座って図面に向き合うより、現場で実際のものづくりに関わりたい

▲建築本部 建築工事の坂本 賢慈

坂本 「建築は地図に残る仕事だとよくいわれます。そういう憧れはあったので、住宅に限らず建物全般を建てることに携わりたいという想いがありました」

そう語る坂本が現場監督という職種を知ったのは、大学に入ってからのことでした。

坂本 「授業で設計を学ぶうちに、机にずっと座って図面と向き合うのは性に合わないと気付いたんです。設計でないとすれば、施工で建築に携わることになります。正直にいうと消去法で現場監督をという仕事を目指したんです」

一見、消極的に思えますが、それは正しい判断でした。入社後さまざまな現場に出るようになり、現場監督の仕事に坂本はどんどん魅了されていきます。

坂本 「頭の中で思い描いたことを図面に描けても、現実にはその通りにできないこともあります。そんなとき設計どおりに実現できる方法を考えるのが現場監督です。実際に形にする現場のおもしろさは、働きはじめてから知りました」

就職活動ではハウスメーカーも検討しましたが、「大規模建築に携わりたい」とゼネコンに絞ります。中でも京王建設に対する思いは強いものがありました。

坂本 「まず大学の先輩が何人も京王建設にいたので安心感がありました。それに京王沿線の仕事がメインで転勤がない。京王グループだからこそ大きな物件も扱えるし安定もしている。それに京王建設なら他社のゼネコンにはない“駅舎“をつくれる可能性もあります。マンションやビルとは違っておもしろそうだなと思ったんです」

5年目で所長に──大変さを超えた先にある、未知の楽しさを体験する

▲入社5年目という異例のスピードで所長に抜てき

入社後4カ月の研修を経て、さっそく現場に配属されます。初めての現場は、所長と主任と坂本と3人で現場を担当。工期は1年間におよぶ大型案件でした。「1から覚えることばかりで、とにかく自分にできることからひとつひとつやった」と坂本。毎日が勉強でした。

そうしてキャリアを積むうちにターニングポイントがやってきました。入社5年目で所長に抜てきされたのです。異例のスピードでした。

坂本 「4年目に1級施工管理技士の資格を取得したので任せてもらえたのだと思います。初めて自分の名前が所長として工事看板に掲げられて、うれしかったですね。小さな現場でしたが、私にとっては大きな挑戦でした」

グループ会社の社宅で2階建てのマンション。工期は半年間でした。

坂本 「当然ですが、それまで所長がやっていた仕事もぜんぶ自分がやることになりました。建物の図面のチェックは経験がありましたが、内装やキッチン・浴室などの住設備の図面チェックは初めてで、わからないことばかり。当時の担当課長や上長、他の現場の所長、先輩などに聞いて勉強しながらやっていました」

設計士や施主、現場周辺の近隣住民とのやりとりも初めてです。近隣から「工事の音がうるさいから土曜の工事はやめてほしい」などの要望が出れば、坂本が直接、話し合って解決策を考えて対応します。解決したら会社にも報告が必要。「近隣対応がいちばん大変だった」と当時を振り返りますが、日々新しいことに追われながらも、着実に所長の責務をはたしていきました。

坂本 「厳密には上長に助けてもらえたこともあり、すべてひとりでやったわけではありません。でも1から10まで自分の判断で取り組めたことで、所長の仕事を覚えられたのはよかったです。そのときに初めて知った楽しさもありましたから。

所長という立場は、自分の考えが現場に反映されます。主任のときは所長の決断に沿って進めていたので、初めて自分の考えで現場をつくりあげるという体験ができて、仕事がどんどんおもしろくなっていったんです。所長を誰がやっても行き着く先は大きく変わらないかもしれません。でもプロセスは所長によって変わる。

自分の指示で現場が変わるのは、やりがいにつながるし、完成時の達成感は以前にまして大きかったです。大変さはあってもトータルで考えたら、所長の仕事は楽しいですね」

楽しい面を発見しながらも、難しい判断を求められることもあります。あらためて予算の重要性にも気付きました。

坂本 「決まった予算範囲で利益を生み出すように全体をコントロールするという意識を、もっと高めなくてはいけないと思いました。ただ工事の管理をしているだけでは、なんの意味もないと理解したんです。そのときは所長といっても小規模だし上長のサポートもありました。

