新規事業創出へ向けたわらしべ長者の第一歩

▲NEWライティング創出プログラム事務局として新規事業立ち上げ支援中

萱場はパナソニックに入社してからの自身の歩みを、「わらしべ長者」と表現します。

萱場 「勇気を出して小さなきっかけをつかむ、『わらしべ長者』のような1つ1つの積み重ねで、ここに辿り着いていると思います」

そんな萱場がパナソニックへ入社したのは遡ること2013年──。

大学卒業後の進路として萱場が重視したのは、その会社で成長できるかどうかでした。

萱場 「人生の糧になる会社に入りたいと思っていました。エンジニアとしてメーカーを検討する中で、パナソニックは、創業者の松下 幸之助の思想を受け継ぎ、学べる環境が多そうな会社だという印象でした」

入社後は現在に至るまで、ガスメータ用マイコン基板設計を行なう部署に所属している萱場。一方で、入社の決め手となった学べる環境を積極的に活用していきました。

萱場 「入社1年目でも、アンテナを張って飛び込めば、勉強できる環境が整っていると感じましたね。例えば、『モノづくり競技大会』という研鑽会や、『One Panasonic』という有志団体などがあり、そこでは本業だけでは得られない人との繋がりや知識の習得に努めました」

しかし4~5年すると、本業の忙しさに押され、勉強の時間を確保することが難しくなります。悶々とした気持ちを抱えていたときに、GCカタパルトとの出会いがありました。

萱場 「同期で集まったとき、偶然GCカタパルトの一期生が出席していたのです。GCカタパルトに参加した時の話を聞くうちに、自分もチャレンジできるんじゃないかという想いが湧いてきて、アンテナを張るようになりました」

そこからGCカタパルト参画を決意させたのが、社内のプレゼンイベント「Wonder SEVEN Pitch」においてGCカタパルト三期生に詳しく話を聞く機会を得たことです。

萱場 「たまたま隣に座っていた人が、GCカタパルト三期生でした。これは話を聞くしかないと、後日改めて機会を設けてもらい、GCカタパルトの内容を具体的に聞けたことで、自分でも応募できるタネを探してみようと思えたのです。

そして、その想いがあるのなら、社内のUXD実践研修に参加したほうが良いよと声を掛けてもらいました」

そして2018年、萱場はUXD実践研修に参加します。この研修では、いくつかのグループに分かれてテーマに関するサービスの構想を練るのですが、萱場は自ら手を挙げグループのリーダーになります。

萱場 「GCカタパルトを意識していて、発表の場などで講師から直接フィードバックを受けられるリーダーは、学びが全然違うだろうなという想いがありました」

結果的にここで1年間検討した「健康」というテーマと、インナー型のマッサージ器の発案が、GCカタパルトでのベースとなります。

本気で取り組めば3ヵ月で世界観が変わる

▲GCカタパルト応募時の様子(左はチームメンバーの青野)

2019年、萱場はGCカタパルトに応募します。その時のテーマである「健康」には、萱場自身の経験が影響していました。

萱場 「僕の父親は晩婚で、僕が物心ついた頃には50代近くになっていて、ずっと疲れているような印象がありました。子供ながらにそれがずっと嫌だなと思っていたのです。

そこで自分も体を鍛えたり、アルバイトでトレーナーをしてきたのですが、そうした経験から人は健康であれば一歩を踏み出しやすいと感じ、健康に関するサービスを生み出したいと思っていました」

しかし、当初のインナー型のマッサージ器は、ユーザーへのヒアリングを重ねるうちに実現が難しいことが分かります。

萱場 「結局、完全にメーカーのエンジニア目線だったのです。ユーザーはもっと自分の課題にジャストフィットしたものを求めていました」

そこで、「エクストリームユーザー」に着目します。これは、特定のジャンルにおいてこだわりのある人に話を聞くことで、多くの人が潜在的に必要としているものが分かるというものです。

萱場「話を聞くことができた健康に関するいろいろなエクストリームユーザーの1人に、漢方薬に非常に詳しい人がいました。この出会いが、サービスの変更につながります。

健康について掘り下げる中で、不調を感じながらも、その不調故に、積極的に改善を行う活力がなくなってしまっているような人にこそ、新たなサービスが求められていると感じていました。その方々の本質的なニーズにマッチする要素が、漢方薬には揃っていることが分かりました」

3ヵ月後に経営幹部への事業提案が迫る中、一から漢方薬について学び、数々の漢方薬局でのヒアリングを経て、漢方薬普及の阻害要因となっている現場課題を解決する”漢方業界向け遠隔問診支援サービス”を練り上げます。その中で最も達成感を感じたのが、漢方業界を束ねる業界トップの方に会えたことでした。

萱場 「最終的に業界全体を俯瞰している人に話を聞いて、過去の事例や法令的に見落としている穴がないか確認したいと思いました。その方にも『いいサービスだと思う。社内選考を通過した際には実現に向けて協力したい』と言っていただき、僕たち自身が腹落ちでき、自信をもつことができました」

