どんなお品物でも大切なものであることを念頭に、一つひとつ丁寧に扱いたい
中村は2021年11月、コメ兵に入社。2022年12月現在、買取専門店の店長として店舗運営を任されています。
中村 「これまでKOMEHYOは、時計・洋服・バッグ・宝石類の4つの商材を一つずつ学び、専門知識を深めるしくみだったのですが、ちょうど私が入社した時期は、すべての商材を一人の鑑定士が査定できるようにという運営が始まったころでした」
買取専門店では、お品物の状態を自分の目で確認した後に、商品部というプロフェッショナルがいる部署に写真等で金額の相談をし、それをお客様へ伝えたうえで、お売りになるか判断をしてもらいます。持ち込まれるお品物をすべて自分で対応する必要があるため、取り扱いアイテムに対しての幅広い知識が必要です。
中村 「お客様がお持ちになったものは、その査定金額が100円であろうと100万円であろうと、大切なお品物であることには変わりありません。どのお品物も丁寧に扱うように心がけながら、どんな想い出があるお品物なのかなどの情報を伺うためにしっかりコミュニケーションを取り、お客様が気持ちよくお売りいただけるように努めています」
お客様に配慮する一方で、相談相手である商品部に迷惑がかからないように、写真の撮り方や、問い合わせはルールに忠実、かつ、わかりやすく伝えることを意識しています。全店舗からの相談に対応している商品部のスタッフたちは、鑑定士が伝える情報を元に査定金額の相談に応じます。
情報が少なければ正確な判断ができませんし、情報が多すぎても確認する手間が増えてしまいます。いかに社内で適切なコミュニケーションを取ることができるかもこの業務では重要だと、中村は語ります。
中村 「お客様からお品物をお預かりしてから10分程度で査定できることもあれば、お品物の数が多い場合は1時間ほどお待たせしてしまうこともあります。小規模な買取専門店は基本的に一人で運営するので、次のお客様がいらっしゃった時にお待たせしないように、丁寧でありながらスピードも求められます。日々、自分のスキルアップの必要性を感じていますね」
別の業界で働いたからこそ明確になった、自分がやりたいこと
中村は高校卒業後にアパレル販売を経験した後、元々古着屋めぐりが好きだったこともあり、都内のリユース専門店で11年ほど勤務しました。
中村 「30年ほど東京で暮らしていましたが、子どもが生まれたことをきっかけに、育てやすさを重視して妻の実家のある大阪に引っ越すことを決意したんです。そして、せっかく新しい生活をするのなら、自分もまったく新しいことに挑戦してみたいという気持ちがあり、一旦リユースから離れた住宅リフォーム関係の営業の仕事に就きました」
父親の仕事が転勤族だったことから小さな頃は転校が多く、新しい友だちを作るのが得意だった中村。初対面の人と話すのが全く苦にならず、 接客業が好きだと感じるのも、小さな頃から多くの人とコミュニケーションを取っていた経験があるからです。
しかし、転職したリフォーム会社では新たに学ぶことが多くありながらも、お客様とのコミュニケーションが電話中心であったため、どこか物足りなさを感じていました。また、あまり服装に気を遣わない仕事環境に身を置いたことで、自分自身のファッションへの熱意も再認識したのです。
中村 「好きなことを仕事にするのが、私の人生の信条です。一旦違う業界で働いてみたことで、やはり熱意を持ちながら取り組める仕事はファッション関係なのだと気づきました」
さらに、ファッション関係の中でもリユース業界に戻ろうと思った理由は、新品にない魅力があるからだと中村は語ります。
中村 「まず、取り扱うブランド数が一次流通とは比にならないくらいに多いです。ブランドを越えたコーディネートも1つの店で完結できますし、一点モノがあったり、今は手に入らない限定品やヴィンテージ品があったり、非常にバラエティ豊かです。新品だと高すぎる憧れの品物であっても、リユースなら多くの方が手に取りやすくなることも魅力だと思います」
以前、東京で勤めていたリユース店は、若者向けのカジュアルな洋服を中心に扱っていたため、商材と自分自身の年齢が次第に離れていくのをひしひしと感じていた中村。その一方、自身が客として訪れていたKOMEHYOの店舗は、これから自分が迎える年齢にもマッチしていることもあり、前向きに勉強できると感じたと言います。
中村 「前に勤めていたリユース店は、買取りから店頭に出すまでの全サイクルを店舗で行わなければならず、社員はいつも店頭以外の業務で忙しくしていました。その当時、自分がプライベートで利用していたKOMEHYOでは、店頭スタッフが一人ひとりお客様と密接に関わりながら応対していたんです。人とのコミュニケーションに重きを置く自分としては、そこに魅力に感じましたね」
住宅リフォームの会社から転職を決意した矢先にコメ兵の求人を見つけ、絶対にここで働きたいという想いを持って入社を果たしたのです。
