配信を推し進める部署で、数字とシビアに向き合った1年

▲ミュージッククリエイティヴ本部プロモーション部タイアップ・デジタルプロモーショングループ 田村 花奈。撮影日は桜が満開!本社ビルの隣の遊歩道は六本木の真ん中なのに、樹々がいっぱいで四季の移り変わりを感じさせてくれます

子どもの頃からエンタテインメントに興味があり、将来は楽しいことを発信する会社に勤めたいという願望を抱いていたという田村。大学進学時には情報と社会全体の関わりを学ぶことができる学部を選び、迷うことなくマスコミ業界を目指しました。 

狭き門を突破し、株式会社ポニーキャニオンに就職したのは2015年。最初に配属されたのは、現在のデジタルオーディオマーケティング部でした。まだCDやDVDなどのパッケージの販売が主流だった当時、音楽と映像の配信を扱う部署で、手探りの連続だったと言います。 

田村 「Apple Musicのサービスが始まり、Netflixが日本に上陸した2015年。世の中的にも会社的にも、パッケージから配信へと完全にシフトしようという状況ではなかった中で、ダウンロードやストリーミングでどれだけ売り上げを上げていくか、どうやって予算を達成できるか、その戦略を立てていくのがデジタルオーディオマーケティング部の役目でした。

私は自分が担当している音楽配信プラットフォームの中で、まだまだ母数の少なかった配信楽曲の数を増やしたり、どうアプローチすればデジタルで音楽を視聴するユーザー数を増やせるかを考えたり。当時はまだ、先行配信することでCDの売り上げに影響が出るのではないかと、懸念する制作担当者も多かった中でした。

これからはパッケージではなく配信が主流になっていくんだ、ということを世間にも社内にも訴えかけるために、チーム全員が闘っていました。デジタルオーディオマーケティング部に在籍した1年は、常に売り上げを意識して、数字とシビアに向き合った1年でもありました」

憧れのマスコミ業界に就職しても、理想と現実のギャップに苦しむ人もいます。当時は主流ではなかった配信を推し進める中での戸惑いや、新卒でいきなり結果を出すことが求められるというプレッシャーを感じて、心が折れそうになることはなかったのでしょうか。 

田村 「私の場合、入社してすぐデジタルコンテンツを扱うことになり、世界的な流れを見てもどんどん配信にシフトするべきだろうな、と思っていたので戸惑いはなかったし……プレッシャーもそれほど感じていなかったように思います。最初の1年だけでなく、入社してから現在に至るまで、会社に行きたくない!と思ったことも一度もないんです。

それはもしかしたら、大学時代のアルバイトで体力的にもメンタル的に鍛えられたおかげかもしれません。私は大学で教職課程も取っていて、学習塾でバイトをしていました。そのほかにカフェでのバイトも掛け持ちをしていたので、日によっては朝6時からカフェで働いて、大学で講義を受けて、夜は塾で英語を教える、ということもあったんです。今考えると相当ハードですけど、当時は平気でこなしていました。

塾講師って、生徒の人生を預かっている立場でもあるから生半可な気持ちではできないですし、エンタメ業界と同じく、塾も連休や年末年始は忙しくて休めないのですが、それも自分にとっては苦ではありませんでした。レコード会社での仕事にも通ずる、“人をプロデュースする”ことがとにかく楽しかったから続けられたし、その経験は今に活きていると思います」

アーティストや作品の魅力を伝えることの楽しさ

▲パリ・オペラ座にて 大学時代は、旅行するためにバイトしていたというくらい、色んなところに旅しました

入社2年目に田村が配属されたのは、テレビ、雑誌、新聞、Webなどすべての宣伝媒体を担当するミュージッククリエイティヴディビジョン プロモーション部。主に雑誌とWebを担当することになった彼女は、ますます多忙な日々を送ります。

田村 「音楽配信市場がより大きくなっていくであろうことを想定して立ち上げられたのが、音楽配信と宣伝を兼務するミュージッククリエイティヴディビジョン。その中で私が担当していたのは、雑誌やWeb媒体への窓口となってアーティストの取材をセッティングすることと、プロモーション企画です。

急成長するLINE LIVEはじめライブ配信のプラットフォームに興味を示す所属アーティストが増えてくると、ライブ配信にも力を入れるようになって。音楽だけでなく、アニメ関連の生配信や、エリアアライアンス部と組んで地方自治体の記者会見を仕切ったりすることもありました。

ミュージッククリエイティヴディビジョン プロモーション部にいた1年は、デジタルオーディオマーケティング部にいたとき以上に怒濤の日々ではあったのですが、部署内はじめ、お仕事を通して出会う方々が素敵な方ばかりでした。私はそもそも人が好きなんですよね。たくさんの方と関わってアイディアを出し合いながら、アーティストや作品の魅力をいかに伝えるか、ということを考える毎日は、やはり楽しかったです」

エンタテインメントは、いつの時代も多くの人を照らす希望の光。その力を、田村もまた信じています。

田村 「自分たちがユーザーへ届けている商品はポジティブで楽しいもの。作品を受け取った人の喜びや感動が、ライブやイベント会場だったり、SNSを通じて目に見えてわかる、感じられるというのも、この仕事の醍醐味だなと思います」

