安全を第一に考え、スピード感のある正確な仕事を。オペレーターとして後輩の模範に
工場の中でも初期工程にあたるグラビア印刷に携わる河原。後の工程に大きな影響を与える重要なポジションを担っています。
河原 「グラビア印刷とは、シリンダーのセルにインキを入れ、ドクターブレードによって余分なインクを掻き落とし圧胴で圧着し、フィルムに転移させ印刷していきます。私は、食品や洗剤の詰替パウチなど、多品種小ロットでさまざまな製品を取り扱っています。工場の中でも、グラビア印刷は最初の工程にあたります。
たとえば、僕らがアウト品を発生させてしまった場合、後工程がすべて止まってしまうことも。常にスピードを意識しながらも、正確・安全に仕事をするよう心がけています」
チーム内外との連携を取りながら業務にあたっていると言います。
河原 「リーダーである僕が製品を管理し、後輩がインクの残量を確認したりという具合に、明確な役割分担のもと、こまめにコミュニケーションを取って互いにフォローし合いながら作業を進めています。また、品質判定員を務めているので、自分の担当機以外のメンバーとやりとりすることもあります。色の出かたを見て、ライン稼働してもいいかどうかをジャッジしたり、不良が出たときの対応を検討したりするのも僕の仕事の一部です」
仕事には厳しい姿勢で向き合いながらも、職場には和やかな空気があると話す河原。上司にも気軽に相談できる環境がある言います。
河原 「社交的な人が多く、とっつきづらい人がいない印象です。仕事の話とは別に軽く雑談を交わすなど、とても良い雰囲気があると思います。上司に対しても気軽に話しかけることができて、相談にのってもらうことも多いですね。
一時的に期間限定で他部署に派遣されたことがあったのですが、和気あいあいとした空気があり、疎外感を抱くことはありませんでした。風通しの良さは、グラビアの部署に限らず、製造課全体に共通していると思います」
そんな河原には、仕事をする上で大切にしていることがあります。
河原 「まず第一に、ケガをしない、させないこと。オペレーターとして後輩と共に安全に仕事をすることを最優先しています。また、当たり前のことですが、仕事上のルールをきちんと守ることも大切にしていることのひとつ。30代を迎えたころから、後輩たちが自分の所作をよく見ていると感じるようになりました。手本となるべき立場にあることを常に意識するようにしています」
“CAN”の文字に導かれるようにして東洋製罐へ。周囲に支えられた若手時代
東洋製罐には中途で入社している河原。転職するに至った経緯は、意外なものでした。
河原 「前の会社に通勤するとき、いつも豊橋工場の前を通っていたんです。当時は何をしている会社か知りませんでしたが、建物の正面に掲げられている“CAN”の文字がなんとなく目に入っていました。前職をやめようと思って求人広告を見ていたとき、見慣れたその“CAN”の文字が目にとまったんです。
『いつも前を通っているあの会社か』と思って調べたところ、ペットボトルなどを製造している会社であると知りました。生活に身近な商品の中身ではなく容器をつくる、いわば“縁の下の力持ち”のような仕事に興味を感じ、選考を受けてみることにしたんです。
“CAN”の文字に縁のようなものを一方的に感じていたところがあったと思います。転職当時はまだ10代。未経験での転職にこれといって不安はなく、『いろいろやってみたい』という気持ちで挑戦したのを覚えています」
無事に入社を果たした河原。製造課に配属され、2022年11月現在にいたるまで一貫してグラビア印刷に携わってきました。
河原 「初めはインクを作る作業を担当しました。1年ほどして、製品の品質を確認しなければならないなど、仕事内容がまったく違うものになりました。戸惑いながらも、リーダーの方に注意点や不良が発生した際の対処について教えてもらい、逐一ノートにメモをとりながら、一つひとつ仕事を覚えていきました。入社して5年目からはリーダーを任されていました」
入社当初はなかなか仕事の勘どころがつかめず、苦労した場面が多かったと振り返る河原。自分に代わって先輩がインクを作ってくれるなど、周囲から支えられることも少なくありませんでした。とくに印象に残っていることがあります。
