多くの人とかかわり協力しながら完了する出荷業務という仕事
澁谷紗恵ヘイゼルは2019年の入社以来、化成品部パーソナルケアオペレーショングループで出荷業務に携わっています。
澁谷は現在、ブラジル・中国・シンガポール向けの出荷を担当しています。海外販社から出荷量と期日の連絡があると、在庫数の確認、船会社の予約、通関の書類準備などの出荷にまつわるすべてを手配します。そして到着後、製品にダメージはなかったかなど確認を終えるまでが澁谷の仕事です。こうした一連の出荷業務が完了するには、たいてい1〜2ヵ月がかかります。
澁谷「船ひとつ準備するにも、コンテナに商品を詰める業者、輸出代行のグループ会社など、幅広くいろいろな業種の外部担当者の方々の協力があって、ようやく出荷となるんです」
化成品部で扱うビジネスの中で、澁谷が担当するのは香粧品素材関連の業務です。たとえば化粧品の原料となる肌を保湿する成分、湿潤剤などが香粧品素材と呼ばれます。また、味の素㈱は植物由来の発酵法で製造したグルタミン酸を原料としたアミノ酸系洗浄剤を世界で初めて発売して以降、パイオニアとして世界55カ国、5,000社以上(2019年5月時点)にアミノ酸系香粧品素材を提供しています。
澁谷「最近はオーガニック志向の方や、身体や髪にも自然派の製品を使いたいという方が増えています。顧客ニーズにこたえて“人にも環境にもやさしい製品づくり“を目指しています。このような価値を社会に提供することが、香粧品素材事業のミッションなんです」
“人にも環境にもやさしい製品づくり“──。これこそが澁谷が、味の素㈱への就職を決めた理由のひとつでした。
永遠に変わらないものはない。先の変化を予測することの大切さ
澁谷の就職活動の軸は明解です。「地球規模でよいものを提供したり、価値創造をしようと取り組んでいる会社」というものでした。
澁谷「味の素㈱を選んだのは食品というよりも、地球的な視点に立って動物のために栄養価の高い飼料や、農作物だけでなく豊かな土壌もつくる肥料、そして医薬品も手掛けていたりと、とても幅広く価値創造を目指しているところに惹かれたからなんです」
“地球規模“という視点を、はじめて意識したのは小学生の時。深刻な地球温暖化など環境について授業で学んだのがきっかけです。そこで“持続可能”な社会の重要性にも興味をもちました。澁谷にとって“持続可能な地球”が欠かせないテーマとなりました。そして“持続可能”の大切さを感じるようになったのには、もうひとつ、幼少期の原体験がありました。
澁谷「私が小さい頃、海外への移住などで家族が離れて暮らすことがありました。当時は、変わるはずがないと思っていた家族という形が、状況によっては変化しうるんだということを体験したんです。それ以来、先々のことを考えて行動しないといけないと思うようになりました。
たとえば、いまは豊かに生活している地球も同じで、このまま何も気づかずに過ごしていたら、いつかなくなってしまうことだってありえる。そんなふうに考えるようになったんです」
大学では、国際社会学部に進学。澁谷はSDGsなどの社会問題はもちろん環境問題についても積極的に学び、“持続可能性“というテーマについて知識を深めていきました。そんな想いが心の奥にあったから、就職活動時の面接では必ずその思いを伝えました。
澁谷「将来の地球環境のことを考えて社会活動をおこなっている会社で、自分は貢献したい。それをいちばん大切に思っていると、どの会社の面接でも話しました。
それに自分自身も、幼少期から常に将来を考えて、いまできることを日々取り組んでいることも伝えていました。だから化成品部に配属が決まったときは、そんな私の性格や想いも知って、先々を予測して取り組む必要がある出荷業務に適性を感じていただけたのだと思いました」
「会社を通して社会貢献がしたい」という想いが熱い澁谷。入社から1年後、思いがけず会社の社会貢献を実感するできごとが起こりました。
社会に貢献できているという実感が“やりがい”につながる
2020年春、コロナが世界中を席巻しました。
新型コロナウイルスの感染予防対策のひとつである手洗いのために、化成品部が取り扱う洗浄剤が使われているハンドソープの需要が急激に高まりました。社内では、すぐさま洗浄剤の増産を決定。新型コロナウイルス感染対策として必要な原料を最優先で製造することになりました。澁谷もイレギュラーな対応に追われるなかで味の素㈱と社会のかかわりを実感したのです。
澁谷「直接新型コロナウイルス感染対策にかかわる製品に携わっているので、そのような製品が世の中のためになっているんだなと、直接感じられた機会でした。とてもやりがいを感じましたね」
