届けたい“発酵の魅力”──プロジェクトの下地を支える営業経験
日本初の乳酸菌飲料である「カルピス」。100年を超えて「カルピス」は、ずっと変わることなく、乳酸菌と酵母による“発酵”という自然製法によってつくられています。
2018年に発売した、発酵BLEND「ヨーグルト&『カルピス』」は「カルピス」とヨーグルトという2つの発酵食品を組み合わせた、おいしくて健康的な乳性飲料として誕生しました。
この商品の発売とあわせてスタートした、発酵の魅力を発信する「『カルピス』発酵BLEND PROJECT」。このプロジェクトは発酵の魅力を深掘りして紹介し、発酵文化を伝え、未来へ紡ぐ活動です。
日本の全国各地にあり、今も人々の暮らしに根づいている発酵という食文化──その土地ならではの微生物や発酵方法、これをささえる人々の取り組み、発酵食品を使ったレシピなどを紹介するプラットフォーム“みんなの発酵BLEND”と題されたWebサイトの運営をしています。
また、情報発信だけでなく自治体イベントへの参加や「カルピス」とその土地ならではの発酵食品がコラボしたオリジナルドリンクを地域のイベントなどで販売し、地域の話題化・活性化に繋げる活動を実施しています。
その中で私は、プロジェクトのテーマに沿ってどのようなことをするか企画し、実施に向けて計画や実務の作業を進めていくという役割を担っています。
私はもともと営業担当でしたが、このプロジェクトでも自分の足を使って発酵食品を取り扱うメーカーさんを訪問して、「一緒にこういうことしませんか」という地道な提案が実を結んできました。
営業の時に培った自分の足で稼ぐ力は、意外と今に繋がっている部分があり、自分の性に合っていると感じています。
コラボレーションによる気付き。「カルピス」だからできるアプローチとは
プロジェクトの目的を達成するために大切にしていることは、今まで培ってきた「カルピス」のブランド価値を大切にしつつ、より良くしていくことです。もちろん美味しいということはベースとしてある価値なので、ここはしっかりと残して活動するように意識しています。
その中で、「カルピス」は発酵食品の仲間であることや、乳酸菌と酵母、“発酵”という自然製法によって生まれたカラダにうれしいチカラがあると伝えることで、より幅広い層の方に飲んでもらえるのではないかと考えています。
発酵食品は歴史が深いものが多くて、発売してから100年以上経っている「カルピス」も、発酵業界で言うとまだまだ若い方なんです。例えば味噌屋さんだと200年300年は当たり前。
だからこそ、「カルピス」が発酵食品の代表という感じではなく、あくまでも発酵食品の仲間に入れてくださいという気持ちでお話するように意識しています。
昔っぽいとか古めかしいというイメージをもたれることも多い発酵食品ですが、そこに「カルピス」という幅広い年代から愛される商品が「発酵食品」であるとしっかり伝えることによって、発酵食品の間口が広がるということもあるので、一緒に取り組むことをポジティブに考えてくださることが多いんです。
プロジェクトの中で一番印象に残っているのは、2018年に日本橋で開催したイベントですね。「カルピス」と日本各地の発酵食品をブレンドしたオリジナルドリンクをつくる取り組みの集大成として、東海道の終着地点で昔から日本のあらゆるものが集まる日本橋で、各地域とのコラボドリンクを販売したんです。
八丁味噌とコラボした「『カルピス』+発酵BLEND 三河」のほか、鮒ずしの飯(いい)とのコラボ「『カルピス』+発酵BLEND 滋賀」、もろみ酢とコラボした「『カルピス』+発酵BLEND 沖縄」などを、特設キッチンカーで販売しました。
またドリンク購入者には、地元発酵食品の魅力やコラボドリンクの開発ストーリー、レシピなどをまとめたオリジナル冊子もプレゼントしたんです。
ただ飲んでいただくだけではなく、コラボしている企業さんのことも知って欲しいということもあり、メーカーさんがどんな想いで発酵食品をつくってきたのか、どんな形で地域に根づいていったのか冊子にして伝えていきました。
さらに、イベント期間内に発酵ドリンクを監修した発酵マイスターさんもお呼びして、発酵を美味しく楽しく体験できる味噌作りのワークショップも実施しました。
