「広義でのマーケティングを専門分野にしたい」というキャリアの軸

中国赴任時 思い返すと赴任直後の慣れない環境が一番面白かったかもしれません

2021年現在、パナソニックに入社して13年の金子 大輔。現在所属するコーポレート・デジタルマーケティング推進室は、パナソニック内で横断的にデジタルマーケティングの推進/支援を行う部署である。

しかし、金子は入社当初からこの部署にいたわけではない。彼は「広義でのマーケティング」を専門分野にしたいという想いを軸に、キャリアをしなやかに変えてきている。

そもそもマーケティングに関心を持ったのは、入社前──ちょうど工学部デザイン系の大学院1年生で就職活動を行っていた。

同じ研究室の同級生はデザイナーを目指し就職活動を進める中、金子は「かっこいいものをつくりたい、形にしたい」という想いよりも「企画をしたい」という想いが強く、デザインではなくマーケティングの道に進みたいと考え始めた。

就職活動をしていたある日、所属研究室の教授から旧松下電工株式会社(現在のパナソニック株式会社ライフソリューションズ社)のマーケティング部を紹介される。募集締め切り前日のことで、通常は別の研究室から応募することが多いがマーケティングに興味を持っているという話を聞きつけてのことだった。

2007年、晴れて旧松下電工のマーケティング部に入社した金子。当時はコーポレート関連、産業用機械部品や素材を扱う事業のブランディング、部門内の研修等多様な業務に従事した。

2009年からは洗面やトイレの担当として、看板商品の一つである「アラウーノ」等の宣伝・プロモーションを担当。その後も宣伝部門で順調に経験を積んでいったが、より広い視点でマーケティングに関わってみたいという想いを持っていた。そんな中、突然中国販売会社への出向を命じられる。

価値観が変わった中国での勤務

中国赴任時(プライベート) 業務外でも色々な体験が出来たのは大きい。写真は旅行で行った内モンゴルの砂漠

金子にとって中国転勤はまさに寝耳に水だった。プライベートではちょうど第一子が生まれたばかりでもあり、転勤自体は既に経験していたが、それでも色々考え、悩むこともあった。

2013年、展示会やプロモーション等宣伝の担当者として中国に向かった金子。2年後、突如営業企画というこれまでとは畑違いの仕事を任されたのだ。

金子 「当時は出向者の数も多くなく、日本人は色々なことをやるのが普通でした。そんな環境の中にいると、自然に『自分の仕事の範囲を限定しない』という考えになってきます。

日本にいた時は、他部署の人になんとなく遠慮してしまうような部分もありました。それは、部署間で仲が悪いというようなことではなく、日本では基本的なことはちゃんと回っていく仕事の仕組みがあり、役割分担がしっかりしているからなのです。

その点、中国の販売会社ではどの部署の誰とでも距離が近かった。そこにいるメンバーでなんでもやらなきゃいけないから、部署とか関係なくなってくるのです」

この中国で業務を推進していく中で、様々な部署・職種の人たちと一緒になって仕事をし、「考える自由度」が大きく広がった。

金子 「商流や営業のリアルな話を理解できていると、宣伝やプロモーションの課題も見えてくるようになりました。

また売上集計や利益率の計算等もやっていたので、その視点から課題や改善策の提案をしていったこともありました。この経験って、まさに自分がやりたいって思っていた『広義でのマーケティング』そのものなんですよね」

そんな環境での仕事は、大変ではあるが楽しくもあり充実していたという。2015年の秋からは、当時デジタルが目覚ましく発展していた中国において、Eコマースでの販売について企画を担当。

15人~20人の部署で自分以外全員が中国人という環境下で、現地メンバーと一緒に市場データの分析やゼロからの体制づくりに奔走した。

帰国・社内転職

2017年4月、帰任に伴いES社(現在のLS社)マーケティング本部戦略企画部への異動。この部署では事業計画策定等、経営企画的な業務を行っていた。

ここまで一貫してライフソリューションズ社のマーケティングに従事してきた金子だが、ここで社内公募制度を利用し、デジタルマーケティング推進室(現ブランド戦略本部 コーポレート・デジタルマーケティング推進室)に異動する。

