必要とされる場所で期待に応えたい。

アジア航測株式会社(以下、アジア航測)で人事を担当している中田 慎は、人事部人事課の担当課長として、採用業務を行っています。

中田 「新卒の方々の採用やキャリア採用を行うとともに、採用後の教育も行っています。研修のセッティングやそこで何を伝えるかという内容についても担当しています。

そのほか、人事異動や社員の給料に関係する人事考課等についても対応していますが、まだ人事の仕事を一巡できておらず、人事としては新米の立場なので、上司や周りの方々に教わりながら仕事をしています(笑)」

2020年10月から人事を担当している中田ですが、以前は技術者として現場で活躍していました。

中田 「これまで土砂災害や森林・河川の仕事など、主に防災の仕事をしてきました。大学時代に地学・生態学、環境科学を学びましたが、社会に出たらこの学びを人の生活に活かす、すなわち自然界で起きていることをわかりやすく伝える、いわば翻訳者としてのスキルが要求されます。コミュニケーション力ですね。

学生時代の経験が活きた特殊な事例として思い出深いのは、『ササラダニによる森林評価』です。荒廃した斜面が山腹工によって森林として機能しているのかを評価する仕事の際、大いに役立ちました。ダニというとマイナスのイメージがありますが、どのようなタイプが存在するかの組み合わせで環境の評価ができる生き物なのです。

研究のパーツとして頭の中にありましたが、将来これが仕事に活かせる、ということは考えていませんでした。こんなふうに、学生さんが自分の学んだことをアジア航測でどのように人々の生活に役立てることができるのかを考えるときには、理系出身の人事担当者としてお話ができると思います」

しかし、22年間もの間、技術者として勤務していた中田にとって、現在の人事という仕事への異動を決断する際に、大きな葛藤があったといいます。

中田 「異動は10月でしたが、夏ごろに体制を強化したいとの理由で声をかけていただきました。好きな現場の仕事から離れることになるので非常に悩みましたが、『自分の能力を必要としてくれる場所があるなら』と考えて『やります』と答えました」

技術者寄りの人事担当者として、学生それぞれの専門性と向き合っていきたいという中田。これまでの実体験をもって、さまざまな疑問に答える存在になりたいと考えています。

その先にいる、地域の人びとのために

大学時代の研究と、社会人としての技術では、大きく異なる点がふたつあると中田は語ります。

中田 「ひとつめは、技術を必要としているエンドユーザを意識することです」

地域住民の方々がよりよく生きていくために、アジア航測の社員としてどのようなサービスを提供し、還元できるのか。その点を意識しながら働く自分の姿を、学生たちに思い描いてほしいと中田は考えています。

中田 「仕事に没頭しすぎると、いつの間にか誰のために仕事をしているのかわからなくなることがあります。国から受けた仕事の場合、お客様は国、ということになりますが、その先にはサービスを受ける住民や国民がいることを忘れてはいけません。それを忘れてしまうと仕事が無味乾燥になってしまうからです。

私がそこに気づいたのは、砂防事業がきっかけでした。土砂災害が発生するような中山間地域に行ったときに、そこに住んでいる人たちと直接話をしたんです」

そこから中田は、仕様書を通して、エンドユーザの顔を思い浮かべるようになりました。

中田 「たとえば、国土交通省が発注した業務の場合、仕様書に沿って作業を実施し、合格となればそこで仕事は完了します。それでも、目の前の書類に沿った作業をすることと、その先にいる住民の方々への思いを持って仕事をするのでは、向き合い方が大きく変わってきます」

「こういうことをしてほしい」と思っている住民がそこにいると想像できるか。それは意識しなければできないこと。

中田自身がその意識を持つようになったのは、40代になってからだったと言いますが、これから社会に出る学生の方々には、早くからその気付きを得てほしいのだと考えています。

中田 「私が若いころから、エンドユーザの方々に携わる機会があれば気づくこともできたんでしょうが、そうした仕事に巡り合うのが遅かったんです。学生の皆さんには、早くから意識を持ってもらえるように、この思いを伝えていきたいですね」

社会をよりよくするための技術、それを活用し、継続するために

学生時代と社会人の意識を比較した上で、中田はもうひとつ重要なテーマを語ります。

それは「仕事で利益を出すことの重要性を理解すること」です。

中田 「学生時代は、研究して答えを導きだすプロセスを大切にしますが、社会人となって企業の一員となると、そればかり、というわけにはいきません。社会人となったからには『利益を出すために働いているんだ』という思考が必要なんです」

会社を存続させるために、最も大切なのは人材です。人材を維持するために利益を出す、利益を出すことができれば、それを給与という形で還元できる。

そうすればまた、社会に対して価値を提供できる人材が会社に集まり、次の仕事に繋がり、よりよい社会を創っていくことができる。

これは社員の仕事に対するモチベーションにもつながるものだと中田は語ります。

中田 「利益によって、社員が豊かになり、エンドユーザまで技術が届いていく。こうした流れが重要なんです」

そんな中田も、かつてはひたすら自分の興味のあることについて研究したいと考える学生だったといいます。

縁あって入社したアジア航測の中で、視点が変わったのは、当時直属の上司であった小川 紀一朗(現・代表取締役)の存在も大きかったのだと中田。

中田 「目の前の仕事に没頭しすぎて失敗してしまった仕事はたくさんあります(笑)。しかし、失敗を糧に、成果を出すことを念頭において仕事をしなければならないということを、常々いわれ続けてきました」

「あってほしい社会」を継続させるために、成果を出すことも意識した仕事をすることを次世代の社員にも伝えていきたいと考えています。

同じゴールを目指して

技術職の中で、防災に関わる仕事を担当してきた中田ですが、大学時代や現場での経験を活かせる環境の仕事がしたいという思いは常に持っていたと言います。

中田 「上司と面談をするたびに、私が環境に興味があることや、どのようなことがやりたいのか伝え続けていましたね。

すると上司も『そういう仕事が来たときは中田がやってくれ』といってくれるようになりました。自分の意見をちゃんと伝えていたこと、それを聞いてくれる上司がいたことは非常に良かったと思っています。

この会社には話を聞いて向き合ってくれる上司や仲間がいるので、学生の皆さんにも、常に自分の思いや発想を発信し続けてほしいですね」

また中田は、現場のことを知っている人間だからこそ、社内に対しても経験を活かしていきたいと考えています。

中田 「現場にいると目の前の仕事に夢中になってしまいます。そんなときに人事部や管理部門から依頼事やルールの話などがあると、つい、『それがなければ、自分の仕事にもっと集中できるのに』と思ってしまうんですよね。でもそれは、会社のためにやっていることなんです」

お客様と向き合う現場の社員、そんな社員と向き合う人事部・管理部門の視点の違い。

中田は異動してから、その距離感に気付いたのだといいます。

中田 「会社のためにという思いは変わらないのですが、その気持ちが十分に伝わっていない場面がまだまだあると感じています。

本当は、会社の方向性を決めたら、みんなで一緒に同じ方向に向かって行きたいんです。

だからこそ『現場にいた中田がいうなら』と、部門間の思いのズレを認識し思いをすり合わせる存在になることが私の役割ではないかと考えているんです。『一緒に悩んでお互いに協力しましょう』という関係が築ければいいな、と」

全社員が同じところを目指し、会社としてのさらなる成長を思い描く中田。

これまでのキャリアを強みにしながら、熱い想いを社内に浸透させていくことでしょう。