中学でバスケットボールを始め大学まで。スポーツに没頭した中で

▲大学時代まで没頭したバスケットボール。ケガの経験が仕事選びにもつながった(左から3人目)

バスケットボールを中学から始めた楠本。中学・高校とも強豪校でプレーしたわけでは無かったがバスケの楽しさを忘れられず、大学でも続けたいと考えた。

楠本 「スポーツは全般的に好きでした。大学受験にあたって将来スポーツに関わる仕事をしてみたいと考え、スポーツ学科のある大学を志望しました。志望した大学のバスケ部はインカレ出場を目指している強豪で、どうせなら大学でもう一度真剣にバスケをやりたいと思い、受験勉強をがんばった記憶があります」

志望大学に合格後、教育学部スポーツ科学課程でスポーツ心理学を専攻。大学4年生の秋までバスケ漬けの生活を送ることになる。大学での4年間は授業だけでなく、部活、アルバイト等、忙しくも充実した日々を過ごすことができたと振り返る。

楠本にとって部活の中で印象に残っているのは、「目標を達成するためには、立場や実力に関わらず正直に言い合える関係をつくるべき」ということ。

楠本 「勝つことを目指すチームであり続けるには、ただの仲良しクラブではだめで、時には厳しいことを言う覚悟も必要だということを学びました」

ハードな練習からケガを経験した楠本。一番多かったのは足関節の捻挫だ。専門的にいうと重症度Ⅲ度=靱帯損傷を伴うものだったが、病院に受診もせず市販のサポーターを着け、痛みが多少残っていても自分で動けると判断して練習に参加していた。その結果、動けても常に痛みが残り、競技後のアイシングも手放すことができない状態で過ごすことに……。

楠本 「今はドクターと一緒になって、捻挫を軽視せず積極的に整形外科を受診するよう呼びかける立場ですが、その時はそうした認識はまったく無かったんですね。

ただ、当時使っていたのがシグマックスのスポーツ向けブランド『ZAMST(ザムスト)』のZAMST A1というサポーターだったんです。今思えばそれがシグマックスに入社する大きな縁になっています」

4年生の秋までバスケを続けていた楠本。遅まきとなった就職活動だが、自分のこれまでやってきたことや興味をあらためて振り返ってみて、「スポーツに関わりたい」という気持ちと、「医療関係の仕事で人の役に立ちたい」というふたつの気持ちが残った。

スポーツに関わり、医療の領域で人の役に立てる仕事につきたい

▲全社会議でのグループディスカッションの様子 周囲の意見に気づかされることは多い

スポーツ、医療のふたつの方向からスポーツメーカー、製薬メーカー、医療機器メーカーを中心に就職活動を行った中、シグマックスの「元気を創造する」という経営理念はシンプルだがわかりやすい表現で楠本にはとても響いた。

また、シグマックスは医療分野の中でも運動・スポーツにも関わる“整形外科”という領域で事業を展開していることに加え、医療メーカーでありながらスポーツブランドを展開しているというふたつの側面があることも他社とは違ったおもしろい会社だと感じ、入社を決めた。

2007年にシグマックスに入社。医療事業部の営業部門に配属となり東日本営業所(東京)から東北営業所(仙台)への異動もありながら7年間の経験を積んだ。ドクター(整形外科医)を主とした医療従事者に情報提供するため、必要な知識・情報の習得や製品の使用方法、提案方法を学び、実際に医療機関を訪問してドクターに面会。患者さんのためにシグマックスの製品がどんな風に役に立てるのかを伝えるという日々を過ごす。

楠本 「単に製品の特長やスペックを説明するだけでは先生方に何も伝わりません。提案している製品は患者さんの治療にどう役に立てるのか、患者さんにとってのメリットは何なのかを熱意をもって伝え、当社の姿勢や製品に込めている想いに共感してもらうことが大事だと考えています。

