細部にまでこだわった、今までにないボトルの誕生

2021年3月9日に「アサヒ 十六茶」をリニューアル発売しました。

東洋健康思想に基づく、十六素材をブレンドした独自の美味しさや健康価値をあらためて実感いただけるように、「人にやさしく、地球にやさしい」をテーマに、中身と容器とパッケージを一新しています。

リニューアルに際して、私は容器の担当として“環境への配慮とデザイン性”にこだわって、ボトルの設計を開発しました。

リニューアルした「アサヒ 十六茶」では、環境配慮素材を使用したネイチャーボトルを採用しています。また、十六茶の素材感や柔らかさを伝えることができるよう、加飾にも力を入れています。

加飾とは、ラベルではなくボトル自体に装飾を施すこと。ボトルの表面にあるデコボコとした模様を思い出してもらうとわかりやすいかもしれません。今回は、葉っぱや穀物の実や水の流れなど、一つひとつのモチーフを表現して、自然を感じられるようなデザインを施しています。

環境配慮素材に切り替えていくのは、実は難しく大変なことです。というのも、リサイクル素材や植物由来と言われる樹脂は、従来使われてきた樹脂とは物性が異なるため、ボトルとしての機能を持たせることが難しくなるんです。工場でボトルをつくる時の安定性も考慮し、生産方法についても考えていかなければいけません。

その上でデザインを施すとなると、強度と両立させるために、ボトルを重くする必要が出てきます。しかし今回の取り組みでは、容器包装の全体重量を変えずに、どうデザインを付与するか、試行錯誤を繰り返していきました。

その結果、加飾によるデザイン性を担保しながら、強度も確保することができました。

これまでは強度とデザインが、それぞれ独立して考えられていましたが、組み合わせることによって強度と美粧性を両立することができるというのは新しい発見でした。

お客様にとっては意外と気づかれない部分かも知れませんが、細部にこだわった今までにないボトルとして、変化を感じていただけたら嬉しいですね。

自分のつくったもので、付加価値を提供したい

▲休日は登山に熱中。自然に親しむことでリフレッシュに

私は小さい頃からデザインを考えることや、図工も好きでした。モノづくりに興味を持ったきっかけは、小学校の頃の夏休みの自由工作でしたね。

犬を2匹飼っていたのですが、両手にリードを持って散歩をしていると、犬が自由に動き回るのでリードが絡まってしまうんですよね。そのため、取っ手をひとつにしてリードをふたつ付け、根本部分がクルクル回るようにし、犬が交差しても紐は絡まないといった物をつくって科学工夫工作展に出したんです。

それが近隣の4市の中で2番になるくらい評価されました。日常で感じる不便や不満などが、些細な工夫で解決できたというところが快感で、ものづくりの楽しさを知ったんです。また、評価をしてもらえたことも、とても嬉しかったですね。

大学では、有機薄膜太陽電池に使われる半導体・高分子素材に関する評価手法の検討といった、バリバリの基礎研究をテーマとしてやっていましたが、実用化まで時間のかかるものでした。

自分のつくったものがよりダイレクトに消費者に感動を与えられるものや、自分のやったことが目に見えて、世界に伝わるものに携わりたいという想いがあり、飲食業界や化粧品業界といった、BtoCの業界に就職したいと考えていました。

就職活動中に、アサヒ飲料で印象に残っているのは、六条麦茶の容器開発をした先輩社員のお話ですね。

ペットボトルは単純に飲料を飲んだり、ただ中身を詰めたりするだけのものではなくて、デザインやユーザビリティなど、さらに価値を付加できるものと聞きました。それまでは、単純に飲料メーカーは中身をつくって飲んでもらうだけだと思っていたので、パッケージもしっかり考えて開発をしているというのがとてもおもしろいと感じたんです。

当時コンビニでアルバイトをしていたのですが、商品陳列などをする中で、容器や包装に対して、倒れやすかったり壊れやすかったりと扱いの難しさに課題を感じることがありました。飲料メーカーに入社したら、お客様だけではなく、オペレーションの方々にもメリットを提供できる開発をしたいなとも考えていました。