当日、最初は味について不安そうだったお客様も、ドリンクを飲んだ後には「意外と合うんだね」「発酵食品同士の組み合わせだからおいしいのね」「だからこうやってコラボしてるのね」といったお声をいただきました。
「カルピス」が発酵食品であることの認知度はまだ低いですが、イベントを通してお客様の反応を目の当たりにし、新しい気づきに繋がっていたことが嬉しかったです。
“発酵”が秘める無限の可能性──プロジェクトが社内外を繋ぐものに
プロジェクトを進める中で、発酵に向けた取り組みを知ってもらう機会が増え、「うちでもこういうことやってくれませんか」というオファーを受けることが増えました。
社外だけではなく、社内からも良い活動だと注目していただいております。たとえば東北支社でも、これまでの取り組みを参考に独自に発酵食品メーカーさんとのコラボレーションを進めているんです。
自分がやってきたことが繋がり、そして広がっていることに、やりがいを感じています。
私自身の学びとしては、改めて発酵には色んな可能性があるという気づきを得た点です。微生物の働きには、食品を美味しくするというのは大前提ですが、それ以外に新しい健康効果が期待できたり、食品以外でもバイオマス燃料や薬になったりと、色んな分野に広がりがあり、発酵の可能性は無限大だという風に感じています。
また、どの企業さんも前向きにコラボレーションをしてくれるなど、「カルピス」は色んな人から愛されているのだと改めて実感することも多く、今後も自治体や発酵食品メーカーさんと力を合わせながら、発酵の魅力を広めていきたいと思っています。
地域に根ざした発酵の魅力を伝える上で、全国展開しているような「カルピス」が一緒になって取り組んでいくと、メーカーさんにとって認知をしていただく機会になるだけでなく、地域の魅力を伝えるにきっかけにもなります。
当社にとっても、プロジェクトを通じて「カルピス」が発酵食品由来の美味しさであることや健康感を訴求する場にもなっているので、WIN-WINな関係性の中で地域活性のサポートに繋がっていると考えています。
一家に1本の「カルピス」──実現したい世界観
今後の展望としては、お客様と交流する新しい機会をさらにつくることですね。
2020年は熊本で開催予定だった「全国発酵食品サミットinくまもと」というイベントに出店することを非常に楽しみにしていたのですが、新型コロナウィルス感染拡大の影響で中止になってしまって……。
各エリアの発酵食品メーカーさんのところまで直接お話に行って、エリアの発酵食品とコラボしたドリンクの販売も予定していました。本当に今までやってきたすべての積み重ねを届けたいと思っていたので、非常に悔しい思いをしたんです。
まだまだ大型のイベントは難しいと思いますが、今後、新たな形でお客様にとっても、コラボをする企業さんにとっても喜んでもらえるような企画をつくっていきたいと考えています。
当社では「『カルピス』こども乳酸菌研究所」という出前授業を以前から実施していて、今後は、私たちアサヒ飲料社員もオンラインで参加できるような授業の仕方を計画しています。
そのプログラムでもしっかり「カルピス」が発酵食品であると伝えています。また、今までお世話になったメーカーさんだけではなく、発酵文化を推進していく団体である発酵文化推進機構さんにもご協力いただき、発酵の魅力をブランド基点で伝えています。
発酵文化推進機構さんからも「カルピス」の情報を記事化していただいたこともあり、情報化・ニュース化・話題化みたいなことは今後も意識して進めていきたいです。
あとは個人的な展望ではありますが、お客様にとって常に身近に「カルピス」がある、そんなシーンをつくりだす飲料になって欲しいと思っています。
どちらかというと「カルピス」は子ども向けの飲料だというイメージをもつお客様もいらっしゃいます。また、昨今は無糖飲料を嗜好するご家庭が増えてお茶や水を飲むお子さんが多いんですよ。
そのため、「カルピス」は美味しいだけではなくて発酵由来の飲料であることを伝えることでその良さに気づいていただき、お客様の層を広げていきたいんです。
例えば、朝ご飯には味噌汁とかパン、ヨーグルト、納豆といった発酵食品が食べられていることが多いと思います。そこに、発酵食品として「カルピス」も仲間入りをしたいですね。
一家に1本、常に「カルピス」がある──それが当たり前になればいいと思っています。