社外で貴重な経験をこれまでしてきた。だからこそそれを活かしていく
──社内でも珍しい経歴やご経験をお持ちと聞いておりますが、入社に至るまでを教えてください。
大学、そして大学院では数学を専門的に学んでおりました。そこでは主に確率論といわれる分野を専攻しており、大学卒業時には、日ごろのゼミでの取り組みや学びが評価され、「確率論とその応用」というテーマで所属していた大学から数物会賞といわれる賞をいただくことができました。
「なぜ数学を専攻したのか?」とよく聞かれるのですが、きっかけは中学、高校時代の試験で数学の点数が高かったため、その得意な学問に飛び込んでみようというくらいのものでしたね。ただ実際その世界に入ってみると、答えは一つしかないということに対し、そこに至るまでのパターンが複数あるおもしろさや、解答に至るまでは非常に苦しいものの、それを解ききったときのまるで高い山を登り切ったという達成感を味わえることが多くあり、自身にとって非常に良い学問を専攻したと思っています。
大学院を卒業後は、同級生が金融系や教育の道に進むことが多い中、漠然と何かを作る世界へ行きたいという感情が心の中にあり、数学のバックグラウンドも活かせると感じたため大手SIerへ入社しました。
そこではIaaS(Infrastrucure as a Service)関連の開発や運営管理業務にインフラエンジニアとして従事していました。そこでの業務にやりがいは感じていたものの、より数学的な知識を活かせるデータ分析に関われる仕事がしたいという思いが生まれ、よりデータ分析に強みのあるSIerへ転職をすることにしました。
2社目へ転職後は希望通りに顧客向けのデータ分析に携われることになり、会計業務効率化に向けた自然言語処理技術の活用および機械学習モデルの開発や、そのデータ分析結果を表示するアプリ開発を担当することができました。
また別のプロジェクトで担当させていただいたお客様と一緒に、データを活用して行政課題の解決に向けたデジタルサービスの提案を行うためにエンジニアやプランナーがそれぞれの技術やアイデアを持ち寄りアプリケーションなどの開発を行い、成果を競う開発イベントである「都知事杯オープンデータハッカソン2021」に出場し所属チームが最優秀賞を受賞したこともありました。とてもいい経験をさせてもらったと思います。
SIerを経験したからこそ感じる、アルプスアルパインで働くおもしろさ
──入社理由と現在の業務を教えてください。
2社目を経験後、また別の場所でチャレンジをしてみたいとの思いが生まれ、アルプスアルパインに入社しました。事業会社で働くことで、分析技術の向上に加えて、ビジネスの成長へ直接的に貢献できるようなデータサイエンティストになれると思ったこともあります。
実は会社のことを前から知っていたわけではないのですが、転職活動を通じて誰もが使っているような身近な製品に搭載していることもわかり、強く興味を抱いたことを覚えています。入社面接を通して非常に私の経験を評価いただいたとも感じ入社を決めました。
私が現在所属しているのはアルプスアルパインのソリューションビジネスを推進拡大していくことをミッションとしている部署です。一般の方が当社に持たれるイメージとして電子部品や車載製品を扱っている会社だなと思われる方が多いのではと思うのですが、当社では「モノ」売りから「コト」売りへの事業拡大を図っており、製品を通したお客様の課題解決を提案する事業に力を入れています。
私はその中で、主にそのソリューションビジネスにおける企画ヒット率向上を目的として、社内外のデータを分析し、お客様の課題やそれに対する当社の強みは何なのかということをシステマチックに提示できるような分析手法の研究開発に取り組んでいます。
具体的には、ソリューションビジネスを企画するにあたってお客様の課題を設定することが重要になるのですが、データ分析を根拠に、当社にとって強みを発揮できるお客様の課題を発掘したいと思っています。そのためにお客様との打ち合わせ時の議事録や社内の技術報告書などを活用し、その対象データから必要な要素を抽出・分析するデータ分析技術の研究開発に日々邁進中です。
「私はデータ分析の仕事を担当しています」と伝えると、最新技術を使って先進的な業務をしていると思われることが多いのですが、実はデータ分析業務には多くの地道な作業が多く存在しています。
