トライアスロン×自動販売機──史上初のスキーム提案に至った背景とは

article image 1

九州支社では、『地域共創』の取り組みのひとつとして福岡県トライアスロン連合の地域振興の取り組みに協力し、私が主担当として携わっています。当社が事業を通じて取り組むべきマテリアリティ(重点課題領域)『健康』と『地域共創』の活動として協力できると考えたからです。

福岡にある志賀島は、若い世代の移住がすすみ、過疎化が深刻化している地域。福岡トライアスロンは、地域振興という意味も込めて年に1回、6月ごろに志賀島で開催されています。今年は新型コロナウイルスの影響で中止になってしまいましたが、本来なら今年で3年目でした。

福岡トライアスロンへの協力のきっかけは、当社の自動販売機を設置いただいている専門学校とのつながりでした。自動販売機営業の中で、専門学校の会長にお会いする機会があり、会長が福岡県トライアスロン連合の実行委員をされていると伺ったので、後日お話を聞くことになったんです。

お話の中で、トライアスロン大会の運営費用の確保に課題があることを伺いました。そこで私は、自動販売機の設置場所をトライアスロンの関係者が紹介、その設置をアサヒ飲料が担い、紹介料と設置した自動販売機の売上の数%をトライアスロン大会の運営資金として支援するといったスキームを提案しました。双方の希望を叶えるこの提案の実現に向け、2020年から取り掛かることになりました。

CSV活動と営業活動両方の側面がありますので、投資した分の収益化など採算を含めた視点が重要です。今の業務を担当してから2年経ちますが、このスキームは初めて提案したものなんです。業務を通し地域の方と交流していく中で、今回のスキームを思いつきました。

トライアスロン実行委員の方々は、さまざまな組織の要職にあることが多く、そうした方々と出会えることは、営業としてやりがいを感じます。また、相談を受ける中で、その課題にどのようにアサヒ飲料が貢献できるかを考えることもやりがいのひとつです。

仕事を進める上でのポリシーは、ただ自動販売機を設置するだけではなく、人間関係の構築を心がけています。もともとお客様と話すことが楽しくて、打ち解けるだけでなく毎回楽しみたいという想いがあるんです。

九州支社では地域のさまざまな組織と連携した取り組みが盛んで、福岡トライアスロンも九州支社の社員全員が認知しています。九州支社に着任してからCSV活動の活発さを感じていますね。たとえば、社会課題に対する取り組みのひとつとして、赤十字の献血活動に社員が協力するよう支社として積極的に促進しています。

自動販売機営業で見出した「対話」の姿勢。目の前の課題に向き合う日々

article image 2
▲売上の一部が福岡トライアスロンの運営支援金に。市内の専門学校に設置されている

入社後はグループの販売会社に出向し、自動販売機に飲料を詰めるルート担当をしていました。私の経歴として、ルート担当を8年、マネージャーを8年、支店長を4年経験しました。

ルート担当では、限られた時間の中でいかに売るかという採算性の部分を意識していました。また、自動販売機1台を通してお客様と対話できる点も意識して仕事をしていました。

この時期はお客様が困っているから助けたいという考えよりも、毎月の予算達成のためにお客様に助けてもらっている方が多かったかもしれないです(笑)。今思えば、お客様との関係を築いてきたからこそ、結果的に助けていただけたのかもしれないですね。

マネージャーになってからも、ルート担当の時と同じ支店で仕事していましたが、部下や上司である支店長もいる中で、中間的な立場になりました。今までは自分ひとりでできたものを、部下に教えなければいけないことも増えたんです。

当時は教え方や伝え方、接し方の面でとても苦労しましたね。ただ、前向きな性格だからこそ乗り越えられたこともいくつかあり、「あなただからできるんだよ」と言われたこともありました。

また26歳でマネージャーになったので、年上の部下に対する伝え方の部分で、辛さを感じることも多かったです。失敗を繰り返しながら、改善を重ねていきました。

さらに、部下とお客様のところへ訪問することもありました。お客様はお会いしたことのない方ばかり。そのお客様とどうしたら本音で対話できるようになれるか、考えながらやっていました。当時はまだ事業を通じた社会課題へのアプローチは頭に入っていなかったです。

その後、量販店の担当になり初めて店頭販売チャネルの営業経験をしました。そこで1年経験を積んだ後、やはり自動販売機に関する業務経験を生かしたいと思い、今の担当になりました。

