多角的な取り組みが評価され、MIPを受賞

▲ラクロス部時代の久保田

久保田 綾子は、2020年より人事企画室人財育成:FBトレーナーとして、DEAN & DELUCAの各店料理長とキッチンメンバーが最大限のパフォーマンスを発揮できるための教育・育成のしくみを構築している最中です。

前年の2019年は営業部門にいながらトレーニングシェフという職務を担当。店舗にてキッチンスタッフメンバーと共に働きながら、「どんな教育方法がフィットするのか」「何に困り、何を求めているのか」OJTやコミュニケーションの仕組みをつくる上での情報集めに努めました。

久保田 「同じ目線で現場に入る事で、メンバーは会社とブランドに多くの期待を持ってくれているのを感じました。そして成長と成果を同時に求められる厳しさを乗り越えられるサポートをする事で、その現場の期待に応えられると思っています」

こうして横断的に集めた情報を元に施策を打ち、社員定着率の向上という成果をだした久保田。その結果、企業理念を体現し、活躍しているメンバーであると評価され、MIPという賞を受賞。結果だけでなく、結果を出すまでのプロセスも評価されての受賞でした。

久保田 「人とのコミュニケーション力に強みがあったこともあり、チームビルディングを含めた教育専門のシェフという初めての取り組みを形にしたことを評価して頂いたのだと思います。

最初は正直、『このタイミングで受賞か!』という気持ちで実感はなかったですね。なんとなく伝えないといけないものを形にしている最中だったので、自分で言うのもなんですが、まだ時期尚早というか。もちろんチームの協力あってこその受賞なので、自分だけの力ではないとも思っています」

「やりたい」を求め、DEAN & DELUCAにジョイン

▲入社当時の一枚(前列一番右が久保田)

何かに没頭すると生活の全てをそこに注ぎ込むタイプだった久保田。学生時代はスポーツがその対象でした。中学生時代から変わらずに部活動打ち込み続け、大学ではラクロスで全国に行くほど生活のすべてをスポーツにつぎ込んでいました。

久保田 「その頃から仲間と同じ目標を共有し、達成するために自分が何をするべきかを常に考えていましたね」

やがて就職活動を迎えるタイミングになった久保田ですが、スポーツへの情熱から上手く気持ちを切り替えらずに就職活動を行っていました。そんな中で縁があったのが入社を決めたのがサッカー用品を販売をする会社の販売職。スポーツに熱中をしてきた久保田にとって、取り扱い商品は魅力的なものばかりでした。

ところが、入社後は次第にやりがいが見出せなくなっていきます。レガシーな企業風土だったこともあり、始発で会社に向かい終電で帰宅する働き方をする中で、自身が熱中できることを仕事にしようとキャリアの方向性を変えることを決意します。

そうして久保田が選んだのは料理人の道。実は就職活動のタイミングでも興味を持っていたものの、その時には踏み出せなかった職業。新たに情熱を注ぎ込む対象として料理を選んだ久保田はの料理の専門学校に入学。社会人コースで1年間学んだ後、DEAN & DELUCAにアルバイトで入社しました。

久保田 「元々、高校生の頃に料理の専門学校に行こうかなと考えるくらい料理が好きだったんです。親からはもう少し幅を広げてみてもいいんじゃないか、ということで大学へ進学しました。ただ、その当時からアルバイトも料理関係のものをよく選んでいましたね」

入社後は持ち前の要領の良さとスポーツを通して身に付いた人間力を充分に発揮し、当時最短だった3カ月で昇格試験を受験し見事合格。社員となってからは1年ごとに店舗異動を経験し、丸の内店へ異動するタイミングでセカンドシェフに昇格。

その後、当時の店舗の料理長が新規ビジネスとしてベーカリー部門を立ち上げることになったタイミングで料理長に昇格と、速いペースで成長を続けます。

久保田 「これまでの人生の中でも、料理はすごくしっくりきた感じがありました。最初は緊張して手が震えながらもキッチンでがむしゃらに頑張っていたのですが、教えてもらうことが非常にロジカルに頭の中に入ってきた記憶があります。仕事の飲み込みが速いと褒められて、入社して3年くらいは期待の大型新人と言われ続けていました(笑)」

次に何をすれば良いのか頭の中で考え、それが実践することで業務がパズルのようにハマっていくような感覚に大きな充実感を感じていた久保田。気がつけば何か教えてもらえるのであれば休日でも出社したいと思うほど仕事に没頭します。

久保田 「同期が多く、愚痴や励まし合いながら頑張っていける仲間がいたこともあり、頑張れました。今では逆に、一社目の会社には感謝しています。

安定した仕事に就いていたら当時はそれで満足してしまっていたと思いますが、厳しい環境だったからこそ料理という道に進む決意が出来たと考えています」

他人との価値観との折衝に葛藤。転機は結婚と出産だった

▲愛娘との一枚

25歳でセカンドシェフになったタイミングで、「管理」や「教育」という料理以外のことにも取り組むようになります。ちょうどその頃、DEAN & DELUCAでは1カ月に1人のペースで人が辞めてしまう問題を抱えていました。

