雑談レベルから、会社の意思決定まで──誰もが情報を得られるシステムに

▲プロジェクトリーダーの澤田

会議で話した内容や個々人の思考プロセスのほとんどがScrapbox上で共有され、社員全員がアクセス可能な情報インフラを構築している株式会社ネットプロテクションズ。このコロナ禍において、社員同士が顔を合わせずともスムーズにリモートワークを行っています。

澤田 「Scrapboxでは、Wikipediaのように関連する資料同士をリンクでつないで情報を整理します。なので関連する資料のリンクをたどっていけば多くの場合、知りたい情報を自分で収集することができるんです。

情報が足りないと、『誰に何を聞けばいいか』すら明確にできないという事態が起こりがちです。それでも出社していれば『周りの人にとりあえず声をかけてみる』というアクションで解決することができますが、リモートワークだとそうもいきません。

その点Scrapboxにおいては自分でかなりの情報を集めることができるので、そもそも多くの場合、自己解決できるんです。質問が必要なときでも、誰に何を聞くのか明確にしてから聞くことができます。顔を合わせてコミュニケーションをする機会が減ってもアウトプットの質が下がらない理由は、こうしたところにあるんでしょうね」

必ずしも正解が書かれていなくて良いという大前提があることも、Scrapboxが機能している要因のひとつだと言います。

澤田 「会議における雑談や、企画書作成過程での思考メモに至るまで、あらゆる情報をみんなで書き残そうという意識が共有されています。そうすることで、意思決定の背景やプロジェクトに参加している人の想いまでを把握できる。対面で細かくヒアリングをしなくても、Scrapbox上の資料をもとに自分で思考を深められます」

大きな組織でも情報共有を楽に。双方向コミュニケーションをかなえた秘策

▲以前から風通し良くコミュニケーションを図れる文化があります

ネットプロテクションズには以前から、「なぜそう考えるの?」「なぜやるの?」など、発言や意思決定の背景を仔細に聞く文化がありました。雰囲気としては風通しが良かったものの、当時澤田はこのように感じていたといいます。

澤田 「実際問題、プロジェクトのマネジメント担当者や年次が上の社員にたくさん質問するのは気が引けることも多かったですね。たとえば会議の場でそれぞれが疑問に思うことをすべて聞いてしまうと、会議が進まなくなります。だから聞きたいけれど聞くことができず、思考が十分に深まらないまま仕事を進めることがよくありました」

大学のころは、研究室に自分と教授しかいない中でさまざまな実験ができる環境にいた澤田。自分が知り得た情報を整理して教授に見せるだけで、情報共有はうまくいきました。しかし会社という組織になった途端、情報共有がうまくいかなくなります。それはなぜなのか、入社以来ずっと考えてきました。

澤田 「情報共有のためにさまざまなツールを試したものの、うまくいかないことの連続でした。見つけたい資料がどこに格納されているのかわからない。あるいはほんの一部の人しか情報を書き残さなくなり、結局のところ情報共有システムとして上手く機能しない。少人数で使う分には問題がなくても、組織で使うとなるとさまざまな問題が顕になるのです」 

そうした状況に対して諦めず、解決方法を調べ続けて出会ったのが、Scrapboxでした。Scrapboxの最大の特徴は、「この情報はこのカテゴリーに整理すること」というルールを決める必要がないことです。

澤田 「世の中のツールの多くは、カテゴリーごとにフォルダをつくり、そのフォルダの中にさらにフォルダがいくつかあって……という『階層構造』で情報を整理するようにつくられています。そうしたツールを組織で活用する場合、誰かがあらかじめ『この情報はこのカテゴリーに整理すること』というルールを設定しなければなりません。

しかし実際に使ってみると『どちらのカテゴリーにも属する情報』が出てきてしまい、現場は混乱します。これが組織でツールを使う場合に運用が破綻する、大きな原因のひとつです。

一方でScrapboxは『関連する情報同士をリンクでつなぐ』という整理の仕方で、そもそも『カテゴリー』というルールをつくる必要がありません。『この情報はどこに格納すればいいのか』という迷いがなくなるため、皆が積極的に情報を記載するようになるのです」

ツールの「楽しさ」×社内文化──Scrapboxを情報共有インフラに

▲勉強会の風景

Scrapboxを社内に導入すれば、情報共有は格段にスムーズになると信じていた澤田。だからこそ、泥臭い普及活動や地道な作業にも一つひとつ丁寧に取り組むことができたと言います。

澤田 「Scrapboxは“楽しく使う”ことを大切にして開発されたツールなんですよ。ひとつの事柄に対して、関連する事柄をみんなでどんどん紐付けていく。本来の使い方をすれば、事柄同士の関連を見つけていくゲームのような楽しさがあるんです。

とはいえ、初めて使ったときにうまく使えなければ、その後は誰もScrapboxを使わなくなってしまいます。なので、いかにして『本来の使い方』に馴染んでもらうかには工夫を凝らしました。具体的には、参加者同士で楽しみながらScrapboxに触ってもらえるような勉強会を開いたり、Scrapboxを使い始める人が抱きそうな疑問をあらかじめ想定し、それに対する解決策をScrapbox上にページとして整理しておいたりといった施策を行いました」

そして導入から1年経った今、Scrapboxは、約300人の社員数にも関わらず、毎日400ものページがつくられるほどの情報共有インフラに。また、インフラが整備されたことで組織の心理的安全性がより高まるという副次的な効果も得られました。

澤田 「『Scrapbox上に情報を残せば、他の人が広く自由に参照できる』という状態になったため、議論や思考のプロセスをテキスト化する文化も育っていきました。このことによって、若手であっても自分の意見を遠慮することなく発信することができるようになったと感じています。

相手を目の前にして発言をするとなると、やはりどうしても遠慮によって出す意見を取捨選択してしまうんですよね。しかし自分の考えをメモのように記載するとなると、ちょっとした疑問やアイディアまでを余すことなく書き残すことができるんです」


とはいえ、コミュニケーションや社員同士の信頼関係の素地があったからこそ、ツールがうまく機能したと澤田は考えます。

澤田 「普段から、風通し良く社員同士でコミュニケーションがしっかりとれる文化があったので、Scrapboxがうまく浸透しました。ツールと社内文化の両輪があってこその成果ですね」

天才1人の脳内で行われていたことを、会社全体でやってみたい

▲全員で、情報共有のさらなるステップアップを目指します

今後目指したいステップについて、澤田はこう話します。

澤田 「これからは、Scrapbox上に貯められた情報をみんなで整理していきたいなと思っています。

物事を考えるプロセスって、二段階に分かれると考えています。第一に、とにかく思ったことをアウトプットするブレストの段階。第二に、出てきたものを整理する段階。現在は、議事録から雑談レベルのメモまで共有されて第一段階はクリアしました。これだけでも仕事のスタイルは大きく変わります。ただ出てきた情報から理解や思考を深めていくには、まだまだ先があるなぁと思います」

そして、出てきた情報を整理することの中から、新しいアイデアやイノベーションが出てくると考える澤田。

澤田 「たとえば、天才と言われたスティーブ・ジョブズが自分ひとりの頭の中でやっていたことを、会社全体でやってみたらどうなるんだろうって。みんなでひとつの大きな脳を共有するイメージなんですが、もしそれが実現できたらすごいことじゃないですか?これからも全員で、一歩先の世界を見られるよう取り組んでいきたいですね」

ひとつの大きな脳を会社全体で共有できた先には、きっとさらにおもしろい未来が待っている。そう信じる澤田の飽くなき挑戦は続きます。