を知る機会も少ないです。仕事ともまったく関係のない外の世界に触れる機会をつくり視座・視点を向上させることが課題でした。

それを解消するべく地方向けのソーシャルビジネスを行うボノ株式会社と共に、各地方に社員を送り、地域住民の皆さまと一緒になって課題解決に取り組むプロジェクトを発足させました。

種畑 「課題解決のプロセスは時代によって変わっていきます。時代の移り変わりが早く予測不能(VUCA)と言われている現代においては、あるべき姿が決まっていて現状とのギャップを埋める「ギャップフィル型」ではなく、目指すべき未来を定める所から始まる「ビジョン設定型」の課題解決プロセスが重要だと言われています。

そのためには、まず自分自身がしっかりとしたビジョンを持ち、複数の利害関係者の間に入り、目線を合わせて共通のビジョンを設定していく能力を身につけることが重要です。

とくに社会課題に対しては、ビジネスシーンでよく使われる線形的な課題解決プロセスは通用しません。自分の想いを持ちつつ、エンドユーザーの声を丁寧に聞き、共通の目的や目標を設定するビジョン設定型の課題解決を推進できるエンジニアは、これからの時代において市場価値が高い人財になると思っています」

地域住民とのコミュニケーションの壁。関係構築から始まる課題解決の第一歩

▲各地域の視察は2カ月にわたり行われました

構想からわずか3カ月、2019年2⽉にプロジェクトが発⾜し、全国から課題を持つ7地域が公募で決定しました。

初年度は約35名の社員が参加。地域に入る前に「地域でのお作法」、「システム思考」などフィールドで必要になる最低限の知識習得を目的として事前研修を実施、5月からは実際に地域での視察・フィールドワークを開始しました。

視察では、⾃治体が抱える課題や可能性について現地の担当職員からヒアリングを実施します。事前に調査をしていた公開データと現地職員や住民の皆さまが感じている課題感をすり合わせ、課題解決に向けてどのような方向へ進むべきなのか、イメージをふくらませます。

徐々に地域の中に足を踏み込んでいく社員たち。しかし、東京から来た見知らぬビジネスパーソンたちをすぐに受け入れられる地域ばかりではありませんでした。

種畑 「高価なシステムを導入したがあまり活用されていないというケースが多く、システム導入企業に対して良い印象を持たれていない、という話はよく耳にしています。東京のビジネスパーソンが急に来てすっと受け入れてもらえないのも当然のことです。

『何か売りにきたんだろ!自分たちの手弁当で人の課題を解決するなんてそんな企業あるわけないだろ!』と、初めはすぐには理解してもらえませんでした。

しかし、私たちにとってこれは人材投資であること、社会課題を解決したいという想いがあることを丁寧に説明し続けました。その甲斐あって、徐々に地域の方々にも理解していただくことができたと感じています」

参加者が自ら一次情報を得るという体験を通じ、語られた言葉を記事にすることも重要な作業のひとつです。テキストデータ化された情報は毎年蓄積されていき、非常に貴重な情報となります。普段の業務ではクライアント先にいるエンドユーザーの声を聞く機会が少ないため、エンジニア社員にとっては貴重な体験となりました。

種畑 「各地域に入って課題を住民と一緒に解決していくには、移り変わる気持ちの変化に寄り添うことも大切です。多くの横文字が飛び交うビジネスパーソン同士の仕事では、どうしても効率的に直線的に物事を解決しようとしてしまいます。しかしそれは、多くの住民の想いが複雑に絡み合う地域課題には通用しません。

そのため、住民への取材は今回のプログラムにおいて一番大事にしていたポイントのひとつでした。事前研修で習得した“システム思考“を体感する事ができる一幕でもあります。地域に根付いている文化を含め、課題を取り巻く社会構造を理解し、住民の皆さまが変化を受入れる心の準備にかかる時間も意識したコミュニケーションの重要性を体感できました」

