アルプスアルパイン株式会社で社内広報を担当する熊谷 紗弥子と浜津 智裕の2人。社内広報という仕事に対する情熱や新たな発信活動、そしてアルプスアルパインのカルチャーについて、2人に率直に語り合ってもらいました。
プロフィール
熊谷: 会社統合前のアルパインへ入社後は秘書、経営企画やCSR推進など多岐にわたる経験を積む。5年目に広報職に移り現在は社内広報をメインにnoteを使ったオープン社内報など新たな切り口で会社の魅力を発信中。
浜津:同じくアルパイン株式会社へ入社、車載機器の生産管理を3年行い、経営企画など管理部門にフィールドを移した後広報職へ。社内広報をメインにtalentbookの企画を行い会社の魅力を発信中。
自分1人ではもの1つ作ることができない。大変さを乗り越え、身に染みた想い
──今日はよろしくお願いします。まず浜津さんから今に至るまでのストーリーを簡単に教えてください。
浜津:学生時代は法学を専攻し、公法を専門的に学ぶとともに、ゼミ活動や部活動にも力を注いでいました。アーチェリーをやっていたのですが、自分の体と心に毎日向き合って競技としてのレベルを上げていくことは非常に楽しかったですね。もともと緊張しやすい性格からか大きな成績は残せませんでしたが……(笑)。
私はさまざまなことに興味を持つ性格なので、就職活動中は、いろんな会社を見ていました。メーカーに限らず、金融やIT系、行政法人などの会社説明会に参加していました。その中で昔からずっと車が好きだったこと、また漠然とした海外への憧れがあったので海外売上比率が高かったこと、そして比較的地元に近い場所で頑張ることができるかなという想いから、当時のアルパインに入社しました。
さらに完成車メーカーではなく、車載製品を扱っている会社であれば多くの車種と関われる機会があるなと。金融系の会社からも内定をいただいていたため、正直悩みましたが、好きなことに触れられる点を軸にして決断しました。いろんなことに目移りしてしまう自分だからこそ、それが最適な選択だと思いました。
入社後は半年間研修期間を経て、最初の配属先は生産部門でした。3年ほど働いた後、管理部門にキャリアチェンジしましたが、最初のキャリアだったこともあり生産部門で携わった仕事のことは今でも良く覚えています。
実はまったく志望していなかった部署への配属が決まったと聞いたとき、驚きとともに正直「マジかー……」と思いました。同期の中でもほとんど唯一、希望外の部署への配属だったので、当時の人事担当者から逆に心配されたことを覚えています。
配属当初は正直、不満もありましたが、実際に業務を続けていくうちにとてもやりがいのある仕事であることがわかりました。実際の業務内容は工場に出向いて生産管理を行うもので、お客様が要望する数量を期日通りに製造し、納入すること。多くの人、物、お金が関わっていることを直接理解できて、毎日飽きることがなかったです。
何より、入社の理由でもあったさまざまな車に関われる日々が嬉しかったですね。この製品があの車に使われていると知ると、何だか嬉しい気持ちになりました。
ただ、どうしても仕事ですので、つらい部分もありました。あるとき、自分の「生産計画のシステム」への理解が甘かったことが原因で、いろんな社内の方に負担をかけてしまったことがあります。精神的にとてもつらかったのですが、部品を手に入れてくれる方、製造設備をメンテナンスしてくれる方、実際に製造ラインに入って手を動かしてくれる方全員に助けてもらってトラブルを乗り越えることができました。
自分1人ではもの一つ作ることができないということを痛感し、自分の目の前の作業だけを見るのではなく、広く全体を見渡し、一人ひとりの頑張りによってすべてが成り立っていることを忘れずに仕事をしなければならないと、そのときに骨身に染みて理解しました。今でも冷静になれず、目の前のことに熱中することはあるのですが、ふとしたときに当時の経験を思い出すようにして自分の行動を改めるようにしています。
半分泣きながら、1対1で議論。部長の意味がわかったときに抱いた喜び
──今度は熊谷さん、どんなご経歴かご説明いただけますか。
熊谷:私は大学で観光学を専攻していたので、大学時代にはよく海外旅行をしていました。友達と欧米に行ったり、バックパッカーとしてアジアを1人で旅したりしていました。学生なので安い旅しかできなかったんですが、だからこそなんでも楽しめる力とサバイバル能力が試されるような刺激的な経験ができました。
就職活動では当然のように旅行関連会社をメインに受けていました。しかし次第に、旅行にこだわりがあるからこそ、自分と真逆のものを求めている人、たとえば快適で高級な旅を求める方の気持ちに心から寄り添った仕事ができるのか心配になってきました。こだわりがありすぎるものは仕事にしないほうが良いのではないかと不安になり、もう一度自分が何を求めどんな社会人になりたいのかをあらためて考えることにしました。
