漁師の船に乗って海へ。現地調査を重ねて、多角的に自然環境と向き合う

藪内が所属する総合環境課(2021年10月インタビュー時)は、環境調査や環境保全対策の検討など、環境に関する幅広い業務に取り組んでいます。藪内が担当するメイン業務は、洋上風力発電の環境影響評価調査。海の上に風車を建てる事業計画を推進するにあたり、自然環境にどのような影響が出るのかを調査しています。

藪内 「洋上風力発電の事業開発を検討する際には、さまざまな環境調査を実施します。例えば魚類調査。漁師さんの船に同乗して、漁でどんな魚が獲れるのかを調査します。海域によって生息している魚が違うので、それを把握するのが目的ですね。他にも、海水の水質調査をしたり、海底の砂を採って粒径を把握するなど、実際に海に出ていろいろな調査をしています」

洋上風力発電プロジェクトは、風力発電事業者からの依頼を受けて始まりました。2021年11月現在では、アジア航測から様々な分野の技術者が関わり、現地調査に特化した企業とも協力しながらプロジェクトを進めています。

藪内 「社内のメンバーは、技術士などの専門的な資格を持っている人が多いですね。皆さん経験豊富なので、マニュアルにとらわれず、そこに一味加えたような動きをしています。そんな先輩方の姿を見て、日々勉強させてもらっています」

経験値の高いメンバーと共に調査に携わり、刺激的な日々を過ごしている藪内。しかし、現地で調査することだけが仕事ではありません。調査のためには、情報が必要だと語ります。

藪内 「いろんな文献にあたって、現地調査必要な情報を多方面から収集したり、得られたデータを解析したり……。現地調査以外にも、デスクでやる重要な仕事もあるんです」

現場での作業とデスクワークを繰り返し、知識を増やしながら環境事業に携わる藪内。洋上風力発電の業務のほかにも、並行してさまざまな調査に取り組んでいます。

藪内 「自治体からの依頼で、その地方の海洋生物の調査をすることもあります。たとえば魚礁の調査ですね。魚礁というのは、好漁場を作るために海の中に入れる構造物のこと。それを設置するときに、イワガキなどの地元の水産物を一緒に放流しています。それが数年後に漁にどのように影響したかを調査するのです。いろいろなプロジェクトに幅広く携わっています」

学生時代は水族生態学を専攻。海が好きで、仕事の舞台にも海を選んだ

ロープに生えた沢山のコンブと一緒に(前職)

大学時代、藪内は水族生態学を専攻していました。水族生態学に興味を持ったきっかけは、高校時代に遡ります。もともと農業系の高校にいた藪内は、当時、地球温暖化について詳しく学び、卒業論文として地元・埼玉県にある用水路の環境調査を行いました。

藪内 「調査はおもしろかったのですが、海のない埼玉県でやっていたこともあり、次第に海に憧れるようになりました。そこで、海について学べる水産系の大学を選んだのです。大学は神奈川にあったので、江ノ島の海でフィールドワークをすることもありました。海はやっぱり魅力的で、就活でも海を舞台に取り組める仕事を探しました」

ファーストキャリアとして選んだのは、北海道の環境コンサルタント企業。水産系の調査を主に行なっている会社でした。

藪内 「漁師さんたちと協力しながら、地域で力を入れている水産物の漁獲量を増やすためのコンサルティングをしていました。また、発電所周辺での生き物や海藻に対する影響を調べるために、実際に海に潜って調査し、記録を取ることもありましたね」

しかし、2019年に妻の転勤が決定。それに伴い藪内も、北海道を離れて地元のある関東圏に戻ろうと考えました。藪内の転職先探しが始まります。

藪内 「なぜアジア航測に決めたのかというと、ある不思議な縁があったからです。大学時代に受けていた授業で、外部から毎週異なる外部講師を呼ぶ講義がありました。その際に、講師としてアジア航測の人が来たことがあって。講義がきっかけで、アジア航測に海に関わる業務があることを知りました。調べてみたらちょうど求人があったので、応募した形ですね。

ちなみに当時講師をしていた人は、今の直属の上司なんです。私と同じ大学出身で、同じ先生にも教えてもらっていたそうです」

偶然のつながりが第一歩となり、2019年にアジア航測へ転職した藪内。これまでの経験を活かして水産系の業務をメインに行なっていますが、思いもよらぬ仕事も降ってきました。

藪内 「前述の洋上風力発電の業務では、海の生き物だけでなく、鳥も調査の対象になります。鳥については本当に知識がなかったので、周囲の人に教えてもらう日々です。新しい領域を勉強できるのは、刺激的で楽しいですね。

ただ、音や振動など、物理的な調査もやるようになり、その点では苦労しています。正直今まで生物以外のことには苦手意識があったので……どうにか頑張らなくてはと試行錯誤しています」

