派手さはないけれど、あって当たり前。安心と安全を創る土木事業への憧れ

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▲入社当時の南

2023年1月現在、京王建設株式会社取締役土木管理部長を務める南。大学は武蔵工業大学(現:東京都市大学)の土木工学科を卒業。ものづくりの仕事がしたくて京王建設に入社しました。

南 「高校生のときにお城やダムなどの建設に興味があって、その流れで土木事業に関心を持ちました。“決して派手さはないけれど、誰もが当たり前に安心して利用できるものを創りたい”という想いが高まり、この道を選びました。就職活動中、京王建設を知ったのですが、京王という名前は上り調子で知名度も高く、他の電鉄系の会社に比べて、おしゃれできれいなイメージ。それに当時、京王相模原線は多摩センターまでしか駅がなく、この先橋本まで延伸するという計画も聞いて、未来のあるおもしろそうな会社だと感じていました」

入社後はそのまま土木本部へ配属。約14年間、現場の仕事に携わりました。

南 「当初は、多摩地域の民間の造成工事(住宅などを建設するために、その土地に必要な環境や機能を整える工事のこと)を多く経験しました。そのころは住宅需要が高く、造成工事が本当に盛んでしたね。そのほかではジブリ映画の舞台にもなった聖蹟桜ヶ丘の“いろは坂”の道路舗装工事や、JV(共同企業体)の仕事ですが、多摩境駅の新設とその周辺の粗造成工事にも携わりました」

入社前に聞いていた路線延伸の事業に関わることになった南。大規模な土木現場を目の当りに、感銘を覚えます。

南 「そのときは南大沢から橋本間に駅はなくて、その間に新設の駅をつくる一大事業でした。現在の多摩境駅一帯の広大な土地をすべて粗造成して、駅を新設する状態を整えました。今でもなかなかお目にかからない巨大な重機たちが、すさまじい音とともに工事を進めていく様はまさに圧巻で、現場のダイナミズムを肌で感じました」

向き合わなければならないのは“人”。現場進行の厳しさと喜び

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▲2010年整備後の打越地区

責任者である所長となってからは、建設現場の一部始終を管理する立場に。そこでは工事を通じて向き合った“人”との中に、苦しみや喜びがありました。

南 「八王子市横川町の造成工事を行ったとき、地域住民の方から反対運動を受けたんです。工事は一時中断し、現場はかなりの緊迫感がありましたね。お互いの譲歩できる部分をつくりながら、話し合いを重ねていって……。具体的には擁壁などをセットバックしたり低くし、少しでも圧迫感をなくす工夫をして、地域の方の理解を求めました。工事が完了したときはほっとしましたね」

一方、対話の中で財産になるような嬉しい出来事もありました。

南 「八王子の打越地区での住宅区画整理は、本当に苦労が多い現場でした。住民の方の協力を得て、工区を5~6カ所に分け、順次移動してもらいながら生活導線を切り回して工事を進めました。そんな厳しい工事の中、道路が新しくなるたびに、住民の皆さんがこぞって感謝の声をかけてくださるんです。そのときの喜びは今でも忘れられませんね。土木の仕事をしていてストレートに手ごたえを感じた瞬間です」

所長として、工事チームのマネジメントにも心を砕いた南。京王建設のカラーである“仲間意識の強さ”はどういうところで生まれてくるのでしょうか?

南 「作業中は非常に緊張感が高いですし、自らの安全を確保するためにも助け合いの精神は必要。自然と仲間意識は高まります。現場を離れれば、年齢関係なく定期的にゴルフや釣りなどの活動や懇親会を行っています。時勢もあり今は活動を控えていますが、みんなコミュニケーションをとることが好きですね。

また、チームのモチベーションを保つために、作業の割り振りを均一にしていました。人の成長って本当にバラバラですし、やってみてわかることも多い。不公平感がないように、その人に合った指導をしていくことを念頭に置いていました」

もともとなかった橋本駅、これから創る橋本駅。地域と生きる土木の仕事

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▲今後の京王建設について語る

土木の仕事を通じて街の安全を創り、守ってきた南。京王建設が今後手掛ける“新しい発展”とはどんなものなのでしょうか?

