中期経営計画の概要 2022年
──12月に新しく発表された中期経営計画の内容を教えてください。
今回、当社はデジタル技術を活用して、取引先・お客様の潜在的ニーズに応えるソリューション提案型企業「デジタルソリューション企業」を目指してまいります。長期ビジョンは「デジタルでものづくりに貢献する企業」となることです。
2022年12月現在当社の売上高の70%を自動車関連が占めており、ものづくりの分野でデジタル技術を活用し、新たなソリューション提案を行うことを目指します。その前段階として、今回の中期経営計画では設計に焦点を当てて「設計を基軸にしたデジタルソリューションを提供」することを目標に置いております。
今の当社のビジネスモデルから一歩に先に出て、お客様も気づいていない困りごと、潜在的ニーズを察知し、当社が今まで経験して蓄えてきた知見を基にデジタルの技術を用いて、当社独自のものとして解決方法、ソリューションを提案していく攻めの商売に転換していきます。
計画策定の背景
──なぜ、今回ソリューション提案型企業へ変革されたいと考えたのでしょうか?
理由は2つあります。まず1つ目は超長期的な視点で、日本における労働人口減少により、新卒・経験者採用ともに人材採用が徐々に難しくなっていくことが予想されるためです。採用人数を増やすことで業績を拡大していく現在のビジネスモデルでは今後の成長が鈍化することが予想されます。
2つ目はお客様のニーズが高まり続けることが予想されるためです。当社は創業期においては能力の高い技術者を一時的に活用したいなどのお客様のニーズに応えるため、技術者の派遣を行ってまいりました。その後、お客様の一部業務について当社で完成品まで作成する請負化を進め、この数年ではより専門性のある、技術領域別の技術者チームによる請負業務を進めています。
しかしながら、近年、自動車関連を中心とした業界の国際競争の激化により、お客様の当社に対するニーズはますます高くなってきております。それに応えるために数年前より技術者研修の抜本的改革、経験者採用による技術力の強化に取り組んできました。
ただ、業界全体の景気が悪くなると、当社の売上利益も減少してしまう、景気の波に左右されやすい状況であることは変わりません。この状況を変えるために、当社の独自技術を開発し、他社やお客様が気づいていないようなニーズを掘り起こして提案していくことが必要であると考えています。
このため、独自技術の開発力や問題解決力を高めることを新たな戦略の柱として置き、人材開発および技術開発への投資強化を進め、持続的な成長を目指す「デジタルソリューション企業」への変革を掲げました。
独自技術開発について
──独自の技術開発を行うとのことですが、どのようにされるのでしょうか?
2022年10月に技術研究機関としてイノベーションセンターを設立いたしました。ここでAIやARなどの先端技術開発を実施していきます。また、技術教育改革も順次進めており、当社の技術者が先進技術を学べる場を作ってまいります。そして技術者のアイデアを実現する体制づくり、仕組みづくりを進めてまいります。
──具体的な取り組みとしてはどのようなものがありますか?
新たな戦略的取り組みとして次の4つを掲げています。1つ目が、「既存事業のさらなる発展や付加価値創造」です。こちらでは、主に、軽量化技術の発展、環境配慮設計の推進、ソフトウエアや電子部品開発、組込/制御ソフト開発の分野拡大の3つの方向性で事業を進めていきます。
当社の売上構成の約70%を占める自動車関連産業において、開発費は増加傾向にあり、EV自動車などの次世代自動車生産割合も増加傾向となっています。次世代自動車の発展や、世界的なSDGsの取り組みは、さらなる軽量化ニーズや環境配慮ニーズへの高まりが予想されるため、技術注力分野として設定いたしました。
2つ目が、「解析事業の拡大」です。当社独自の解析技術を開発することで、試作品作成の工程を削減できるソリューションを提供していきます。試作回数の削減により、試作コストの低減やリードタイムの短縮につながります。
また将来的には、解析技術に、当社が研究開発しているAR技術を組み合わせることで、より直感的に検証できるような技術を提供し、検証工数を減らすことで、設計者のより自由な発想を促進できる環境を提供します。
3つ目が、「お客様向けDXソリューションの複数展開」です。設計ソリューションでは、図面や資料の自動作成ツール、設計検討支援ツール、設計チェック支援ツールの開発などを行っております。また、AI技術を活用したソリューションの開発を行っており、さまざまなシーンでのDXソリューションの提供に向けて事業を推進していきます。
そして最後4つ目が、「オフショア開発を含めたグローバル展開」です。業界の国際競争の激化、国内で優秀な技術者の採用が難しくなることが予想されることから海外展開を進めていきます。海外においても国内同等の品質を担保するために、アビストのものづくり思想や技術を習得した技術者を中心に拡大を目指します。
そのために、2019年よりさまざまな国籍の技術者を採用し、当社内で教育や業務を通じて技術習得を進めています。国際競争力が高まる中で、優秀な技術者の採用や、海外取引先への拡大を狙い海外展開していきます。
今後の展望
──数値目標などはございますでしょうか?
2027年9月期において売上高125億円、営業利益13億円、最終利益9.1億円を目指しています。2022年9月期では売上高93億円、営業利益7.3億円、最終利益3.6億円でしたので、売上高にて33%増、営業利益にて76%増になります。
売上高に関して既存の領域で着実に伸ばしていくことに加え、デジタル解析ソリューションなどの新領域にて売上の倍増を見込んでおります。それに伴い、利益の確保、足元の投資の成果が実を結ぶ計画です。
──最後にステークホルダーに向けてメッセージをお願いします。
社会、働き方、お客様の価値観など、当社の事業を取り巻く環境が変化する中で、私たちはデジタル技術を活用し、顧客の潜在ニーズに応えるソリューション提案型企業「デジタルソリューション企業」を目指して改革を実行していくことで、新たな成長を実現し、お客様、投資家の皆様の期待を越えて社会に貢献していきたいと思います。
今後とも宜しくお願い致します。