社員を前向きにも後ろ向きにもさせる。人事という仕事の責任とダイナミズム

▲前職でのイギリス出張にて

横山の人事としてのキャリアは、新卒で入社した大手タイヤメーカーから始まりました。

横山 「元々は営業志望で就職活動を行い、入社したのですが、初任で人事配属になって労務や給与計算、海外人事などを担当しました。志望と異なる配属で最初は戸惑いもありましたが、働くうちに、徐々に人事という仕事の奥深さに気づいていきました。自分たちが構築し、運用する制度や施策によって、社員の方々は前向きにも後ろ向きにも変わっていきます。組織のパフォーマンスの浮沈に関わる責任あるポジション──そこにダイナミズムを感じ、おもしろいと思うようになったんです」

人事という仕事を楽しみながら取り組んでいたある日、キャリアの転機となる出来事が起こります。

横山 「ある案件で、人事コンサルタントの方々と一緒に仕事をする機会がありました。今にして思うと大変恥ずかしいのですが、そのころ人事がちょっと分かった気になっていた私は、鼻っ柱を折られまして……。というのも、彼らは自分が到底持っていないような深い知見があり、いろいろなアプローチやメソドロジーを持っている方々だったので、感銘というかショックを受けたんです。ああ、人事で飯を食うにはこういう道もあるのかと」

この出来事をきっかけに、人事コンサルタントというキャリアを視野に入れるようになった横山。その後、工場での勤務経験を経て、監査法人系コンサルティングファームに転職しました。

横山 「コンサル経験がない状態で入社し、最初は本当に苦労しましたが、周囲のメンバーにも恵まれて、最終的にはシニアマネージャーというポジションを任せてもらうまでになりました。非常に優秀な上司や同僚から指導や刺激を受けながら、さまざまな業種・業態の企業のプロジェクトに関われたことは、本当に大きな経験となりました」

10年以上在籍し、このままコンサルティングファームでキャリアを積んでいくと思っていた横山に、ある日、再び転機が訪れます。そのきっかけは、転職サービスからの一通のスカウトメールでした。

横山 「転職する予定は全くなかったのですが、世の中の人事的なトレンドやニーズを把握する情報源の一つとして、転職サービスに登録していたんです。それでたまたま目に留まったのが、三井物産のビジネスコンサルティング室の募集でした。新しく人事メニューを加えるということで、人事領域の経験者を探していたんです。商社での人事コンサルという仕事は、メーカーでの実務経験と、プロフェッショナルファームでのコンサル経験の両方が活かせるのでは、と興味を持ちました。新しい人事メニューの担い手をゼロから探してるという点に、大袈裟かもしれないですが運命を感じて。

しかも、ビジネスコンサルティング室は、さまざまなコンサルティングファーム出身の人や三井物産の営業部出身の人が集まっているという部署。今までとは違う力量や発想が必要とされる組織で、ここなら新しい刺激や学びがたくさんあるはずだと思い、転職を決めました」

グループ会社の人事戦略のブラッシュアップを支え、人事課題の解決を目指す

人事領域の豊富な経験を携え、三井物産のビジネスコンサルティング室に参画した横山。グループ会社を対象に、人事課題解決の支援を担うことになりました。

業務にあたる中で横山は、グループ会社の多くが人事領域に課題を抱えていることを目の当たりにします。思うように採用が進まない、退職者が続出して困っているなどの相談が、ビジネスコンサルティング室に数多く寄せられていたのです。

横山 「各社の相談にのっていく上で、私はいきなり方法論を提示するようなことはしませんでした。まずは、課題設定を明確化いくための対話をしたんです。  『どういう人の採用が必要ですか?』『どういう人材を育成していく必要がありそうですか?』『どういう人に社内に残ってもらう必要がありますか?』と問いかけると、『そこはまだはっきりしていないんですよね……』と曖昧な返事が戻ってくることが多いんです。

