自動車とソフトウェアを掛け合わせ、新規性のあるサービスを生み出す

article image 1

2019年に日産自動車にキャリア入社したルーク。2023年5月現在は、コネクテッドカーサービスである「NissanConnect」の技術開発を行うアプリケーションサービスの開発グループに所属しています。

ルーク 「私たちのチームは、国内外で利用されているコネクテッドカーにまつわるプロダクト開発を一手に担っています。コネクテッドカーとは、インターネットに常時接続することにより、従来とは異なる運転体験の提供が可能となる自動車のこと。

スマートフォンアプリなどとの連動によって、ドライブをより快適なものにする『NissanConnect』の技術開発・運用を中心に、自動車とソフトウェアを掛け合わせた新規性のあるサービスの創造に取り組んでいます」

日産自動車の中でも、比較的新しいチャレンジの多い同グループ。ルークは、NissanConnectサービスに関して、NissanConnectアプリを使っているユーザーのデータ分析活動や、国外のリージョンに同サービスを広げるための機能開発をメインに行っています。

また、それ以外にも、PoC(Proof of Concept)活動として、自動車とアプリケーションをつなぐシステムにおける改善活動から、カーシェアサービスやモビリティサービスの新規開発に至るまで、バックエンドエンジニアとしてさまざまなミッションに挑戦してきました。

ルーク 「Agileにデモ版のアプリケーションをつくったり既存のサービスに新たな機能を実装したりして、価値検証まで行いながら日産自動車のコネクテッドカーサービスがより良いものになるようにトライアンドエラーを繰り返しています。自動車をただ運転するだけではなく、QOLを上げていくためのプロダクトとして機能するように、ソフトウェアの領域からアプローチしています」

ルークが所属するチームには、少数精鋭ながらもソフトウェア開発に関するプロフェッショナルが集まっています。そんな環境でルークが大事にしているのは、自動車そのものが持つハードウェア側の視点だと言います。

ルーク 「WebやIT業界からキャリア入社したメンバーが多い部署で、みんなエンドユーザーが使うアプリケーションやソフトウェアの知識を豊富に持っています。しかし、私たちが根本的に関わっているのは、自動車という物理的な存在。直接的にソフトウェア開発に取り組めばいいのではなく、自動車側のハードウェアまである程度理解して、ユーザーにとっての理想的なサービスを提供する必要があるということ。

そのために、時にはハードウェアのエンジニアともコミュニケーションを取りながら、開発に取り組んでいます」

最先端の自動車は、社会システムすら変えてしまう影響力がある

article image 2
▲「気づけば約15年もの歳月を日本で過ごしている」と語るルーク。日本の大学を卒業後、ファーストキャリアとして、インターネットメディア事業を展開する企業のバックエンドエンジニアの道を歩んだ

もともと日本のゲームが大好きで、高校卒業後にワーキングホリデーで1年間日本に滞在したルーク。そこから、気づけば約15年もの歳月を日本で過ごしていると言います。

ルーク 「最初に日本に来たときは、温水洗浄トイレに感動したのを覚えています(笑)。イギリスのトイレは、座ると『冷たい!』と感じるものがほとんどなので。ただそれはほんの一例で、技術を使って生活をより良いものにしようと追求する──そんな日本という国の精神にさまざまな場面で触れ、感動したのだと思います」

大学卒業後は、インターネットメディア事業を展開する企業に入社。バックエンドエンジニアとして、ソーシャルゲームの運用や新規サービス機能の開発などに携わりました。

ルーク 「前職では、担当していたプロダクトがひとつずつ独立していて、その中で実現したい目標に向けて自由にチャレンジできる環境でした。PCが1台あれば、インターネット環境ではさまざまな夢が実現できる。

そうしたおもしろさもあったのですが、徐々に、インターネットの世界だけで完結してしまうよりも、より大きく社会に影響を与えるプロダクト開発に携わりたいと思うようになったんです。自分の技術を身につける段階から、その技術を用いて自分が生きている世界をより良いものしたい、という段階に移ったのだと思います」

その中でも日産自動車で働くことを選んだルークは、さまざまな場面で前職との違いを感じ、新しい刺激を受けていると言います。

ルーク 「あるひとつのインターネットサービスやソーシャルゲームを運用するのと、コネクテッドカーに関わるのでは、社会的な貢献度もミッションの規模感も大きく異なるということを感じています。前職では、インターネットの世界でどれだけ利益を得ることができるかという、競争の激しい世界の中で洗練されたものをどんどんつくり出すことが求められました。その経験もとても勉強になりましたが、そこで自分がそのプロダクトを作らなくても、別のところで誰かが似たようなものを作るだろうという感覚もありました。

一方の自動車業界は、コネクテッドカーや自動運転車、EVなど、社会のシステムや人々の生活すらも大きく変えてしまうような社会への貢献度がより高いプロダクトが次々と生まれている世界です。最先端の自動車が生み出されることで、人々の生活がより良いものになるだけでなく、インフラや法律など、すべてが変わっていく影響力がある。

