やりたいことが見いだせずにいた日々から、ソフトバンクに入社するまで

▲会社にて

2021年11月現在、ホームケア土屋札幌でコーディネーターとして日々、汗を流す相馬聡。相馬がコーディネーターになったのは、わずか1か月余り前。異業種から介護業界にやって来て、札幌で修行する彼ですが、もともとは埼玉県出身。

相馬 「子どもの頃は野球大好き少年で、中学に上がると野球部に入りました。途中、両親の転勤で北海道の札幌市に。そこでも野球を続けました。初めての北海道は、寒さと雪の多さにびっくりでした」

そんな北海道でも変わらず常に体を動かしていたという相馬。中学卒業後、家庭の事情もあり、働きながら学校に行こうと、通信制の高校に通います。

相馬 「アルバイトでしっかり稼ぎながら、高卒の資格も取りたいなと。がむしゃらでした。まずは目の前のことをこなすことに一生懸命でした。アルバイトでは冷凍庫の中で10~12時間、作業したことも」

仕事、レポートの作成、週に1~2回のスクーリングの日々。その忙しさの中で相馬は、将来への展望をなかなか見い出せずにいたと言います。

相馬 「何の仕事に就きたいか、何をやりたいのか、毎日が精一杯で、そこまで考えが及びませんでした。進路もなかなか決められず」

卒業後、相馬は派遣会社に登録。2003年よりインターネット(ADSL)回線の契約を取る接客の仕事に就きます。当時は、PCが一般にどんどん普及してきた頃。インターネットの知識もなく、不安な中、相馬は先輩に教えてもらいながら知識を吸収し、接客の腕を磨いていきます。

その後、同業種の仕事を経て、携帯電話の主流がスマートフォンに移り変わろうとする中、相馬はソフトバンクへの正社員雇用を見据えて、派遣会社に登録。携帯電話の販売スタッフを務めます。そして30歳目前の2011年、相馬はついにソフトバンク株式会社に入社を果たします。

相馬 「契約社員から始めて正社員になったとき、家電量販店で店舗のリーダーを任せてもらえました。それまではプレーヤーとして、自分自身の契約数などの数字を追っていくといった、いわば個人の仕事でしたが、店舗のリーダーになってからは、全体を見るようになりましたね。

チームとして、いかにどう目標を達成していくか、人を育てるという仕事もあるので、責任感の持ち方が変わってきました」

相馬はその後、営業に昇格。店舗スタッフのシフト調整などのマネジメント、人材育成、顧客獲得のためのレクチャーを担当し、9年間在籍しました。

重度訪問介護の業界へ

▲愛犬と

相馬は、40歳目前で自分自身を見つめなおす中で、新たなことに挑戦したいと、転職を決意します。

相馬 「学生時代はやりたいことが見つかりませんでしたが、人に携わる仕事を続ける中で、自分の方向性が徐々に見えてきました。お客様から感謝の言葉をいただいたときにやりがいを感じたり、販売・営業をする中で、人と関わる仕事が好きなんだということが分かってきました。

周りからは『どうしてソフトバンクを辞めちゃうの?』と、色々と言われましたが、今までやってきたもの以外のことにどうしても挑戦したくなったんです。当時はもう結婚していましたので、妻にも自分の決心を伝え、応援すると言ってもらえて転職しました」

相馬が選んだのは、介護の道。まずは自身のスキルより、自分に合う職業という視点で選んだと言います。それまで、人と人のつながりを大事にして仕事をしてきた経験を介護職で生かせるのではと考え、相馬は2020年4月、重度訪問介護(重訪)に足を踏み入れます。

相馬 「実は、介護=高齢者のイメージしか持っていなかったので、重訪を高齢者介護だと思っていたんです。もちろん色々と調べてはいたんですが、あまりよく分かっておらず、研修で初めて、それが重度障害者を介護する仕事だということを知ったんです」

研修で相馬は、重訪の制度は障害当事者が行政に要求したことから始まったこと、それまで障害者が嘗めさせられてきた辛苦の歴史、障害者運動の過激とも受け取れるような激しさに衝撃を受けます。

相馬 「衝撃的でしたね。今まで自分が何も知らなかったことを思い知らされました。そういう歴史を経てきた障害者支援に自分が携わることに緊張感を覚えました」

研修では、医療的ケア(喀痰吸引と経管栄養)の講義や実習もあります。また、障害当事者から直接、地域生活やコミュニケーション方法などを聞いたりもします。介護と言えば施設でのイメージしかもっていなかった相馬は、在宅ケアに関しても驚きを隠せませんでした。そんな相馬ですが、重訪の在り方を知るにつれ、やる気が出てきたと言います。

相馬 「誰かの役に立てる仕事がしたいという気持ちが、まず強くあったので、この仕事だったら、サポートを通して役に立てるんではないかと。重訪については全く知識がなく、不安ではありましたが、今までも未経験で仕事に取り組むことも多くあったので、なんとかやっていけるのではないかと思いました。

それに、1対1で人と関わる介護なら、コミュニケーションを通して仕事をしてきた経験が生かせるのではないかと思ったんです」

そうして相馬は、2020年4月、前職の重度訪問介護事業所に入社しました。

初めて知る重度訪問介護。見守りの重要性を知る

▲クライアントと

重度訪問介護事業所に入社した相馬は、まずは日勤からスタートします。最初に支援に入ったのは医療的ケアのあるALS(筋萎縮性側索硬化症)の方のお宅でした。

相馬 「最初は上司や先輩が同行という形で一緒に現場に入ります。私はその時、障害をお持ちの方とお話するのが全く初めてだったので、それまで持ったことのない新しい感覚でした。