曖昧になってしまうのは、会社がこれから何を目指すのか、これから直面する経営テーマを、人事担当者がはっきりとイメージできていないからです。多くのグループ会社は外部環境の変化に伴い、ビジネスモデル自体の転換を迫られ、それに伴って戦略を大きく変える局面に立っています。更に言うと、人事をご担当されている方々は日々の人事運用や個別対応に多くの時間を割かれており、腰を据えて自社の将来像やあるべき人事戦略について考える時間を取ることがなかなかできないのが実情です。そうした事情も相まって、会社のビジネス戦略の方向性と、人事戦略の方向性が必ずしも一致していないケースが存在します。旧来の人事や人材のあり方で動いているのでなかなか上手くいかない、ということがよくあるのです」

このような場合は、自社の人事戦略を立て直すところからはじめることが必要だといいます。横山はこの2年半で、多くのグループ会社に対し、会社の事業戦略や事業計画、経営テーマ等に合致した人事戦略を策定し、それに基づいて採用手法や育成体系の再構築、人事制度の見直しなどに繋げていく支援を行ってきました。

横山 「前職のコンサルティングファームで培ったスキルが活きていますね。『人事課題で悩んでいる会社に、課題解決の支援をする』という意味では、前職から業務内容は変わっていません。ただ、大きく違う部分もあります。たとえば前職では、お客様の改善したいポイントや課題はある程度具体化されていて、そこに対して解決策を提案しました。一方、今はグループ会社の経営幹部や人事担当者からの柔らかい状態の相談から意見交換・討議を行い、その上で具体的な案件が始まることが多いんです。会社として真に取り組むべき課題が何なのかを膝詰めで討議し、そもそも論にも立ち返りながら一緒に考えていくアプローチですね。

また、相手先への関わり方も異なります。前職では、支援期間を契約で決めて数週間や数ヶ月という単位でプロジェクトを進めるのが基本でしたが、現在は、一応の期間は決めつつも‟終わり”がない。というのも、我々はグループ会社の経営課題の解決を支え続けることを目的とした組織ですので、ずっと伴走して必要に応じて連携を取り続ける立場でもあるのです」

共通課題を掴んでインフラ化。グループ全体に影響を与える仕事の醍醐味

解決すべき課題を一緒に見つけ、「何をやるか」という部分から共に組み立てていくのが、ビジネスコンサルティング室の仕事の醍醐味だと横山は語ります。

横山 「関わり方や関わりの深さが、コンサルティングファームとは決定的に違うなと思いました。そこに優劣はありませんが、私は今の立ち位置がとてもおもしろいと感じています。コンサルティングファームでは、プロジェクトにおいて我々は成果物を提供し、クライアントから報酬を頂戴するという形でした。でも今は、お金の関係で結ばれているわけではなく、あくまで同じグループ企業の仲間として関わっています。グループ会社の方々と我々が一緒に汗をかき、手を動かして、課題解決に向けて一緒に動いていく、かなり対等な関係性なのです」

横山の人事領域のプロフェッショナルとしての知見は、課題解決を進めていく過程で、グループ会社の経営層や人事担当にも共有されていきます。人事に関する深く、幅広い知見を三井物産グループ全体でシェアし、各社が自走できるようになることは、ビジネスコンサルティング室としての理想でもあります。

横山 「コンサルティングファームのように、支援が終了した途端に我々が急に居なくなることはないんですが、人事課題の解決アプローチを知って頂くことで、私たちの関与が少し薄くなった後もグループ会社側で課題解決をある程度自分たちでもできるような形を作っていくというところも、プロジェクトを通じてやっていけると良いかなとは思っています」

