原体験は、好きなことを通じて世の中とつながれた喜び

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森 「私は、自分のことをエージェントだと思っていないんです。肩書をまったく重視しないので、実はエージェントの森ですと名乗ることもしていなくて」

開口一番そう語った森。相手を肩書や職業、経歴ではなく、ありのままの姿で見ることをモットーにしている理由には、幼いころの経験がありました。

森 「自分でいうのもなんですが、なかなかハードな幼少時代を送っていました。もともと私の家は裕福ではなく、恵まれた家庭環境ではなかったんです。親譲りの理屈っぽい性格もあって周囲ともうまく馴染むことができず、高校に入るまでは友人と呼べる存在はいませんでした。ずっと孤独でしたね……。でも、音楽活動を始めてから、すべてが一変しました」

音楽をつないで加工して形にする。クリエイティブな活動に目覚めた森は、次々とミックステープを作り、世の中に発信していきます。熱中していくうちに、周囲からも大きな反響が得られるようになりました。

森 「自分が得意なもの、好きなものを通して世の中とつながれたことで、それまでつまらなかった毎日がこんなにもおもしろくなるなんて思いませんでした。驚きと、感動ですね。今こんなふうに世の中に向けて発信したりエネルギーいっぱいで生きていられるのは、自分の才能を見出して世の中とつながれた原体験があったからだと感じています」

こうした経験を持つ森だからこそ、一人ひとりが自分の得意を見つけてほしい、好きなものを見つけてほしい、自分にしかない才能をもとに輝いていってほしいと願うようになりました。

2011年にキャリアコンサルタントの資格を取得した森は、ボランティアで500名近くの学生のキャリア面談をしたり、人種や性別、年齢、職種、立場などすべてが異なる人が集まる対話の場(オープンダイアローグ)を100回以上開催したり、意欲的に活動をしていきます。

森 「対話をしていると話をしている目の前の人が涙を流すことがよくありました。虚を張っている自分ではなく、本当の自分を森さんが見てくれたから本心をさらけ出すことができました、ありのままの自分でここにいられます、と。そんな風に言ってもらう中で、これが自分の才能なのかもしれないと気づきました。もっとこの力を使って、相手のありのままの姿を理解できれば、その人はもっともっと輝いて前に進めるだろうな。そう思ったことが、私が転職支援をはじめたきっかけです」

自らが本当にやりたいこと、使命を求めて模索した日々

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▲青年海外協力隊バングラデシュ派遣時代の森(写真中央奥)。村の未来を担う子供達に囲まれて

対人支援の中でも転職領域を選んだ理由は、これまでの歩みの中にありました。

森 「転職活動時って一番ストレスが大きい状況だと思うんですよ。これまで私が出会ったたくさんの方々を見ていて、そもそも就職活動自体に苦戦している様子を肌で感じていました。加えて私自身も二度転職を経験してきましたが、自分以上に自分のことを理解してくれる人が近くにいたらそれだけで転職活動がまったく変わると思うんです。

私も大学卒業後に入社した総合商社では脇目も振らずがむしゃらに働きました。社長賞をとれなかったら意味がない、部の中でナンバーワンじゃないと意味がない。そんな思いでとにかく数字ばかりを追いかけていた。その甲斐あってか、数字もお客様も右肩上がりで増えていきました。もちろん、頑張った成果だとは思いましたが心のどこかで会社の肩書があるからじゃないのかという葛藤もありましたね。私が会社に属していなくても、この人たちは付き合ってくれるのか、とか……」

そんな葛藤を感じていた森でしたが一方で、会社の同僚やパートナー企業と接する中でもありのままのその人を理解していくことで、次々と協力者が増えていったという実感もありました。

森 「その人の強みや得意を理解した上で仕事を任せるとどんどん協力してくれるようになりますし、それが良い成果にも繋がっていくんですね。なので仕事でもプライベートでも関係なくその人自身を理解することが大事なんだと感じていました」

そんなある日、青年海外協力隊の募集が森の目に留まります。転機の予感を感じた森はボランティア休暇制度を獲得し海外へと飛び立ちます。 

森 「バングラデシュとパプアニューギニアに行ったのですが、インフラもろくに整っていないような環境でも一人ひとりが自分の役割を見つけ、全うしていたことに衝撃を受けました。貧しい状況の中でも、自分のやりたいことを見つけ、主張している。それに比べて日本は環境が整っていても、自分のやりたいことを見つけられず苦しんでいる。その現状を変えるためには必要なのは、才能を開花させる教育であり、リーダーシップ開発なのだと考えました」

日本に戻った森は人材育成コンサルティング会社に転職。じつに1000人以上の受講者を相手に登壇しロジカルシンキングやクリティカルシンキング、キャリア、リーダーシップ、セルフコーチングを教えてきました。たくさんの人の「気付き」の瞬間に立ち会い、充実した毎日を送っていた森。しかし、2年半ほどで次なる新たな道へと一歩を踏み出しました。それが、現在のエイトシークエンスです。

