物流の新たなカタチを生み出す、これからのSCM

2020年現在、私はSCM本部SCM企画部に所属しています。この部門はサプライチェーンの中で原材料購買による調達、生産、物流などのトータルコストを管理、一貫システムの構築および中長期的なSCM(サプライチェーンマネジメント)戦略に関わっています。

その上で、コスト削減と安定供給をミッションとして掲げながら、製造構造の体制作りや製品をどう作るのか、そしてそれをどう運ぶのかという部分を企画・推進しています。

また、製品を配送するときにはトラックを多く使うこともあり、環境負荷低減という観点でいかにCO2を減らしていくかもミッションのひとつです。アサヒ飲料はマテリアリティ(重点課題領域)のひとつに『環境』を掲げていますが、私たちの業務は『環境』の課題解決に取り組むCSV活動とは切っても切れない関係性です。

調達部門ですと、メーカーの責任としてペットボトルのラベルレス化やカートンの素材変更などの環境負荷低減に取り組んでいます。特に飲料メーカーは使う資材も多いので、小さな取り組みが大きな効果になるという意味では、とても意義のあることだと思って活動をしています。

CSV活動に通じる取り組みのひとつとして、私は日清食品さんと日本通運さんとの共同配送を推進しています。この取り組みは日清食品さんとアサヒ飲料の製品を同じ車両に混載し、まとめて輸送することで、トラックの台数が減り、CO2排出量の削減とドライバー不足を改善できるというメリットがあります。

アサヒ飲料の中でも新しい物流の取り組みであり、物流の安定供給を推進している私が担当をしているのです。

物流の仕事を通じて──入社当時から思い描いていたSCMの仕事を実現

▲当グループ工場での共同配送積載テストを見守る3社の担当者

アサヒ飲料に入社した理由のひとつとして、商品自体に愛着を持っていたことがあります。当時、メーカーを目指す中で、自分が愛着を持てる商品を扱っていることが第一条件にありました。私は昔から「三ツ矢サイダー」が好きだったので、アサヒ飲料はそこが合致したんです。

また、その当時、アサヒ飲料は飲料メーカーの中でも売り上げ規模でトップを競う順位ではありませんでしたが、採用活動の中で”上を目指して挑戦していく”という話を聞いたんです。そういう会社に入れたら面白そうだと思いましたし、自分ができる幅も広がるのではないかなという期待もあり、入社を決意しました。

入社後は、営業で小売店の店舗担当になり、1年間スーパーの商品の陳列や商品展開などの業務を行っていました。

そして2年目からは、物流部門に配属され、需給担当になりました。具体的な業務としては、工場で製造した物を消費地の近くにある別の工場や物流センターまで一度運んで保管、そこからお客様の元に運ぶまでの一連の流れを適切に管理するというスキームで進めます。

また、いろいろな製品を作っているので、それらの製品をローコストで適切な拠点にストックし、配送しながら、お客様のニーズに百点満点で応えられるようにすることが重要です。

特に飲料は6月から8月の夏場が需要の最盛期ですから、その時期に出荷が集中します。そのため、最盛期に向けて数ヶ月前から製品を作り、ストックするんです。物流部門では、そうした需要の変化を見ながら、製造した製品をどこで保管し、いつ配送するのかなど細かな調整を日々行っています。生産のタイミングも物流と大きく関連してくるので、生産部門とも調整をしながら進めているのです。

需給担当を3年経験し、その後は物流企画担当となりました。そして、2020年1月に新しくSCM本部とSCM企画部が新設され異動となりました。

SCM企画部は、原材料を調達し、工場で製造して、運ぶという一連の流れをコストと安定供給を考慮して管理していく部門です。会社全体で組織の変更があり新設されたのですが、SCM企画部ができたことで、それまであった生産部門と物流部門の距離が近くなったと思います。

SCMの仕事は、アサヒ飲料に入社したときから志望していました。大学ではマネージメントを勉強していて、スポーツの野球球団運営のお手伝いもしていたんです。そこで、チームを支える裏方の仕事の面白さを学べていたので、そういった支える側に回りたいと考えていました。

物流部門にいた時から、お客様へのお届けだけでなく、生産に関わるもう一段前の工程を理解していくのは大事だなと思っていましたし、全体的な管理をしたいという気持ちも以前から会社には伝えていたので、それがいいタイミングで重なり異動することになりました。

継続的に取り組むために、経験を生かして奔走

▲関東-九州間における共同輸送についての輸送スキームと混載テストの様子

2019年、環境への負荷低減による持続可能な社会の実現を目指す、日清食品さんと日本通運さんとの取り組みが始動しました。

もともと同じアサヒグループのアサヒビールとは、共同配送をしていたのですが、両社は同様に夏場に最盛期を迎えます。そのため、夏場はトラックが足りなくなる課題がありました。

