前職時代の接客経験を活かして──私が考える支援のカタチ

2021年4月現在、うつ症状と発達障がいのある方専門の就労移行支援事業所「シゴトライ・リンクビー大阪」で支援員をしています。

利用者さんの体調安定を図るために、生活リズムに関するアドバイスや障がいの症状・特性の自己理解を促します。また、職場実習などにおける実践状況をフィードバックするなど、日常生活や就労支援がメインの業務です。 

他にも、「シゴトライ・リンクビー大阪」への通所を考えている方からの問い合わせや見学対応、見学・体験通所の設定などを行っています。GPではこれら一連の業務を「募集業務」と呼んでいます 

私は前職で販売員の仕事をしていました。販売員と支援員、一見全然違う仕事に見えますが、意外と共通する部分が多いんです。

たとえば接客は、短時間の間に私のファンになっていただき、商品を買っていただかなくてはなりません。ですから、限られた時間の中で本音も交え会話をしながら距離感を縮めるんです。その点は、支援員として利用者さんと接しているときも意識していることですね。

そのために、優しいことばだけではなくはっきりと課題を伝えたり、改善したほうがいい部分を伝えたりするようにしています。

募集業務でも、接客時代の経験が役立っていますね。電話応対の際には、声のトーンや口調で、その人の気持ちや主訴をイメージしながら対応しています。

実際には、見学につながらなくても、これもご縁と思い、真摯に耳を傾けることで気持ちが楽になっていただけたらいいなと思っています。

募集業務では、「シゴトライ・リンクビー大阪」に問い合わせをしてきた方が何に困っているのかを考え、GPのサービスを利用すること以外の提案もします。

もちろん、GPの就労移行支援事業所へ来ていただけたらありがたいのですが、それがその人のベストでないと思えば、他の支援機関を紹介することもあります。

「シゴトライ・リンクビー大阪」に通ってもらうという目的だけではなく、その人が本当に困っていることを一緒に考えていきたいという想いが根底にあるからです。

そのために、アンテナを研ぎ澄ませほんの少しの動きも感じ取るということを常に意識していますね。

他にも、接客でお客様の動きを観察していた時のように、利用者さんを観察することに時間をかけています。そうすることによりいち早く利用者さんの変化に気づき、「何か辛いことはありますか?」「 困ったことはありますか?」と声掛けができるからです。

仕事をしている中で「アセスメントを取る」という言葉をよく使うのですが、そのアセスメントの基本は観察をすることです。観察をした上で自分の知識をどんどんぶつけていき、どれを試すかを決めていきます。

利用者さんの様子をきちんと自分の目で見て現在の状態を知り、何を求めているのかに気づくことができなければ、支援をきちんとできているとは言えないと思うんです。

20年以上続いた大好きな販売の仕事を退職し、GPへ

高校生のときに、雑誌「anan」でお洒落なショップで働く店員さんの特集がありました。それを見て、「絶対にこの世界に入る」と決意しました。

しかし、大学卒業時に両親からすごく反対されて、一度は医療関係の仕事に就きました。それでもやはり販売職に就きたい気持ちが強く、百貨店にパート社員として入社。そこからだんだんと顧客が付くようになり、正社員になることができました。販売の仕事は本当に楽しくて、百貨店で15年以上働きました。

15年以上働いている中で、このキャリアを活かしてもっと違う仕事がしたいと思ったんです。そこで、新店舗のオープンに向けて従業員の募集をしていた小売りの大手企業に入社しました。マネジメントや後輩の育成など、いろいろな意味でとても魅力的な会社でした。

その後、一旦退社したのですが、「もう一度、教育担当のポジションで一緒に働きませんか」と連絡をいただきました。

若いころは高いヒールの靴を履いて1日中お店に立っていても大丈夫だったのですが、それがだんだんと辛くなってきていたんです……。で、これからはこういう形で販売と関わっていくのも良いかなと思いました。

販売で積んだいろいろな経験を人に教えていきたいと思い、再就職を決めました。そこでは、社内の教育部門での研修や販売指導をしました。

今の仕事にもつながりますが、人材育成に関わる仕事は各店舗の店長の悩みをたくさん聞くことができます。悩みに寄り添って支援していくポジションがとても居心地良く感じました。

その後、研修を担う企業に転職をしました。研修には、幅広い年代の方が参加され、自分よりもはるかに年上の先輩の方もいたので、初めは「なぜあなたみたいな方から、この私が研修を受けなくてはいけないのか」という方もいました。

そこでも接客経験を活かし、その方に合わせた接し方で研修を進めていました。すると、研修が終わるころには前向きな言葉や温かい言葉をいただけることが多く、とても嬉しかったですね。

そうして自分が年齢を重ねていくうちに、今までと同じような接客の仕事や講師の仕事をすることに対してやはり限界があると感じ始めました。さらに年を重ねても続けられる仕事はないかとハローワークで職歴を伝えたところ、GPの求人を紹介されたんです。

求人内容には「障がいのある方の就労支援として、通所する方への研修を行います」と記載があり、この仕事であれば自分も役に立てると思いました。 

人の話を聞くことも好きですし、人の役に立つことができればと、GPへの転職を決めました。

経験を積み重ね、学びの日々。支援員の難しさと楽しさ

▲「シゴトライ・リンクビー大阪」のメンバーたちと

GPに入社当初は募集業務だけを担当していたのですが、以前の職場で講師の仕事をしていたこともあり、朝礼担当をすることになりました。そして、朝礼担当をしているうちに、「研修も担当してみますか」とお声掛けをいただいたんです。

