若手女性社員の悩み、不安の解消を目指す

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女性の社会進出が大きく進み、昨今、世代を問わず働く女性は当たり前の存在になりつつある。総務省の「労働力調査(基本集計)」によると、女性の生産年齢人口(15~64歳)における就業率は、男女雇用機会均等法が施行された1986年は53.1%だったが、2021年には71.3%まで上昇した。一方で、ライフスタイルの選択肢が広がったが故に、将来に対して漠然とした不安や悩みを抱えている女性も多いのではないだろうか。

岡 「セミナーの参加者に、『未来の展望が描けていますか』と尋ねると、30人いても手を挙げるのは1か2人です。中には『とくになにもしたくない』『どうせすぐに死んでしまうので』と答える人すらいました。今の職業を選んだ理由も、『たまたま』と答える人がたくさんいます。

学校を卒業したら、就職しないといけないから就職したという気持ちで、主体性なく働いている人が多いのではないかと思っています。そういったことの原因は、彼女たちだけにあるのではなく、キャリア教育の問題や、抜きんでる者を良しとしない社会全体の雰囲気など、さまざまなことが絡んでいるのではないでしょうか」

岡が担当するセミナーは、社会人2~9年目の女性社員が対象。現在の活動や今後迎える可能性のあるライフイベントへの不安を解消し、仕事への意欲を高めて個々の成長につなげることを目指している。

岡 「まずは、現状や未来に不安や悩みを抱えていることに寄り添い、相手を受け入れてあげることを大切にしています。その上で、自身は何を大事にして、今後どのように生きていきたいのかを一緒に考えるんです。

そして、一人ひとりの想いを実現するために、『タイムマネジメント力』や『周りを巻き込む力』などのスキルも伝えています。最終的には、キャリアデザインをしっかりと描き、翌日からいきいきと働けるようになることを目指しています」

働くことが、自分にも息子にも良いことだと思えた瞬間

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▲スイミングインストラクター時代の岡(画像を一部修正しています)

講師として約10年のキャリアを持つ岡。前職は、大手フィットネスクラブのスイミングインストラクターという異色の経歴の持ち主だ。

岡 「乳幼児から成人まで幅広く教えていました。あわせて、接客指導に関する社内資格を取得して、スタッフに対して研修会を開くこともあり、人前で話すことは慣れていました。そういった背景もあって講師業のお誘いを受け、2011年の結婚を機に、講師業に専念することになりました」

私生活では2016年に、不妊治療の末、待望の長男を出産した。出産、育児というライフイベントに対しては、どのように考えていたのだろうか。

岡 「学生のときは専業主婦願望が強かったのですが、就職すると働くことがおもしろく、自分に合っていると感じていました。そのため、出産後も育児と仕事を両立しようと考えていました。

ただ、実際の育児はとてもつらく、育児休業中は思い詰めることも多かったです。息子が泣き止まず、『自分は育児に向いていない』と思うようになり、夜中に泣いてしまうこともありました。そのころは正直、『この状態で仕事なんかできるはずない』と思っていました」

しかし、出産から約半年後に転機が訪れる。急遽、セミナー講師の依頼が舞い込んだ。

岡 「最初は厳しいかなと思いましたが、単発のセミナーで所要時間は数時間。場所は家からも近かったので、両親に息子を預け、依頼を引き受けることにしました。実際に登壇すると、久しぶりに家族以外の大人とコミュニケーションが取れ、ものすごく楽しかったんです。

それに家に帰るのがとても待ち遠しかった。それまで息子と二人で過ごす時間がとてもつらかったのに、早く会いたいと強く感じました。そのとき、働くことは私にとっても良いことだし、ひょっとしたら息子にとっても良いことなのかもしれないと思うようになりました」

この出来事を機に、「仕事復帰に対して前向きになり、両立を実現するために必要な手段を家族と洗い出して実践することができた」と岡は話す。

出産、育児を経て、広がった講師としての幅

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2017年7月、本格的に仕事に復帰した岡。出産、育児を経て、自らの仕事に対する考え方や姿勢にも大きな変化があった。

岡 「時間には、制限があるということを強く感じるようになりました。出産前には作業効率を考えず、終わらなければ残業すればいいや、という甘い考え方で仕事をしていました。

でも、今は子どものお迎えというリミットがあるので、そこまでに仕上げないといけません。時間に限りがあるからこそ、今、何をしなければならないのか、何をしたいのか、ということを見つめ直しました。また、それはセミナーでタイムマネジメントを語る上でも、活きていると思っています」

さらに、出産直後の育児で思いつめた経験も、セミナーの中で事例として紹介していると言う。

岡 「ずっと息子と二人で部屋にいて、『どうしよう、どうしよう』と落ち込んでいた時期を、セミナーでは『どうしようの沼』と呼んでいます。

私に限らずどんな人でも、悩みが深くなると、『どうしようの沼』から抜け出せなくなり、漠然とした不安に押しつぶされてしまいます。沼にはまらないためには、自分がやりたいことを定めて、それに向けて情報収集するなど、小さな一歩を踏み出すことが重要だと伝えています。

このほかにも、セミナーでは不妊治療や育児などを通じた実体験をお話しています。妊娠、出産、育児を経験して講師としての幅が広がったと感じています」

多く女性が自信を持って働けるよう、再就職を目指す女性を支援したい

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2022年11月現在も、仕事と子育ての両立に向けて奮闘している。2023年には、長男が小学校に入学を予定するなど、取り巻く環境は変化が絶えないと言う。

岡 「学童保育の問題や、いわゆる『小1の壁』(子どもが小学校に入学すると、仕事との両立がそれまで以上に時間的に難しくなる問題)が待っています。今はママ友のネットワークを使って情報収集しています。一方で、私自身もレベルアップに向けて、最新のキャリアモデルに関する資格の認定を受けるために努力を続けています。やりたいことに向けて貪欲に走っています」

手掛けるセミナーの内容を自ら体現している岡。今後、どのようなことを講師として伝えていきたいのだろうか。

岡 「若手女性の受講者の中には、妊娠や出産を機に退職し、子育てが落ち着いた時期に再就職することを思い描く人が多い印象です。ただ、今、再就職は本当に狭き門になっています。

子育ては多くの不測事態に対処しなければいけません。しかもほぼ24時間営業。それを経験した人はマルチタスクに強くなり、多くのスキルが伸びています。それなのに活躍の場が少ないのは、とてももったいないことだと思っています。女性が再就職するための武器を身につけられるようなセミナーを今後は考えていきたいです。そして、多く女性が自信を持って働けるよう、支援を続けていきたいです」