分析を進めるにあたってプログラミングを行う際、機械学習や深層学習などの分析手法をもちろん使用しますが、実際のテキストデータを確認し、不要な単語の削除などテキストデータを解析しやすい形に変更を加えることや、「これは必要なものだ」、「この議事録に記載の言葉は課題ではなく共有事項」というように一つひとつラベリングをするような手間のかかる作業も実はかなりの割合で発生していますね。
ビジネスの課題を解決するためのデータ分析とは
──入社されてから印象に残っているエピソードと、働く上でどのような価値観を持っているか教えてください。
入社後3か月ほど経過したタイミングで、業務を通じて行なっていた議事録データの分析から、顧客課題を推定する手法を技術報告書としてまとめました。
その報告書を社内で展開したところ、多くの社内の技術部門の方に読んでもらい報告書を公開するプラットフォームの中での閲覧率がトップとなり、表彰を受けました。その経験から分析やその関連の機械学習などの技術には直接関係しない部門の方でも興味をもってもらえるテーマだと実感することができましたね。
私は働く上で「常に目的意識を持つこと」を大事にしています。私の分析技術もデータを分析することではなく、それがビジネス上の課題解決につなげることが大事だということを忘れてはならないと思っています。
社内でも私の分析手法に多くの方に興味をもってもらい良い評価を受けたことは嬉しいですが、その関心を無駄にしないようによりビジネスの成功に向けた分析手法の確立を進めて貢献していきたいと思います。社内の議事録情報から顧客課題を抽出していく動きはもちろん、今後はよりその抽出されてきた課題に対し当社の強みをマッチングさせる手法を実現していきたいと思っています。
たとえばビジネスのトピックスを1つ挙げると、当社は物流資材位置情報を取得・監視する「物流トラッカー」などのIotデバイスを扱っております。その位置情報データ関連のノウハウも所持しているため、そこはまさしく強みであると思います。物流業界の「2024年問題(※)」が騒がれていますが、物流業界のお客様の課題に対し当社の強みは非常に活かせると感じており、この例のようにデータ分析を通じて当社の強みの発揮できる課題をたくさん発掘していきたいと思っています。
※ 自動車運転業務における労働時間の制限によって起きる問題の総称
データアナリティストの第一人者としてビジネスへ取り組んでいく想いとは
──中途で入社されてみてアルプスアルパインはどんな会社だと思いましたか?
入社してまず驚いたことが、役員の方との距離が非常に近いことです。それまで経験した会社の経験上、社内の経営層ポジションの方は直接話す機会もなく、雲の上のような存在だと思っていました。しかし、入社後すぐに役員の方へデータ分析結果の報告を直接させてもらうことになり、それ以降も定期的に直接コミュニケーションをする場があり、自身の分析結果や考えに対して直接経営層の方からフィードバックを得られることに充実感を覚えます。
初期には自分が経営層の方と話せるのだろうか……という不安もありましたが、自身の今のモチベーションにも好影響を与えていると思います。
──今後会社ではどのような存在になっていきたいですか?
私のデータ分析の成果物を利用してくれる方、それはまずソリューションビジネス企画に携わる方です。ビジネスにおける企画を出す場合には、少なからず何かしらのデータはあるにせよ、それまでの経験や勘をもとに立案するケースが多いと思っています。
現在取り組んでいるサービスの完成度を高めて社内へのリリースが実現すると、より社内外のあらゆる人間にとって納得感の強い企画を作ることが可能になるなど、それまで業務経験が少ない方でも企画を立案できるようになると信じています。
当社ではデータ分析の分野についてはまだまだ道半ばだと感じていますし、その反面、分析が進んだ場合にはビジネスが多くのお客様の課題を解決する可能性も非常に高いと思っています。
これまで学んできた数学的な知識や転職前に培ってきた経験からその分野では比較的貢献できると思うので、技術領域のスキルアップはもちろんのこと、ビジネス的な考え方や手法に関する知識や経験も身につけていきながら、アルプスアルパインにおけるデータアナリティストとしての第一人者になっていけるように頑張っていきたいと思います。
※ 記載内容は2023年8月時点のものです