従来品にないメリットを持つ防犯カメラ付き自動販売機が、まちを見守る
“まちを見守る自販機”は、2019年の9月から取り組みをスタートしました。
1号機は横須賀市どぶ板通り商店街様に設置しております。地域の方のより安心・安全な街づくりを目指し、防犯カメラ付き自動販売機をNECと一緒に共同開発して、さまざまなエリアで展開を続けています。
2020年12月には、町田警察署と市民が特殊詐欺被害にあわないよう連携・協力していくことを誓う「『特殊詐欺被害0のまち町田』共同宣言」の調印式を実施しました。
町田市は振り込み詐欺の被害が多いという地域の課題がありました。警察と警察協議会の方々が話し合いの場を持った際に、加害者の追跡や抑止という面で防犯カメラの設置台数を増やせれば、詐欺被害を減らしていけるのではないかという話があがり、当社の自動販売機を採用していただきました。
“まちを見守る自販機”には大きな強みが二つあります。ひとつはNECのクラウドで画像管理ができる点と、もうひとつは防犯カメラの取り付け位置です。
従来の防犯カメラ付き自動販売機はSDカードに記録をしていました。SDカードは現地にいかなければ画像が抽出できないうえに、SDカードを抜かれてしまうと証拠隠滅につながってしまうというデメリットがありました。画像をクラウド管理することで現地に行く必要がなくなり、プライバシーの保護もできるようになりました。
また、従来の防犯カメラは街頭などに設置しているケースが多く、少し高い位置から写し出しているので、犯人を特定したい時に帽子などを被ってしまうと犯人の顔が写りづらいというデメリットがありました。自動販売機の高さであれば大体人間の視野と位置がマッチするため、警察署の方々にもその点を高く評価いただいています。
相手の課題は何か?課題解決につながる提案ができるか?
私が所属している部門は、自動販売機の設置や商品を販売いただくお取引先の新規開拓と、お得意先様との関係強化を担当しています。最近では、BCP(事業継続計画)対策で長期保存水や、「カラダとココロの健康の実現」に向け乳酸菌飲料の提案もしています。
私はずっと営業畑にいたのですが、そこで意識していたのはお客様にとっての課題が何なのかということです。
直にお得意先様やお客様と接する機会が非常に多いので、お話などを聞いていくと地域の課題や問題、お得意先様の課題などがいろいろと出てきます。何かその課題の解決につながる提案が、私個人もしくは組織としてできないかと日々考えております。
町田警察署との取り組みも、こういった活動がアサヒ飲料としてはできますという提案をさせていただいたのがスタートになっています。
ただ、最初に提案をしてから実現をするまでは、1年ほど時間がかかりました。
警察署という公的機関へのご提案は、今まで経験してきた民間組織へのご提案とは、異なるハードルがあったんです。
時間をかけて信頼関係を築きながら、地域の方や警察署の方にどんなメリットがあるのかをご説明し、納得していただきました。
こうした取り組みを始めてから、設置事例等を地域誌などに掲載していただくことによって、行政側からの問い合わせも来るようになりました。
新宿区からは、犯罪抑止につながる可能性の高いエリアを重点的に設置していきたいというお声をいただいており、2021年4月には新宿区を管轄する4つの警察署と防犯協定を締結する方向です。
新宿や町田といった都内でも規模の大きな警察署と取り組むことによって、周りの警察署も「アサヒ飲料とやっていこうか」という雰囲気にもなりますし、そういった形でこの“まちを見守る自販機”を広げていけば、より地域の安心安全な街づくりにもつながっていきます。
目指すは全国展開。行政と民間で力を合わせて、安心安全な街づくりを
他に私が担当した地域課題に対する事例として、鎌倉市での取り組みがあります。市内の大きな防災公園に公衆トイレを映すような形で、“まちを見守る自販機”を設置しました。
あるとき、地域住民の方からのお話を伺った際に、公園内の公衆トイレでのトラブルへの不安があがりました。そこで、この自動販売機の話をしたところ、ぜひ設置できないかとご相談をいただきました。実際に場所を見て、こういった場所であったらしっかり画像が撮れますとご提案しました。
また一時期、公園の砂場に鋭利な刃物が埋められていたという事件がニュースになっていました。そういった軽犯罪を未然に防ぐツールの一環として、公園に設置された自動販売機に録画できる機能があれば軽犯罪の抑止効果となり、より一層安心だねという地域の方のご意見もいただきながら、提案につなげました。
その結果、当社の“まちを守る自販機”を優先で設置することになりました自治会から公園を管理している団体を通して、鎌倉市の行政に話をしていただいて最終的に許可をいただきました。
行政には、防犯カメラを増設していきたいという想いがありました。そこで、民間の力をお貸しすることで、未然に犯罪を抑止し、有事の際に当社の自動販売機を活用して犯罪の検挙につなげることができればと考えています。
今はまだ一自治体との取り組みなのですが、ゆくゆくはより多くの警察署と防犯協定を結んで、この活動を広げて水平展開していくというのが目標のひとつです。
近隣の活動事例が伝播することで、いずれは全国に防犯カメラ付きの自動販売機の取り組みが広がり、地域の方々の安心安全な街づくりにつながれば、それが自分にとって一番嬉しいことですね。
モノを売るだけではなく、地域への貢献も同時に──自動販売機の新たな形
今までモノを売るだけのツールだった自動販売機は、どんどん新しい形になっています。
地域に貢献するという部分ですと、他にもコミュニティFMの取り組みも行っています。
コミュニティFMは市や町単位で地域の方が開局している地域密着型のラジオ局です。このラジオ局の大きな活動のひとつとして、有事の際に防災無線の役割を担っています。
たとえば水害や地震などの災害があったとき、地域の方に情報を発信しています。私のお得意先様からは、地域の方にコミュニティFMの認知が行き届いていないことが課題のひとつだと伺っています。
そこで認知向上につなげる活動として、当社の自動販売機にFM局の周波数などを印字したラッピングをして展開しています。有事の際には地元のラジオ局を聞いて避難に活用していただけるよう、その認知の一助になればと考えています。
また、当社には設置場所周辺が無料WiFiスポットとして機能する仕組みを搭載した自動販売機もあります。5Gの社会になっていけばなおさら、WiFi環境を当社の自動販売機を基点として広げていくという提案ができるかもしれません。無限と言ったら大袈裟ですが、いろいろな提案が可能になるのかなと思います。
飲料会社として求められることもだんだん変わっています。その時代に合わせ、お客様のニーズに対して、お役に立てる提案をしていくことが営業の役目なのだと感じていますね。
100年以上続く長寿ブランドを保有している飲料メーカーとして、地域の方から「安全・安心」な飲料メーカーだと認知していただいていることは、当社の強みでもあります。
そして、防犯に貢献することで、「安全・安心」というイメージをさらに広げていくことができるのではと思います。
乳酸菌関連商品をはじめ、お客様の健康課題に対してご提案できる商品ラインナップとあわせて、今回ご紹介した“まちを見守る自販機”といったハード面での当社の価値も発信できれば、当社の新たな強みになっていくのではないかと考えています。