最近、メディアなどで目にする機会が増えた「リスキリング」という言葉。

まだ耳馴染みの薄い方も多いかもしれませんが、経済産業省が「デジタル時代の人材政策に関する検討会」で、リスキリング推進によるデジタル人材の育成を検討しているなど、最近注目を浴びている「人的資本経営」の文脈においても、リスキリングの必要性が語られています。

政府や企業視点で考えると少し遠い話に聞こえるかもしれませんが、私たちがキャリアを歩む上での重要なワードでもあるのです。たとえば、みなさんは今抱えている不安はありますか?先行きが見えない世の中で、将来に漠然とした不安を感じていたり、スキルアップやキャリアアップで悩んだりすることもあるのではないでしょうか。

そうした不安を解消する一手になり得るのが、新しいスキルや知識を身につける「リスキリング」です。本記事では、働く人がどんな不安を抱き、新しいスキルや資格の取得に対して、どのように感じ、考えているのかを紐解いていこうと思います。

多くの人が感じている「将来の不安」

今回、調査の対象になったのは、20~30代前半の会社員1000人です。

まず初めに、「現在の職に対して、将来への不安(※)を感じたことはありますか?」と質問したところ、約7割の方が不安に感じたことがあると回答しました。

※倒産するかもしれない、辞めたいが生活のために辞められない、転職するスキルも経験もないなど

「感じたことがある(今はさほど感じていない)」「今も感じている」と回答した方からは、次のような具体的な不安な声があがっています。

<不安を感じていること>
・営業職のため成績次第では年収が下がる年もあるので、生涯年収が不安(20代/女性/愛知県)
・ボーナスが数%ですがカットされて、このまま下がり続けたらどうしよう、と不安になった(30代/女性/滋賀県)
・いつどんな会社でも倒産や統合があるかわからない(30代/男性/埼玉県)
・子どもが産まれて、今の会社で仕事と子育てと家事をこなせるのか心配。何でもかんでも値上がりして、給料は変わらないと本当に困る(30代/女性/新潟県)

不安定で先の読みにくい社会情勢や物価高騰などに加えて、職種やライフスタイルを起因とした不安まで、幅広い要素が不安の種となっているようです。

不安要素をなくすために取り組んでいることは?

多くの方が将来に不安を感じているという結果になりましたが、不安を感じている方々は何か行動を起こしているのでしょうか?

「将来に対しての不安要素をなくすために取り組んでいることはありますか?」と質問したところ、「ある」が44.4%、「ない」が55.6%という結果になりました。

取り組んでいない理由としては、「何をしたらいいのかわからないから」という回答が半数以上を占める結果に。不安の要因は一つとは限りませんし、複数の要因が重なってしまうと、どこから手をつけていいのかがわからずに、そもそも何をしたらいいのか、と悩む方も多いのではないでしょうか。

また、「時間がないから(13.7%)」や「仕事に精一杯でキャパシティに余裕がないから(10.7%)」といった、取り組むべきことがわかっていたとしても、どうにもならないという結果も上位に来ています。

一方で、取り組んでいることが「ある」とした方はどのようなことに取り組んでいるのでしょうか。

<取り組んでいること>
・資格取得のための準備、他会社と接点を作る(20代/女性/北海道)
・人生を楽しむために趣味や生きがいを見つけようといろいろなことに興味をもっている(20代/女性/京都府)
・転職に役立つように資格の勉強。自分の市場価値を高める為の教養を勉強する。通信制大学に通っている(20代/女性/神奈川県)
・教員として働いてはいないけれど、教員免許は保持し続けるように昨年更新をした(30代/男性/三重県)

「人生を楽しむために趣味や生きがいを見つけよう」という回答からは、不安が多い世の中でも人生を楽しもうとするマインドが感じられます。

一方で、資格を取得したり、教養を高めたりといった、スキルや知識を身につけることで自分自身の価値を高めている方が特に多いようです。

同調査では、転職を視野に入れている方が40.8%、現在の会社で働き続けながら安定を目指す、もしくは出世・昇格を目指す方が46.7%おり、活躍する人材であり続けたいという思いが感じられます。

半数以上の人が感じているリスキリングの必要性

資格取得など、スキルアップの必要性を感じている人が多いようですが、「リスキリング」に関してはどのように感じているのでしょうか?