これは、営業1年目で指導してくれた先輩に『患者さんのための提案が全然できていない』と言われ、気づかされたことでもあります。自分が接する社外の人には、当社のこだわりや想いに共感してもらい『最終的に当社のファンになってもらいたい』というのが、そのころから持つ信念です」

東北営業所での勤務は東日本大震災直後からの3年間。当時は復興の中で医療機関も社会からさまざまな役割が求められ、営業としても自社製品の営業活動よりも、そうした医療機関の困りごとや役に立てることを常に考えながら、ドクターや医療機器販売店の方々とコミュニケーションを取った。

また東北営業所では、当社の重点製品のひとつである外科手術(人工関節置換術)後の患部を持続的に冷却する機器「アイシングシステム」の販促ツール制作にも携わることになる。

販促ツールはアイシングシステムのヘビーユーザーである関節外科医に取材し、同じ関節外科医にむけて、術後のケアの実際について解説してもらうというもの。楠本が当時担当していたドクターがこの分野の権威で、良好な関係を築いていたことから、マーケティング担当と連携して取材にあたった。

完成した販促ツールはその後全国で活用され、アイシングシステムの実践的な使用方法の啓発に役立つとともに、機器の採用・普及にも効果を発揮。

楠本 「この経験から自分の身の周りにいるユーザーやドクターからいただく自社の製品・サービスに対する評価やコメントを全国に波及させることは、自身の担当エリアだけでなく広範囲で大きな成果を生み出す可能性があることを実感しました」

社内のキャリアプログラムを利用し、マーケティング部門へ

▲現在は医療事業部のマーケティング部門で社内外とコミュニケーションする日々

営業部門で7年の経験を積んだ楠本は、本社のマーケティング部門への転属を希望する。シグマックスのキャリアプログラムのひとつ、2WAYリロケーション(転属公募制度)にマーケティング部門からの募集がかかったためだ。

楠本 「自分の経験や得てきた情報、先生方とのリレーションをもっと広い範囲で活かすことができないか? もっと多くの先生方に日本シグマックスの姿勢や取り組みを理解・共感してもらい、ファンになってもらえないか? と考えて手を挙げました。

営業も7年経験し、担当エリアの先生方や代理店の担当者とも関係ができ、営業のおもしろさ・楽しさも感じていたので非常に悩みました。また、チームとして働いてきた上司や先輩・同僚にも異動による反動が当然ありましたが、それを上回る会社全体への貢献が必ずできるという想いで、新たな仕事にチャレンジすることを決めました」

異動後、医療事業部のマーケティング部門では、プロモーションに関わるありとあらゆる業務を担当する。発売間近の製品のカタログや各種販促ツールの制作、年間を通じて多数開催される医学集会での企業展示、各種啓発セミナーの企画・運営などそれまで以上に忙しい日々を過ごした。

楠本 「プロモーションに関わるどの業務も、単に自社の製品を売りたいということではなく、最終的には患者さんの治療をより良いものにする、患者さんの治療に対する満足度を上げるために行っているということをしっかり考えるようにしています」

多忙な中からドクターとの信頼関係・リレーションが構築されていく。

楠本 「セミナー等で講師をお願いするドクターは多忙な中、準備をしていただいています。ひとつの仕事が終わった時には、営業時代とはまた違った信頼関係が出来上がっていることも。こうした先生方と同じ方向を向いて取り組んでいくことが、信頼を得て当社への理解・共感につながる最も重要なことだと考えています」

啓発ツールとして特に心血を注いだのが、シグマックスの主力カテゴリである骨折治療関連製品、中でもギプス固定に関する解説コンテンツの制作だ。

楠本 「当社は毎年、若い整形外科の先生方が参加する骨折治療におけるギプス処置の勉強・スキルアップのための研修会に協力していますが、参加される先生方から『自分で学習できるコンテンツがほしい』というご要望を多くいただいていました。

ギプス材を扱っているメーカーとして、ただ製品を流通させるだけではなく、治療に携わられる先生方に使いこなしてもらうためのサポートを行うことも重要な使命だと思っています」

