目標は医療の質向上。そのための手段として業務文書の適切な管理を支援する

塩谷が現在所属しているのは、エンタープライズサービス事業本部のビジネス創出部。ここは、新規事業を創出することをミッションとしている部署。既存サービスから派生したビジネスはもちろん、まだ市場に存在しない全く新しいビジネスの創出にも取り組んでいます。

この部署の中で塩谷が現在関わっているプロジェクトの名は、「院内文書管理支援ソリューション」。病院向けの新規ソリューションで、院内の医療従事者たちが、必要なときに必要な情報にアクセスできるよう、業務文書の整備と運用支援を行う取り組みです。

塩谷 「病院は、患者さんの診察記録などは当然しっかり管理しています。しかしその一方で、自分たち医療従事者が行う業務の手順を文書化したり、きちんと管理できていないケースが多くあるのです。そこに着目し、手順書やマニュアルを整備・管理するためのソリューションを開発しました」

実際に、手順が記載されたマニュアルなどが存在しないことで、患者さんに質の高いサービスを提供できないケースもあったといいます。業務情報の管理や活用のルールがなく、医療従事者それぞれのノウハウやスキルに依存しているのが課題として浮き彫りになりました。

この現状を受け塩谷は、この先も品質の高い医療を提供し続けるために、文書の整備が必要だと考えました。

塩谷 「このような現状の背景として、病院において、散らばっている文書をどう整理すればよいのか分からないということがあげられます。仮に集めたとしても、それをどうやって維持するのかが分からない。そこで、当社の持つ管理ノウハウに基づいたソリューションを開発することにしたのです。文書を集めて終わりではなく、最新の情報への更新も含めて管理できる仕組みになっています」

病院で働く人たちが、必要なシーンで必要なノウハウを検索・確認できるように――そんな思いを込めて、文書管理支援ソリューションのプロジェクトが走り出しました。

塩谷はこのプロジェクトで、企画開発を担当。チームリーダーと、営業の仕事をする3人のメンバーと共に、計5人のチームで動いています。システムの開発の部分は、他部署のシステム開発部にいるエンジニアに協力してもらう形をとっています。

医療関連の仕事に携わりたい。熱い想いを引っ提げて、手探りで駆け回る日々

塩谷が新卒で配属されたのは、医療機器メーカーの担当部門でした。このときの経験がきっかけとなり、今後も医療関連の仕事に携わり続けたいという気持ちが芽生えます。

その後、新規事業の部署に異動となった塩谷は、ヘルスケア市場で新規事業を興そうと課題収集を始めました。病院に飛び込みで訪問する日々のはじまりです。

塩谷 「関係値がゼロである医療機関に飛び込みで訪問し、困りごとを聞き込みました。さまざまな声を聞いていく中で、ある共通の課題を見つけたのです。それが『業務の手順がきちんと文書で管理されていない』という点でした」

課題を見つけた塩谷は、当時、隣の部署が行っていたある業務に目をつけました。隣の部署で、金融機関向けに文書管理のシステムを開発していたのです。そのノウハウを使って、病院向けのサービスを作れないかと考えました。

塩谷 「当時は手探りでした。医療従事者の方々と話しながら、文書管理のルールについてゼロから一緒に考えました。そこで気付いたのは、病院の業務は、病院ごとにはあまり差はないということです。使う機材などは違っていても、行う処置は同じ。だから、管理方法を標準化することで、広く他の病院への横展開が可能なのではないかという道すじが見えました」

しかし、そもそも文書管理の正しいノウハウを知っている病院が周りにはありませんでした。そんなとき彼が行きついたのは、フィールドワークとして文書管理に取り組む川口市立医療センターから紹介されたQMS-H研究会という外部の研究団体でした。

塩谷 「この研究団体は、どうしたら医療の質を向上できるのかの方法論の確立を目指し、活動していました。その中の研究テーマの一つとして、文書管理を扱っていたのです。どうやったら病院がマニュアルや手順書の管理を正しく行えるのか、10年以上研究がされていました」

その情報を知った塩谷は早速、研究会へアプローチを実施し、協働での研究が開始となります。

塩谷 「研究団体には、たくさんのノウハウがありました。それらを提供していただくことで、ツールの開発や導入支援のサービス化に取り組むことができたのです」

導入は、地道な作業でした。病院内に導入プロジェクトを立ち上げ、文書の洗い出しや取捨選択を実施。情報を一覧化するツールや、文書が重複していたらわかるツールなどを新たに開発したり、運用ルールの雛形をつくったり。そしてようやく、パッケージの形にできたのが2017年。新規事業開発の取り組み開始から、2年後でした。