また、アサヒ飲料であれば、「三ツ矢サイダー」や「カルピス」のように子供からお年寄りまで楽しんでいただける商品があります。当社のグループ会社ではアルコール類や食品を製造販売しているので、より幅広い世代や老若男女に関わらず、さまざまな価値を提供できる会社だと感じ、入社を決めました。

あらゆる知見を連鎖させ、新しいものを生み出す

入社後は、第一志望である容器包装グループの配属になりました。

いつかブランドに紐づいたデザインボトルをつくってみたいと考えていたのですが、若いうちからチャレンジさせてもらえる環境だったので、1年目の終わりくらいには「ウィルキンソン」の新ボトルを担当することができました。

新しいデザインボトルを手がけるとなると、新鮮さはもちろん必要なのですが、現行の「ウィルキンソン」ブランドに対するイメージからは大きく離れたものであってはダメなんです。現行のイメージを保ちつつ、新しさを取り入れることには苦労しましたね。

新しいものを生み出す過程では、まず課題を解決する方法をいくつか考えて、その中で最適なものを選び取っていくというのが一般的です。ただ、自分ひとりの力だけではクリアできないことも多くありました。この部署が出来た当初からいらっしゃる先輩方の、過去の経験からいただいたアドバイスがあったからこそ、多くの苦労を乗り越えられたんです。

また、過去から現在まで他社も含めて、たくさんのペットボトルがつくられています。単純にそれらを眺めることや、市場に行って「こんなボトルがあるんだ」「このボトルは、自動販売機にも入れることができるんだ」など、過去の知見を自分なりに学んでいきました。

そして飲料ですから、品質検証なども大事です。その調整もなかなか大変でしたね。

今回「アサヒ 十六茶」のリニューアルに携わることになったのは、自ら手を上げたことがきっかけでした。これまで炭酸飲料の容器開発に携わっていたので、非炭酸飲料の開発に挑戦してみたいと思ったんです。

機能性とデザインを両立させるというだけでも、容器開発はなかなか難しいものです。しかし最近ではそこに、環境配慮という要素も入ってくるので、以前よりシビアな開発になっていると感じています。

プラスチック容器を提供する立場としては、「人にやさしく、地球にやさしい」という取り組みは今後も強化していかなければいけないと考えています。

リニューアルの取り組みによって、デザイン要素で強度を持たせることができたため、こうした新たな発見を会社の技術として蓄積しながら、次の開発にも活かしていきたいですね。

機能、デザイン、環境──その先に目指すお客様が楽しめる容器

私にとって容器包装とは、単純な入れ物というよりも、ブランドの価値を伝えたり、価値を強化したりするものだと考えています。

商品の顔なので、棚に並んでいても最初に目に入るのはパッケージです。手に取っていただき、その上で飲んでもらわないと価値が伝わらないので、そういったトライアルを誘起するのが容器の役割です。

環境配慮の側面でも、容器包装が与える影響は大きいです。利便性が高いペットボトルは、たくさんの人が使います。それだけに、リサイクルできる容器である反面、きちんとリサイクルに取り組まなければ環境に対する負荷が大きくなります。

会社としても、持続可能な資源循環のために制定した「容器包装2030」に掲げている通り、環境配慮素材の比率向上を目指しています。具体的には、ラベルレスやシンプルエコラベルも進めてきていますが、ボトル軽量化やラベル資材の縮小まで対応できるようにしていきたいですね。実現に向けて、設計段階からケアできるよう、私たちも常日頃から意識をしています。

今後のビジョンとしては、よりお客様に共感や驚きを感じていただける容器の技術開発に携わっていけたらいいと感じています。

容器の形状によって「さらに中身が美味しくなる」というような機能を持たせるものができるといいですね。

たとえば、開封後どんなに時間が経っても、ペットボトル内の炭酸が常に新鮮な状態に保つことができたり、五感を通じて炭酸感がより促進されるような容器が実現できたらと思います。

当社には、ペットボトルを開けた時に中身が徐々にシャーベット状に凍っていき、冷たさと飲用感を楽しめる「三ツ矢サイダー」を販売できる氷点下自販機というものもあります。

通常の容器開発にとどまらず、こういった新たな価値を提供する自動販売機や、容器を使った後にもお客様が楽しめたり、リサイクルを自発的にできたりするしかけをつくっていきたいです。