河原 「仕事に遅れが出ると、取り戻そうとして慌ててやろうとするところがあったんです。しかし、ミスをしたりして、かえって時間がかかっていました。ある日、そんな自分の様子を見かねた先輩が、『慌ててやるのではなく、落ち着いて普段通りにやればいい。そうすればミスが減って、最終的に仕事が速くなる』と助言をくれたんです。たしかにそうだと腑に落ちて、それ以来、遅れが出た場面でも慌てないよう心がけています」
技術的な面だけでなく人間的な面でも自身の成長を実感
チームの後輩や、同じ機械を担当する別のメンバーらと意見を交換しながら、トラブル対策や業務効率化に積極的に取り組んできたと話す河原。技術的な面だけでなく、人間的な面でも自身の成長を実感できていると言います。
河原 「印刷工程においてトラブルは日常茶飯事。入社して間もないころは、何かあればすぐに先輩を頼って、解決策を教えてもらっていました。経験を重ねた今では、どんなトラブルにも独力で対応するなど、再発を防ぐための対策を含め、ひと通り自分でこなせるようになったと思っています。その点では、成長したといえるのかもしれませんね。
また、20代前半くらいまでは、ちょっと何か気に障ることがあるとすぐに感情的になってしまっていたのですが、今ではそんなこともなくなりました。皆で折り合いをつけながら協力して進めるほうが良い結果につながるとわかっているので、思った通りにいかないことがあった場合でも、メンバー間のコミュニケーションによって解決するようにしています。メンタルな部分をコントロールできるようになったのも、この会社に入ってからのことですね」
そうやって常に自身をアップデートし続けてきた河原。さらなる成長を目指し、新たな挑戦にも取り組んでいます。
河原 「最近、機械保全技能士と危険物取扱者の国家資格を取得しました。機械保全技能士の資格があれば、機械が万が一故障しても、自分で直したり壊れた原因を理解したりすることができます。
また、豊橋工場ではグラビア印刷で使うインク以外にも危険物を多く取り扱っているので、仕事をする上で何かと役に立つと考えました。どちらの資格も会社から指示されたわけではありません。業務中に勉強するわけにいかなかったので、子どもを寝かしつけた後や、早めに出勤して駐車場に停めた車内で参考書に目を通すなど、時間のやりくりは工夫しました。
『成長したい』という想いが根底にあると思います。あとはやると決めたからには、投げ出したくないという気持ちもあって。モチベーションが下がることは一度もなかったですね」
衰えることのないモチベーション。目指すのは、マルチに活躍できる技師
入社以来、15年にわたって印刷の工程に関わってきた河原。仕事のやりがいを感じる瞬間についてこう話します。
河原 「工場の一歩外に出てコンビニやスーパーに行くと、さっきまで自分が作っていたものがすぐ見つかるんです。『この前つくったこれ、不良が出てないかな』とつい仕事をしているときの観点で見てしまうことも多いのですが、そうやって自分がつくったものをたくさんの方が使ってくれていると思うと、仕事への意欲が高まります。
加えて、グラビア印刷の部署に関しては、予定の進行など自分の裁量で決められることが多いんです。達成感が得られやすい環境があると思います」
今後は、いまとは違う工程にも携わってみたいと意欲を見せる河原。将来の展望についてこう語ります。
河原 「一時的に別の部署で仕事をした経験から、グラビア印刷以外の工程を担当してみたいという気持ちが芽生えました。製造課では部署異動がほとんどないので、実現は難しいかもしれませんが、部署が変わっても一人前に仕事ができるようなマルチに活躍できる技師になることがいまの目標です」
また、社内での立ち位置として、周囲が話しかけやすい存在になれればと言う河原。
河原 「同僚や後輩たちが気軽に相談をもちかけることができる、親しみやすい存在でありたいですね。技術や知識の面だけでなくプライベートのことも含め、どんなことでも頼られるような人でありたいと思っています」
「会社を辞めたいと思ったことはもちろん、入社してからこれまで仕事へのモチベーションが下がったことがない」と話す河原。リーダーとして、またプレイヤーとして、これからも自身の成長にブレーキをかけることはありません。