「仕事をしている中で、リスキリングの必要性を感じたことはありますか?」と質問したところ、半数以上の方が「かなりある(14.8%)」「少しある(40.4%)」と回答しました。

「ある」と回答した方に具体的にどのようなときに必要と感じるかを尋ねると、次のような回答が寄せられました。

<リスキリングが必要だと感じる時>
・ITに関して詳しい人が会社に少ないとき(20代/女性/東京都)
・人事考課にフィードバックがない(20代/女性/京都府)
・紙を使用した報告書や社内回覧をしている際に、ペーパーレスの必要性を実感したとき(IT技術の必要性)(20代/男性/千葉県)
・外部出向の際、同年代の他社社員と比較して発表能力に欠けていると感じた(30代/男性/東京都)

昨今、世の中でデジタル人材の不足が叫ばれていますが、業務レベルでも課題を感じている方が多いようです。

また、将来のことを考える上でも、スキルや資格の取得が必要であると多くの人が考えているという結果になっています。

すでにリスキリングに取り組んでいる方も多く、3割以上の方が現在取り組んでいる、過去に取り組んでいたという結果となりました。また、取り組もうと考えている方が4割近くいることからも、スキルや資格の取得を通して将来の安定性やキャリアアップを図りたいという方は非常に多いという結果になりました。

【調査概要】「リスキリング」に関する調査
・調査期間:2022年12月9日(金)〜2022年12月11日(日)
・調査方法:インターネット調査
・調査人数:1,003人
・調査対象:20代~30代前半のサラリーマン
・モニター提供元:ゼネラルリサーチ

リスキリングに取り組んだ人の実体験

ここからは、リスキリングに実際に取り組んだことのある方の声をご紹介します。
※掲載内容は記事公開当時のものです

▶︎freee株式会社

事業内容:「クラウド会計ソフト freee会計」と「freee人事労務」を提供

・業務内容:エンジニアとしてプロダクトの機能改善や社内向けA/Bテスト基盤の改善を担当
・新しく学んだこと:プログラミング
・学んだ背景:

2018年4月、freeeにビジネス職として新卒入社した立花さん。マーケティングチームに配属され、約2年間、オンライン領域を中心としたマーケティング業務を行ってきました。(中略)

立花さん 「広告は、端的な表現で『freeeって良さそう!』って思ってもらわないといけません。

しかしそこにはデザインや文字数制限の都合上、伝えきれないことがあります。例えば『○○するとあっという間に業務が終わります!』というフレーズを使ったとして、それが正しいとしても、『○○する』以外の部分にユーザーが難しさを感じる場合もあるじゃないですか。

そんな『間違ってはないけれど、他の側面も考慮したら100%そうとは言い切れない』ものを日々扱っていることに、心のどこかでモヤモヤが溜まってきたんです。そんな気持ちに目を瞑りながらマーケティングを続けるより、プロダクトを良くする事に直接関われるエンジニアになりたいと思うようになりました」

→ストーリー:「納得感」がキャリアの分岐点に。マーケからエンジニアに転身した私の挑戦の軌跡

▶︎デル・テクノロジーズ株式会社

事業内容:個人・法人のお客様を対象に、パソコン・モバイル端末から基幹システムやクラウドの導入支援、セキュリティサービスに至るまで包括的な IT ソリューションを提供

・業務内容:UDS製品専門の内勤営業として公共のお客様(主にヘルスケア領域)を担当
・新しく学んだこと:営業スキル
・学んだ背景:

