「競争」から「共創」へ。新しいアプローチでスマートシティに取り組む

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▲スマートシティを通してさまざまな社会課題の解決に取り組む現在の様子

2023年1月現在、富士通Japanにおいて業種や業界を超えて社会課題解決に取り組むクロスインダストリービジネス本部に所属し、全国で展開されているスマートシティビジネスを推進する岩崎。日本各地にある支社支店のビジネスプロデューサー(BP)と連携を図りながら、プロジェクトを進めています。

岩崎 「スマートシティプロジェクトは、大きく分けて2つ。ひとつは、自治体主導で推進されているもので、もうひとつは民間主導のものです。私たちの本部が携わるプロジェクトの多くは前者となります。

『デジタル田園都市国家構想』を掲げるなど、国としても国家戦略としてスマートシティに取り組んでいます。そのため、『スマートシティ』をキーワードとした事業を全国各地の自治体が推進中です。その上流工程から参画すべく、現場のBPと連携しながら数多くの商談に対応しています。

長らく自治体様向けのソリューションを幅広く提供してきたという当社の強みは活かしつつも、同時にこれまでとは違った形でのアプローチも試みています」

アプローチを変える必要があるのは、「これまでの自治体向けビジネスとスマートシティビジネスとでは異なる部分が多いため」と言う岩崎。

岩崎 「自治体ビジネスの多くは、既存システムのリプレース案件。また、システム運用こそ違いますが、自治体業務そのものはある程度パターン化できます。そのため、担当BPはお客様の要件にマッチする当社ソリューションをまず選び、そこへ当社だからこそ提供できる付加価値を加え、提案する。言わば『型』のあるビジネススタイルですね。また、富士通グループやパートナー企業との協業はあるものの、その他とは『競争』関係にあります。

一方スマートシティとなると、ゼロベースまたは普段ICT企業が関わることのない事業をベースに推進します。さらに、各自治体が抱えている課題やこれからどんな街をつくりたいかは、実にさまざまです。また、業務システムとは異なり、富士通グループだけで何かを作り上げるのは困難で、さまざまなステークホルダーとの『共創』が求められます」

両者の違いに戸惑うBPは少なくない。そのため、現場の悩みを理解した上でのサポートを心掛けていると言う岩崎。また、お客様となる自治体側にも戸惑いが見られると続けます。

岩崎 「お客様自身、『取り組むべき課題は何か』がはっきりとわかっていない場合も少なくありません。また、現状を整理できていない状況で、何か新しいシステムや仕組みを導入しようとされるケースも多々あります。

そのような状況でご相談いただく場合は、一旦立ち止まり、お客様が置かれている現状とお客様が目指したい姿を一緒になって整理するところからはじめています。そのうえで、そのギャップを埋めるには、まず何からはじめるべきかを議論し、ご提案しています」

キャリアの転換点となった「ある案件」との出会い。いまに活きる経験とは

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▲入社以来、営業部門を中心に複数の部署を経験してきた岩崎

現在の部署に至るまでに、さまざまな部署を経験してきた岩崎。なかでも、2011年に異動した神奈川支社での経験がいまにつながっていると言います。

岩崎 「入社からしばらくは官公庁を担当する営業部門にいまして。その後、会社のローテーション制度で神奈川支社へと異動したんですね。神奈川支社では、既存ビジネス領域だけではなく、まだICTが活用されていない新規領域も担当することになったのですが、それがとても新鮮で刺激的な体験でした」

そう感じた理由を、自身が携わった地産地消活性化プロジェクトを例に話します。

岩崎 「それまではお客様のある『業務課題』を解決することに取り組んできたのですが、この案件で扱うのは『地域課題』。さらに、ICTがあまり活用されていない農業分野へのアプローチです。ICT企業として何ができるのか、を考えることに今までにないおもしろさを感じていました。

また、当社のお客様と言えば情報部門が多いのですが、このときやりとりしたのは、農家であったり、学校の先生であったりと、ビジネスの場でお会いすることのない方々ばかり。そういった方たちを相手に、どういう体制で、何を提案するのか。すべてを自分のやりたいように進められるという状況に、当時ワクワクしていたのを鮮明に覚えています」

新領域の開拓に強い関心を持った岩崎。その後のキャリアの大きな軸となっていきます。

岩崎 「2018年にビジネスイノベーションセンターという部署に異動しまして、観光ビジネスの創出をミッションに活動していました。当時、観光ビジネスは富士通としては初めての試み。ゼロからビジネスモデルや推進方法を企画検討し、現場部門とも連携しながら、富士通としてのモデル作りに尽力していました」

