ヒューマンセンタードデザインに衝撃を受けた学生時代

大学ではHCD(ヒューマンセンタードデザイン)を中心に修士まで学びました。ユーザーに喜んでもらうことを目的としてプロダクトやグラフィックをデザインする、人間中心の考え方です。

HCDに出会ったのは3年生の時。当時、日本でUXという言葉は今ほど馴染みがなかったと思うのですが、海外を中心にHCDの分野ではデザインのプロセスが体系化されており、「人間中心のプロダクト開発をどうしていけば良いのか」という考え方があること自体に衝撃を受けたのを覚えています。

外資系企業出身の教授であったためか、所属していた研究室は半分デザイン事務所のような実践的な場所で、非常に楽しかったですね。先生が請負ったコンサルティングの仕事の実働部隊として、企業から報酬を頂きながら取り組むこともありました。地元企業のビジョンデザインなど、さまざまなことを経験させてもらいました。

大学院では、さらに知見を深めるためフランスの大学へ1年間留学もしました。そこではコンピューターサイエンスやエンジニアリングの学生と異業種混合チームを組み、新しいプロダクトやサービス作りに挑戦していました。

今思うとまさにJDDにそっくりなプロジェクト環境で、この時の楽しかった思い出が無意識にJDD入社につながっているのかもしれません。

2011年に大学を卒業後、システムキッチンなどの住宅設備を扱う会社にインダストリアルデザイナーとして入社しました。そこでは様々な工業製品のデザインを担当させていただき、ものづくりとそこに関わる様々な役割があることを学ばせていただきました。

一方で、大学時代から取り組んできたUXデザインの考え方をものづくりの世界にも活かせないかと次第に考えるようになり、ユーザーに価値を届ける仕組み全体をデザインしたいと、社内で新規事業部門が立ち上がるタイミングで異動を志願しました。

異動してからは、デザインに限らずなんでもやらせてもらいました。非常に充実した日々だったのですが、2年間ビジネスの立ち上げを模索する中で、マネタイズや資金調達などお金に関する障壁をいろいろと経験しました。困っているユーザーが見えていて、解決できるプロダクトが作れるのに、ビジネス面の整合が取れず市場導入すらできない悔しい思いをしたこともありました。

Good DesignとGood Businessがイコールにできない現実のなかで、でも本来はそうあるべきだという想いから、お金や金融のしくみに対する興味が湧きました。またスタートアップのような小さな組織でスピード感を持って事業立ち上げにチャレンジしてみたいという想いもあり、転職を決意しました。

JDDは三菱UFJ銀行からスピンオフしたばかりの組織で、安定した基盤のもと、小さい組織でスピード感をもって新規事業立ち上げができる環境に魅力を感じました。

また、外部から各分野のプロフェッショナルな人材を集めているという点も魅力的でした。

デザインの組織はできたばかりで、今のフェーズなら根幹部分に関われるかなとも思いました。リモートワークの推進など働き方も自由で、それぞれの社員が自立して仕事を行っている点も理想的でした。

入社初日に副社長から「プロとして採用しているので、求められれば今日からでも結果を出して欲しい」という話をされ、そういう環境を求めていたので嬉しく感じたのを覚えています。(その日はオンボーディングやPCのセッティングをして穏やかに終わりました。)

インダストリアルデザイナーからUXデザイナーへの転身

2019年5月にJDDに入社し、これまでさまざまなプロジェクトに携わりました。

最初の仕事は、M-AISのデータサイエンティストとチームを組んで行った、市場予測PJでした。

SNSで注目されるトピックやWebトラフィックの量など、今まで経済指標として活用されていなかったデータに注目をして、金融市場の予測に活用できないかと模索をしていくといった内容です。

データサイエンティストがデータ活用のモデルをつくり、私がダッシュボード画面のデザインを作成しました。MUFGの市場部門の方にインタビューを行い、どんなシーンでどう使うのかを調べた上で、あるべき情報やそのデータの見え方など、ダッシュボードのUIをBIツールを用いてデザイン・実装しました。

ふたつ目は、IoTアイディエーションキットのコンセプトデザインです。

社長からの要望で始まった特務的なプロジェクトだったのですが、企業の経営層がセンサーの特性を手にとって試しながらビジネスのアイデアを考えるためのツールとして開発しました。エンジニアの青木 雄斗とふたりでラフなプロトタイプを作りながら形状と中身のコンセプトを詰めていくプロセスをとりました。

どちらの仕事も、異業種の同僚と密に開発を進められた点が非常に面白かったですね。自分が考えたものを、スピード感をもって実装してくれる環境は非常に刺激的でした。お互いにできることが違うからこそ、新鮮な発見があり、お互いの業務をリスペクトしながら進めていくことができました。

また、従業員体験の文脈からオフィス増床のプロジェクトにも携わりました。プロジェクトチームごとに動いていく組織風土だからこそ、お互いのチームの様子が染み出すオフィス空間にしようと考えていました。

