哲学科からITエンジニアへ──技術者として考えて手を動かしたい

頭を使って考えることが好きだ。一貫したこの想いが、橋井 国明のキャリアをつくりあげてきました。

橋井 「大学時代は文学部哲学科を専攻し、そこからITエンジニアを目指して就職活動をしました。哲学を選んだ理由は、頭を使うことが好きだったからです。

哲学とプログラミングを並べると一見離れた領域のように見えるかもしれませんが、卒業した研究室にはSEやプログラマーになった仲間がいるんですよ。じっくり考えて答えを導いていくプロセスが共通しているんだと思います」

哲学科卒業後の一般的な進路として法律系業界などが挙げられますが、橋井はその道を選びませんでした。明確な理由はなく、"肌に合わない"感覚を優先したからです。 

橋井 「進路の判断は最終的に好き嫌いだと思います。学生のころから漠然と論理の世界のなかで生きたいと思っており、法曹関係の仕事は私が思い描くキャリアとなにかが違いました。 就職活動中に試した適性検査結果でSEが上位に入っていたことがきっかけで、エンジニアのキャリアや就職先を調べ始めました。振り返ってみれば、私の願いに一番近いのは技術者だったのかもしれません」

旭化成アミダスへの入社を決めた理由は、プログラミング未経験かつ文系卒の橋井にとって、ある人材育成指針が魅力的だったからです。

橋井 「『FIT Career』という教育計画があることが、入社の決め手となりました。旭化成アミダスには、3年間で未経験者がITエンジニアとしての技術を習得するためのプランが組まれています。私は期限が定められていたほうがものごとに集中できるタイプなので、3年という期間はプレッシャーよりも指標になりました。『FIT Career』を活かせば、技術者として着実に歩めるイメージをつかめたんです」

苦手意識を克服しながら実践と学習を繰り返してソフトウェア開発へ

橋井が初めて実戦として開発業務を経験したのは、入社研修後の社内用システムの開発です。『FIT Career』のメンバーが使うシステムを、新人メンバー数人で改善していくプロジェクトに携わりました。

橋井 「定められた設計と仕様書をもとに、既存システムに機能追加や改修を加えました。新人教育目的でもある一方、実用性もあるプロジェクトです」

しかし、当時の橋井は開発に関してはほとんど未経験。基礎となるアルゴリズムの考え方を学ぶところからのスタートです。入社後まもなくは、ぬぐえない苦手意識を抱えていました。 

橋井 「プログラミング自体、そんなに得意ではありませんでした。それでも勉強して、少しずつ克服していったんです。先輩の指導を聞きながら手を動かすうちに、『できない』が『できる』になっていきました。

めげなかったのは、やはり頭を使う仕事が楽しかったからかもしれません。哲学から論理学が生まれ、やがてコンピューターサイエンスからプログラミングと発展してきたことを考えてみれば、大学の専攻と地続きの領域でもあります。

哲学とプログラミングの大きな違いは、後者は答えが明確にあること。顧客の要望を叶えるというゴールが見えている点で、わかりやすいです」

その年の夏からは旭化成グループ事業会社の情報システム部門に異動し、インフラやセキュリティ関連業務を担当することに。開発とはやや遠い領域での挑戦がスタートしました。

橋井 「旭化成アミダス本社と離れることで環境や文化が変わったため、異動当初は不安も大きくありました。しかし、ここで出会ったチームの方々がとても気さくな方々で、皆さんにかわいがってもらいました。

チームの大半を占める50代の先輩方から教えてもらったのは、社会人や会社とはどういうものなのか、ということ。仕事を共にするだけでなく、ご飯を食べに行ったり、相談を聞いてもらったりしました」

ここで過ごした2年間を経て、橋井は自分のやりたいこととあらためて向き合うことができました。パソコン管理やセキュリティを担当したからこそ、やはりソフトウェア開発に携わりたいという想いが強まったのです。橋井はキャリア希望を出し、3年目に再びソフトウェア開発の業務に戻りました。

念願のソフトウェア開発は自身の理解と学習を礎に築いたキャリア

以降、橋井はIT推進部のソフトウェア開発業務に携わり、技術面でチームのリードを取っています。ウェブ系のシステムからローカルで動く小さなアプリケーションまで、会社の業務効率化に役立つツール開発がメインの業務です。

橋井 「ソフトウェア開発にも情報システム部門で働いていたときの知識が役立っています。旭化成内のネットワーク構成やパソコンのインフラ構成などを熟知しているおかげで、スムーズに対応できることが多いです。 

希望通りソフトウェア開発部門へ異動することができたのは、社内の勉強会に積極的に参加していたおかげかもしれません。というのも、情報システム部門の仕事だけで満足して、開発スキルをまったく伸ばしていなかったとしたら、いくら異動希望が出たとしてもそう簡単には判断できないでしょうから……。

私はプログラミングが本当に好きで、開発の知識を身につけたいという意欲がありました。その意欲を満たす機会が会社から提供されていたのは、とてもありがたかったです」

数ある社内の講座を受けてきたなかでも、特に橋井の仕事に影響を与えた講座は、コーディングの心構えを教えるものでした。 

橋井 「入社1年目に参加した講座で出会った『コードを美しく書く』という考え方に、私は感動しました。コーディングの奥深さを知ってから、より一層この仕事が好きになりました。

『コードは一生涯サポートするつもりで書こう』。これも講座で学んだ心がけです。ネットで調べたサンプルコードをコピーして使うのは簡単なのですが、私は必ずそのコードの意味を自分で理解して用いることを意識しています。自分の書いたコードに責任を持つことが、私の信念です」 

地道な努力でこれからも専門性を高めていきたい──心から楽しめる仕事

現在、橋井は社内システムの保守と運用の主担当を担い、会社の基盤を支えています。華々しい成果が出る業務ではありませんが、新しい技術を取り入れながらも大きなトラブルなく運用を成功させていることが、橋井の自信につながっています。

橋井 「二次リリースから学びを重ねて取り組んだ自社システムは、手ごたえを感じた仕事のひとつです。メンテナンスやユーザーさんからの改修要望などに答える日々は、地味ながらやりがいを感じます。 コードを書いているときは、いつでも楽しいですし、製品が出来上がっていくプロセスを見ているのも好きですね。苦労を重ねてモノがひとつずつ完成していく様子を見るのが、とてもうれしいんです」

そんな橋井が次のステップの課題として見据えているのは、人材教育です。IT推進部では、OJTでメンバーを育成する風土はあるものの、細かな技術を伝えていくためにはさらなるケアが必要だと橋井は考えています。

橋井 「『FIT Career』の枠組みに頼るだけでなく、チーム内でも後輩育成を徹底していきたいです。勉強会はこれまでも実施していましたが、これからは後輩教育という観点でも進めていきたいですね。そこでは説明をわかりやすく、アウトプットをより意識的に行っていくことが今後の目標です。もちろん自分自身のスキルアップも続けていきたいと思っています」

これからもひとりのソフトウェア開発者として専門性を高め、同時に社内の後輩たちに価値をもたらしたいと願う橋井。その根幹には、常に答えのために考え抜き、丁寧に取り組む誠意と、それを楽しむ純粋な心がありました。