10年余りの間にさまざまな新領域に足を踏み入れてきた岩崎。現在の部署での活動にどう役立っているのか、について次のように語ります。

岩崎 「扱うテーマは違いますが、何もないところからさまざまなステークホルダーを巻き込み、商談に仕立て、その実践をもとにオファリングやモデルを作り上げていく。その経験は、間違いなく役立っていると思います。

またBPがどんなことに困り、どんなところで強みを発揮できるか。そこをいかに想像し、適切なサポートを提供する。そこは現場経験のある私ならではの強みかと思います。スマートシティプロジェクトは私たちの本部だけで進められるものではありません。それぞれの地域に人脈や知見のある現場BPの力がとても重要なんです」

まさかの逆転勝ち。決め手となった「未来への提案」

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▲「まさに、これまでとは違ったアプローチが効いた商談」と話す岩崎

これまで数多くのプロジェクトを担当してきた岩崎だが、特に印象に残っているものがあると言います。

岩崎 「ある自治体で、スマートシティの実現を見据えデータ連携基盤を導入したいという話がありました。このデータ連携基盤というのは、観光、医療、金融といった各分野で収集、管理、発信されてきたデータを、官民あわせて横串で連携させるという仕組み。スマートシティのコアとなる基盤で、デジタル庁としてもその導入を後押ししています」

しかし当初、当社の旗色は悪かったと言います。

岩崎 「すでに他社が積極的にアプローチをかけていて、当社としては完全に出遅れていました。現場BP含め、諦めていたわけではありませんが、正直厳しい結果になるかもしれないと心していました。

しかし蓋を開けてみると、事業者として採択されたのは当社だったんです。その結果を聞いたときはすごくうれしかったですし、あきらめずに提案してよかったと思いました」

他社の提案と何が違ったのか。その後お客様からかけられた嬉しい言葉ともに振り返ります。

岩崎 「他社が基盤の仕組みや機能の有効性についてアピールしたのに対し、当社は別のアプローチを行いました。そもそもなぜその基盤が必要なのか、そして、その基盤を使ってどういう未来を実現するのか。基盤はいわば手段です。その手段がどう住民のウェルビーイングにつながるのかを提案しました。

当社に決まった後、『この地域のスマートシティ化をともに考え、実現させるパートナーとしてやっていきたい』とおっしゃっていただきまして。スマートシティは、非常に足の長いプロジェクト。そういった意味で、私たちの『未来を見据えた提案』がお客様の心に刺さったのかなと思っています」

当たり前の不便さを解消する。母親となったからこそ見えてくる街づくり

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▲「まずは誰もが笑顔で暮らせる街。そのうえで、車が空を飛んでらいいですね」と未来の街を語る岩崎

ビジネスとして日々「街づくり」と向き合う岩崎も、ある街に住むひとりの住民。ふたりの子どもを持つ親として見える街は、また違うものだと言います。

岩崎 「母親となってから、『街』に求めることや意識が変わってきたと実感しています。たとえば、自身が住む街の自然環境やSDGsの取り組みに関心を持つようになったのは、子どもが生まれてからですね。また、子どもたちが成長し、大人になったときにも住みやすい環境を、いまのうちから整備していくことも重要だと思うようになりました」

どの自治体でも問題になっている「医療」についても、自分ゴトになってきたと続けます。

岩崎 「都市部から離れた街だと、住民の方が何か大きな病気をしたときに適切なサポートを受けられる医療機関が近くにはない。そのため、自宅から遠く離れた医療機関へ行かないといけないのだけれども、そこまでの移動手段がないという話はよく耳にします。とても深刻な課題ではありますし、解決すべきものではあるものの、当事者ではないとなかなか自分ゴトとしてとらえるのは難しいと思います。

では、自分自身とはまったく関係のない話かと言うと、程度の差はあれ、私自身も医療の問題に直面していることに気づくんですね。私の子どもは定期的に通院しているのですが、ひとりで行かせるような年齢や場所ではないので、その都度半休を取得しています。そんなことは『子育てしていたら当たり前』と思われるかもしれませんが、不便であることには変わりないと思うんです」

このまったく違う話を、テクノロジーの力を使えば、一緒に解決できるかもしれないと岩崎は語ります。

岩崎 「たとえば、自宅にいながらオンラインで診療を受けることができ、処方箋もオンラインで発行されて、お薬も自動的に配送される。これが実現できれば、病気になった本人も楽になりますし、そのご家族や身の回りの方もきっと楽になると思います。

地域課題を解決しようとすると話が大きくなり、自分ゴト化しづらく、またその解決策を考えることが難しく感じる場合があると思います。先ほどの話はあくまで仮定の話ではありますが、身の回りにある『当たり前のものとして受け入れていた不便さ』を解消することも、地域課題の解決につながる可能性があると思っています」

「人々が当たり前に笑顔で過ごせる街づくりを目指したい」と語る岩崎。そんな彼女の挑戦は、まだまだ続きそうです。