そこで、異業種と組むことで最盛期の違いや荷物の形がいいギャップとなり、課題を解決できるのではないかという考えが生まれました。中でも日清食品さんは、比較的軽いカップラーメンを扱っていて、冬場に最盛期を迎えることから、お互いのニーズの合致が浮かび上がりました。

まず、当社から働きかけ、データを共有することから始まりました。話を聞く中で、日清食品さんも関東から九州へは当社と同じ航路を使っていることがわかり、本格的に話が展開することになったんです。

しかし、使うシステムも違えば、荷物の下に敷くパレットの形式も違うので、”組み合わせる”中にも課題が詰まっていて、実現までに1年近くを要しました。

特に、一番難しかったのは継続的に取り組むことです。オペレーションが煩雑になったり、実際の作業に手間がかかったりすると続かないですから、いかに継続できる形にするかを意識していました。パレットの大きさや荷物の上げ下ろしの手間、作業者の手配などもオペレーションに無理がない、かつ無駄のない形に落とし込むのは難しかったですね。

たとえば飲料の場合、サイズが違うさまざまな製品をトラックに積むので、荷物を積んだ後の高さが異なります。そうすると、日清食品さんのパレットを上に積んだときに不安定になるので、なるべく高さを合わせ、無理のない積み方になるようにしていました。

もちろん、当社だけでなく日清食品さんや日本通運さんにもなるべくフレキシブルに対応していただけるように、ご協力いただきました。

これまでの経歴から実際の作業内容はイメージできましたし、実務担当者とも打ち合わせを重ねることで無理なくオペレーションの展開もでき、これまでの経験が生かせたと思っています。

さらに、コスト面も意識する必要がありました。共同配送において現在と同等かそれ以上のコストがかかると、継続性がかけてしまいます。なので、3社がコスト的なメリットも得られるようにすることを意識していました。

環境への負荷低減、ドライバー不足緩和、そしてオペレーション改善の3つが重なって、今回無事に運用を開始することになりました。

今回は関東から九州というルートでしたが、規模に比例してメリットが出てくるので、関西や北海道など他のルートでの展開も視野に入れています。取り組みのはじめに失敗してしまうと、そこで全部終わってしまいますから、最初の取り掛かりとしてはうまくいったと思います。

“支える”仕事を通じて描くのは、さらなる革新的活動

私自身としては、この取り組みに対して企業活動の中の”支える”という部分にもフィーチャーして欲しいという想いがありました。

物流業務は何か改善をして効果が出ても、周りの人には伝わりにくいです。しかし、今回の取り組みは社内外問わずわかりやすい取り組みだと構想段階から考えていたので、モチベーションを高く保てていました。

実際、日清食品さんや日本通運さんに加え、当社の広報や営業担当ともコミュニケーションを取り、巻き込みながら達成できたので自分にとってもいい経験でした。

また、営業担当者からも得意先の方から今回の取り組みを聞かれたと聞きますし、同業他社からの問い合わせもありました。異業種同士の混載はいろいろな企業が考えているものの、広く認知された例が無かったため、興味関心が大きいのだと思います。そういう意味でも、今回の取り組みの意義は大きいと感じていますね。

今後は、配送同様に繁忙期と閑散期のギャップがある保管部分でも取り組みを進めていきたいと思っています。

アサヒ飲料では最盛期の夏場に向けて在庫を作るので、それ以降は倉庫にスペースが余ってしまいます。そこで、年末に向けて在庫が増えていく日清食品さんにそのスペースを使っていただくことで、双方の倉庫へかかるコストを削減できます。倉庫としても収入が得られるので、3社にメリットがあるんです。

また、中長期的な目線で生産から物流のしくみを作る仕事にやりがいを感じています。生産に関わる既存のしくみに大きく手を加えると、コスト面や工程への影響も大きいため、新たなしくみの付加や小さな調整をすることで、関連部門の理解を獲得しながら改善につなげていくようにしています。その結果として、全社を支える役割として貢献できたらいいなと思っています。

当社では、どこで生産してどう配送するのかは、合理的な計算で決められています。しかし、この計算を現場で実行できるかは別物なので、その理解を得るのが難しいんです。「こうした方がコストが安いから」というのは簡単なのですが、工場や出荷現場ごとに様々な条件の違いがあるので、そこをどう調整するかに醍醐味があると思います。

この仕事は、担当者でも担当する業務の規模感や裁量が大きいです。ひとつの判断、決定で何億円規模の影響が生じることがありますから。もちろん、お金がすべてではありませんが、結果として見える部分がやりがいにつながりますね。

そして、私たちは商品一箱を売ることはできませんが、その一箱をどう作るのかという部分で貢献できる部門です。やはり、そういう部分が、私にとっての働く魅力です。