パイロットも整備士も、毎日が学びの連続。すべては安全運航のために

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▲JA81AJ あおたか

正確な航空写真測量や利用価値の高い空間情報データを収集するためには、航空機パイロットによる高い操縦技術が欠かせません。藤澤 雄一は、アジア航測株式会社が誇る若き操縦士のひとり。文字通り、パイロットチームの一翼を担っています。

藤澤「私が所属しているのは航空機を操縦する部門です。十数名いるメンバーのほとんどが操縦士のライセンスを持っていて、航空測量を主に行っています。レーザーやカメラを使った、地図などを作成するためのデータ収集を目的としたフライトが多いですね」

そんなパイロットたちが乗り込む航空機を整備し、安全管理を担う整備士チームを率いるのが、2022年で入社14年目をむかえるベテラン、朝比 哲也です。

朝比 「フライトする機体を飛べる状態にしておくことが、私たち整備部門の仕事です。安全な運航のために法令を遵守して航空機を整備し、パイロットに引き渡す……。いわば縁の下の力持ちといったところですね。実際の整備業務では、作業手順書に基づいて慎重かつ正確さが求められ、それには日々の知識と技能を維持しているからこそできること。当社が所有する日本に一機しかない『あおたか』を例に挙げれば、マニュアルは英語ですし、初めて直面する不具合も少なくありません。日々勉強の毎日ですね」

藤澤 「パイロットも同じです。新しい型式や機体の導入時には、操縦経験のある他社のパイロットと同乗訓練するなど、一から勉強することが多いですね。『あおたか』の場合も、本来なら操縦士の資格があれば誰でも飛ばせるのですが、社内資格の要件を満たさなければなりません」

上空と地上の連携のかなめは、言葉を超えたコミュニケーション

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▲フライト中の藤澤

アジア航測株式会社では、パイロットひとり当たりの飛行時間は年間平均300時間にものぼります。そのため、日々のフライトの計画から実行までが短時間で遂行されるケースが多いといいます。

藤澤 「撮影部からの依頼を受けて乗員をアサインし、飛行エリアを確認したり管制機関にフライトが可能かどうかを問い合わせたりします。フライトの前日に声がかかることが多く、前日の15時に天候判断する時点では、どこをどう飛ぶかが漠然としか決まっていないこともあるんです」

朝比 「そんな突然のフライトに備え、私たち整備部門は機体をいつでも飛ばせる状態にしておかなくてはなりません。事前に整備計画を立案し、整備点検に入るタイミングや作業内容、担当者を決定し、整備作業の流れを組み立てます。最終的に法的な確認を経て、運航部門に引き渡すまでが私たちの仕事です」

藤澤 「フライト当日、出勤後に整備部門から引き渡された機体の整備状況を確認します。天候調査をして問題なしとなれば、上空へ……。長いときで6時間半ぐらい飛びっぱなしということもありますね。フライト後は、燃料を給油し、翌日のフライトの課題などを報告するというのが、業務の大まかな流れです」

フライトを安全に行うためには、パイロットと整備士それぞれが持ち場を守ることに専念するだけでなく、互いの密な連携が欠かせません。そこで同社では、「パイロットレポート」を通じて、飛行中にパイロットが感じた不具合などを整備士に報告しています。

藤澤 「上空で発生した事象を伝えようとしても、うまく表現できないことがあるんです。『パワーレバーが固く感じる』とか『ブレーキの利き方に違和感がある』とか、感覚的なことも多くて……。『なんでわかってくれないんだ』と思ってしまいがちですが、言葉を選んだり言い回しを工夫したりして、互いに気持ちよくやりとりできるよう心がけています」

朝比 「パイロットにフライト中の操作感を尋ねることもありますし、フライト中の事象を地上で再現できない場合には機体内部を慎重に調べることも。実際に操縦しているわけではないので、『そんなの大丈夫やろ』とつい感じてしまうのですが、整備士はあくまで地上職。実際に空を飛んでストレスを感じているのはパイロットなんです。パイロットの『何か違う』という感覚が、不具合を見つける手がかりになる可能性もあります。それを汲み取り、情報を引き出すことも整備側の仕事のひとつ。どこまで当事者目線で対応できるかで、整備部門の真価が問われると思っています」

