海外経験ゼロで、突然の中国駐在を経験した前職

▲シャンティ国際ボランティア会 クラフトエイド課 嘉味田 倫慧(かみた ともえ)

シャンティ国際ボランティア会(以下、シャンティ)は、“買い物でできる国際協力・教育支援”としてフェアトレード商品を取り扱う「クラフトエイド」事業に、1985年から取り組んでいます。始まりは、1985年にタイ東北部のラオス難民キャンプ内でつくられた手工芸品を日本で紹介したことでした。

2020年4月現在では、タイ、カンボジア、ラオス、ミャンマー、アフガニスタンの生産者たちとパートナーシップを組み、それぞれの伝統技術を生かして、手づくりしたものを日本で販売しています。 

そして、2016年からこの事業を担当しているのが、クラフトエイド課の嘉味田です。 

嘉味田 「シャンティに入る前は、アパレル企業に5年間ほど勤めていました。2年間は日本で働いて、その後3年間は中国の上海で、店舗勤務をしていました」 

今となってはアジア各国のパートナーと連携しながら、クラフトエイドの商品企画から販売までを担う嘉味田ですが、当時上海への異動は青天の霹靂だったそう。 

嘉味田 「上海で勤務することが決まったとき、海外に行ったことすらもなくて、初めての海外経験が引っ越しだったんです。前日まで日本で忙しく仕事をしていて、準備も何もできず、スーツケースをふたつだけ抱えて、バタバタと上海に到着して……。

その日の夜は大泣きしました。『海外=知らなくてこわい』というイメージが強くて、とても不安でした」

空港を降り立つと、もうそこは日本とはまったく違う状況。言葉もわからない。日本で使っていた携帯もつながらない。「こわい」という状況を脱して、知らない土地で生きていくためには、どうすればいいのだろう……。そう考えた嘉味田は、自分から知ることが大事だと考え、すぐに一歩を踏み出しました。 

嘉味田 「最初の1週間ぐらいは、どうしよう……とうろたえていたのですが、とりあえず外に出ていくようにしました。近所のおばさんに話しかけてみるなど『自分からいろんなことを知ろう』と思ったんです。そうしているうちに、どんどん楽しくなってきて、海外にも興味を持つようになりました。 

店舗勤務をしているときも、中国語も英語もわからない中で接客をしていたのですが、お客さんが中国語講座をいきなり始めてくれることもあって。とても人懐っこいし、困っているとお世話を焼いてくれるので、海外の人とコミュニケーションすることの楽しさを上海では知りました」

フェアトレードへの関心から、「国際協力」への関心に

▲カンボジアのプノンペン郊外の工房にて。生産者ヴィレッジワークスと新商品のデザインに関しての打合せ (c)橋本裕貴

涙の初日から一転、持ち前の明るさと冒険心を生かし、充実した3年間を過ごしました。そして、上海勤務を終えた後、再び日本で働き始めた嘉味田。 

嘉味田 「カラフルなものや刺繍が好きだったので、前職のアパレル企業は手づくりの刺繍などを扱うエスニック系のブランドでした。そこではフェアトレードの商品も扱っていたんです」 

フェアトレードとは、途上国の原料や製品を適正な価格で継続的に購入し、従来の生産と販売の不均等を正し、生産者や労働者の生活改善と自立を目指すしくみです。シャンティでは、収益金は生産者への継続的な支援、アジアの子どもたちへの教育・文化支援、図書館活動支援に使われています。

嘉味田 「フェアトレードの商品について、店舗で働いているスタッフにも正しく知ってもらえるように伝えることは大変でした。さらにスタッフがお客様に伝えることはなおさら難しいし、浸透しにくいんです。 

この経験から、フェアトレードにも関心を持ち始めたのですが、フェトレードが“国際協力”という仕事につながるとは、当時は思っていませんでした」 

フェアトレードに関心が沸いた嘉味田は、日本帰国後もフェアトレードや国際協力などの本を読み進め、フェアトレードが国際協力の仕事につながるということにあるとき気がつきました。 

嘉味田「上海勤務時と比べて、日本での仕事に物足りなさを感じていたこともあり、転職を考え始めたのですが、あらためて自分が何をしたいのかを考えた時に、頭に浮かんだキーワードが“海外”と“国際協力”でした」 