エンジニアとしては『ユーザーに最高の体験をしてほしい』と思ってサービスを開発している根本は前職から変わらないのですが、より多くの人に届き、より良い未来につながるのだと信じられる点は、大きなモチベーションになっています」

多様な部署・メンバーとともにプロダクトを練り上げる

article image 3
▲チームメンバーとの仕事風景。日々活発に意見を交わし合い、より良いプロダクトの開発に励む

入社から3年が経ち、やりがいの大きい仕事を任されることも増えた一方、「人の命を預かる自動車」の開発に携わる責任感も強くなったと言います。日産自動車で挑戦するミッションの規模の大きさは、どのような場面で感じているのでしょうか。

ルーク 「オフィスにいると、ソフトウェアのことを考えているので視野が一点に集中しがちです。そんなときは日産自動車の技術開発拠点であるNTC(日産テクニカルセンター)に行き、製品開発や車体を使った実験などが行われている姿を目の当たりにすると刺激を受けます。

ブラックボックスのような世界に閉じこもってアプリケーションのことだけを考えていても意味がなく、鉄を流し込むところから自分たちの開発するソフトウェアまでがちゃんとつながっているのだと理解することが大事。『ここまで大きな規模の仕事をしているんだ……』と圧倒されますが、自分の仕事場に戻ってやるべきことをしようとあらためて気合いが入ります」

就職活動をしていた当時のルークは、大企業に対して「トップダウンの依頼に従って仕事が進んでいくもの」というイメージを持っていました。しかし、日産自動車に入社してみると、いい意味でイメージが裏切られたと言います。

ルーク 「上から要件が降ってきて、それに取り組むだけの仕事はつまらないだろうなと、学生のときには思っていました。ただ、実際に日産自動車という大きな組織の中に入ってみると、それとは真逆の体制でした。言われたことに対処するというよりは、自分のほうからアイデアを提案したり、つながりをつくったりすることで、どんどんできることが発展していくような環境なんです。

たとえば、自動車側のハードウェアの知識にしてもそうです。ハード側について勉強しなくてもソフトウェア開発はできるかもしれないけれど、そこの理解を深めることで、今までにないサービスを追求することができる。チーム全体としても意欲的なメンバーがとても多く、情報交換や新しい技術の共有、アイデアの提案などが活発に行われているアクティブな環境が気に入っています」

想像以上に柔軟に仕事に取り組める一方で、大きな組織でひとつのプロダクトを開発するということは、多くの人間が関わるということ。その分、複雑性も増すと言います。

ルーク 「たとえばソーシャルゲームをつくるなら、エンジニアやデザイナーなど数十人程のチームで完結できるケースが多いと思います。しかし、『NissanConnect』のアプリケーションに新しい機能を追加しようとすると、自動車のハードウェア側との擦り合わせを含め、実装するまでに多くの対話と時間が必要になります。さまざまな部署の人々が、その人の立場から意見をぶつけ合っていいものをつくり上げる。大変ではありますが、自分という一人の人間が会社に与える影響力を実感できるので、同時にやりがいも感じます。

私のように海外の国籍を持つ人がいるなど、さまざまなバックグラウンドの社員がいる環境でもあります。チーム内は英語を話せる人がほとんどで、海外で働いた経験を持つメンバーもいるので、私自身も違和感がありません。さまざまな価値観を持つ人たちによって、刺激的な意見が飛び交っている印象です」

自動車側の理解も深めながら、最先端の技術をどんどん応用していきたい

article image 4
▲業務風景。自動車そのものに対する理解を深め、エンジニアとしての技術力をより高めたいと話す

コネクテッドカーというスケールの大きいプロダクトに携わるようになって、多様な属性のメンバーたちと対話をしながら仕事を進めることが増えたと言うルーク。今後、日産自動車でどのような夢を実現したいのでしょうか。

ルーク 「自動車そのものがどういう構造なのかといった理解を深めていきながら、エンジニアとして技術力を高めていきたいと思っています。AIの技術なども、変革の真っ只中にあります。そうした最新技術を活用できる場面は、自動運転に関わらず山ほどあると思うので、そのあたりのスキルも追求しながら、実現化に向けて試行していきたいですね。

コネクテッドカーや自動運転は、人類が今しか経験できないような重大な社会変革を担う分野だと思っています。自分がこれまで修得してきた技術や経験を活かしながら、『未来の自動車の理想的なサービスとは何なのか』といった新しいチャレンジへの答えを追求していきたいと思っています」 

最後に、自動車の未来を担うソフトウェア開発において、どんな人と一緒に働きたいかを聞いてみました。

ルーク 「たとえば、スマートフォンアプリのUI/UXについてベストプラクティスを導き出すのは比較的容易ですが、自動車のハードウェア側が混ざると新鮮な課題がたくさん出てきます。人が命を預けるものですし、自動車は電波が届かない圏外に突入することもある。

そうした未知の課題に対して、それぞれに異なる経験を積んだ人やユニークなアイデアを持つ人が社内にいれば、解決の可能性が広がると思っています。世の中を変えていく覚悟を持つ人と、ぜひ一緒に働きたいと思っています」