そうしてビジネスマナー研修の講師を務めているうちに、担当する研修の種類も増えていきました。前職での研修講師の経験が、ここで役立ちましたね。経験のない研修でも、資料を渡されると、頭の中でどう研修すべきかを組み立てることができました。

仕事の幅も広がり楽しくなっていく中で、実際に障がいのある方々との触れ合いが生まれ、次第に利用者さんの生活や就職の支援をする業務へと広がっていきました。

初めて支援の担当を任されたときは、必死過ぎてしっかりと支援ができていなかったように思います。もちろん本を読むなど、支援をするための勉強は一生懸命していました。

人と話すことには抵抗がないのですが、一人ひとりが抱えている障がいの課題や厳しさにはなかなか近づけないものがあったんです。

入社当時は知識も経験数も絶対的に足りていなかったので、いろいろな提案ができませんでした。入社して6年目の現在は、経験を重ねた分提案の幅も広がり、より支援の質が上がっていると思います。

たとえば、吃音症状のある方を担当することになったとき、支援の経験も知識もなかったため、その人の辛さや吃音症自体が全く分からないということがありました。

そこで私は、大阪吃音教室という当事者が集まる勉強会の動画を見つけ、その内容をノートに全てまとめました。そして、「私は話をすることができるしあなたの辛さは分からないけれど、この資料で一緒に支援をしたい」と言って利用者さんに見せたんです。

すると、「ここまで調べてくれる人が居るのか」と思ってくれたようで、その方は今も就職活動を頑張っています。

私はまずその症状を理解するために、あらゆる資料を読み漁り、それをまとめて本人に見せるといったプロセスを踏みます。「一緒にやっていきましょう」という言葉だけでは、利用者さんに「自分の今までの辛さなんてわかるはずがない」と思われてしまう気がするからです。

一度クリアすれば、次に同じような症状のある方を支援するときに対応できるようになります。なので、最初から「その症状・障がいのある方を支援するのは初めてだから」と言って尻込みせずに、利用者さんと向き合っていきたいですね。

また、心身ともにストレス管理ができるように、通所中だけでなくプライベートな課題や悩みに一緒に向きあっていくことも支援の要だと思います。

そうして利用者さんの就職が決まり、「シゴトライ・リンクビー大阪」を卒業する最後の日には、壮行会を行います。卒業される方が前に出て話をするんですが、自分が担当していた利用者さんが卒業される日は、感極まって涙をすることもあります。

「藤田さんに厳しいことを言われてしょげた日もありましたが、感謝しています」と言われることもよくあります(笑)。私の想いが伝わり、利用者さんも理解していてくれていたのかと思うと、本当に嬉しいです。

卒業後も月に1回OG・OB会があり、その時に遊びに来られる方もいらっしゃいます。通所されていた方たちの活き活きしている姿を見るのは、とても励みになります。

ステップアップに向けての挑戦と与えられたミッション

今後は、障がいを抱え認知や思考がネガティブになってしまっている方や、生育環境によって大人になっても家族との関係に苦しんでいる人、自分を評価できずに自己肯定感の低い人の支えになりたいです。

なので、「セルフエスティーム(自尊感情または自己肯定感) 回復プログラム」を実施するための勉強を修了しました。4月以降、まずは自分の利用者さんに始めてみたいと考えています。

また、生活支援の中には睡眠指導や食事指導も含まれます。私自身、食生活に力を入れていて、自分でつくって食べることが好きなんです。ただ、利用者さんの中には1日1食の人や食べてない人もいます。

3食しっかり食べないと睡眠時間が狂い、生活リズム全体が狂ってしまいます。そこを改善していくためにも、現在は同じ職場の仲間と一緒に食育アドバイザーの勉強をしています。そこでの勉強を研修に落とし込み、いずれは食育の研修も行いたいと考えています。

今後は任された仕事はこなしつつも、新しいことにも取り組める余裕は常に持っておきたいです。今取り組んでいることで満足してしまうことができない性格なので、新しいことに取り組み、自分の仕事の幅を広げていきたいです。

今、施設長からは新しいミッションを与えられています。それは「シゴトライ・リンクビー大阪」の利用者さんの実習先をもっと増やしていくこと。まずは特例子会社へ見学に行き、関係をつくらせていただいてから実習につなげるというミッションです。

利用者さんがたくさん実習を行える環境になれば、実際の職場でいろいろな経験を積むことができます。企業内の雰囲気や仕事の内容など、自身が就職した後のイメージもしやすくなると思うので、このミッション達成に向けて頑張りたいです。

今思えば、今まで障がいのある方が職場にいると考えたことがありませんでした。それはきっと、私が障がいに関心や理解がなかったからだと思います。

しかしGPに入社して、障がいのある方がとても身近になり、特別な人ではなくなりました。障がいのある方に関わる機会がないと、一生障がいを知らないまま終わってしまうこともあると思います。縁があって障がいのある方と関わらせていただいているので、障がいについてもっと関心のある世の中になるよう働きかけていきたいです。

「障がいのある方と仲良くしなさい」ということではなく、「そういう人もいる。障がいのあるないで分けずに、お互いに存在を分かり合うことが大切」ということを知ってもらいたいです。

また、転職を繰り返すことはあまり良くないというイメージを持つ方もいますが、私は、キャリアを付けて経験を活かし、ステップアップする転職ならば良いことなのではと思っています。経験したこと全てに意味がある──そのような気がしています。

私は、すべてにおいて楽しくないと嫌な性格です。楽しいから頑張れます。障がいのある方の支援をする今の仕事が大好きですし、GPの考えと私の考えが合っているのかなと思います。

そんな自分が楽しめる環境の中で、これからも自分の経験を最大限に活かしながら、利用者様のためのステップアップを続けていきたいですね。