モノづくりの組織の中に生まれた、コト事業をつくるための組織

▲近藤⼀哉。IoT サービスの企画と運⽤設計を担当。

近藤が所属するメカトロニクス事業部は、センサーなどの電子デバイスを製造・B2B販売する、「モノづくり」に強みを持った組織です。

その中にあるサービス事業推進部は、他社にない同事業部独自のセンサー技術を生かしたIoTサービスビジネスの、企画・開発・運用を行っています。

近藤 「たとえば「電池レスセンサー」というものがあります。これは電池も配線もいらない不思議なセンサーで、押す・回すといった動作を利用して自ら発電し、電波を飛ばすことができます。

私たちはこれに加え、クラウド経由でセンサーの利用データを提供する、ADDOX(アドックス)というIoTサービスを展開しています。

サービスもあわせて提供することで、お客様に『このセンサーを商材に組み込めば簡単にIoT化できる・データを使ったビジネスに挑戦していただける』という価値を提供したいと考えています」

このサービス事業推進部は2019年10月に設立。組織内で少し異質な存在であると近藤は話します。

近藤 「メカトロニクス事業部は、モノづくりの領域で技術を研ぎ澄ましてきた組織です。そのためIoTのサービスビジネスを行うために必要な、ソフトウェア、ネットワーク、サービスオベレーションといった領域のノウハウは保有していませんでした。

それを埋めるため、社外から来たメンバーが多く参画しています。とくに企画メンバーは、専任も支援頂いている他組織の方も全員がキャリア採用入社です。いずれもIT業界出身で、3年以内に入社した者ばかりです」

しかし“新しいサービス事業を企面する“といっても、頭を悩ます範囲はビジネスや技術面だけではないといいます。

近藤 「私たちは、いわゆる「出島」組織ではありません。既存事業と異なる性質のビジネスを、既存組織の中で回すことが大前提ですので、必ず制度や基準、慣習の違いの壁にぶち当たります。品質管理基準と合わない・販売管理制度にないなど……

それでもなんとかサービス立ち上げに漕ぎつけられるのは、その度、営業・品質・経理・法務・宣伝等の部門の方々が、“じゃあどうすればできるのか“と打開策を必ず検討くださるからです。

それが外から来た私たちが毎回、驚く事です。“大変だけど、外から来た人たちと、会社の中に新しいベンチャーをつくるみたいですね“、そんな風に言っていただけたことを強く覚えています」

14年経験したIT業界を経て、興味は「形のないもの」から「形のあるもの」へ

共に取り組む仲間と。左から営業統括部 粟野氏、石川氏、青山氏、小崎氏、サービス事業推進部 今井氏、近藤氏、佐野氏。

2005年。近藤がかつて新卒として入社したのは、国内最大手の1社である某IT企業でした。ここでは業務システムのセールス担当として10年以上、リテール業界の大手企業を担当し、多くのシステム提案と導入を推進してきました。

近藤 「就職活動では『形のないものを売ってみたい』と考えており、同社などIT企業が言う「ITソリューションを売る」という言葉に同じものを感じ、入社しました。

入社して最初の担当は、大阪の問屋街の企業様達。“わかった、ほんでそのサーバ、なんぼになるん?“の世界ですね。ソリューションというカタカナのイメージと違うなぁと思いつつも、プロの商人の皆様に、毎日の汗といじりと愛のムチでみっちり鍛えていただきました(笑)」

しかし世の中のIT企業に対する期待領域の変化は常に変化していきます。

近藤もクラウド、デジタルマーケティング、キャッシュレス決済など、次々現れるテクノロジーを通じて、「新しいリテール事業のあり方」を顧客と模索するようになりました。

やがて、シリコンバレーのスタートアップと日本の顧客の間に立つような仕事も経験。海外での活動も広がる中、2018年に北米の展示会・CESの会場で偶然立ち寄ったパナソニックブースでの体験が、近藤のキャリアを大きく変えることになりました。

近藤 「たまたまCESの会場で見た、メカトロニクス事業部の展示に心を惹かれました。eny(エニー)というIoTサービスの展示だったのですが、これに自ら発電して電波を飛ばす、電池レスセンサーが使われていました。

初めてそうした尖ったデバイスの存在を知り刺激を受け、「形のあるモノ」を作る企業に興味を持ち始めました」

アメリカの展示会で、日本のモノに刺激を受ける。そんな体験の翌年、そのenyのプロダクトマネージャーと偶然知り合うこととなり意気投合。ほどなくして、同社のキャリア採用にチャレンジすることとなりました。

近藤 「現在はパナソニックで、デバイスという「形のあるもの」を使って、サービスという「形の無いもの」の価値作りを考えています。私にとって、まさにやりたかった仕事です」