グループ各社の経営改善に関わるおもしろさは、それだけではありません。

横山 「グループ会社は、国内外に500社以上あります。その一件一件における経営課題の解決、延いては企業価値向上に向けて動いていくのですが、A社・B社・C社・D社と続けていくと、どの会社からも同様の課題が出てきたり、共通の悩みの根源があったりというのが見えてくるんです。多くの会社に共通する課題をつかむことができれば、グループ内でインフラ化や集約をして、グループ全体の課題解決を一気に進めることができます。人事領域だけではなく、他のビジネス領域でも同じですが、これこそがグループとして存在していることの強みの一つなのではないでしょうか」

一件一件の企業に関わりながらも、グループ会社全体を俯瞰して見る目を大切にしている横山。グループ全体にメリットを与えられる仕組みを企画し、三井物産の人事総務部や経営企画部に提案にいくこともあります。

横山 「三井物産本体と上手く連携しながら、グループ全体の最適化に向けて働きかけるようにしています。このように、三井物産グループすべてに影響を与える取り組みができるのも、ビジネスコンサルティング室の特徴です。非常に特殊な部分ですが、コンサルティングファームでは得にくい醍醐味を感じています」

大小企業と密に継続的に──ビジコン室だから味わえる「おもしろさ」とは?

三井物産のグループ会社は、業種業態もサイズもさまざま。関わる企業の振り幅もとても広く、横山はそこにも魅力を感じているといいます。

横山 「コンサルティングファームにいたときは、大手だったこともあって、大企業の支援をすることが中心でした。でも今は、大規模なグループ会社だけでなく、社員が2人のスタートアップ企業の支援をすることもあります。社員が数名しかいない会社の人事制度や人事施策を作る、という経験は前職ではできませんでしたから、おもしろいですよね。

だからこそ、今までの知見だけでは勝負できません。納得のいくものを作るためには、自分の知見を広げなければいけないので、日々アップデートに努めています。書籍やWEBサイトを通じての情報収集は勿論、さまざまな社外セミナーに参加したり、時には前職時代の仲間達と情報交換をすることも意識しています。刺激的な毎日ですし、三井物産のフィールドの大きさに魅力を感じながら働いています」

グループ会社の経営課題の解決支援は、一見すると、対象企業や仕事の幅が絞られるような印象があるかもしれません。しかし横山は、多様な企業と密にやりとりすることで、むしろ世界が広がったように感じるのだといいます。

20年間、人事畑で活躍し続けてきた横山。これまでのキャリアを通して彼は、多くの企業の経営課題に、人事の課題が内包されていることを感じてきました。だからこそ、人事側面からの経営改善が、企業に大きなインパクトを残せることを経験として知っています。

横山 「今の仕事が本当におもしろくて、このままずっと定年までビジネスコンサルティング室にいてもいいくらいエンジョイしています。でも、自分の幅を広げていくという意味では、この室を卒業してからの、社内での違う活躍先も今後見つけていこうと思っています。そのためにもしばらくは今のポジションで、人事や人材の領域だけでなく、もう少し広い視野で各種取り組みに関わっていきたいですね。

私は20年以上、人事に関わる仕事をやってきて、人事が果たす役割の大きさを実感しつつも、当室に来て戦略策定やコスト削減、業務改革等、様々なテーマの支援を通じて、それがグループ会社の経営改善に役立っている様を見て、そのインパクトの大きさを目の当たりにしています。私自身の武器はもちろん強みとして残しつつ、それ以外の武器もちょっとずつ加えていきながら自分自身のビジネス戦闘力を高めていくことができるとより良いのではないかなと思っています。

それは、自分自身にとって良いことですし、価値提供する先にとってのメリットにも繋がるんじゃないかなと考えています。具体的な展望は、まだわかりません。営業部門かもしれないし、人事部門かもしれない。グループ会社に出向して、経営に関わる可能性だってあるでしょう。視野を広げつつ、これからのステージを見つけたいですね」

三井物産というフィールドで、貪欲に自身をアップデートし続ける横山。
これからもその深い知見で、グループ各社が抱える経営課題を解決していきます。