本当の意味での所長には、まだまだだと実感して、仕事に対してもっと広く知識を得て、広く深くやっていかないと成長しないと気付かされたんです」

チームワークを高めるため、いい仕事をするために無理はしないで無駄を省く

▲いい仕事を生み出すためには、現場のチームワークが重要

坂本が仕事でもっともと重要視しているのは「無理をしない」ことです。

そう考えるようになったのは結婚して子どもができてから。でも“働き方“という視点だけが理由ではありません。

坂本 「私自身は、時間をかければいい仕事ができるとは限らないと思うんです。“残業しないように“という意識でいたほうが仕事に前向きに取り組めるのかなと。無理はしないで無駄を省くことは、業務効率をあげるという意味でも大切ですからね」

もうひとつ、現場で大切にしていることがあります。

坂本 「仕事以外の雑談を無駄ととらえる方もいるかもしれませんが私はそうは思いません。新しい現場で久しぶりに会う職人さんがいると話が盛り上がります。そしてこの雑談が実はいい仕事につながるんです。

たとえば現場の社員同士やチーム内、職人さんとコミュニケーションがうまく取れていて、協力しあえる雰囲気がある現場は、建設過程で些細な異変があっても、自然に会話に出るので事前に解決できるんです。たぶん事故や施工ミス、完成後の不具合は、会話のない現場の方が起こりやすいのではないかと思います。

結局、雰囲気が悪いと、いい建物もつくれないし、いい仕事もできない。結果的に業務効率も悪くなって残業だって増えてしまう。自分が所長をやるのであれば、そこを重要視したいんです」

現場はチームワーク。いい仕事を生み出すために、何よりもコミュニケーションが重要だと坂本は考えているのです。

いつか自分が建てた商業施設に、家族で遊びにいきたい

▲夢は「いつか自分で建てた商業施設に、家族でいく」こと

目下、坂本の目標は「お客様の満足、安心、安全につながる“いい建物“を提供すること」です。

そのためには、自分を含め社員のレベルをもっとあげることが必要。とくに若い世代の成長を坂本は期待しています。

坂本 「もちろん私自身も成長しないといけないし、私の下の世代には、できるだけ若いうちから所長を経験してほしいと思っています。私が5年目でチャンスに恵まれたのは、自分のキャリアにとって貴重な経験でした。今、会社としては大規模物件が多く、若手がいきなり所長をまかされる機会は減っていることは否めません。

そこは会社のフォローも必要です。でも、“所長をやりたい“という積極的な姿勢を若手が見せてくれると嬉しいですよね。所長のおもしろさは、やってみないとわからない部分が多いです。大変なことも多くて楽しいことばかりじゃない。

でも、いつかはやらないといけないなら、年をとってからの方がしんどいと思う。若いうちがチャンスです。大変さを乗り越えてこそ、得られる達成感は違ったものに感じられます」

若手にチャレンジを推奨する坂本。自身もチャレンジを厭いません。マンションやホテル以外の自分が扱ったことのない案件に関わり、所長として数多くの現場でキャリアを積みたいと言います。

坂本「自分はまだまだ一人前にはほど遠いです。現役の所長たちの話を聞くと、考え方が深いし、私が知らないことがあったりします。はやく追いついて、自分自身の考えを見つけていきたいんです。自分自身の考えというのは、いろいろな立場や案件を体験しないと見つからないんじゃないかなと。

今のままでいる限りは、ここで見える所長の考えでしかないので、本当の意味での自分の考えは生まれにくいと思います。わからないことをひとつひとつ解決して、理解して、前に進むこと。これを確実に実行していけば必ず成長すると思います。それらが集まって大きな深い広い知識につながっていくと考えています」

誰よりもはやく所長を経験し、常に好奇心旺盛に仕事に向き合ってきた坂本。今の夢は「いつか自分で建てた商業施設に、家族でいく」こと。そう、夢そのものも成長し続けるのです。