数々のトラブルに見舞われながらオープンしたharevutai

▲スタッフと舞台に立つ経営本部経営企画部harevutai推進Gチーフプロデューサー・佐藤正朗(右から5番目)

ポニーキャニオンの経営本部経営企画部harevutai推進グループでチーフプロデューサーを務める佐藤は、企画や運営を含めharevutai全体をプロデュースする役割を担っています。

2019年11月1日に池袋でオープンしたharevutaiは、最新の設備を常設した未来型ライブ劇場で、大型LEDスクリーンやCG対応の透過スクリーンを備え、ライブ配信機材も揃えています。

このharevutaiのプロジェクトは、豊島区が「国際アート・カルチャー都市」実現のためにはじめた都市開発をきっかけとして、約5年前からスタートしました。佐藤は当時のエグジットチューンズ社長吉田周作から声をかけられ、プロジェクトに参画。企画書を作りプレゼンをサポートし、図面や機材を確認しながら会場の内部構成を決めていきました。 

harevutaiができるまで、ポニーキャニオンはライブやイベントを行なうための「ハコ」を持っていませんでした。だからこそ、プロジェクトに参加した社員たちの熱量は高く、細部にまでこだわり抜いてharevutaiを完成させたのです。

しかし、オープン前後はさまざまなトラブルに見舞われました。

まず発覚したのがキャパシティの問題。佐藤は500〜700人を想定して企画していたものの、建設会社からは「300人が限界」と言われたのでした。

佐藤 「アーティストにとって、キャパシティは自身の成長を表現するバロメーターでもあります。最大100〜150人くらいの小さなライブハウスから次のステップに進むアーティストたちのために、500〜700人規模であることは必須でした。建設会社から打診された300人規模ではステップアップになりません。

また、500〜700人規模でパフォーマンスするアーティストの多くは、こだわりの機材を持ち込む人も多いので、ステージの広さもきちんと確保しなければ最良のパフォーマンスを発揮できません。キャパもステージの広さも、絶対に譲れませんでした」

最終的には、当初の予定よりも楽屋を狭くしたり、トイレの数を減らしたりすることで、なんとか500人のキャパシティを確保できました。しかし、トラブルは続きます。

佐藤 「10月にメディア向けの内覧会が予定されており、1ヶ月後の準備を進めていた9月に完成したはずの天井設備を作り直さなければならなくなったり、年末には運営管理を委託していた会社から『やっぱりできません』と告げられたり、災難が続きました。特に年明けは運営担当者がいなくなってしまったので、数カ月間は僕もプロデューサーではなく現場担当者として動き回っていました」

そんななか、追い討ちをかけるように新型コロナウイルスが猛威を振るいます。

佐藤 「3月に東京でも感染拡大しはじめた際に、上長から『harevutaiで感染者を出すわけにはいかないから、運営を一旦やめてほしい』と言われました。そこでイベント主催者の方々に中止を要請しましたが、怒られてしまうこともあったんです。

4月8日に緊急事態宣言が出てようやく閉館という形を取ることにしましたが、それまでは窓口担当者として本当に大変な日々でした」

オープンから数カ月経ち、再びharevutaiを俯瞰して見るプロデューサーのポジションに戻ることができた佐藤。あらゆる意味で、忘れられないスタートダッシュとなりました。

配信完備に細かい気遣い。コロナ禍で注目を集めるharevutaiの魅力

▲”進撃の”感染症対策万全のスタッフver. 胸のサインはharevutaiの「V」

もちろん、辛いエピソードばかりではありません。harevutaiは、コロナ禍で順調に人気を集めているのです。

まず、harevutaiの利用者が評価するのは、劇場の売りである映像や音のクオリティ、そしてなにより配信設備を完備しているところです。

佐藤 「生配信の日にアーティストがharevutaiでライブしますとは、今は言えないんですよね。ファンの方が会場周辺に集まって密になってしまうから事前に告知してはいけないと、内閣府のガイドラインで決められているんです。

だから、プロモーションに結び付いてはいないんですが、結果的に業界内で配信映像や音が良いというフィードバックがあり、評判が上がっています」

harevutaiは緊急事態宣言下での閉館期間が終わってから、感染対策を徹底しながら無観客配信を推奨した運営を行なっています。これまでアーティストたちはオフラインでのライブに重きを置いていたので、配信希望は月に1〜2回しかありませんでした。

しかし、新型コロナウイルスの流行によって状況が大きく変わり、アーティストたちは無観客配信をメインとするようになったのです。そして配信設備が完備されているライブ劇場として、harevutaiは多くの主催者に選ばれています。

佐藤 「harevutaiは、新型コロナウイルスとは関係なくもともと配信を武器にしていたんです。ネット回線が3つあるので、例えば、YouTubeとLINEでライブ配信をしながら予備の回線もスタンバイできます。配信経験のある主催者の方からは、最高の環境だと言ってもらえますね。

配信環境を整えたのは、ライブを世界に発信したいという想いがあったからでした。通常のリアルライブもしつつ、配信もできる連動性を持った会場にしようと考えたんです。それが結果的にコロナ禍ですごく活きていますね」