そして気づいたのは、「私は海外の人と多く関わる仕事と社会貢献につながる仕事をやりたいんだ」という想いでした。まず頭に浮かんだのは海外支援のNPOでしたが、一般企業での就労経験をしてから就職したほうが良いと知り、いったん候補から消しました。
次に海外との取引が多い企業を調べる中でアルパインに出会いました。当時のアルパインは海外売上が8割だったこと、また会社説明会や面接で出会った社員がみんな素敵だったので希望度が高まっていきました。すでに内定をもらっていた旅行会社とアルパインで最後の最後まで悩みましたが、自分の直感を信じ、アルパインに入社することにしました。
入社後、アジア圏の営業を志望していたのですが、まず配属されたのは秘書室でした。まったく頭にない職種だったため驚きではあったのですが、期せずして翌日から秘書として社会人の第一歩を歩み始めることに。
しかし、業務に携わるうちに楽しさを見出すことができ、社長の仕事の仕方や人柄から多くのことを学べました。たとえば相手の年齢や立場にとらわれずフェアに接すること、常に先を見据えて早めの仕事をすること、言いわけは決してしないこと、などです。もちろん完璧にはできませんが、自分が憧れる社会人像に近づくために必要なこととして、今も意識しています。
その後1年ほど秘書の仕事を経験した後、別の仕事も経験したいと課長に相談したところ、同じ部署内にあったCSRの仕事を任せてもらうことになりました。入社前に憧れていた社会貢献につながる仕事です。それまで社長秘書が他の業務を兼任することはなかったようなのですが、それを許してくれた社長と課長に今でも深く感謝しています。
その後3年ほどCSR(Corporate Social Responsibility:企業の社会的責任)を扱う業務の担当を務めました。実質1人きりのCSR担当だったため、苦しみも大きかったですが、やりがいはとてもありました。とくに記憶に残っているのは、当時主流だったCSV(Creating Shared Value:共有価値の創造)という言葉の認識が当時の部長となかなか合わず、何度も……時には半分泣きながらも、1対1で議論したことです。何カ月も議論をし、ある瞬間ふっと部長の意味することが理解でき、自分なりの解が見えたときの気持ち良さは今でも忘れられません。そして若手の私に何十時間も時間を割いてくれた部長には感謝しかありません。
そして入社5年目のとき、広報へと異動となりました。時には一緒にプレーヤーとなってくれる部長やサポートしてくれる方はいましたが、CSR同様ひとりきりの担当でした。異動当初は右も左も分からず途方にくれていました。そんなとき、企業広報研究会という他社の広報の方と毎月コミュニケーションをとれる機会があり、参加することになりました。そこでベテラン広報の方々に勇気を出して話しかけ、広報の楽しさや、当社が今優先すべき広報課題は何か、という相談をしました。
そこでは皆さんからさまざまなことを教えてもらいました。ある企業の方が言っていた「広報は他社ともノウハウを包み隠さず共有できる数少ない業種だから、どんどん聞いてどんどん教えてあげて」という言葉が印象に残っています。
一人ひとりの想いや活動、努力を全社に伝えることで、共に働く社員のモチベーションが上がるように
──お2人とも、今は主に社内広報を担当されていますね。具体的にどのような仕事に力を入れていらっしゃいますか?
浜津:私は主に国内グループ社員向けの“Alpinist”という社内報制作を担当しています。春、夏、秋、冬の年4回に紙の雑誌で発行しているもので、当社グループ全体の情報、各拠点や社員のトピックスを詰め込み社員の皆さまに配布しています。
少し制作の仕方に特徴があり、私たちの広報担当者だけで制作するのではなく、社内報の編集組織としてそれぞれ開発や営業、生産部門の仕事など広報以外の仕事を普段は担当している有志の社員にも協力してもらって、一緒になって作り上げています。
また、2023年4月からはtalentbookで当社の人材について発信することにも注力しています。最初の登場者が自分になるとは思っていませんでしたが(笑)。
熊谷:私も浜津さんと同様に社内報制作を担当していて、同年4月からは文章をメインとした記事コンテンツを手軽に発信・共有できるWebメディアを使ったオープン社内報という取り組みに注力しています。talentbookにも携わる予定でしたが、浜津さん同様に登場する予定はなかったので戸惑っています(笑)。
──ありがとうございます。それぞれの仕事について、どのような想いや考え方をお持ちなのか詳しく教えていただけますか?