金子 「国内のマーケティング部門に戻ってきて、中国とのギャップを感じました。中国では丁度オンライン決済等のデジタル化が一気に普及するのを体感しましたが、正直日本は遅れている、これからはもっとデジタル化を考えていかなければいなくなると感じました」

デジタルマーケティング推進室は、カンパニー制をとるパナソニックにおいて、どこのカンパニーにも属さない部署である。この部署は、データを活用した専門的な知見を社内横断的に行うべく設立され、事業部ごとの縦割りの体制に横串を刺し「ヨコパナ化」することを目的としている。

金子 「当時所属していた部署でデジタル化のテーマに取り組んでいくという選択肢もありましたが、特化してやった方が今後のためにいいのではないかと考えるようになりました。

専門組織であるデジタルマーケティング推進室の方が、社内外含めいろいろな情報を持っているので、そこからでも入社以来所属していたライフソリューションズ社に貢献できるとも考えました」

自ら手を挙げてキャリア形成に挑む社内公募制度。パナソニックを離れて他社に転職するという選択肢もあったが、金子はそれを選ばなかった。

金子 「もともと、『マーケティングがやってみたい』という想いから会社に入ったので、正直最初から強いロイヤリティがあったわけではないんです。ただ、今まで一緒に仕事をしてきた人たちにお世話になってきたので、恩返ししたいという気持ちがあるんですよね」

「たまたま」を引き寄せ、自分のものにしていく

デジタルマーケティング推進室で 社内複業など新しい制度も活用し、チャレンジを続けている

デジタルマーケティング推進室に異動した金子は、6人の専任メンバーの一員として、パナソニックのあらゆる事業のデジタルマーケティングに関わっている。そんな金子は、今後のキャリアをどのように考えているだろうか。

金子 「今後も『広義でのマーケティング』を自分の仕事としていきたいと考えています。また、これからのマーケティングにデジタルは必須。世の中に取り残されないよう、パナソニックのデジタルマーケティングをどんどん推進していきたいです」

金子が大事にしている価値観はふたつある。ひとつ目は、「いろいろやってみてリアルなところが見えてくると仕事がおもしろくなってくる」ということ。ふたつ目は、「人とのつながりが重要」ということだ。

金子 「僕のキャリアって、けっこう『たまたま』で今に至ってるんです。入社のきっかけも『たまたま』でしたし。入社してからも、中国に行って、そこで『たまたま』営業企画をやることになったりとか。

でもそういう『たまたま』おきたシチュエーションで、一つひとつ仕事に向き合ってみて、前向きに取り組んだことで徐々に視野が広がり、だんだんと仕事がおもしろくなっていきました。もちろん自分ではマーケティングという軸からは外れていないと思っていますが。

またそうやって仕事をしていく中で得られる人脈は重要です。人とのつながりは本当に大事です。自分のキャリアや仕事を振り返った時、『あの人と知り合いだったからうまくいった』って思うことがたくさんあります」

「たまたま」でキャリアを形成してきたという金子だが、一方でその「たまたま」も、自分がどうなりたいかを常に考え、発信していたからこそ引き寄せられたと考えている。

金子 「『こういうふうにやりたい』という自分の想いを常に持っていることが大事。その想いを人に伝えたり発信したりしていれば、自分が望む『偶然』を引き寄せられるんです。特にパナソニックにはそういった環境があると思います」

「偶然」を自分のものにし、自分らしく働いていく。能動的な行動によって、「偶然」を引き付ける。これからもそんな姿勢で、大きく仕事の幅も人脈も広げながら、デジタルマーケティングを推進するために歩みを続けていく。