もちろん普段の業務でも、やりがいを感じる場面はあります。
澁谷「いま香粧品素材事業でも、味の素グループの“持続可能な原材料調達”という取り組みを意欲的に進めています。この業務に私もかかわっているのですが、これはまさに自分がしたいと思っていた部分なので、やりがいがあります」
日常の業務のなかで難しいのは、やはり文化背景の異なる海外とのやりとりです。
澁谷「たとえば、出荷先がブラジルだと時差が半日あるため、今日送ったメールの返事は翌日になってしまいます。1日1回しかやりとりができないので、スケジュール面では気をつかいます。他にも、先方は英語が母国語ではないのでコミュニケーションが食い違って、小さなミスにつながることも……。その大変さは感じています。
だから丁寧に相手の立場を考えて連絡をとるようにしたり、やりとりを理解しやすくするような表を考えてつくってみたり、少しずつ工夫しながら改善しています」
特に、出荷業務はスケジュール厳守。予期しないトラブルが起こった場合には、どのように対応して期日に間に合わせるかなど、さまざまな可能性を考えて常に手配するのも澁谷にとって重要な仕事です。しかし入社1年目の澁谷にとっては、日々起こるさまざまなイレギュラーな対応が大変でした。
澁谷「通関の申請書類などは基本的にすべて同じですが、案件によってイレギュラーな対応が必要なものがあります。1年目は知識がなくて自分が見過ごしたことで申告漏れしそうになったことも。大きな失敗はなくても小さなミスは日々あって、毎日反省していました」
ときには先方の都合で急きょ届けてほしいというイレギュラーな対応もあります。
澁谷「海外の顧客からの要望で、例えば船便ではなく飛行機で出荷してほしいという急な変更依頼もあります。ひとつひとつ変更のための手配は大変ですが、出荷を終えたあと『すぐ対応してくれてありがとう』と海外販社からの連絡が入るのは嬉しいですね。がんばっていてよかったと思う瞬間です」
持続可能な地球とは、自分の幸せもないがしろにしないところにある
「1年目は反省の日々だった」という澁谷ですが、いまでは「貿易実務の知識も身についてきて、自分で判断できるようになったことに成長を感じている」といいます。
そして成長できたのは職場環境の影響も大きいと感じています。
澁谷「上司は任せてくれるタイプです。トラブルが発生したときも、まず私自身がどう対応するかを見守って、必要があればすぐに助けてくれます。任せてもらえて、自分の力を発揮できる環境です。また先輩方は常に新しい知識を共有してくださるし、わからないことも質問しやすく丁寧に教えてくれます。ゆっくりではあるけれど、“着実に成長させてもらえるようなチーム“だなと思っています」
さまざまに活躍する先輩たちの姿をみながら、澁谷も近い将来の目標を描いています。
澁谷「もっと顧客目線でビジネスを体験したいし、マーケティング知識も身につけて海外で働きたいという想いも強いです。先輩の話を聞いていると貿易業務の知識をもっていると、ものごとの見方が変わってくるなと感じます。近い将来、私も貿易業務の知識を活かして、自分なりの新しい提案ができるようになりたいと思っています。
それと、2020年に社内にサステナビリティ推進部が発足しました。味の素㈱も持続可能な社会活動にすごく力をいれています。まだはじまったばかりの部署ですが、いずれはそういうところにかかわって、直接味の素㈱の持続可能性を高めることに貢献できる存在になりたいですね」
味の素㈱の持続可能性にかかわりたいとまっすぐな想いをもつ澁谷ですが、実は就職活動中に迷ったこともありました。
澁谷「本当に地球環境問題に取り組みたいなら、国連やNPOで働く道もある。でも福利厚生の充実した会社がいいとか、こんな仕事がしたいという自分の個人的な欲求もあって……。どちらをとるべきかと悩んだときに、ある経営者の『利益というのは価値を提供したことによる報酬だ』という言葉を知って心が決まりました。
自分の幸せを追求することと地球に価値を提供することは両立できると思ったんです。たとえ環境のためであっても極端な行為は続けられません。いまの豊かな生活を続けるために、ひとつでもふたつでも自分にとって無理のない範囲でできることを実践する。自分の幸せも大切にするという意識が大切なんだといまは思っています」
いまも、その先の未来も、持続可能な社会活動を促進するために、澁谷は目的を同じくする味の素㈱の一員として、日々意欲的に業務に邁進しています。