そして、何よりも戸惑ったのが、『見守り』という時間があることでした。今までは、自ら動いてアクションを起こしていく仕事に就いてきたので、座って待機している時間は、そわそわしてしまいましたね。何をしたらいいんだろうと」

「見守り」とは重訪の肝と言われる業務で、利用者からの指示がない限り、傍で待機している時間のことです。今まで経験したことのない、何もしない時間。困惑する相馬は上司に相談します。

相馬 「上司が教えてくれたのは、『見守りは、利用者をしっかり観察して変化がないか見ている時間。身体を動かさなくても立派な仕事なんだよ』ということでした。それから、その方がテレビを見ているときに一緒に見たり、他愛のない会話をしたりして、利用者の生活の中に入って仕事をする中で、『見守り』がプライバシーを守るのに利用者にとって大切な時間であることに気づいていきました」

しかし、介護の技術や知識が全くない中でスタートした相馬は、はじめは自信がもてなかったと言います。

相馬 「何をしてても不安で、これでいいんだろうかと。利用者の要望にも上手く応えることもできず、迷惑を掛けているんじゃないかと、ネガティブな気持ちでいました。そんな時、利用者から、『介助には一つ一つに理由があるんだよ』と教えていただいたんです」

それ以来、相馬は一つ一つの介助の理由をしっかりと考えながら仕事をこなす中で、次第に自信もつき、気持ちも上向きになってきたとのこと。そしてある日、クライアントから初めて感謝の言葉が。

相馬 「初めて『ありがとう』と言ってもらえたときは、涙が出そうなくらい嬉しかったです。今までやってきたことが間違いじゃなかったのかなと思えるようになって、その言葉が今の自分にもつながっていると思います」

相馬はほぼ毎日、ALSの利用者の支援に入り、その約半年後の2020年11月、同じ重度訪問介護事業者であるホームケア土屋札幌に入社しました。

クライアントの安心な暮らしを目指して

相馬はホームケア土屋札幌に入社後、ALSや筋ジストロフィー、パーキンソン病のクライアント(利用者)の支援に日勤・夜勤問わず入り、喀痰吸引や経管栄養といった医療的ケア、食事・身体・排泄介助などの生活介護の経験を積んでいきます。クライアントそれぞれに合った介助方法を身に付け、その中で心を開いてもらえるよう、コミュニケーションを取ることを大切にしてきたといいます。

相馬 「クライアントの好きなことをきっかけにして、信頼関係を深めていった感じです。スポーツが好きな方なら一緒にテレビを見て、応援しているチームとか、共通点を見つけて話題を拡げていったり。技術だけでなく、心の面からも安心して生活してもらいたいということがいつも念頭にありました」

最初は怖かったという医療的ケアも、クライアントの要望に応えながら常に緊張感をもって丁寧に行うことで、失敗もなくやってきたという相馬。どこまでクライアントの指示に従うか、困惑を覚えた時はその都度上長に相談し、何よりも安全を心がけてきたと言います。そうして相馬は2021年10月、コーディネーターへと昇格しました。

相馬 「まだコーディネーターになって日も浅いので、前任の方にフォローしてもらっている段階ですが、何よりもまずシフトの面で支援に穴を開けるわけにはいかないという責任を強く感じています。クライアントがご自宅で安心して生活できるように、バックアップ体制をしっかりと作っていきたいですね。

そして、チームワークもとてもいい事業所なので、自分自身が介護の知識や理解を深めていく中で後輩のアテンダントにそれを伝えられる存在になって、よりチームの中の信頼関係を大切にしていきたいです」

今後はクライアントやアテンダントの管理のほか、他事業所や相談員との打ち合わせ、書類作成などの事務作業といった、新しいことへのチャレンジに責任感と共に楽しみを覚えている相馬。自宅ではサッカー観戦で活力をもらったり、ペットに癒されているよう。

相馬 「妻が連れてきたチワワと一緒にいます。もう16歳で足も弱くなってきているので、よろよろと歩く状態ではあるんですが、ご飯はもりもり食べてくれます。先日は、ヒョウモントカゲモドキというヤモリを家にお迎えしました。こちらも生き物が好きな妻が買ってきて。僕も犬が好きで、お互い動物好きなのが結婚のきっかけにもなったんですが、さすがにヤモリにはびっくりしました。表情がかわいくて癒されるらしいんですが、基本、寝てますね」 

そんな相馬が好きな土屋のバリューは「あらゆる人間関係の基盤は信頼、まず自ら信頼を提示しよう」。

相馬 「アテンダントとクライアントが初めて会うとき、アテンダントもそうですが、クライアントも、この人はどんな人なのか、どんな支援をするのか、と不安だと思います。その中で、安心して自宅で過ごしてもらうには、この人なら自分の支援を任せられると思ってもらえるような信頼関係が必要だと思うんです。そのためにも、こちらが自らの行動で示すことが重要だと考えています。

クライアントとコミュニケーションを取る中で、要望をきちんと解決できるように、例えばいつもの姿勢が今日はつらそうだからお声がけするなど、目配りや気配りを心がけて動くことを意識して支援することで信頼につながっていけたらと考えています」

人と関わることが好きな方は、その経験を介護に生かせると話す相馬。責任を持ち、信頼を大切にしながら、相馬はクライアントとアテンダントの心がつながる支援を目指して、一歩でも成長する明日を思い、今日も業務に励んでいます。