舞台と同じように、チームでつくり上げる仕事がしたい。それが、建設業界を選んだ理由
物心ついたころから、私の心の中で大きな割合を占めていたもの──それは、舞台でした。
母親が、ブロードウェイミュージカルの来日公演へ毎年のように連れて行ってくれて、次第に舞台を観に行くことが私にとっての当たり前になっていきました。
高校生のころには、アルバイトで稼いだお金で好きな舞台を観に行くようになって、演出の違いがわかり始めてからは、作る側にも興味を持つようになりました。それもあって、高校では同級生と自主製作の映画をつくったり、文化祭で映画作品をミュージカル作品に仕立て直し、演出を担当したりもしました。
その楽しさを知り、「もっと演出や脚本を書きたい」と、進学先に選んだのは芸術学部。演劇に限らず幅広い分野のプロデュースを専攻しながら、専攻とは違う舞台芸術学科の授業にも参加していました。演劇のサークルで活動するほか、産業連携のアートプロジェクトでは、演劇を用いて脚本から演出までを手掛けていましたね。
そのため、このころの私は演劇のことしか頭になく、就職先で考えていたのは舞台に関わる仕事でした。しかし、舞台関係の仕事は非常に狭き門で、採用される人数はごくわずか。就職活動の最後の最後まで粘ったものの、結局は結果が出せず、そんなときに知ったのが、建設業の仕事だったんです。
それまでは舞台業界しか考えてこなかったので、ほかにはどんな業界があるのか、どんな仕事が自分に合っているのかがまったくわかりませんでした。それでも、漠然と「舞台と同じように、チームで一緒に何かをつくり上げるような仕事がしたい」と思っていたんです。就職相談でその想いを話したときに、教えてもらったのが建設業の仕事でした。
正直なところ、「建設分野の知見がない私に本当にできる?」とは思いましたが、探してみると、文系の未経験でも入れる会社があると知り、それならばと建設業界に進む決心をしました。
“聞いたことはメモして調べる”を徹底。2カ月で1冊のノートがいっぱいに
建設業界の企業のなかでも、アーキ・ジャパンを選んだ一番の決め手は、未経験者をサポートする研修が充実していたことでした。
入社前には研修があり、さらに私の配属先の企業では、数カ月ごとに1年目の社員が集まって、実際の現場を見ながら施工の講義を受ける研修がありました。
この研修は、実際に施工の様子を見ながら知識をインプットできるので、とても勉強になります。今の現場の工程より少し進んだ工事を学べたので、次の業務のイメージができて役立ちました。
また、アーキ・ジャパンは、私が気にしていた勤務地についても相談にのってくれましたし、面接のときには、こちらが質問したことに対して具体的かつ、親身に答えてくれました。そうした接し方も、ここで働きたいと感じたポイントだったと思います。
2022年5月から、鉄骨3階建ての工場の新築工事現場で働いていますが、現在は工程も進み、鉄筋、配筋の作業状況を確認し、施工場所を撮影して書類にまとめるのが私の今の仕事です。最近では、コンクリートを型枠に流し込んで、建物の形を作っていく打設工事も始まったので、その確認なども行っています。
そのほかにも、CAD図面から部材の寸法や数量などを拾い出して次の工程に必要な材料を発注する仕事もあり、業務は幅広いですね。
今ではひとりでできる仕事も増えましたが、配属当初は、専門用語が一切わかりませんでした。名前は聞いたことがあった「ユンボ(ショベルカー)」でさえ、実際にはどんな作業に使うのかもイメージできなかったくらいです。
そのため、当時は耳にしたことを全部メモして、家に帰ったらとにかく調べるということを大切にしていました。現場ではメモすることも、覚えることも膨大で……。1日で2~3ページ埋まってしまうこともあったので、配属されて2カ月ほどで1冊のノートを使い切っていました。もちろん、自分だけではでわからないこともありますから、そういうときは、先輩に聞いていましたね。
大変ではありましたが、それを続けていったおかげで、あるときの会議で、社員と職人さんのやり取りが理解できるようになっていたんです。頭の中に工事のイメージも描けるようになっていました。