1年かけて行われた課題発見。課題解決提案は、自治体事業にまで発展

▲フィールドワークでは住民に取材を行いました

どの地域でも地域住民と関係性をつくることは簡単なことではありませんでしたが、地域に入り始めてから約半年、フィールドワークを進めて行くと、徐々に地域とのコミュニケーションの壁を突破できるチームが出始めました。

茨城県鉾田市のチームもそのひとつです。地域の大きなお祭りでは、運営する商工会の方々とともに夜遅くまで会場の設営をしたり、お祭りを盛り上げたりと一致団結したことで、市役所や商工会の皆さまとの距離が一気に縮まりました。

種畑 「今までは電話やメールをしても、つながらないことが多かったのですが、このお祭りをきっかけにガラッと接し方が変わりました。仲間に入れてくれたという感覚があったんです。関係性が生まれるということは、こういうことなんだなぁと感じた瞬間でした」

フィールドワークでの課題発見と、地域との関係構築に重きを置き、初年度のプログラムは終了。年間報告会では、全地域の職員の⽅々、VSNの役員、関係者を含め、総勢約80名が参加しました。1年を通した活動内容や地域課題に対する解決提案など、参加された方々からは良い反応を得られたことで、今後に向けた手応えを感じました。

種畑 「地域では、VSNの社員としてではなくひとりの⼈間として向き合うことが求められます。技術⼒などのスキル以前に、⾃⾝のコミュニケーション⼒や⼈間⼒を総動員させる貴重な経験ができました。また、2年目の2020年は早速、具体的な事業受託につながったチームもあり、自社のビジネスに対しても貢献できたことは⼤きな成果です」

ある地域では、これまで地域には無かった新しい雇用を創出する取り組みを、事業受託することとなりました。

農業など第一次産業が強い地域では、柔軟な働き方ができる労働環境が少なく、働きたい想いはあるけれど介護や子育てによりフルタイムで働けず、職に就く事ができないケースも少なくありません。

このような方々でも、貴重な労働力として活躍できるよう、時間や場所にとらわれない柔軟な働き方を創出できたとしたら、大きな価値になります。VSNの研修を通してICTスキルを向上させ、地域にない働き方に対応できるような人財を育成、企業とマッチングしていく事業となりました。

そのほかにも事業としてご依頼いただく地域がいくつもあらわれ、本格的に地域の課題解決に向けて進み出しています。

課題解決人財の育成を目指して。エンジニアが日本の社会課題を解決する世の中へ

▲年間報告では、各自治体同士の交流も生まれました

2年目の2020年は、さらに参加者・参加地域も増え、約50名の社員が10地域12市町村にわたり活動を継続。プログラムに参加した社員は、口をそろえて「リアルな社会課題に触れ、社会貢献に対する意識や視座が⾼くなった」といいます。

種畑 「たとえば、『自分の得意分であるIoTやAIソリューションなどテクノロジー活⽤こそが課題解決だ!』と考えていた社員は、住⺠との会話を通じていかにユーザー視点が不⾜していたか痛感していました。

ソリューションありきの提案ではなく、対話を通して住⺠が感じている課題を知り、どんな未来を目指すべきか、必要となるテクノロジーは何か、相手の目線で考えられるようになっていたのが印象的です。

他方で、ビジネスシーンでの課題解決プロセスをそのまま持ち込み、思うように進まず悩む社員も多くいました。そういった社員も、最終的には関係性をつくることが一番大事だと気付いていました」

ビジョン構築型の課題解決能力を身につけ始めた社員たち。これは、これからの時代において、社会課題の解決を担う一員としての重要な一歩です。

種畑 「弊社では2020年現在、課題解決をするエンジニア派遣サービス“バリューチェーン・イノベーター(VI)”を展開しています。今後課題解決ができるエンジニアは世の中にとって非常に重要な人材となっていくと思います。

今後社外の方にも取り組みに参加していただけるような形にし、VI人財を育成して、いずれVIがひとつの市場となるよう目指していけたらと考えています」

日本が大きな社会課題にぶつかったとき、活躍するのは多くのVI人財かもしれません。

エンジニアが社会課題解決に活躍する未来を見据え、これからもVSNの活動は続いていきます。