オフィスの新コンセプトお披露目では、社内のチャットも大盛り上がりで、コロナの影響もあり、なかなか出社できない中でも社員の心をひとつにできた大事なイベントだったと思います。

インダストリアルデザイナーからUXデザイナーへの転身は驚かれますが、今までもずっとユーザーの体験をデザインするつもりで仕事をしてきたので、入社してからの違和感は特になかったです。目的から俯瞰して、一部分に縛られすぎず、全体を見てデザインしていくというのはどんなデザイン分野でも共通していると思いますし、今後も意識していきたい部分ですね。

リーダーとしてチームのパフォーマンス最大化を目指す

2020年11月現在は新規金融サービスの体験設計をメイン業務として行い、 Biz, Techのメンバーと協働しながら、リリースに向けて準備を進めています。

その中で私は、サービスのUI/UXとブランディングを、UX担当のデザイナーとビジュアル担当のデザイナーの3人チームのリードとして取り組んでいます。

JDDのメンバーは、経験豊富でスキルを持っている人が多いです。そしてやりたいことがあってここに来ている人たちなので、できるだけ一つ一つの仕事と個人にとっての意味が重ねられるように意識しています。

チームメンバーを業務にアサインする時も「この仕事をすることでこういう成果物ができ、こうしたキャリアが描けるようになると思うけど、〇〇さんとしてはどうでしょう?」という形でなるべく問いかけをするようにしています。

新しいことを始めるとき、最終的には個人の「なぜやるか?」が大事だと前職での新規事業立ち上げの経験を通して学びました。そこがスッと通るとストーリーができて、お客さんにも伝わりますし、チームも動いてくれますし、自分もつらい時に挫けず済むので大事だと思っています。

JDDは手取り足取り教えてもらえる会社ではないですが、主体的に考えて動けばいくらでも機会がある会社だと思います。

また、コミュニケーション面も意識しています。

毎週1on1で30分話すだけではなく、チーム全体でもコミュニケーションをとるようにしていますが、テキストであってもMTGであっても、できればまだ言語化できていない違和感レベルで共有ができるといいなと思います。「なんかやだなぁ」くらいのレベルで共有できると、問題が顕在化する前に気づくことができるので、そういう雰囲気であるかは意識しています。

現在のチーム体制になってからはまだ日が浅いのもあって、お互いのバックグラウンドや得手不得手を把握することで、まずは一人ひとりが持っている力を最大限発揮できるような状態を目指しています。そうすれば、自ずとチームの結果も最大化するのではないかと思っています。

学生時代に見ていた憧れのデザイナーたちは、40代や50代で代表作となる大きな仕事をしていました。もちろん今も代表作を作るつもりで仕事に取り組んでいますが、それくらいの年齢になった時に何を積み上げた状態でいれるかは意識しています。

そのための下準備、整理をしておくという意味では、JDDでの取り組みはハードですが、今の時期に経験しておくべきことだと考えています。

「今の仕事=自分が興味あること」趣味と仕事をわけずに生きていく

いくら仕事だからといっても興味のないことをし続けることが性格上できないので、素直に興味のあることを仕事としてやってきました。その結果「今の仕事=自分が興味あること」という感覚です。

子どものころからしくみを考えることが好きで、お菓子を取ったら落とし穴に落ちる、みたいな連動するカラクリのしくみを考えて何度も作っていました。私にとっては仕事もその楽しさの延長線なんです(笑)。

そのためデザイナーであること自体には、あまりこだわりはないんです。しくみを考えたり工夫したりすることは好きで得意だったので、仕事の中ではUXデザイナーが一番近いかなとは思っています。ただ、これからも自分の興味があるところに進んでいければいいかなと思っていますし、それがデザインと呼ばれてない仕事でもいいと思っています。

JDDが掲げている「金融の新しいあたりまえを創造し人々の成長に貢献する」というミッションや、実現したいことにはとても共感しています。

お金というものは何かを実現するための手段だと考えているので、お金が可能性を狭めている部分があるとしたら、しくみでそれを変えていきたいですね。

今取り組んでいるサービスもそういう意味で非常に可能性を感じていますし、回り回って金融の当たり前になっていくかもしれないということを想像するとワクワクします。世に出した時の変化まで見てみたいと思っています。

とはいえ、金融のサービスを考えるにはまだまだ知識が足らないと思っています。今のプロジェクトの中で私も学んでいきながら、お金によって狭まっている可能性や、こうあるべきなのにできてないということを解決できるようなサービスをつくっていきたいですね。

大企業の一組織として、新規事業に懸けているという状況は、他の会社でもあると思っています。既存事業があることの強みを生かした上で、常識に捉われないイノベーションがJDDでできれば、それは社会的にも非常に意味のあることだと思います。ぜひ実現したいですね。