久保田 「教えてもらって覚える、階段を登り続けるだけだった頃は自分のことだけ考えていれば良かったのですが、立場が変わりチームでの結果を求めるようになるとそうはいきません。

自分がやりたいようにやるだけではなく、違う考えを持った人たちに同じ目標に向かって動いてもらわなくてはならない。人と働くというのはどういうことなんだろうと考え続けました」

料理の道を進み始めてから順調に成長を続けてきた久保田ですが、「人と働くこと」を自問する中で目的が違う人、ワークスタイルが違う人に対して自分がまったく納得できない、でも納得しないといけないという葛藤に苛まれます。

しかし別の価値観を持つメンバー、とくに家庭を持って働いているメンバーと話をする中で、仕事以外でのコミュニケーションをとることの重要性、目的と目標は人それぞれで相手と自分が違うことを認めることの大切さ気づかされ、価値観が変わったと言います。

久保田 「仕事に対する価値観の違いは、結婚する直前まで悩み続けてましたし、今でも悩むことがあります。異動を繰り返していたので、考える機会も多いんです。

1年ごとに既にいるメンバーたちで出来上がった文化の中に入り込んでいくわけですから。異文化の自分が入ってくることにアルバイトさんなどは相当抵抗感を持たれていたのではないでしょうか。ただ、それを繰り返していくことでどうすれば良いのか少しずつ掴めて来ている感触はありました」

そんな久保田にとっての大きなターニングポイントは結婚と出産でした。

久保田 「料理の道に進んでからは料理のことしか考えていなかったので、結婚と出産を通して自分の硬くなっていた頭が柔らかくなっていった実感があります。

自分だけでなく家族の為に働く事、その経験によって与える影響などを考えられるようになったことで、仕事に対する視野が広がり、広く人を受け入れられるようになったと思います」

そう語る久保田ですが、実は休職後に本気で退職を考えたことがあります。

久保田 「産休と育休で1年間休職しましたが、復帰する時は不安半分楽しさ半分でしたね。現場の厳しさがわかっているからこそ、自分がどこまでパフォーマンスを発揮できるかわかりませんでしたから」

その不安は、的中します。復職当時はディナータイムがメインの店で働いていたため、「ピークタイムにシフトに入れない」「限られた時間では自分が納得できるまで仕事ができない」などの理由から、仕事に対するモチベーションが保つことができずに料理長に退職を打診するに至ります。

久保田 「ところが、総料理長は、キッチンの部署で活躍するメンバーも、さまざまなジレンマを抱える事が増えてきていてるが全員が働きやすい現場作りが必要だ、その為に私の経験を生かしてもらいたい、とFBトレーナーという教育専門のポジションを作って頂きました。

自分がまさに希望していたこととぴったり合致していて。二つ返事で応えました」

メンバーが料理に集中できるように。取り組みはこれからも続く

▲現在の久保田

久保田がいま充実感を持って働けているのは、総料理長の助けがあったからだと語ります。

久保田 「総料理長に直接料理を教えてもらったのは最初の1年ほどでしたが、料理教室のサポートや開発を一緒にやらせて頂くなど、かなり目をかけてもらっていました。

『その料理の先に食べる人が見えているか?』と言われたのが胸に強く刻まれています。料理だけでなく、人に対してもその考え方を大切にしているんです。

その言葉通り、本当に人を大切にする方で、10年前に退職されたアルバイトの人ともふたりで食事に行くくらい。人によって接し方を変えない方で、人の良い点を見つけては役職や社歴関係なく引き上げてくださります」

そのような経験から、久保田が今意識していることは、「とにかく相手を承認するということ」。

久保田 「人によって背景が様々なのは当たり前なので、それを理解してそれぞれを承認すること。どこを承認するか、見つけてあげて引き伸ばすということができたらなと思っています。

褒めるということではなく、その人を認めるということです。みんなと合わせる必要はない、それぞれ強みや特性があるからそこにいていいんだよと伝えてあげたいですね」

そのような考え方をするようになったことは、久保田にとって大きな変化でした。

久保田 「自分自身、最初は料理ができてナンボだと思っていましたし、スピードや味しか求めていなかった時期があり、周りに対してもそれを求めていました。

いろいろな経験をして価値観が変わっていく中で、料理人であっても料理だけではなく別の部分も認めてあげることが大切だと思うようになったんです」

また、自らが経験をした産休・育休からの復職に対しても自身の想いを語ってくれました。

久保田 「自分が産休育休を取った頃から、キッチンで働く人たちの中にも同じ境遇の方たちが増えてきました。そんな中で、店舗メンバーが産休・育休を取る人をポジティブに受け入れるにはどうすればいいんだろうと考えるようになりました。

この会社で働いている人たちは8割以上女性なので、キャリアを1度ストップしても歩んでいける環境を整えていきたいと思っています」

「キッチンに立つ以上、第一に料理ができるようになって欲しい」その思いを軸に、自身の価値観を変化させ、成果に繋げてきた久保田。今現在も仕事に熱中しているとうれしそうに語ってくれた姿が印象的でした。久保田自身の成長が会社の成長に繋がる。メンバーが安心して仕事に打ち込めるための研修や育成の仕組みを整えるための努力は、これからも続いていきます。