ただ、NGO業界の多くが採用条件として、業界経験を挙げており、経験のなかった嘉味田は「未経験可」を検索。そうして見つけたのが、シャンティの職員募集でした。 

嘉味田「もともと販売の仕事で店舗を任せされていて、資金繰りの重要性は感じていました。NGOの活動も絶対的に資金が必要ですよね。その部分で力になれれば、と思い、支援者リレーションズ課に応募して、シャンティに入職しました。未経験可、というのも大きかったです」

こうして2016年10月に支援者リレーションズ課(当時名称)として入職したのち、前職の経験を買われ、半年後にクラフトエイドに異動となりました。

単純なようで実は複雑な「つくって売る流れ」

▲現地へ赴き、新商品のサンプルチェック (c)橋本裕貴

クラフトエイドでは、春に新商品を出していますが、嘉味田は商品の企画・開発、販売、カタログ作成まで担っています。年に1回程度、担当している国に訪問して、村のつくり手さんに会いに行くことも。 

嘉味田 「つくっている現場を見ないと、新しい商品をつくる上でも、販売する上でも、理解を深め、その先に広められないのです。 

ただ、シャンティに入る前は、NGOは現地にもっと頻繁に行っているイメージでした。しかし実際はそうではなく、現地に行けるのは一握り。布の縫い方や生地など、テキストベースでは伝えることが本当に難しくて、『今すぐ現地に行きたい!』と思う場面もしばしばあります」 

さらに、現地のパートナー団体によってはインフラがまだまだ整っておらず、やりとりに時間がかかってしまう場合も。 

嘉味田 「もっと密に連絡を取ったり、顔を合わせて打ち合わせをしたりしたいと思うことも多いですね。意思疎通が難しいので、『つくって売る』流れは単純な一直線に見えて、そこには紆余曲折がありますね」 

クラフトエイドの商品をつくっている現地では、生地や糸などをメーカーが安定して供給しているわけではなく、市場に行ってそのときにあるものを仕入れるという流れが多いため、「もともと使っていた生地が手に入らなくなり別の生地に切り替えた」というつくり手からの事後報告が届くことも多々あるそう。 

そしてもうひとつ苦労していることは、納期を守ることの難しさです。 

嘉味田 「スケジュールは、ゆとりを持って設定するようにしています。ただ、クラフトエイドの商品は、つくり手さんの生活に合わせてつくっているので、農作業が忙しくて作業ができない場合などがあるんです。 

つくり手さんの主な仕事は農作業や家事をすること。だから、クラフトエイドの商品をつくっていたから畑に行けなかった、といった状況は本末転倒で、避けないといけません」 

こうして商品づくりの難しさを語りながらも、楽しそうに話す嘉味田の姿からは、つくり手が長年受け継いできた伝統的な手作業への愛着を感じます。 

嘉味田「手刺繍がすごく好きなんです。日本にはない色使いも大好きで、見ているだけで元気がでます。モノづくりのすごさを伝えていきたいと思っています」

企画から商品づくり、販売まで一貫して関われることがやりがい

▲企業にて、社員の方向けの社会貢献イベントにてクラフトエイドの商品を販売中

そんな嘉味田がイチから手掛けた商品が、新商品として登場します。 

嘉味田 「アフガニスタンの伝統技術で編まれた織物を使ったバッグは、細かいやりとりを3~4か月ほど続けて、イチからつくりました。現地の状況やつくり手さんの想いを知った上で、商品をつくれるというのはとても幸せなことです。この新商品は、販売後のお客様の反応がとても気になりますね。今からドキドキしています。 

商品の企画から、つくり手さんと共に商品をつくり、売るところまで一貫して携われることに、とてもやりがいと感じます。

長年愛用してくださっている方からご連絡をいただくこともあります。お客様の声から、再び復活させた商品もあるんですよ。これからもつくり手さんにも、お客様にも喜んでもらえる商品を、つくっていきたいです」

クラフトエイドは、今年で35年目。 

商品を手にしてくださったお客様の喜びが、つくり手の喜びにもつながるクラフトエイド。これからも、国境を超えて、想いと喜びをつなぐ商品を生み出していきます。