森 「集団研修でたくさんの受講者にスキル・スタンスを教えることももちろん楽しかったのですが、それ以上に、『ストレスを感じている個人の助けになりたい』という想いが日ごとに増していったんです。私が相手の『らしさ』を見出し、理解することでその人がさらに輝けるのではないか。その願いが叶えられるのは、もしかしたらエージェントなのかもしれない。そう思い始めたちょうどそのころ、エイトシークエンスの代表である小山からヘッドハンティングの声がかかりました」

話を聞いてみると、小山は森自身がずっと考えてきたことを、経営者として高いレベルで実践していました。ここが森自身も輝ける場所だと直感し、転職を決意したのです。

効率が悪くても泥臭くても良い。その人が本当に求めている場所を導き出す

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やりたいことがあるけれど諦めている人、自分には無理だと思い込んでいる人、もっというと、自分のことがわかっていない状態の人のサポートがしたい、と森。実際にある転職支援をしたとき、その気持ちがさらに強まったといいます。

森 「10年以上人事のキャリアを磨いてきた人がCHRO(Chief Human Resource Officer:最高人事責任者)へのステップへと歩みを進めるために、私にキャリアアップのサポートを求めてきてくださったときのことです。最初は希望通り全力で応援しようと思っていたのですが、なぜだかいつも苦しそうにお話をされていて。何度もお会いして、その方の過去から現在、未来の展望を聞くうちに本当に目指したいのは人事じゃないという結論に至りました。

であれば、何が本当にやりたいことなのか。突き詰めていくと、誰かの心を彩るデザイナーだという答えにたどり着いたのです。CHROに憧れて、時には嫉妬もして、自分もそうならなきゃと思ってきたけれど心の奥底ではクリエイティブな仕事がしたかった。そこに気づけたんですね。結果、クリエイティブ会社のデザインコンサルタントに内定が決まりました。未経験で、年収を大きく落とさずに転職していただけたことは、私にとっても印象深い案件でした」

「ただの転職活動ではなく、自分らしさを取り戻す再生の旅でした」と相談者が最後に告げた言葉が、すべてを表しています。もちろん、これほどまでのキャリアチェンジは特殊な例ではありますが、泥臭く相手と関わり本当の自分を見つけるサポートをすることが、森の使命なのです。

森 「私は案件を数えきれないほど持っているようなエージェントではありません。ただ、お客様である企業側は経営陣であることが基本なのでレジュメに書いていないことも提案できます。これは自分の強みだと思っています。

こう言い切れるのも、経験と努力の積み重ねがあるからです。数え切れないほどの人と会って対話してきましたし、キャリアコンサルティングに関する勉強も心理学に関する研鑽も欠かしたことがありません。 とくに、脳科学に基づいた人の認知に関しては人よりも語れるものが多いと自負しているんです。だからこそ、その人らしさを最大限に活かした転職支援ができるのだと思っています」

「あなた以上にあなたを理解する心の専門家」であるために

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▲「あなたらしさ」を見つけるキャリア開発プログラム「らしさラボ」のグループセッション。参加した11名の背景に映っているのはその人の価値観が描かれた「らしさ絵」。森はコーチとして全員に伴走している(写真左上)

森に、自分がどんなエージェントでありたいかを尋ねると、少し考えた後、こんなことを語ってくれました。

森 「一番大事にしているエージェント像は『あなたよりも、あなたらしさを理解する心の専門家』です。エイトシークエンスのミッションである『らしさ、つなぐ』という点はもちろんですが、それ以上に相手を理解するためにたくさん勉強をして、知識を日々積み重ねています。『その人らしさ』を理解するための努力は惜しみません」

こうした想いを深く抱いているからこそ、個人だけでなく組織に対するアプローチも重要なのだと考えています。

森 「私は個人向けのコーチもキャリアコンサルティングも行いますし、転職前の個人の『らしさ』を見つけ、1エージェントとして転職支援もする。さらに、転職は入社してからが本当の新しい人生のスタートです。採用が決まったら役目終了ではなく、その人を輝かせるためには組織自体もその人らしさを活かせる場所であってほしい。すべては地続きなんですよね。この一連のサポートをすべて担いたいと思っています。

これまで個人の支援やコーチングは十分すぎるくらいやってきたので、今後はB to Bのコンサルティングを進めていこうと考えています。組織に入り込んで私が支援した人たちが活躍する場を作るのです。すでに新規事業として動き始めています」

個が輝くために、組織から変えていく。森が目指す場所はとても高く、そしてすべての働く人が輝くために必要な場所でした。 

人々が自分らしく輝くために。森の挑戦は続きます。