浜津:私は今の職種に就いて1年ほど経ったところです。前部署からの異動を告げられ、自分がこれまで読む側であった社内報の作成を担当することになったときは、正直戸惑いを覚えた記憶があります。初めは、一体どんな意義があるのだろうとさえ、思っていました。ただ、前任者から業務の基本を学んでいくうちに、「これは責任重大な仕事だ」と感じるようになりました。
というのも、会社が現在どのような状況にあり、どの方向に進んでいるのかといった、社員であれば知っておかなくてはいけない情報について、広報担当が発信を仮に怠ったり、意味を取り違えて発信したりするようなことがあれば、多くの社員の方に不利益を与えてしまうことになります。
社内に限るものではありませんが、広報という仕事は会社の情報を循環させ、コミュニケーションハブにならなくてはいけないと思います。
また、社員同士のコミュニケーションや、エンゲージメントの側面においても責任がある仕事だと思っています。
アルプスアルパインは国内で約7,000名の社員が働いており、関連するグループ会社の社員も含めるとさらに人数が増えます。また、社員が働く拠点も数十カ所存在します。社内報はあくまで社内広報の目的を果たす選択肢の1つではありますが、それが各地の社員のもとへ届き、それがきっかけで社員同士の交流につながることや、離れた拠点の方の情報を見て、「こんな活躍をしている方がいるんだ、自分も頑張ろう」とやる気につながることがあればとても幸せですね。
またそのために、当社独自の社内報の作り上げ方による強みも最大限活かしていきたいです。制作活動に協力してもらう社員の方には負荷をかけている側面はありますが、一般社員の目線で「こういう企画をやったらどうか?」といったアイデアを出してもらえる体制があります。その方々には感謝をしてもしきれませんし、そのつながりを大事にしていながら今後も社内広報業務に精一杯取り組もうと思います。
熊谷さんは私よりも長く、また、社外広報も含めた広報業務全般に携わってきたキャリアをお持ちですよね。やはり、社内広報に対しても重要性を感じていますか?
熊谷:そうですね、私のキャリアの中で広報の仕事は比較的大きな割合を占めています。アルパイン時代は広報担当者が少なかったこともあり、社内外広報両方を担当していました。最初は社外広報の方が重要だと思っていましたが、次第に社内広報も非常に大切だと気づきました。
社外広報は会社全体の動きや製品について発信することが多い一方で、当社の社内広報では、Alpinistという社員の人柄を紹介する企画が多いグループ報があるためか、社員一人ひとりにフォーカスすることが多いです。
私もそうですが、当社はそれぞれの拠点が離れているため、自分の周り以外の人や部署が何をしているか、何を重要視して業務を行っているか、どんな努力をしているかをあまり知る機会がないと思うんです。
でも社内報などを通して、そういう一人ひとりの想いや活動を全社に伝えることで、社内の連携がスムーズになったり、誰かの努力に刺激されてモチベーションがあがる人が増えたり。少しでも効果があればいいなと期待しています。
また社内広報の業務を通して様々な人と話すと、アルプスアルパインってすてきな人が多いんだなと感じます。日常の雑談では少し恥ずかしくて聞くことのできない仕事への熱い想いなども、「社内広報の取材」という建前があると詳しく聞くことができ、その人の魅力を再発見することができます。これは役得です(笑)。
今後はこのtalentbookのように社員一人ひとりの魅力を外に発信する機会を増やしていけたら良いなと思います。
社内広報で得た情報を社外にも知ってもらう機会を作りたい
──ありがとうございます。社内広報への想いがよくわかりました。会社の魅力を社内に発信する活動の経験から、新たな魅力発信活動をスタートされたそうですね。どのようなことを実施されているのでしょうか。
熊谷: これまで社内広報を通じて得た情報がたくさん入ってきても、中には従来の広報のやり方では発信しきれなかった内容もあり残念に感じることがありました。
今後はWebメディアを活用してさまざま人の声や製品の開発エピソードなどを社外にアピールしていきたいと考えています。
アルプスアルパインはBtoBメーカーということもあり、認知度は必ずしも高くはありません。しかし、私たちが取り扱う商材は、センサーやスイッチなどの電子部品からカーナビや車室内音響機器、さらに製品をベースにしたソリューションなど、幅広い分野に及びます。それぞれの仕事には、独自の工夫やエピソードが存在し、そうした仕事に対する想いを感じてほしいです。
