“空気が読めない”はポジティブに。「育児をしながら働きたい」が起業のきっかけ

▲仙田 忍さん

子どものころから空気が読めない。でも、周囲が想像もできないような空回りなミスをしても「なんとかなる!ただで転ばず誰かを巻き込み楽しむ!」を心に持つことで、周りの方に助けられ「実際なんとかなってきた」とルカコ創業者の仙田 忍さんは振り返ります。

仙田さん 「短大のオリエンテーション合宿の初日、おしゃれにしたい一心で髪を脱色し、カラーを入れるつもりが、途中で寝てしまって気付いたらもう朝。遅刻寸前で洗い流して向かったんですけど、電車の中でまた寝てしまって、着替えなどの荷物を電車に忘れてしまったんです。

到着はギリギリ、髪は金髪で、手ぶら(笑)。自己紹介では『荷物を電車に忘れたので、新しいパンツを持ってきた方はください!』と言いました。

そのときも、誰よりも空回りしていたけれど、誰よりも印象に残ったようで、学校のみんなに覚えてもらえて。それからは周りのみんなに助けてもらえるようになりました。 本人は大真面目なんです(笑)。空回りの後、必ず巻き返します!」

また、あるときは

仙田さん 「ある賞で経済産業省で表彰されたときも、各グループで記念撮影を撮る時間があったのですが、なかなかこんな機会はないですし、壇上に上がって大臣に『大臣!写真撮りましょ!』ってスマホで写真を撮って頂きました(笑)。

『頑張ってね!』と大臣に言っていただき、おかげ印象を残すことができました(笑)」

一事が万事その調子。しかし、仙田さんは自分が空気を読めないことを、ポジティブにとらえています。

仙田さん 「空気が読めないポジティブさって、逆に人を巻き込む力になっていて、きっとそれだけでやってこれているな、と。経営者としてすごい方や生き方が好き!な方にはどんどんお話を聞きにいきます。自分の規模感とかよりも人間としてお付き合いしたいな、と遠慮しません(笑)。人生としてそういう楽しい方がいいかなと思いますし、ご縁がご縁を生み、たくさんの人を巻き込むことはまたきっとご縁を生むと思っています」

短大卒業後、歯科衛生士とケアマネジャーの資格も取得しました。また、仙田さんはひとつのことに集中すると2〜3日寝ないことも。

しかし、当時2歳と4歳の子どもがいる中、保育園に預けることが難しいという現実に直面。資格を保有していて働き口はあっても、保育園はすでに働いている人が優先で、働いている証明がないと預けられない

そこで、仙田さんがとった手段が起業でした。2013年のことです。

仙田さん 「お小遣い5万円で、自宅で抱っこひも収納カバーを製作・販売し始めました。育児をする中で、抱っこひもを使っていないときにだらーんと垂れ下がるのが邪魔だなと思い自分のためにつくったのが最初。友達にとても好評だったので、周りのママなどにヒアリングをした上で販売することにしました。

最初は誰かを雇用することは考えておらず、パート代くらい稼げたらいいな、という想いでした」

2,000円で生地を買い、趣味だった一眼レフのカメラで写真を撮り、趣味だった縫製で商品をつくり、趣味だったPCでネットショップ販売を開始。2,000円分の生地でつくった製品が4,000円に。その4,000円でつくった製品が売れて8,000円に。気が付いたら最初には想像していた世界とまったく違うことに。

もし縫製が苦手なら、得意なことで仕事に貢献すればいい

売りたいものではなく、自分が欲しいものをつくりたい仙田さんは、持ち前の集中力を生かし、品質にとことんこだわりました。その結果、ママが便利グッズとして口コミで広げてくださり、育児雑誌などにも取りあげられ、半年後には月100万円ほど売り上げるまでになります。

しかし、人気が出るにつれ、仙田さんひとりでは追いつかなくなりました。寝る間を惜しんでつくっても製造が間に合わない事態に。「自宅で子どもを見ながら働きたい」。そう思って始めたにもかかわらず、子どもに「あとで!」と対応してしまうようになっていました。

仙田さん 「一度立ち止まって『そもそも私の困りごとってなんだったっけ』と考えなおすと、働きたい時間に働けなかったことだったんだと思い当たりました。私みたいに困っている人たちと一緒に働けばいいんじゃないかと考え、新聞広告で募集をすると、なんと2週間で70名も応募があったんです!」

嬉しさのあまり、全員と面接した仙田さんは、一気にスタッフ30名を雇用。一緒に働きたいけれどこれ以上雇えない、という場合はひとりずつ手紙を書きました。自宅から徒歩3分のところに事務所を借り、ルカコは新しいスタートをきります。

仙田さん 「10〜13時、13時〜17時と3時間程度の勤務体制にし、小さい子がいたり介護が必要で、自宅で働きたい方は業務委託で縫製をお願いしました。数ヶ月後には10名ほど足りなくなり、前回採用できなかった方々に連絡することに。すると、『待ってました!ルカコで働きたい!』と泣いて喜んでくれました」

縫製は研修を実施し、仙田さんの求める百貨店クオリティの製品をつくれる社員を育成。中にはその水準に達しないスタッフもいましたが、じっくりとその人の得意分野を探していくことで、活躍できる場ができます。

仙田さん 「みんな、私が一緒に働きたいと思ったり、本当に困っている方。仕事はあとから学べばできるし、一人ひとりに合ったやり方で働いてもらいたい。縫製よりも文章が得意な方には、ブログを書いてもらっています」