デザインをあえてパワポで・・・?独自の発想でビジョンをひとつに

▲作品の一部。パワポで作れば誰とでも、それぞれの手で修正・改善して完成を目指せる。

2019年8月。パナソニックに入社した近藤が強く感じたのは、モノづくりとサービスに関わる、さまざまな文化の違いでした。 

近藤 「私が企画したADDOX(アドックス)というサービスのWebサイトは「仕様ではなく、提供できる価値」を説明の中心にした構成になっています。

具体的には、“このサービスを使うことでつくれる、新しいビジネスのアイディア“を多数掲載しています。このコンセプトを社内説明した際には賛否両論で、“詳細仕様をここに載せないなんて無責任では“といったご指摘もいただいてしまいました」

そうした中、近藤が取り組んだのは“仲間をつくる“ことでした。

近藤 「しかし、“これからは製品そのものだけでなく、価値の提示が重要だ“。そう考える方がたくさんいらっしゃることもわかってきました。そうした方々と多く繋がって、当事業部なりのコト事業のあり方を一緒に考えていきたい。

そう強く思いましたが私はキャリア採用者ですので、同期や昔の上司といった人脈はゼロ。ですので、まずは自分の存在を認知いただき、かつ“一緒にチャレンジできる仲間“だと認めていただくことに全力を尽くさねばと考えました」

では、社内人脈ゼロの近藤が、どう仲間づくりをしていくのか。糸口はなんと「PowerPointで似顔絵を描くこと」でした。

近藤 「“PowerPointで描く似顔絵”は、前職時代からの趣味です。きっかけは、担当していたお客様へのプレゼント。パワポで似顔絵を描いてお渡ししたところ、その似顔絵をお客様がご自身で修正され、さまざまな用途で使っていただきました。

私が作ったデザインを元に、お客様が本当に欲しい形に直接編集していただいた。これは、デザイン思考で言う「プロトタイピング」のプロセスと同じと気づきました。

従来、デザイン作成はIllustratorなどの専用ツールで行われますが、受け取った方がデザイナーでない限り、その方が直接その修正する事は不可能です。が、それがパワポでつくってしまえば、誰でもそれができます。これをきっかけに、商談でも『パワポをあえてデザインツールとして使う』が私のスタイルになりました。

お客様の言葉を自分なりに解釈し、具体イメージやコンセプトをパワポで作りお渡しする。それを直して“目指すものが何か“を明確化していただくのです。

それは、テーマがWEBサイトでもスマホアプリでも、はたまた経営戦略でもシステム全体戦略でも、アプローチは変わりません」

こうしてはじまったPowerPointでのデザイン活動は、その幅をさらに広げます。

近藤 「やがて“パワポでデザイン“の腕が上がり、プライベートでもさまざまな経験をさせていただきました。ニューヨークの飲食店のロゴやアートをつくったり、プロの漫画家とコラボレーションさせていただいたり。

またつくったアプリのキャラクターが、東南アジアを中心にヒットしたりもしました。人生、何がどう広がるか、わかりませんね(笑)」

そして現在。パナソニックではこの技術は、“仲間づくり“のために生きています。組織やサービスのロゴ作成、WEBサイトのデザインまで、近藤はまず自分で手掛けることで自らのか考えを明確に提示する。そこに相手の意見もダイレクトに反映してもらう事でビジョンをひとつにするにする。

もちろん似顔絵も、そんな仲間へのプレゼントとして、今も健在です。

仲間があって成立するチーム。そして組織にどう貢献するか。

独自の発想を武器に、事業を推進する近藤。所属する企画チームもまた、そんな仲間で構成されています。

近藤 「メンバーはそれぞれに得意分野を持っています。オープンイノベーションに長けた企画担当、経理・法務に強いエンジニア、開発もシステム運用もできるデジタルマーケティング企画者など。

とにかく小さい部ですが、それぞれの仲間に、異なる強みがあるからこそ一組織として成立しているのだと思っています」

そして、近藤たちが目指す次なるビジョンは、つくり出した価値を組織に還元することです。

近藤 「組織に貢献するために、つくったサービスが、事業体が持つリソースをフル活用して大きく売れるものにならないといけないと考えています。サービスが小さいままなら、やる必要がないよね、となる。

ではモノづくりの組織でサービスを大きく売るには、組織や文化がどうなる必要があるのか、自分たちがそれにどう貢献できるか、それが次の大きなテーマと考えています」

モノづくりの組織で、新しい価値をどうつくり、提供していくのか。この大きな仕事を推進する近藤は、チーム、社内、社外、ブライベートにまで広がる仲間とともに、これからも歩み続けます。