南 「目立った案件が二つありますね。一つ目は高尾山。富士山と並び、ミシュラン三ツ星に輝く世界有数の観光地です。京王建設は土木事業として斜面崩壊対策工事や耐震工事に取り組み、安全な観光地として提供するプロジェクトに参加しています。際どい急斜面に杭やアンカーを施工するため、足場やステージを組んで、さらにその上に重機を載せて作業するのは至難の業。技術屋としては生唾ものの現場で、私ももう少し若かったら施工に携わりたいですね(笑)。

もう一つはリニアモーターカーが停車する神奈川県駅(仮称)の新設工事です(注1)。リニア開通は2027年と言われていますがその前に駅自体は完成し、その後、横浜線や京王線の駅を移設する流れになります。現在の橋本駅周辺の整備が進めば、地域一帯は見違えるようになりますよ」

大きなプロジェクトを目前に控え、南は、まだ京王の駅がなかった橋本のことを思い返します。

南 「私が学生時代橋本を訪れたときは、京王橋本駅はありませんでした。その後橋本まで延伸され、入社後に南大沢~橋本の中間駅となる多摩境駅の施工に携わりました。35年経って、今度はその橋本駅を移設し、新しい駅の誕生にも立ち会える。本当に素晴らしい経験です。私が感じた感動を、ぜひこれから“ものづくり”を目指す若い方にも味わってほしいと思います」

実際とは違う!イメージ先行の“土木”の評価。ミライを変えていく人材に必要なこと

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▲コミュニケーションとチームワークが、安全な現場を創る

魅力的な話題に欠かない京王建設土木の仕事。しかし、さまざまに業務改善された今でさえ、昔ながらのイメージが残っているのも事実。京王建設の実際の仕事環境はどうなっているのでしょうか? 

南 「まずは休日ですが、原則週休2日制。官庁・公共交通機関から受注が多く、その場合、週休2日を前提に工期を設定します。昔と比べて変わりましたね。また、京王建設は基本的に転勤がないんです。事業拡大を視野に入れてはいますが、基本は京王線沿線の工事が主体。地元で安心して働ける。高い定着率の大きな要因だと思います。昔からよく言われている3K(きつい、汚い、危険)というイメージは払拭されていると思いますよ(笑)」

建設業界全体でも、若年女性の活躍が報じられるなど、変化の兆しが見え始めています。

南 「女性の技術職進出は非常に嬉しいことで、来年も1人入社します。また今年、CCI東京(注2)が主催する建設業・若手女性活躍大賞を、当社女性社員が受賞しました。非常に名誉なことですし、性別関係なく土木技術員として活躍できることの証左だと感じています」

若手の活躍を感じながら、南にはこれからの京王建設を担う仲間に、伝えたいメッセージがありました。

南 「学生の皆さんには、今の同級生や友人とたくさんコミュニケーションをとって、将来も付き合っていける仲間を作ってほしいなと思います。年を重ねても、苦楽を共にした同級生は貴重な情報をくれたり、相談ができたりと、必ず助けてくれる相手になります。現場の人間にも同じようなことを言っているんです。『自分一人でできることはそんなに多くはない。自分一人で、大きな仕事をできるということは、絶対にない』 と。土木の現場ではチームワークは本当に大事ですから。あとは社会人としてのマナーを身につけておいてほしいです。どんな現場であっても最低限のマナーは必要ですからね(笑)。

やはり京王建設土木事業の魅力としては、自分の仕事を将来にわたって長く見られることです。街や沿線一帯の発展を感じて、『昔こうだったよね』『こんなに変わったんだね』という話ができること、またそういったことに喜びを感じられる人が京王建設には向いてると思っています。ぜひチャレンジしてほしいですね」


注1:リニア中央新幹線の建設(相模原市広域交流地点~未来を拓く 相模原新都心~ より引用)

https://www.city.sagamihara.kanagawa.jp/area/koikikoryu/citydev/16.html

注2:CCI東京:CCIとはCharming Construction's Identityの頭文字を取ったものです。「魅力ある建設事業推進協議会」といい、東京都をはじめ関東甲信地域の各県にも設置されています。