制作部での経験が視野を広げてくれた

▲YouTube Space Tokyoにて 

その後2年間、音楽の部署で宣伝を担当したのち、アーティストのCDやミュージックビデオの制作を担当する制作部へと異動。アーティストと直接関わり話をする中で、新たな学びや気付きがあったと言います。

田村 「制作部は、担当するアーティストのリリースからプロモーションまでプランを立てて、全体を見渡し、各部署とも連携をとりながら調整して、リードしていかなければいけない立場。その立場だからこそ見えるものやわかることがあるし、視野が広がりました。

一番の学びは、物事を動かすには人の意志が必要だということです。宣伝の仕事をしている時は、自分の担当する媒体や世の中のニーズを優先的に考えていましたが、直接アーティストの方と話すことで、何を伝えたいのか、どんなことをしたいのかということが見えてきて。まず表現する人の意志や視点が欠かせないものなんだというとても初歩的で当然のことに、改めて気付けたんです」

発信する側と、受け取る側。両方の想いを汲んで、バランスを取りながら最もいい形を探ることができるというのは宣伝と制作を経験した田村の武器と言えます。また、GLAYやw-inds.といった、第一線で長く活躍するアーティストを担当した経験も彼女の財産になっています。 

田村 「制作部にいた1年は、担当するGLAYの25周年イヤーでもあり、w-inds.は20周年イヤーを見据えて活動する年でもあったんです。長年最前線で活躍しているアーティストの魅力を改めてどう見せていくか、往年のファンから新たに知る方までどう楽しんでいただくかということを考えて形にしていかなければならず、勉強になることは本当にたくさんありました。

GLAYやw-inds.といった“大御所”の方たちが、私のような経験の浅い者の意見にもきちんと耳を傾けてくださることにも感謝しかありません」

変化に立ち向かうために必要なのは、知識とチャレンジ精神

▲この日も新人アーティストの取材があり、撮影後、急いで現場に戻っていった

現在、田村が所属するのは、ミュージッククリエイティヴ本部プロモーション部タイアップ・デジタルプロモーションG。デジタルと関わりの深いこれまでの経験も活かしながら、模索する日々は続きます。 

田村 「デジタル領域におけるアーティストのコンサルティングが、デジタルプロモーションG(現部署)の仕事だと捉えています。Twitter、Instagram、Facebook、YouTube、LINE、TikTok、アーティストそれぞれの公式サイトやブログなど、たくさんの発信ツールがある中で、どのツールで何を強化するのか、いつ何をどう組み合わせたら効果的なのか。そもそも、どんなコンテンツにするのかやデジタル上でどんなブランディングをしていくのか。SNSのアルゴリズム(最適化の仕組み)を解析するだけでなくそこからインプレッション(広告表示回数)をどう増やすのか、エンゲージメントを高めるにはどうすればいいのか……考えることはたくさんあるんですけど、その分やりがいのある仕事です。

社内でも社外でも、『デジタルやWebのことならとりあえず田村に聞いてみよう』と思ってくださる方たちの信頼や期待を裏切らないように、常にアンテナを張っていますし、得た情報はなるべく早くチームで共有するように心がけています。私の場合、もともと流行りものが好きなミーハーなので、情報収集は自然とやっていて、逆にプライベートと仕事の垣根があまりないかもしれません」

そんな田村は、目の前のことに意欲的に取り組むだけではなく、将来を見据えて新たな扉も開けていきます。 

田村 「よりよい仕事をするために、必要な知識はあると思っていて。2019年にWeb解析士の資格を、2020年に初級SNSマネージャーの資格を取得しました。Webマーケティングの知識や、正しい判断ができるスキルを習得できたこともよかったです。そのコミュニティに入ることで、さまざまな企業のSNS担当者と交流を持てたり、感度の高い方たちからSNSにまつわる情報をいただけたりもしているんです。 


会社のプロジェクトメンバー(VISION2030)として2030年の経営計画を立てるために、グロービス・マネージメント・スクールで2科目、クリティカルシンキング講座とマーケティング・経営戦略基礎講座も受講させてもらいました。特にマーケティングに関して学んだ知識は、今の宣伝の仕事にダイレクトに活きています」


入社してから2021年で7年目。濃密な時間を過ごしてきた田村は今、どんなことを思い、どんな夢を抱いているのでしょうか。 

田村 「データを収集して分析するということはもちろん大事ですが、それを社内のアーティストやコンテンツにどう繋いでいくか、その接着部分に携わるのは、やっぱり人間なんじゃないかな、と思っていて。自分がその役割を担っていきたいなという気持ちは強くあります。

入社選考のときに提出したエントリーシートに、『アクティブシニア世代に向けてのコンテンツを強化していくべきだと思う』と書いたのですが、急成長しているストリーミング市場において、アクティブシニア世代をまだまだとりこぼしていると思うし、我が社にはそうした世代に需要のあるカタログコンテンツがたくさんあると思います。

そこを狙えば、会社の売り上げも伸ばせるし、音楽ストリーミング市場自体の顧客も増やせるはず。自分の得意分野ではないものの、興味はすごくあるんです。

3、40年後の音楽業界がどうなっているのかはわからないですが、そのときの自分が楽しめるコンテンツがあったら素敵だなと思うので。この先も、世代ごとに楽しめるコンテンツを継続して生み出す仕事に携わっていきたいです」

仕事愛と向上心にあふれる田村。世の中がどのように変わっても、彼女は変わらずに自分とたくさんの人の“楽しい”を追い求めていきます。