長く働き続けてもらう職場づくりをめざす

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現在は、株式会社 明治(以後、明治)の製造課の課長として、守谷工場の製造ラインの最前線で働く社員を束ねています。品質の高い製品を安定的、効率的に製造するための生産ラインの管理や見直しを行うことが私のミッション。商品の品質管理と社員の安全を第一に考えて、日々行動しています。

守谷工場が製造するのはヨーグルト。ペットボトルタイプのドリンクヨーグルトやカップタイプのヨーグルト、フルーツ入りヨーグルトなど、多種多様なヨーグルト製品を製造しています。

守谷工場には、お客さまが見学できる「なるほどファクトリー」という施設のほか、社員の人財開発を行う「能力開発センター」があります。この2つの機能を持つ施設が同じ敷地内に揃っているのは、全国でも守谷工場だけ。他部署と連携しながら、事業を進めています。

通常、私は朝8時半ごろに出勤し、夜勤の責任者からの引継ぎを受けて大きな問題がなければ、ラインの稼働状況を確認。午後は書類の確認や会議への出席などを行うのが、1日の大まかな仕事の流れです。

人手が不足する中、採用の確保と定着率アップが目下の課題。とくに女性や65歳以上のシニアの方など、皆さんに心地よく働き続けていただくための適切な対応を考えているところです。

製造は3交代で行っていますが、小さなお子さんを育てている女性社員が夜勤に就くことは難しいため、子育て中の方には昼勤してもらうようにしています。守谷工場では夜勤シフトに入る人をできるだけ減らすための取り組みを進めてきました。この取り組みはこれからも続けていくつもりです。

仕事は助けられても、家族の代わりはいない。タイでの経験が働き方を考えるきっかけに

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1995年に明治に入社して最初に配属されたのは、群馬の伊勢崎にある工場です。そこに7年半ほど在籍し、紙パック飲料の製造などに携わりました。

その後、タイのバンコクから100kmほど離れたサラブリーという地域にある合弁会社で6年ほど勤務しました。

タイでは仕事に対する考え方が大きく変わる経験をしました。

妻が妊娠中だったため、私が単身赴任というかたちで先に現地に渡り、その半年後に出産を終えた妻と生まれた長女と合流しました。

国内の工場に勤務していたころは、結婚当初から仕事が忙しかったこともあり、私が遅くまで働くことについて妻はよく理解してくれていました。しかし、身寄りのない海外で育児するとなると、話は違います。文化がまるで違い、誰ひとり知り合いもいないなか、思うように外出もできず、妻は大きなストレスを抱えていました。

当時、現地の言葉をうまく話すことができなかった私も同じ状況で、互いに配慮し合うことができず、余裕がなくなってしまいました。

その後、ふたりで会話を重ね、私が育児に積極的に取り組むことを決めました。

当時の上司がとても協力的で、「仕事上のことは自分たちも助けられるが、家族の問題を解決できるのは君だけ。家事や育児に時間を割く必要があるなら、家庭を優先しなさい」と言われたことに、とても助けられたのを覚えています。

こうした経験から、いまでは男性育休取得率100%を宣言するなど、男性の育休取得に関しても促進する立場を取っています。とはいえ、まだまだ改善の余地があり、今後も取り組みを進めていくつもりです。

とくに、社員が育休を取得した際に欠員が出ても、業務を支障なく回せるような仕組みづくりをすることは、私たち管理職にとって大切な仕事です。意識しているのは、休んだ社員の仕事をほかの社員がカバーできるように、仕事を一部の社員に集中させないこと。また、ある程度人員の余裕があるとカバーしやすいため、65歳以上の雇用を増やして欠員を補充することにも積極的に取り組んでいます。

現状では、2週間程度の育休であれば大きな問題なく取得してもらえますし、何人かは半年以上の休暇を取得しています。ただ、長期の休暇を取得したい社員が増えても対応できるよう、新たな仕組みづくりが必要だと感じています。