それが患者さんの治療の満足度向上につながる取り組みだと考えた楠本は、研修会で講師を務めていただいているドクターに協力をお願いし、知識・スキルを資料にまとめた「四肢外固定の奥義」を作成した。

楠本 「動画・冊子の制作は想定した以上に時間がかかりました。監修していただいたドクターには大変お忙しい中、時間を取ってご対応いただいたため、本当に感謝しています。

無事に完成し、今では日本中の整形外科の先生方から動画視聴、冊子の申込をいただいています。現場に貢献できるコンテンツを作成できたのではないかと感じています」

スポーツと医療に密接にかかわれる仕事

▲社内のユニフォームギャラリーの前で。楠本が関わったチーム・選手のユニフォームも並ぶ

楠本が関わっている整形外科のドクターは、腰や膝の痛みといった日常生活での身体の不調、捻挫や脱臼・骨折などのケガを主体として診療している。

中には楠本自身が経験したような足関節の靭帯損傷を含め、さまざまなスポーツ傷害も含まれる。こうしたスポーツ傷害については近年、診断・治療だけでなく『Injury Prevention=損傷の予防(再損傷の予防)』への取り組みに注目が集まっているのだ。

Injury Preventionについてはドクターだけでなく理学療法士、アスレティックトレーナー等、医療機関からスポーツ現場まで多くの職種が関わる必要があり、選手本人にとっては非常に重要な問題。

そんな中、シグマックスは治療用の医療機器、装具・サポーターだけでなく、スポーツ向けブランド「ZAMST」が展開する各種サポーターやインソール、一般向けブランド「MEDIAID」で展開する各種サポーターなど、会社全体で幅広いシーンをカバーしている。

楠本 「競技復帰からInjury Preventionまで、選手に寄り添った提案・サポートができると考えています。もちろん、すべてをサポーターなどの身に付けるもので解決できるわけではないですが、我々が貢献できる役割も大きいと思いますし、このテーマに取り組むことは非常に意義のあることだと思っています」

学術・研究の面で楠本は、スポーツ整形外科を専門とするドクター・研究者が集まって最新の知見を共有する研究会やフォーラムの開催・運営にも協力している。

楠本 「こうした場で先生方の熱い想いを聞くことで、我々のできることをもっと追求して、選手や患者さんに貢献していかなければいけないと強い使命感を感じます。自分としては、元々、興味があり携わりたいと考えていたふたつの分野に深く関わる機会も沢山あり、今の仕事には非常にやりがいを感じています」

シグマックスは医療事業として診断・治療・リハビリのための各種製品・サービスを展開し、楠本はこの領域でのマーケティング・プロモーションを担当している。一方、スポーツ事業ではケガの予防・再発予防・コンディショニングに関する製品・サービスを展開し、医療領域で得られる新たな知見をいち早く反映することがアドバンテージとなる。

ドクターや理学療法士・トレーナーなど多職種が連携する研究会・フォーラムの動きは、医療以外の事業にも密接に関わっており、楠本の活動は事業部間・部門間の連携に留まらず、シグマックスの基盤強化にもつながっている。

楠本 「今後も医療、スポーツ、ウェルネスの3領域でビジネスを展開している当社ならではの取り組みを多くの人に理解・共感してもらえるように活動していきたいです。

当社は、選手を中心としたスポーツ現場に関わる職種とさまざまな接点がありますので、関係者としっかりとコミュニケーションを取り、情報をつなぎながら対応することで現場の信頼を得ていると思いますし、それが医療とスポーツにまたがるシグマックスらしいユニークな特徴です。

今後も一層多くの方にシグマックスのファンとなってもらえるよう、強い想いを持って真摯に取り組んでいきます」

大学時代に漠然と思い描いた「スポーツと医療」。現在ある意味そのただ中にいる楠本には、「忙しさより楽しさが勝る」そんな言葉が当てはまるのかもしれない。