先行事例のない中、インターネット広告の価値創造に注力

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▲Appier シニア・ディレクター 小山拓哉

2009年に大学を卒業して楽天に入社し、2014年の退社までデジタルマーケティング業務に携わっていました。その間、インターネット広告の取扱高がはじめて新聞広告を逆転する勢いの中にあって、いろいろな壁を経験しました。

当時はまだ広告手法が確立されていなかったインターネット業界において、「何ができるのか」「何が求められているのか」「インターネットだからこそできる価値はなんなのか」を追求していました。

最も大きな壁は、先行事例のない中で、広告代理店、自動車メーカー、化粧品ブランドなどのご担当者様とともに、新しい価値を創造し、新たなKPI(Key Performance Indicator:企業目標の達成度を評価するための主要業績評価指標)をつくりあげることでした。

楽天には、幸いにも若手でも様々なプロジェクトに携わらせてもらえる風土があったため、入社以来5年間でデジタルマーケティングに関してはかなり経験を積むことができました。

しかし、将来のことを考えるとこのままでいいのかと悩んでいたんです。

もともと私は北海道出身なので、将来は地元に戻る可能性もあると考えていました。当時私が所属していた部署は地方に拠点がありませんでしたし、北海道に関しては広告費もあまり多くはありません。そのため、地元に戻った際の仕事を考えた時に、自分でビジネスをスタートできるだけの知識・経験が必要だと感じていました。

楽天の中で新規プロジェクト立ち上げの動きもあったのですが、将来的に楽天の看板を背負ってビジネスをやるのと、ゼロからビジネスをつくりあげていくのでは明らかに難易度が異なります。看板などといった守られたものがない状況でビジネスをつくりあげていくことが「自分自身に力をつける」近道だと思ったんです。Appierへの入社が新たなチャレンジに踏み出すきっかけとなりました。

自分事としてノウハウが蓄積できるAppierに転職

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▲日本オフィスのメンバーと引っ越し準備

将来的に起業できるだけのノウハウを蓄積するために、当時はコンサルティング会社に転職しようかとも考えたのですが、携われる業種もわからず、責任のある仕事を任せられるのには複数年かかると聞いていました。

そのため、コンサルティングも貴重な経験ですが、事業会社であれば自分事としてすぐにノウハウを蓄積できると考え、2014年10月Appierに転職しました。きっかけは、Appierからの直接のコンタクトです。当時、Appierは設立して日も浅く、もちろん日本語サイトもなかったため名前を聞いたことがありませんでした。

英語が話せないという不安はありましたが、「AIを活用したプロダクトを日本で展開していきたい」という会社のミッションと、「将来に備えて自分自身に力をつけておきたい」という思いが合致して入社を決意しました。

また、世界的に有名な投資機関であるSequoia Capital(セコイア・キャピタル)様よりちょうど出資をいただくタイミングでしたので、このタイミングで入社すれば、経験の豊富なベンチャー・キャピタルとともに、スタートアップの立ち上げに携われる良い機会になると感じたことも大きな要因でした。

当時Appierの全社員はグローバルで30名程度、日本オフィスでは営業ディレクターとして2番目の入社でした。ですから、やるべきことはたくさんありました。特に覚えていることとしては、最初にゴミ箱、その後ホワイトボードを自分で買ったことです。また、請求書を自分で作成して投函するなど、いままでは未経験のことでしたし、以前の職場は恵まれた環境だったことを実感しました。

当時は「ビッグデータ」がバズワードで、AIはようやく話題に上り始めた頃。AIは人間より優れているのか、AppierのAIがどれだけ優れているのか当時はわかりませんでした。しかし、自社にAIの専門家がいるため、少なくともサービスを向上させ続けることは出来ると考え、効果が出るまでコミットし続けるしかないと決意したんです。

一刻も早く日本でビジネスと立ち上げるのが使命

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▲新製品発表会で最高売上責任者ファブリツィオと

Appierに入社した際はすごくワクワクしたというよりも、一刻も早く「日本でビジネスを立ち上げなければならない」というプレッシャーを感じていました。最初に取り組んだのは、どのようなお客様にソリューションを提供するのか業種を絞ることでした。AIの効果が出る業種を見つけることにも大変苦労しました。

当時は広告の自動最適化やパソコンやスマートフォンをまたいで広告配信をするCrossXという製品のみでした。営業をするうえでお客様に興味は持っていただけるのですが、当時はまだ新しすぎるソリューションであり、日本ではほとんど知られていませんでした。AIという形がないサービスの説明が難しいことを実感しました。

立ち上げ当時は売上が目標にまったく届かない期間もあり、厳しい試練が続きました。

AIの効果が出はじめたのはアプリのプロモーションのお客様に絞り込むと決めた頃。2〜3カ月から1日10件、100件とお客様のアプリダウンロードに貢献することができ、売上もぐんぐん伸びていったのです。もともと、アプリインストールを訴求するプロモーションであれば、効果が出るのではないかと仮説がありましたが、この経験を機に確信に変わり、成長の道筋が見えてきました。

アプリでは、表示された広告をクリックするとアプリストアに遷移し、インストールするかしないか、課金をするかしないか、ユーザー行動のすべてがWeb上で完結します。いま考えると1日に貯まるユーザー行動のデータが多く、AIとしては学習しやすかったこと、当時はアプリのサービス自体が出てきたばかりで広告に関する同業他社様がそこまで多くなかったことが成功要因でした。

諦めずにAIを一緒に成長させていく人材を求む

最近は既存のマーケティング施策と、AIに期待する効果・結果は異なっていることをよく感じています。

広告の場合も、ただ単に効果が良いという結果だけではなく、AIには人が考えつかないような鉱脈を掘り当てることが求められており、今後はAIの文脈に沿ったKPI設計が必要になってきます。

今はまだ既存のマーケティング施策の効率化部分を主にAIが担っていますが、より本質的にお客様の課題感を解決できるパートナーとなっていきたいと考えています。一方、AIへの期待は大きいですが、魔法のようにすべてが叶えられる訳ではありません。期待値は大きいですが、「いま何ができて、何ができないか」を予めご説明し、自社データの整理などをお客様自身にご協力いただくことも大切だと感じています。

ここにきて、Appierの認知度は高まってきました。今後はAIができることはAIに任せ、人間は人間がすべきことに集中できる環境を整えていくお手伝いをしていきます。

この分野で成長するには、マーケットニーズはもちろんのこと、日々行なわれている技術革新に対応し、実際に課題解決ができるプロダクトを提供することが重要です。加えて、製品を市場に出して終わりではなく、お客様にしっかり使い続けていただくことが大切です。スピードを保ちながら柔軟にプロダクト開発を進めることが求められています。

スタートアップ企業は自社ビジネスの立ち上げに目がいきがちです。短期的には良いかもしれませんが、長期的にはそれでは不十分であり、お客様にメリットのある製品やサービスを提供し、情報発信をし続けることが大切です。

私は何事も「諦めないことが大切」だと常々感じており、入社当時に苦しいからと諦めず地道に努力をしてきたからこそ、さまざまな経験を得ることができていると感じています。諦めていたら今日のような、勢いのあるAppierで働くことができなかったからです。

今後もAIをより広めていき、実際に使っていただくことを通じて社会に貢献し、「AI = Appier」というようなイメージを持っていただける会社にしたいと思います。そのためにも、日本でAIを一緒に成長させていく人材が必要です。環境の変化に対応できる柔軟性と目標に対するコミットメント、そしてチャレンジ精神が旺盛な人材を求めています!