互いに尊重し合うパイロットと整備士——パイロットレポートをめぐって交わされるコミュニケーションが信頼関係を育み、航空機の安全運航を可能にしています。

難しいからこそ、おもしろい──重圧のむこうにある仕事の醍醐味

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▲整備中の朝比(撮影のためマスクを外しています)

パイロットに与えられたミッションは、航空機を安全に運航しながら、測量などのデータ収集を成功させるというきわめて難易度の高いもの。2022年で入社して5年目をむかえる藤澤は、上空では今も気が抜けないといいます。

藤澤 「飛行中は、想定した飛行経路をただ飛ぶだけでなく、後ろにいる撮影士や管制機関、周囲を飛ぶ航空機など、無線を使っていくつもの相手と交信しながら操縦しなくてはなりません。ひとつ間違えると、他機との安全間隔を維持できなくなってしまいます。瞬時に安全マージンを確保しいかに作業効率を高められるかがパイロットにとっての課題です」

そんな藤澤にとって「最も緊張が高まる」と話すのが、一般的に「魔の11分」と言われている、離陸の3分間と着陸の8分間です。

藤澤 「使用することが多い空港は滑走路が比較的短く、離陸直後・着陸直前の眼下には住宅街が広がっているんです。機体が完璧に整備されているとわかっていても、何が起こるかわかりませんから、安全高度に達するまではいつもプレッシャーを感じていますね」

朝比 「整備では、エンジンの調整をするときでしょうか。エンジンをかけるときや実際に機体を動かすときなど、始動時に『大丈夫かな』と思うことはよくあります。また、徹底的に整備しても不具合の解消に確信が持てないケースがあるんです。そんなときは、フライト最中に不具合が再発するのではないかと緊張が走りますね」

しかし、そんなプレッシャーのかかる仕事だからこその醍醐味があると、ふたりは口を揃えます。

藤澤 「航空測量パイロットには、天候調査はもちろん、どこをどう飛ぶかを自分で決めなくてはならない難しさがあります。けれど、空からしか見られない景色を楽しんだり、街を見下ろしたり……。あの気持ち良さを味わえる喜びにはかえられませんね」

朝比 「不具合の中でも、初めて直面するものほどしんどいと感じますが、故障原因を探し出して解消し、機体を飛行できる状態に戻せたときには胸が高鳴ります。また整備管理業務では、厳しい法的な規定が整備の足かせに感じられることもあるんですが、これをきちんと遵守しながら、安全運航を継続させることに尽きますね」

感謝の想いでつながるパートナーシップ。風通しの良い環境が信頼関係を育む

▲国土強靭化 アジア航測の社会貢献

共に仕事をするようになって4年目になる藤澤と朝比。年次を重ねるごとに、互いへの感謝の念が強くなるといいます。

朝比 「パイロットは上空ではいつも孤独な存在なんです。撮影者はいますが、飛ばしているのはひとり。上空では誰にも頼ることなく、常に自分で判断しなければならないというシビアな環境の中で孤軍奮闘しています。なんとか貢献できたらと思うんですが、長時間のフライトのあとにちょっとした整備をパイロットが手伝ってくれることもあって……。無事に帰ってきてくれただけで感謝なのに」

藤澤 「私たちパイロットは、適切に整備されていることが、航空機を安全に飛ばすための第一歩だと思っています。だから、整備部門を“縁の下の力持ち”とは思っていないんです。実際、どんなにパイロットの腕が良くても、整備士がいなければ航空機を安全に飛ばすことはできません。日々感謝しています」

パイロットと整備士がこうして物理的・精神的に近い距離にあり、親密な関係性を築けるのは、会社の規模や社風によるところが大きいと朝比は話します。

朝比 「比較的小さい会社であるからか、風通しが良いところがあると思いますね。また、仕事の面でもいい意味での自由さがあり、自分で考えたことが実現しやすいんです。おきまりの整備作業だけで終わってしまうことがなく、全員が幅広い業務に関わるマルチプレーヤーというか……。自分のやりたいこと、こういうふうに変えていきたいという想いが実現しやすい環境だと思っています」

藤澤 「パイロットというと大手エアラインのパイロットを想像しがちですが、ひとりで航空機を飛ばして目的を遂行する達成感が得られることも、この会社の魅力だと思います」

上空と地上、それぞれ持ち場は異なりますが、安全運航にかける想いは同じです。仕事に対する矜持と互いを尊重し合う気持ちを胸に、ふたりの好連携はこれからも続きます。