また、オープン社内報という形にこだわる理由もあります。当社のグループ報『Alpinist』は1960年に創刊されたもので、紙のグループ報に誇りを持つ社員は多い一方で、デジタルのほうが文字を読みやすいという社員も増えてきています。また掲載できる情報量に限りがあり、伝えたいことのすべてを書ききれないこともあります。
そこで、通常のグループ報に掲載している記事を深堀してWebメディアに掲載して伝えることで、より多くの社員に、より多くの当社の魅力を伝えられるのではないかと考えています。
オープン社内報を通じて、社外の人だけでなく、社内にもより多くのアルプスアルパインのファンを増やせることを期待しています。
浜津:私はtalentbookを通じて、当社の「人」の魅力を発信していきたいと考えています。入社してからこれまで経験してきた仕事や、広報の業務を通じて出会ったさまざまな方々がいます。その中で、「この人は自分と年齢がそんなに変わらないのに、とてもすばらしい考え方で仕事をされているな」と感じたほか、「こんなにすごい経験をされているんですね!」と驚くような発見や、自分の好奇心を刺激してくれる方と出会うことができました。
なかなか一般の方に渡る製品を扱っている会社ではないため、今までアルプスアルパインのことを知らなかった方にとって、当社の存在に気づいてもらう機会は少ないかもしれません。しかし、「人」を通じた発信であれば、これまで知ることのできなかった当社に触れてもらいやすくなるのではないかと思っています。これまでの経験の中で出会った方や会社を引っ張っている方、土台を支えている方、いろんな魅力的な当社の「人」を多くの方に知っていただきたいですし、「人」を通してこんな会社があったんだと気づいてもらいたいです。
また、今後talentbookに登場される方が増えることで、その方々の周りで、この発信をきっかけとしたコミュニケーションが生まれることを願っています。その結果、社員たちが会社で働いていることに喜びや自信を感じられれば、という想いで発信を続けていきたいと考えています。紹介したい方がたくさんいるので、コンテンツ制作を頑張らないといけないですね。
──最後に、お2人はアルプスアルパインがどんな文化を持っている会社だと思いますか?
熊谷:私自身の経験から言えば、アルプスアルパインはさまざまな働き方を受け入れてくれる会社だと感じます。
私は子どもが2人ともまだ小さく、また自宅から会社が離れているため、テレワークや時短勤務をフル活用させてもらっています。育休から復職する前は、時短勤務だから出産前のように思い切り働くことはできないかなと不安に思っていたのですが、いざ戻ってみると時短でもやりたいことをやらせてもらい、楽しく働けています。もちろん周りの皆さんに支えてもらっているからこそ、ではありますが、そこも含めてとても良い環境だなと感謝しています。
浜津:会社として、挑戦する社員をどんどん評価する方向へ進んでいます。働きやすい環境が整っているだけでなく、挑戦を後押ししてくれる文化もあることがすばらしいと感じます。また、個人的な感覚かもしれませんが、人柄がすてきだと感じる方が多いなと入社以来ずっと思っています。
熊谷:そうですね。私は上司に恵まれてここまでこられたと思っています。社歴に関わらず責任ある仕事を任せてくれたり、やりたいという気持ちを優先してくれたり、納得できないと言えば納得できるまで付き合ってくれたり。
浜津:私の入社理由は“自分の好きな車に関われて海外売上の高い会社だからグローバルに仕事をできるかも”というものでした。正直そんな理由がありながら英語コミュニケーションは苦手だった私を「いつかできるようになるから」と長い目で見てもらい、実際に海外と関われる製品の生産管理にも携わらせてもらって当時の上司には非常に感謝しています。
熊谷:直近でもWebメディアの発信活動にも挑戦させてもらっていますよね。
浜津:いろんな働き方を受け入れてくれることは、挑戦のしやすさにもつながります。
そんな環境の中で、アルプスアルパインとして魅力を引き出していきながら、今後も社内外にわかりやすい形で情報発信を続けていくことに力を入れていきましょう!これからもよろしくお願いします。
──ありがとうございました!
※ 記載内容は2023年5月時点のものです