自ら仕事と家庭の両立をめざしつつ、部下の活躍を願って、挑戦には積極的に背中を押す

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▲毎日作っている高校生の息子のお弁当

タイから帰国した後は守谷工場品質管理課の配属となり、その後本社の生産部で流動食を製造する新工場建設のプロジェクトに携わりました。2015年に関西栄養食工場製造課の課長、2018年には愛知工場製造課の課長を経て、2022年から現職の守谷工場製造課の課長として働いています。

工場には、性別を問わず意欲があって優秀な方々がいます。興味を持つことにはどんどん挑戦すればよいと思っていますし、異動時には面談での内容を踏まえて、「こういうことをやらせたい」と希望を伝えるように。工場は本社や支社と比べると郊外にあることが多く、工場で働くゆえの苦労も多いはず。そうした悩みを共有したり、会社への要望を伝えたりできる機会は決して多くないので、私がひと言添えることで、背中を押してあげられたらと考えています。

そして、女性のキャリアを応援する社内女性ネットワーキング“かがやき塾”に部下を推薦するなど、企業内プロジェクト参加への後押しも行っています。部下が仕事と家庭を両立するのをできるだけ助けたいと思っていますが、実際に私ができることは限られていると感じますね。最終的には自分自身で考えなくてはならないことが多いため、“かがやき塾”など前向きにキャリアを考える機会がある社内の取り組みは、積極的に参加するよう部下に声を掛けています。

私自身も仕事と家庭の両立を模索している最中です。

たとえば、高校生になる息子のお弁当は私が毎日作っています。以前、娘のときにも少しお弁当を作ったのですが、そのときは「おかずが茶色ばかり」と言われ……。今も妻がお弁当をみて「彩りや配列に工夫を」と手厳しいチェックをして(笑)、工夫を重ねています。

朝食も毎日私が作っていますし、夕食の用意を私が担当することも多いですね。どうしても手が回らないときは、具材を煮るところまで済ませておいて、味付けや炊飯を長女にお願いすることも。家族のために、料理はよく作っています。

家庭を大事にする姿勢を示すと、部下は事情を言いやすくなり、助け合える職場に

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以前、社員たちは遠慮深くて、悩みがあってもなかなか自分から口に出そうとしませんでした。たとえば、帰りが遅くなった日の翌日に、「昨日大丈夫だった?」と声をかけてみると、「実は妻に小言を言われて」とようやく重い口を開く具合です。

しかし、そんな状況も少しずつ変化してきました。工場長がイクボス宣言をして、「今日は野球を見に行く日だから早く帰る」と意識的に公言したり、毎週実施している管理職のミーティングでほかの課長が「家族でキャンプに行くので、ここからここは休みます」と宣言したりすることで、仕事と家庭を両立しやすい雰囲気が工場内に浸透しつつあると感じています。

実際、家族の誕生日や結婚記念日などの特別な日に「今日は早く帰ります」と言ってくれる現場の社員が増えてきましたし、それに対して「いいよ、後はみんなでやっておくから」と互いに助け合える空気が醸成されつつあると思います。

また、主任たちがいま取り組んでくれていますが、若い社員のエンゲージメントの向上にも力を入れていきたいですね。コロナ禍によって社内の交流が減ってしまっていると感じているので、職場で意見を出し合える環境をつくったり、共に飲食に出かける機会を設けたり、交流の場を増やしていきたいと思っています。

2023年からは工場長が音頭を取るかたちで、社員のご家族を招いての花見も再開しています。そのような良い文化をどんどん育てていきたいですね。

これまで困ったことがあるたびに、当時の上司や他工場に勤める近い立場の方からいろいろなことを教えてもらいながらここまでやってきました。これからも、イクボスをめざす方たちと共に、課題の解決に向けてアイデアを共有しながら取り組みを続けていきたいと思っています。

※ 記載内容は2023年5月時点のものです