そのことに気づいたときは、自分が毎日続けていたことの効果があったんだと感じられて、嬉しかったです。ノート2冊目に入った今も、メモする習慣は欠かしていません。それでも、一日に取るメモの数はだいぶ減り、分かることが増えたんだと実感しています。
人を頼れるように成長。「ひとりで」ではなく周囲の支えとともに
今の現場には、工事を請け負っているゼネコンの社員の方が5名、設備担当の方が2名常駐しています。職人の方も、多いときには1日に80名ほどが現場に入ります。私の経験が浅いことを皆さん理解してくれているので、質問をしやすい空気を作ってくださっていることがとてもありがたいですね。
周囲の人から教えてもらった中で今も印象に残っているのは、先輩社員からのひと言。実は最初のころ、CADの図面を使った部品の数量を確認するといった、現場には出ないパソコンでのデスクワークの仕事が多かったんです。そのときに言われたのが、「現場を見て考えられるようになった方がいい」という言葉でした。
それを聞いて以来、ちょっとでも何か発見しようという意識で、現場を見るようにしています。現場を観察していると、自分が注文した部品が組み上がった様子を発見することもあります。そんなふうに、自分の仕事が形になった部分を見つけたときはやりがいを感じますし、現場に貢献できている実感があります。
とくに今は、現場のあらゆるところで一斉に工事が進んでいて、建物が立ち上がっていくところがタイムラプスのように見えるので、毎日がとても新鮮です。
また、わからないことは周りの人に聞き、頼れるようになったことは、自分が成長した部分。学生時代から、人と一緒に舞台作りをする経験はしていたものの、何でも自分ひとりでやろうとすることが多かったんですよね。
逆に今は、私ができないことの方が多いので、素直に自分ができないことを人に聞いたり、助けてもらったり、手伝ってもらったりしながら、できるようにしているのが今なんです。
そして、「自分はまだできないことの方が多い」という自覚が持てたからこそ、わからないまま、自分の中で何も変わらずに日数だけが経っていくのは本当に嫌でした。メモして自分で調べるのも、人に頼るのも、そうした意識のおかげだと思っています。
さまざまな建物の現場に携わるため、これからも学び続けたい
将来的には、計画の段階から工事が始まって終わる一通りの流れまでを自分で担当できるようになりたいです。また、別の用途の建物を担当するのも、今後挑戦したいことのひとつ。現場の所長が、別の現場で美術館の工事を担当しているそうなので、私も芸術に関わる建物に携わりたいなと思っています。大好きな「演劇」に関連する劇場を担当するときがきたら……。と考えるだけでワクワクしますね。
ですが、まだまだ自分の担当範囲でさえ分からないことが多いです。たとえば、コンクリートを流し込む前に設置するワイヤーメッシュの種類。これは鉄筋が格子状に組まれた製品で、鉄筋の太さと格子のサイズがたくさんあるのですが、発注の仕事のときに、どれを頼んでいいのかがわからなくて……。今は先輩や職人さんに教わりながらなので、今後は自分一人でもできるように覚えていきたいと思っています。
また、現場ではいろんな工事が同時に進んでいる中で、職人さんに聞かれたときに答えられないことも少なくありません。その課題を乗り越えるためにも、今後も学び続ける姿勢を大事にしていきたいです。
施工管理の仕事は、先輩社員や職人さんなど、現場でさまざまな人とコミュニケーションを取りながら進めていきます。そのため、「たくさんの人と一緒に仕事をしたい」「チームで協力して仕事をやり遂げたい」という方には、とても魅力的な仕事だと思います。
それでも中には、未経験だから不安で一歩が踏み出せない人もいるのではないでしょうか。
私も建設業界は無知の状態で入社しましたが、それを理解してもらえる環境があるので、そこで成長できるかどうかは自分次第です。施工管理の仕事は苦労はありますが、たくさんのことを学びたい気持ちがあるのなら、楽しんで仕事ができると思います。迷われている方はぜひ、チャレンジしてみてください!