新規事業開発案件の中で見出したやりがい

前職は大手の不動産会社にいました。新卒でその会社に入ってフランチャイズの営業をやっていたんですが、お客様に直接モノを売るような営業と異なり、加盟店と呼ばれる各店舗の御用聞きのような仕事が多かったため、私はそこにやりがいを見つけることができませんでした。

もともと「手に職」みたいなものにあこがれを持っていたため、「どうやったらそうなれるか?」と考えた結果、会社を辞めて、大学時代に専攻していた知財に関する見識を深めようと大学院に入学することにしました。安易ですが、当時は大学院を卒業して就職すれば専攻分野と関係のある仕事に就けると考えていたんです。

大学院を卒業してあらためて就職活動をするにあたり、富士通のグループ会社に入社しました。有名なスキャナー製品を持ち、世界で売られている製品があるというのは、私にとって魅力でした。技術志向の会社というのも知財を専攻していた私のマインドとも合っていました。

大学院で学んだ専門知識を活かすため、入社後は法務部の配属となり、契約書審査や審査制度の改善等を担当するようになりました。専門性を持った仕事は自分にとって理想だと考えていたのですが、実は、この仕事についても「自分がやっている意味があるんだろうか?」と悩む時期があったんです。

仕事を続けていく中で、法務の仕事がビジネスの足を引っ張っているような感覚を持つことがあり、このままでいいんだろうかと思うようになったのですが、ちょうどその頃弊社のスキャナー製品と米国の人気のあるクラウドサービスを連携させるという案件があり、その案件の法務担当としてプロジェクトに入ったことが転機になりました。

開発担当の方からいろいろな要望をもらい、海外案件であることから対応すべき範囲であったり、考慮すべきポイントだったりも異なり、大変な思いをしながら対応をしていたのですが、無事に契約が締結できた際に「大岡がやってくれたからこんなにスムーズにできた」「大岡さんがいてくれてよかった」と言ってもらえたんです。

そのときに、自分がいることの意味を実感することができました。

法務の仕事をする上でも、リスクを排除して、細かい評価をして、守りの姿勢で仕事をしていく方はたくさんいらっしゃると思うのですが、ビジネスを後ろから後押しするために仕事をする人はなかなかいないと思ったんです。だからこそ、自分がいることで前に進んでいくことができるような「事業部の味方になる法務」になりたいと考えるようになりました。

事業戦略に携わる中で感じた危機感

現在、私は事業戦略室に所属して「中期契約や経営方針の策定にあたる経営トップ支援」、「グループ再編・事業再編等の全社プロジェクトの企画・推進」、「新規事業創出のための社内制度設計」、「他社協業における窓口(渉外対応)」、「新規事業開発の各プロジェクトにおける各種支援」といった業務を担当しています。

私の所属するグループ会社はビジネスのドメインでいうとイメージスキャナーの利益が一番大きいのですが、今後こうした既存ビジネス以外の収益軸も創出していかないといけないという危機感を持っています。そのため、他社との共創を目指し、積極的にオープンイノベーションの取り組みを始めているんです。

海外子会社では有名なアクセラレーター/VCと直接契約をしてベンチャー協業をしたり、シンガポールや中国といった海外ベンチャーとのパイプラインを持ちながら、イノベーションに向けて動いています。これまでは自社内だけでハードもソフトも部品も全て調達をしていたのですが、自社の得意分野を残しつつ、他社の技術も取り入れていくことで、新しい製品を生み出していこうと考えています。

富士通アクセラレーターのメンバーとして他社との協業を推進

他社との共創を目指していくという観点で、本社である富士通株式会社のアクセラレーター事務局のメンバーとしても活動をしているんです。

富士通本体では、各事業部単位で富士通アクセラレーターに参画しているのですが、富士通のグループ会社である弊社の場合は事業部ではなく会社として参加をしているため、一度事務局の方で取りまとめて、各ビジネスの部門に展開するような、二段構成の形になっています。

事業部側からのリクエストに対しても直接アクセラレーターに進むわけではなく、いったん、私が受けて間に入ってやり取りするような構成になっているため、調整業務がメインです。

協業案件の調整にあたっては、「自社に対して変革を起こせるような協業になりそうか?」や、「全社としての新たな姿勢を事業部へと浸透させていくためにはどうすればいいか?」など、日々あらゆる事業部の状況を把握しつつ、方針を決めながら進めていっています。

アクセラレータープログラムに関わる中で、親会社である富士通株式会社に対しての印象は大きく変わりました。「イノベーションで社会を変革したい」と語る熱い気持ちを持つ富士通アクセラレーターのメンバーと一緒に仕事をすることで、自分にもっとできることはないかと考えるようになり、大きな刺激を受けました。

私が富士通アクセラレーターに関わる上で大切にしていることは、協業検討において「(契約などの手続きは)やらなければいけない。だけど(よく分からない、面倒だから)なかなか動けない」という状況を解消することです。

私が間に入ることで、事業部の余計な手間やブレーキとなるような要因を極力減らし、事業部門がビジネスのことに専念できるように心がけているんです。時には、役員に対して「本当にこの案件はおもしろいから、この部署に一人付けてくれ」みたいなことを直接交渉したりもします。


事業部を後押しするためのサポーターとして

他社との共創を進めていく際には、自社内で完結させていた時とは異なり、さまざまな手続きが必要になってきます。

いざ協業をするとなった場合、開発メンバーは他社と開発方法や品質基準を合わせてていくといった仕事に加えて、品質保証に関する契約であったり、輸出入に関する知識が必要になったりと、複雑な手続きによる労力もかかってきますから。マネージャークラスの面々が朝から晩まで手続きに追われている状況を見たときには、その点に大きな課題意識を感じました。

新規事業の開発者であったり、スタートアップの方々が、契約ごとであったり、法規制や官公庁に対する手続きの経験がなく苦手な方が多いという印象があります。慣れない方が法務に相談をしてもうまくいかないケースも多く、早く手続きを進めたいと思って相談をしているのに「どうしてこんな情報を出さないといけなんだろう?」と思う回答が返ってくることも。

話が通じていないような感覚になってしまうことがあるんです。法律のことを知らないがゆえに、欲しい情報をどうやったら得られるのかわからないと困ってしまう事例はたくさんあると思います。

そうした事情を理解した上で、法務に関する経験や知識を持つメンバーが入ると、驚くほどに時間が短縮されることがあるんです。実際に案件の中でも、1カ月かかっていた手続きが、自分が入ることで1週間で終わったというケースもありました。

スタートアップの内部でもこうした課題があると思っています。大手企業と組んでビジネスを行っていく上で、大企業や官公庁といったお客様が出てくると、これまでにない手続きや申請が出てくるため、慣れない作業が増えてくると思うんです。

共創に関わっていく方々が本来の業務に専念することができるよう、事業部に対する理解を持って、支えていくことができるのが自分の理想だと思っており、そのためには、自分の専門性をこれからもっと磨いていかなければならないと思います。

これまで法務という仕事をやっていたからこそ、どうしても守りの姿勢から抜け切れてないという部分もあり、法律や規制があるからこそビジネスに対して「できない」という考えになりがちなのですが、知識や専門性があるからこそ、実現するためにはどうすればいいのか考えていけるようにしていきたいです。

手続きや法律が絡んだ契約のお話は、皆さんにとっては面倒くさいと思われるものだったり、必要ないと感じられる部分もあったりすると思うのですが、ビジネスを進める上では大切なポイントになります。法務のバックグラインドも活かしながら「協業を後押しする伴走者・サポーター」を目指し、今後とも尽力していきたいです。