山田さん 「1年目のある日、パートナー企業へ製品説明を行うトレーナーにアサインされました。

まだまだ製品知識も浅い中でトレーナーを任せてもらうという重圧。ベテランの先輩方に教えを仰ぎ、ぬかりなく準備に励みました。1日がかりのトレーニングを終えると、参加者の方々からお褒めの言葉をいただいたんです。

がんばって準備したことが実を結ぶという成功体験でした。これがきっかけとなり、お客様とコミュニケーションを取る立場への興味が高まっていきました。障害対応にあたる際にも、お客様のIT環境を知ることでその対応方法は異なります。

どういった基盤を使っているのか、どういった構成が良いのか……。お客様を知るために積極的にコミュニケーションを取ることが増えてきました。提案フェーズからお客様と関わればもっとおもしろいだろうなと感じ、営業職(Next Gen Sales Academy:通称NGSA)の公募を見つけ、気づけば応募していました」
※NGSA:育成にフォーカスしている組織

→ストーリー:基礎から学ぶために選んだストレージの世界。営業としてのやりがいを支えるアカデミー制度と製品の優位性

▶︎富士通株式会社

事業内容:テクノロジーソリューション、ユビキタスソリューション、デバイスソリューション

・業務内容:人材育成部門にてIT分野の講師や研修運営を担当。本業の傍らデザイナーとしても活躍中
・新しく学んだこと:デザイン
・学んだ背景:

フィンランド留学から戻り、人材育成業界への期待を胸に富士通ラーニングメディアへ入社した澤さん。「最初は苦労した」と当時を振り返ります。

澤さん 「新しい環境になかなか馴染めなくて。慣れるのに必死で、どこか消極的にもなっていました。自分が思っていることを周囲にうまく伝えられず、自分の殻に閉じこもってしまったり。目の前の業務に忙殺されて、入社前に『やりたい!』と考えていたことをどんどん忘れていく感覚がありました」

袋小路から抜け出せずに悶々としていた澤さん。2022年になり、異動という転機が訪れます。

澤さん 「異動とともに業務がガラっと変わりました。そして新しい上司から『澤ちゃん、何をやりたいの?』とストレートに訊かれたんです。それで改めて考えてみました。人材育成業界という枠にとらわれずに、いま私は何をやりたいんだろうなと」

澤さんの心に真っ先に浮かんだのが「デザイン」だったといいます。

→ストーリー:「何をやりたいの?」上司の問いから行動へ。キャリアに悩むすべての人に伝えたい想い

▶︎三菱ケミカルグループ株式会社

事業内容:医療用医薬品を中心とする医薬品の製造・販売

・業務内容:顧客の声やコミュニケーターの応対品質などを分析しながら、部内各業務のRPAの導入・推進に携わる
・新しく学んだこと:RPA(Robotic Process Automation)
・学んだ背景:

実は北里さんがRPAに関わることになったきっかけは、上司からの推薦。推薦された当初は「RPAって何?」という、全く知識のない状態だったと北里さんは振り返ります。

北里さん 「最初は何も分からず、困惑もしましたね。でも、当時は会社としてRPAを導入したばかりということもあり、社内説明会や研修を受ける機会がありました。さらに、ロボット開発時にはRPA事務局からの手厚いサポートもあったので、比較的スムーズに業務に入ることができました」

→ストーリー:業務効率化の鍵を握るRPA。RPA未経験者が挑む「真の働き方改革」への挑戦

新たなスキルを習得しようと挑戦した方の中には、業務におけるモヤモヤや不安だけでなく、好奇心などから新たな挑戦に取り組む方も多いようです。

「リスキリング特集」では、新たなスキルや知識の取得に挑戦した方だけでなく、社員の学びの機会を創造する方々のストーリーもご紹介しています。ぜひあわせてご覧ください。

【関連リンク】
特集:リスキリング