メールマーケティング:現状の課題とAIがつくる新しい手法

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▲Appierのカスタマーサクセスマネージャー 小林 慎

ここ数年、企業のマーケティング活動は電子メールのような「旧式」のツール活用から、ソーシャルメディアなどのデジタルチャネルの活用へシフトしてきました。

しかし今、人工知能(AI)を活用することで、メールマーケティングが有望なマーケティングツールとして見直されはじめています。

一般的に、メールマーケティングの成果を上げるには、割引クーポンの提供や送信頻度の調整などが解決策だと考えられていますが、これらはマーケターのこれまでの経験や感覚によるものが多く、成果を検証するためには数多くの試行錯誤が必要です。

そのためメールマーケティングだけでは新規ユーザーの獲得とその維持が難しく、かつメールの開封率やCTR(クリック率)が低いと考えられがちです。

そこで、Appierでは「AIを利用すれば、メールマーケティングにおける最も厄介な課題のいくつかを即座に解決することができるのでは?」と考えました。

そして、既存顧客に対する理解を深めることによって、その情報を基に膨大なデータのなかから類似顧客を見つけたい、さらに、綿密にセグメンテーションを行なうことで、顧客の関心や行動を予測したい。

このような想いから、AppierはAI搭載のプロダクトを開発しました。

AIを活用したセグメンテーションによる開封率の改善

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▲ディープラーニングで読者層のセグメント精度を向上

企業からのメールに読者が興味を示さないのは、なぜでしょうか?

デジタルビジネスのコンサルティング会社であるEconsultancyによると、2017年にアジア太平洋地域においてメールの宛先以外をパーソナライズしたマーケターはわずか21%で、そのうち76%がメールマーケティングのパーソナライゼーションの強化に意欲的でした。

さらに、受信者名と他のデータポイントを両方利用することで、開封率が2倍になる可能性があることも報告しました。

AIを使うと、企業はユーザーが自社のウェブサイト内で閲覧するコンテンツをはじめ、あらゆるユーザーデータの分析が可能です。

ユーザーが最も頻繁に使用するキーワードを抽出してオーディエンスの最大の関心を特定することもできます。

このデータを使えば、マーケターは精度の高いセグメントを作成でき、オーディエンスの好みやニーズにより近いコンテンツの開発や特典の提供が可能になります。

さらに、AIであればキーワードをいくつでも特定でき、スマホやタブレット、PCを横断してオーディエンスとエンゲージメントを図ることができます。

別の方法としては、過去のキャンペーンデータをAIを使って分析することでオーディエンスの特性を見極めます。

このデータを使って新しいキャンペーンに高い反応を示しそうなオーディエンスを予測し、それに応じてメールをカスタマイズすることができます。

たとえば、大手オンライン出版社は、すべての読者に同じコンテンツのメールを発信していました。

コンテンツや件名に関連性やおもしろ味がないために、受信者の関心を引けず、高い開封率やCTRを得られませんでした。

その後、この出版社はAppierが開発したAIを導入し、 ディープラーニングを活用して読者のプロファイルとオンライン行動を結び付け、年齢や関心といった主要属性を基にプロファイルのセグメンテーションを実施しました。

そして、正確な読者層別メールリストを作成し、適切なマーケティングコンテンツを配信することで、開封率が42%、CTRが107%も増加するという結果を得られました。

このオンライン出版社のマーケターはこの成果を踏まえ、精度の高いオーディエンスセグメントと、読者の興味に合致したコンテンツを提供することの重要性を実感してくれました。

読者の視点に立てば、自分が興味のある記事やコラムを送ってくれれば、閲読する意欲も高まりますし、この出版社のファンになってくれる可能性も高まります。

一方で、開封率やCTRを増加させるだけではなく、既存顧客の離脱を防ぎつつ、既存顧客に「類似」する顧客を見つけ出し、より多くのオーディエンスを獲得していくためにはどうすれば良いのでしょうか。

類似オーディエンスの獲得によるユーザーベースの拡大

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▲読者の興味に合わせたコンテンツを提示して、離脱を防ぐ

マーケティングや経営の目的・目標に合致したAIモデルを使うことで、ユーザーのオンライン行動から収集したデータの分析、既存顧客に「類似」する顧客の発見、ターゲットを絞った広告の開発、さらには、より広いオーディエンスにリーチするためのキャンペーンを打つこともできます。

マーケターは不特定多数を対象とするコンバージョンレートの低いメール配信を減らすことができるだけでなく、メールを正確なターゲティングツールとして使用できるようになります。

Appierが開発したAI搭載のプラットフォーム「アイソン」は、行動パターンに基づいて、離脱する可能性があるユーザーを特定することができます。

先ほどのオンライン出版社を例にとると、購読者が離脱の兆しを見せたとしても、ディスカウントクーポンといった購読者として留まるきっかけを与えれば、離脱を防げる可能性が高まります。

こうした予兆を察知した際、このオンライン出版社は次のようなリエンゲージメント戦略を計画し、実行に移しました。

①「離脱する可能性がある購読者」を対象とするターゲットメールを作成し、共通点のある顧客層にセグメンテーションを行なう。

②当該の購読者に限定したメッセージ、割引、特典などを提供する。

③購読者が行動に移しやすいフォーマットやリンクを使用する。

この出版社は、これらの施策の結果、アイソン導入以前に比べて離脱率が低下し、読者数を維持することができました。

さらにこの出版社はアイソンによって特定されたオーディエンスにリーチすることで、1ドルあたり12.2ドルの収益を生み出しました。購読と購入は、KPIに比べて404%増加しました。

アジアのAI活用によるマーケティング成功事例を日本のお客様に応用する

上記のオンライン出版社の例を読めば、AIを活用することで従来のメールによるマーケティングを大幅に変革できることがわかると思います。

AppierのAIプラットフォームを使えば、以下のことが簡単に実現できます。

1) 顧客の行動傾向や関心を特定する

2) そのデータを使って顧客セグメントをつくる

3) 顧客セグメントを徹底的に理解し、彼らにマッチした、カスタマイズしたコンテンツを作成する

4) このコンテンツを顧客が情報を受け取るベストな時間、ベストなデバイスに送る

Appierは、アジア12カ国に14の拠点があり、あらゆる地域の成功事例を共有しています。アジアは多様性にあふれていますので、ひとつの成功事例を他でそのまま使えるわけではありません。

自分たちのようなカスタマーサクセスマネジャーが、事例で培われた技術やエンジニアチームの工夫点を理解するように努力しています。

Appierの強みは、データサイエンスや、ディープラーニングの専門家がお客様の課題解決に直結する技術を迅速に開発し、提供できることです。

AI技術は日々進化しているため、エンジニアはそのトレンドを把握し、お客様向けのソリューションにつくり上げます。

私の理想は、当社のモットーである「Make AI easy for Business」を実現することです。

導入していただいたお客様のデータの統合、AIによる分析の期間をさらに短縮することで、ビジネスに直結するインサイトをより早くお届けしたいです。

このためには、AIの精度を高め、操作画面のUIなどをより使いやすく改良していくことが必要です。「AIならAppier」と言われることが目標です。