結果として、この提案は落選します。ただ、GCカタパルトでの経験は、萱場の世界観を変えるものでした。

萱場 「一番の学びは、本気でアプローチすれば、3ヵ月で業界のトップの方に会い、その方から『協力したい』という言葉を引き出せるということ。そのためには、その方が発信してきた情報や、現在注力していることを押さえておくことを心掛けました。

また、会話のレベルを合わせるために、漢方薬や漢方業界のことをしっかり勉強した上で、打ち合わせに臨みました。そういった姿勢は相手に伝わり、継続的な協力が得られたり、他の方も紹介してもらえるなど、次に繋がっていくと実感しています」

GCカタパルトでの経験から、社内の新規事業創出を支援

▲GCカタパルトでの経営幹部への事業提案

萱場は2020年現在、複業でライフソリューションズ社(LS社)ライティング事業部 NEWライティング創出プログラム事務局にも所属しています。

この事務局では、「人起点のイノベーションによるライティング事業部・従業員の持続的成長」をミッションとして、新規事業創出とイノベーター育成を目的としたプログラム運営を行っています。

萱場「元々、社内の新規事業を盛り上げたいという想いがありました。ただ、GCカタパルトの経験を通じ、自分がテーマを推進するよりも支援にいるほうが影響を及ぼせると考えました。

とは言え支援側に行ける機会なんてそうそうないと思っていたのですが、まさかの偶然がありました。ちょうどGCカタパルトで落選して気落ちしていたタイミングで、NEWライティング創出プログラム事務局メンバーの募集を見つけ、これも何かのめぐりあわせかなと、即応募しましたね」

NEWライティング創出プログラムでは萱場のこれまでの経験が存分に活用されていると言います。

萱場 「新規事業立ち上げに際し、課題を明確にすること、ユーザーにヒアリングをすることがどういうことなのか、まさに僕がUXD実践研修やGCカタパルトで肌感覚として培ったところを発信しています。

また、これまでの人脈も活用しながら、そういった知見がある人にセミナーを開催してもらっています」

その中でも萱場が重視しているのが、ヒアリングにおけるマインドセットです。セミナーなどの場だけでなく、ヒアリングの場に同席しながら、1人1人丁寧に伝えています。

萱場 「支援側として改めて感じたことが、多くの人が、こんなサービスがあったら良いんじゃないかという、ソリューションから入ることが多いのです。

そうするとヒアリングの際にも、相手の課題を聞くよりも先に、『こんなのがあったら便利だと思いませんか?』という提案から入ってしまうので、そのマインドを変えないといけません」

テーマ推進者と伴走する際に大事にしているのが、「最初は分からなくて当然」というスタンスだと萱場は語ります。

萱場 「僕自身も最初は全然分かりませんでした。だからこそ、テーマ推進者の分からないところに共感しながら、コメントするように心掛けています。

教えるという立場は、油断すると上から目線になりがちです。けれども、あくまで同じステージに立ち、同じ目線で、テーマ推進者が腹落ちしやすいように心掛けています。

そうすると信頼関係が築かれ、テーマ推進者から自然と情報発信や共有が増えてきて、議論も活発になると感じています」

新規事業を志す人の実験場、ハブを目指して

▲事務局として自らオンラインセミナーも開催

NEWライティング創出プログラム事務局で活動する中、萱場は、社内には新規事業創出という観点でも多くのレベルの高い人材がいることを感じます。

萱場「テーマ推進者は、僕よりスキルも人生経験も豊富な方が多いです。ただヒアリングのやり方を知らないだけで、やり方さえ分かればこれまで培われたスキルや人生経験も相まって、非常にレベルの高いヒアリングを行われます。ですから、社内のもっといろいろな人に知って欲しいと思います。

また、セミナーの講師を社内で募ることが多いのですが、やはりそこでも社内には新規事業創出において魅力的なスキルを持っている方が多いと感じます。

僕たちとしては、そういった新規事業に関する知見を持ち、風土作りに貢献したいと思っている社内の人たちに協力を仰ぎながら、会社をどんどん盛り上げていきたいです」

さらに、萱場は、パナソニックのカンパニー同士の繋がりも意識しています。

萱場 「例えば、2019年までGCカタパルトの事務局を担当していて、現在はアプライアンス社でUXDを広げる部署に所属している方に、『僕たちを実験台にして構わないので、UXDのセミナーを開いて欲しい』とお願いして、これまで3回登壇してもらいました。

パナソニックは現在7つのカンパニーに分かれていますが、他カンパニーに所属する有識者をこのプログラムに巻き込んでいくことを計画しています。そうやってカンパニー間を繋げていけたら面白いですよね」

萱場が自身の活動で意識しているのが、NEWライティング創出プログラム事務局が、新規事業というキーワードで社内の風土改革をしたいと思っている人たちの、実験の場や、ハブとしての役割を果たしていくことです。

萱場 「それこそ、弊社の創業者である松下 幸之助が重視していた『衆知を集める』ということだと思います。

僕としては、このプログラムが、新規事業というキーワードで社内の衆知を集めるハブみたいな形に徐々にでも成長していけたら面白いんじゃないかと思っています」

わらしべ長者的にチャンスをつかみ、新規事業の立ち上げから支援までを経験している萱場。そのパワーが、萱場1人ではなく、より大きな社内のうねりとなっていくのでしょう。