私は20年という月日の中で自動販売機営業の専門的な知識と経験を得ることができましたが、反面、若い時からさまざまな領域の業務を担当していたら、その経験が今の業務に生きているのではないかと思うこともあります。

CSVも営業も「課題解決」がカギ──取り組んで見つけた共通項とは

article image 3
▲研究材料として商品提供を行う九州産業大学の研究室にて

どのお客様を訪問しても「アサヒ飲料」という名前が知られているのは、当社の強みだと思います。地域連携の際も、安心感をもっていただいていると感じますね。

今でこそ「三ツ矢サイダー」や「ウィルキンソン タンサン」などアサヒ飲料の看板商品が知られていますが、昔は商品から社名がイメージされることが少なかったと思います。「アサヒ飲料といえばこの商品だよね」という言葉をお客様からいただいた時、この強みを実感します。

福岡トライアスロンをサポートするスキームを当社が担う意義について、お客様にご理解いただくために丁寧に説明をする場面が多かったんです。

でも、やるべきことは通常の営業と変わりません。最終的にはアサヒの自動販売機を設置し、お客様がかかえている課題やニーズに対して最大限サポートすることなので、通常の営業活動と同じだと考えています。

お客様先には何度も足を運びますので、お客様のニーズが何かを聞き出し、そこに合った提案をすることは常に意識してきました。当社はトライアスロンの大会スポンサーでは無く、後方支援という形を取っています。

志賀島の地域振興についてもメーカーとして直接取り組んでいるわけではありませんが、お客様が取り組んでいることに、アサヒ飲料がサポートできるかを判断しています。

たとえば、トライアスロンの実行委員に、スポーツ科学について研究をする九州産業大学の先生がいらっしゃいます。九州産業大学が新設した運動生理学実験室では、常圧低酸素と高圧高酸素の特殊環境下で、乳酸菌飲料の摂取がスポーツ選手のトレーンング効果や回復に与える影響について研究されています。わが社では、研究試料として当社の乳酸菌飲料の提供を始めました。

トライアスロンの実行委員の方が困っていることに、アサヒ飲料が応えたという形です。この取り組みをきっかけに、キャンパス内の自動販売機設置にもつながりました。

当社が持っているものを提供しつつも、ビジネスチャンスは逃さない点は、日ごろから意識しています。

「ゼロからイチにする」自分の強みを、全国規模の課題解決で発揮したい

article image 4
▲大切なのはお客様の声を聞くこと。九州産業大学にて中尾 武平講師

私の当面の関心事は、地域振興の役割も担う福岡トライアスロン大会の開催です。コロナ禍で来年以降は未定ですが、開催したらボランティアで参加しようと考えています。支社の同僚も含め、福岡トライアスロンを応援するという社員は増えているので、今後も自動販売機を通じたサポートは続けていきたいです。

この取り組みを通じて、実行委員の方々が「アサヒ飲料はこんなにやってくれているから、自分たちもアサヒに返さなきゃダメだよね」とおっしゃってくださいました。そういった関係性を続けたいです。そのためには、当社から期待に応えていくべきだと思います。

お客様の課題解決につながる良い提案をしても、自動販売機の設置は採算性を考えると長続きしないこともあります。でも今の取り組みを約1年続けてきて、いろいろなお客様と出会い、上司も「これもっとやんなきゃダメだね」と熱が入っているんです。社内外の皆さんが応援してくれているのはすごく嬉しいですね。 

その他の取り組みとして障がい者の団体さんとの連携も進めています。その方達もトライアスロンに参加できる環境づくりについて実行委員の方とお話をしています。

自分の業務を通じて、さまざまな組織の方がそれぞれの課題解決に向けてつながっていくこともやりがいのひとつなので、今後もサポートしていきたいです。

将来的には本社の自動販売機の開拓に関する部門でチャレンジしたいと思っています。現在は福岡県を担当していますが、全国各地を担当したいと思っているんです。今までの経験を生かして、他の県ならどういった提案ができるか実践してみたいです。

自分のタイプとしてはゼロをイチにする活動に強みがあると思っています。全国規模の大型案件で、ゼロからイチにするスキームを提案し、最終的に成約につなげる。そういう仕事をしたいです。それが、お客様の求めているものや社会課題への貢献につながれば、より嬉しいですね。