また、harevutaiの評判が良い背景には、ポニーキャニオンならではのこだわりもあります。

佐藤 「僕がコンサートプロデューサーでもあるので、一番気になるのが導線です。建設会社が作成した当初の図面を確認すると、乗り込みスタッフが機材やグッズを運ぶ導線上に階段があったんです。階段という存在は、スタッフの労力が相当なものになり、確実に階段がある会場として認識されてしまいます。だから、多少傾斜が急でも良いからスロープにするよう依頼しました。

アーティストの支援を続けてきたポニーキャニオンの劇場だからこそ、そういった細かい配慮を徹底したんです。実際に会場の見学に来られた主催者の方を案内すると、スタッフに優しい会場だと評価してもらえます。それは本当に快感ですね」

中途半端は大嫌い。仕事をやり遂げる姿勢が評価されキャリアアップ

▲左:A&R時代に場あたりで撮影した写真が週刊誌の表紙に!?(FAKEです)右:ジャック・ダニエルを飲んで、更にロン毛でいればカッコイイ!と勘違いしていた時代(ハロウィン・パーティーで女装賞を獲得済み@Columbus Ohio)

細部にまでこだわってharevutaiのプロジェクトに貢献した佐藤は、どの仕事にも真摯に向き合うことを心がけています。そしてその姿勢が、自身のキャリアアップにもつながっているのです。

佐藤 「僕はもともと音楽活動をしていたので、自然と音楽業界へ就職しようと考えました。そしてコンサート制作会社へ入社し、転職してレコード会社や専門学校などで働いてきましたが、どれもつながりのある方からお声がけいただいたんです。

そろそろ転職しようかなと考えはじめると、必ず声をかけられる。それでキャリアを積み重ねてきた形ですね」

佐藤が要所要所で周りから声をかけられるのは、信念を持って仕事をこなす姿勢が評価され、信用を得てきたからなのです。

佐藤 「チャラチャラしていると見られることが多いので、第一印象はすごく悪いんです。でも、仕事に対してはすごく真面目にやっています。中途半端が嫌いなので、やると決めた仕事は絶対にやり遂げます。それで信用してくださる方が声をかけてくれて、キャリアが積み重なっていきました。

僕は部下にも“絶対に最後は人だ”と教えています。アンテナを常に張り、人に気を遣うことが大前提。そして謙虚でいること。それを守って仕事をしていれば、見てくれる人は必ずいると伝えています」

自身の経験から人との関わりの大切さを実感した佐藤は、部下にも人を大切にする考え方を継承しているのです。そんな佐藤は、仕事に「自分でなくてはならない」という価値を求めています。

佐藤 「“僕じゃなきゃだめだ”という仕事に価値を感じるので、僕じゃなくてもあとは大丈夫だとなったら、次のステップに進みたくなるんです。

求められるからこそより期待に答えなきゃと思いますし、やる気にもつながります。僕だから提供できる価値を、今後も突き詰めていきたいですね」

劇場の完成は、新しい未来への第一歩――harevutaiのさらなる進化

▲入口の【V】マークと。右は:「感染症対策万全!でお待ちしています。体温を測るときは要注意!」(笑)

harevutaiは未来型ライブ劇場として、今後も進化の可能性を秘めています。

佐藤 「配信設備が充実しているほか、最新の機材を完備していることもharevutaiが“未来型”である所以です。日本で透過スクリーンを備えているライブハウスは、harevutai以外にありません。透過スクリーンを使った画期的な演出ができる唯一の会場であることは、大きな強みですね。

ただ、活用する側のプロデューサーや主催者がまだ新しい技術に慣れていないので、今後は透過スクリーンや背面LEDによる演出を体験できる機会を提供するなどして、使い方をアピールしていきたいです」

また、未来型という言葉には、現在水面下で動いているさまざまなプロジェクトと連動し、新しい未来を創り出していくためのスタートの場所であるという意味も込められています。劇場ができて終了ではなく、これからも新たな未来へ向かうために歩み続けていくのです。

さらに佐藤は、今回harevutaiに盛り込めなかった要素を含んだ2つ目の会場を作ることに意欲を示しています。

佐藤 「喫煙所や収納エリアを確保したり、ステージや客席を可変にしたり、本当はこうしたいと思うことはたくさんあります。

これからも、来てもらうことで『会場がいいね』『最新機材がいいね』『演出がいいね』『劇場スタッフええね』とどんどんいいねが貯まっていくようなharevutaiにしたいですし、もし2つ目を作るなら今の劇場を上回るものにしたいと思います」

そのために、まずはharevutaiレーベルを作ることが直近の目標です。

佐藤 「『harevutaiデビュー=世界デビュー』と認識してもらえるようにしたいです。だからこそまずは多くの方に知っていただき、劇場を活用してもらえればと思います。

harevutaiはライブハウスではなく、“劇場”なんです。ライブはもちろん、舞台やイベントなどさまざまなことができるので、汎用性の高さもこれから広く周知していきたいですね」 

harevutaiの完成は、新しい未来のはじまりに過ぎない。そんな想いを胸に、佐藤はチーフプロデューサーとして尽力していきます。