思い入れのあるお品物を売っていただくために大切なのは、親身な受け答え
中村の場合、鑑定士になるための研修期間は4週間ほどでした。買取りの流れや各商材の基本知識について学びんだあと、講師による接遇の審査もロールプレイングで行います。
中村 「実際に店舗に出てからも、2カ月ほどはOJTで先輩たちに自分の応対を見てもらえるので、独り立ちする頃には全く不安なく業務をこなせるようになっていました。ただ、前職で扱っていたリユース品と比べて高額なものが持ち込まれることも多いので、所作や商品知識など、改めて学ぶことも多かったですね」
買取りに際しては、査定金額を伝えることはもちろん、理由を説明することがとても大切です。中村が分からないことについては、商品部のスタッフが査定と一緒にその理由を丁寧に教えてくれるので、お客様の疑問にもスムーズに受け答えができていると言います。
中村 「独り立ちしてしばらくした頃に、エルメスのバーキンを150万円で買い取りする機会がありました。研修やテスト以外でそれだけ高額なものを扱うということが初めてでしたし、お客様にとっても大切なお品物だと感じたため、とても緊張しましたね」
商品部のスタッフから査定金額の理由を細かく教えてもらった上で、自分で感じたそのお品物の良さを交えながら、お客様へ査定金額をお伝えしました。
中村 「そのお客様のご希望金額には満たなかったのですが、『中村さんの説明に納得できたから売ります』とおっしゃっていただき、お譲りいただくことができました。買取りというのは、金額はもちろんですが『売ってもいい』と思っていただけるような応対が重要なのだと実感できた経験です。いかにお客様の気持ちに共感し、寄り添えるかによって、気持ちよくお譲りいただけるかどうかが変わるんだと思います」
お客様がその品物を買った背景や、愛用していた頃の思い出を伺った上で、手放すことを迷っている様子のときは無理に売ってもらおうとせず、「このまま使ってもいいのではないか」という提案をすることもあると中村は語ります。
中村 「それでも手放したい理由が見えたときには、背中を押してさしあげるようにお話ししています。お客様から『コメ兵に持ってきて良かった』とおっしゃっていただけるのが何より嬉しいんです」
コメ兵には個人のノルマがありません。同じエリアの店舗や仲間たちと、チームの目標達成に向かって一丸となって頑張ろう、という文化があります。だからこそ、幅広い選択肢をもってお客様一人ひとりに一番良い提案を考えて実行できるのかもしれません。
自分の経験を共有することで、これから入って来る社員からも頼りにされる存在に
コメ兵に入社して1年が経ち、さまざまな買取りを経験することで、自分の成長を感じるとともに目標も見えてきています。
中村 「お客様からお譲りいただく珍しいものなどを実際に見て、触る機会も多くなったことで、自分自身の目も養われているのを感じています。商品部や先輩社員に教えてもらうのはもちろんですが、さらに自分で詳細に調べることで、少しずつですが確実に知識も増えていると感じます」
商品知識のベースがなければ、お客様に不信感を与え、「この人に買取りを任せたい」と思ってもらえません。そのため中村は、休日には今までだったら立ち寄らなかった百貨店やブティックなどにも進んで足を踏み入れて、お客様が日ごろどういった応対を受けているのかを体験したり、商品知識を養いながら、レベルアップを図っています。
中村 「お客様が何か相談されたいことがあったら、気軽に相談していただけるような存在になりたい。『中村さんだからこの品物を任せたい』と思ってもらえるように、これからも頑張っていくつもりです」
さらに中村は、人の育成にも貢献したいと考えています。店舗を一人で運営する鑑定士の1期生は中村を入れて4人。そのため、イントラネットで1期生のグループチャットを作って日ごろから悩みや業務の改善点を話し合い、会社にフィードバックできるようにしてきました。
中村 「その後、2期生が4名入ったので、自分たちが悩んできたことを共有できたらと思い、2期生を加えたグループチャットもつくって個人的に連絡を取りました。まだまだ教えるほどの力量はありませんが、同じ鑑定士として仕事の不安や疑問などの相談を共有しながら、自分の経験が他の誰かの役に立てばと考えたんです。
今後、買取専門店の出店が進む中で、私たち鑑定士は会社の成長のカギの一つになると思っています。そのため、新人鑑定士たちに対して業務面だけではないフォローができるようになることが直近の目標の一つです」
時計や宝石など、取り扱う商材の中で何か一つでも好きだと思えるものがあれば、買取りの仕事は楽しめるという中村。
KOMEHYOの中で共有されてきた多くの知識を、中村たちがさらに広げて、新人鑑定士たちへと受け継がれていくことでしょう。