「長い間お世話になっています」お客様の言葉が忘れられない

▲DIYでオープンさせた「ルカコストア」

自分でつくったものを自分で販売するのも、働く人のやりがいのひとつ。

仙田さん 「自宅で縫製しているママスタッフがつくった製品が、百貨店に並んでいるだけでも、やりがいになります。一度百貨店の催事に立ってもらったのですが、お客様から『どれが一番売れてますか?』と聞かれると、『これです!今月一番つくった製品なので』と自信を持っておすすめしてくれています。つくったものに自信がないとできない、買ってくださる方も安心して買える。ママの商品をママの手に直接手渡せるのはすごく良い機会でした」

また、2017年11月、社屋1階に初の実店舗、ルカコストアを、「費用をかけず」にこだわり、DIYでオープンしました。催事などで得た経験から、ママたちが来やすい金曜・土曜の11〜15時だけ。それは働く側も働きたい時間でもあります。

仙田さん 「ママタイムONLYのお店があってもいいなと。短時間集中型はルカコらしいなと思っています」

また、街中でふとすれ違った人が、ルカコの製品を使っているのも嬉しい出来事。

仙田さん 「電車内でルカコの商品を使ってくれてるママさんがいて、思わず『それルカコですか?』と声をかけたんです。すると『すごく丈夫で便利ですよ!おすすめです!』と言ってくださって、嬉しくて『私たちがつくってます』と名乗りました。

『お会いできて嬉しい!」とおっしゃってくださり、盛り上がった私たちを見て赤ちゃんも嬉しそうで電車を降りるときには一緒にいたおばあさまが『長い間本当にお世話になっています。上の子のときからふたり目の今でも。良い商品をつくってくださって、本当にありがとうございます』とお礼を言ってくださったことが忘れられません」

仙田さん自身が、このご家族をお世話したわけではありません。しかし、手がけた商品がその家族をなん年も見守ってくれている。ママたちがつくった製品が、どこかのママを笑顔にしてくれることを実感した嬉しい瞬間です。また、それをきっかけに、修理保証をおつけして長くご愛用できる体制も整えました。

事業が拡大していくと、各業界で活躍する方々と知り合う機会も。そこでずっと気になっていた子どもへの少し後ろめたい気持ちがあったことが吹っ飛びました。

仙田さん 「会社を始めたころは子供を見ながら好きな仕事ができたら、と思っていたのに時間に追われて子どもに待ってもらうことが増えました。あるきっかけでファッションデザイナーの世界的に有名な方にお会いすることができ、生き方について聞くチャンスがありました。

『私は仕事で世界中を回っているし、子どもに時間をかけてあげられなかった。とことん自分が信じる美について追及した。子どもは親の背中を見ていて、大きくなってお母さんかっこいいと言ってくれる。80歳を過ぎた今、私の生き方は間違っていなかったと思う』と言ってくださり、人生の大先輩のひと言は本当に心強く響きました」

2017年現在、小学生になった仙田さんの長女は、ストアの開店作業や土日の販売を自ら手伝ってくれることも。子どもは親の背中を見ている、まさに大先輩の言葉。ただの主婦だったら出会えなかった方々に会い、勇気をもらえることは、仙田さんが起業しなければ体験できなかったことでした。

ポジティブに、子どもたちと一緒に成長したい

▲「抱っこひも収納カバー ルカコ」

ひとりの主婦からはじまり、近畿経済産業局主催LED女性起業家応援プロジェクトビジネスコンテストのファイナリスト、商工会議所女性会連合主催の全国女性起業家大賞のスタートアップ部門で優秀賞、経済産業省・中小企業庁「はばたく中小企業・小規模事業者300社受賞と数々の賞にも選ばれました。それらによる変化は仙田さんの家族にも大きな影響を与えます。

仙田さん 「会社の管理職をしていた夫は、今ではルカコの専務・人事・財務などの面でサポートしてくれていますし、育児に関しても家事に関しても今ではかなりの部分でフォローしてくれています。また、両親への恩返し、主人への恩返しもこれから少しづつできればと思います」

ママの商品をつくり、雇用を生み、ママがママにお届けする。そうして、少しづつでも社会の貢献になっているならば、それはルカコの喜びでもありやってきて良かったと思える瞬間です。

仙田さん 「自分たちの生活を大切にしたうえで、できることを考え、『今、幸せかどうか』を大切にしたいです。利益も必要。それでも大切なことは忘れないようにしたいと思います。

ママになってみると、想像していた以上に大変。短時間でも、集中して働ける勤務体制や、在宅勤務、得意なことを生かす働き方、いろいろな働き方があっていいと思います」

人気商品になり、類似品も出てきました。抱っこひも収納カバーの使用期間も短ければ、リピートする期間も短く商品もニッチ。せっかくファンになっていただいたので、次に続き、恩返しできるような商品やサービスをこれからも考えることが課題です。それはまたそのときの私や、誰かの困りごとを解決する何か、かもしれません。

そして目の前にいるスタッフやお客様の一人ひとりを大切にすること。声を聞き、解決していくこと。それが今の商品をつくり、雇用を生み、私たちをつくってきました。

これからまた新しい商品、働き方、世界をつくって、社会の小さなことかもしれませんが、なにかを変えることができたのなら、それがやりがいです。

ルカコは「お世話になりました」から「お世話になっています」と言われるような会社であり続けたいと思います。

※本ストーリーは一般社団法人at Will Workが開催する、働く“ストーリー”を集める5年間限定のアワードプログラム「Work Story Award」を受賞した企業のストーリーです。