洋上風力を起点として、業務範囲を広げながら新しい知識をインプットしている藪内。日々新しい世界に触れながら、ひたむきに取り組んでいます。

大規模プロジェクトの先頭に立ち、海と向き合うおもしろさ

漁業者の船で調査地点へ

大学を出てから海の調査に関わってきた藪内は、専門的なスキルを年々積み上げてきました。

藪内 「海の調査って、基本的なプロセスはどこへいっても同じなんです。とくに、漁師さんの協力なくしては絶対にできないので、前職の経験を活かせているのではないかと感じています」

漁師の方々とのやりとりは、海の調査を行うためには必要不可欠なもの。関係構築のために工夫しているのは、「わかりやすい言葉で話すこと」だといいます。

藪内 「実は、言葉で何かを説明をするのがあまり得意ではないんです。なので、相手の立場に寄り添ったわかりやすい言葉を選ぶよう、とても気を付けています。いつも心がけているのは、まず先に簡単に結論や依頼したい内容などを伝えること。その上で相手の様子に合わせて、話の粒度を調整するのです。どこまで細かく伝えるべきかという塩梅が、結構難しいんですよね」

これまで培ってきた経験を糧に、日々の仕事に力を注ぐ藪内。このコロナ禍では、特殊な苦労も経験しました。

藪内 「環境省からの依頼で、全国10カ所の水中音を一斉に調査するというプロジェクトを行なったことがありました。調査を始めるために各所の許可を取らなくてはいけなかったのですが、ちょうど新型コロナウイルス感染症が流行り始めたときでした。『今来るのは避けてほしい』と断られるケースも多く、調査自体が実現できないのではないかと、とても不安になりました」

このプロジェクトに、藪内はメインで関わっていました。

藪内 「感染対策を徹底して、Web会議も織り交ぜながらなんとか現地の関係者と調整がつき、現地調査を開始できたのですが、始まってからも苦労が絶えませんでした。とくに冬の日本海・太平洋は波が強く、機械が波に吹き飛ばされないようにも工夫を凝らしながら、天候とにらみ合いしたりして。すべての調査を終えたときは、達成感もひとしおでしたね」

この経験から藪内は、余裕を持つことの大切さを学んだと振り返ります。

藪内 「マニュアル通りにいかないことは多々あります。ある程度横道に逸れた場合の準備をしつつも、柔軟に対応できる力をつけていきたいです。そのためにはもっと経験を積みたい。今回はその第一段階として貴重な経験ができたと思います」

大学生時代からフィールドワークが好きで、自分の足で調査し、解明することに喜びを感じていた藪内。アジア航測でさまざまな経験を積み、手応えを感じています。

藪内 「現地調査には前職から関わっていましたが、アジア航測はプロジェクトの規模がさらに大きいので、やりがいも大きいです。国の仕事の先頭に立てるのはワクワクしますし、誰も踏み入れたことのない領域をみんなで協力しながら探っていくのは、とてもおもしろいです」

大好きな海の仕事を通して、食の根底を支える第一次産業を守っていきたい

9月に産まれた子とのツーショット(妻撮影)

まっすぐにスキルアップしている藪内の中には、ある一貫したこだわりがあります。それは「第一次産業を支えていきたい」という思いです。

藪内 「第一次産業は『食』の根底を支える、とても重要な産業です。自分の手で支え、守ることができたらいいなと思いながら日々働いています。

前職では直接、水産業の方をサポートする仕事が多かったのですが、いま関わっているプロジェクトでも洋上風力発電の開発を進めながら、水産業も一緒に発展させるにはどうしたらいいかなども考えています。今までもこれからも、第一次産業への思いは学生の頃から変わらないです」

そんな藪内は、実はプライベートでは第一子が誕生し、父親になったばかり。ライフステージの変化に伴い、働き方についても考えるようになりました。

藪内 「妻と協力して育児をする時間が必要なので、早く帰らなくちゃと思うようになりました。現在はテレワークが認められているので、子どもを横に寝かせて様子を見ながら仕事することができ、とても働きやすいです。

新型コロナウイルス感染症が収束しても、自分たちのような若い世代にとっては、週に何回かのペースでテレワークができるといいなと思っています」

どうしても仕事が忙しくなる時期はありますが、プライベートとの両立がしやすい会社であってほしいと願う藪内。それは自身のためだけでなく、同世代や後輩のためでもあります。 

藪内 「両立できる会社だといえるなら、新入社員も中途社員も安心して入ってくることができますよね。私が身を持って両者のバランスを取り充実した暮らしを送ることで、みんなにとってのロールモデルになれたらいいなと思います」

プライベートにも一定のウェイトを置きながらも、やはり取り組みたいのは、大好きな海の仕事。藪内は、自然に触れるのも、写真を撮るのも大好きなのです。

藪内 「海の仕事なら、藪内に任せたら大丈夫。そう思ってもらえるような、海のスペシャリストになっていけたらいいなって思っています」

大好きな海の仕事をしたい、第一次産業を支えたい。確固たる自分軸を持ってキャリアを築いてきた藪内。揺るぎない思いを胸に、アジア航測という舞台で輝きを放ち続けます。