医療現場の人々も研究団体も、共感し協力してくれる。その想いに応えたい

パッケージの開発を経て、塩谷は現在、現行ビジネスをさらに発展させるためにネクストモデルとしての開発を行っています。

これまでのソリューションでは、医療現場に行って文書を預かるなどの人的な作業や判断が必要でしたが、その部分を自動化しようと考えたのです。さらに、従来は病院の中にサーバーを立てていましたが、クラウド上に基盤を移行させようとしています。

このようなアップデートを経て、最終的には色々な病院が業務文書のプラットフォームとして横並びで利用できるシステムになることを目指します。

企画開発に日々熱を注ぐ塩谷。そのモチベーションについて、彼はこう語ります。

塩谷 「新卒入社したときの上長に、よく言われていたことがあります。それは、どんな小さなことでもいいから、考えて、発信していこう、そうじゃないと新しいことはできないというビジョンでした。その言葉が今の原動力になっていると思います。

それから、医療現場の方々とのやりとりがモチベーションの源泉になっています。彼らは安全な医療を提供するために積極的な活動を行っていて、こうしたプロジェクトに対しても、想いに共感していただければ前向きに動いて下さるのです。皆さんの力になれれば嬉しいなという思いが背中を押してくれます」

前向きに協力してくれるのは、現場の人々だけではありません。塩谷は四半期に一度、研究会の成果報告会に企業として参加するのですが、その際に研究団体の先生たちから激励を受けるといいます。

塩谷 「先生方の熱い思いがすごいのです。『業務文書の管理は重要だし、ぜひやっていかないといけない。まだ芽が出ないかもしれないけれど、一緒に頑張ろう』と言ってくださるのです。そのときの言葉を胸にずっと頑張っていますね。人間関係も含めて同じチームのように可愛がってくれるので、非常に恵まれていると実感します」

今回のように一歩既存事業の領域を逸れてしまうと、業界知識や業務プロセスの理解など自社には足りない課題に直面します。今回、ノウハウを持っている研究団体と出会うことができたことを幸運だったと塩谷は振り返ります。

塩谷 「ここまで幸運な形で進められましたが、この先はさらなるバージョンアップが必要です。今、手順やマニュアルが集約されている状態なので、そのデータをAIに取り入れ、最適な業務のやり方を他の病院に提案できる仕組みをつくることを考えています」

常識に囚われず、深い対話からニーズと解決策を探れる。そんな人と働きたい

品質の高い医療を支えるための院内文書管理支援ソリューション。病院で働く人たちの負担を軽くしつつも、医療の質を高められる仕組みを彼は追求し続けます。そんな塩谷が考える、一緒に働きたい人物とはどんな人なのでしょうか。

塩谷 「現状を疑える人が、このビジネスには向いているのかなと思います。病院はまだIT化が進んでいない領域もあり、人力でやって当たり前と思っていることが多々あります。自分が当たり前だと思っていることがどうやら当たり前ではないということに気付かされることが頻繁にあります。そういった時に、その事実に気付き、どうやったら状況をよりよくできるのかを考えられる人だと、心強いです」

塩谷はお客さんの話に切り込んでいき、ソリューションを判断することができる人の参画を望んでいるのです。

塩谷 「病院の方々の立場から考えても、違う常識を持つ人との会話は、新しい気づきを得られて嬉しいはずです。常識に囚われることなく、深く話を聞いて、どうすればいいのか、最適なデータをもとに判断する。このスキルは、病院の業務に限らず求められていると思います」

“こんなことをしてみたい”という意見がチーム内で出た時には、スピーディーに反映される環境だと塩谷はいいます。

塩谷 「今は、システムのブラッシュアップに向けて、内容をどんどん見直していかなければいけないフェーズです。なので、意見や考えがあれば非常にスピーディーに反映できるタイミングなのです。これから先、AIやクラウドプラットフォームに載せ替えていくという作業をしていきます。ぜひアイデアを一緒に考えて、他の企業ではマネできないような新しい仕組みを取り入れていきたいなと思っています」

一歩先の技術を盛り込んで、より使いやすい仕組みとして提供していくミッションを掲げ、知見を持ったメンバーの参加を期待している塩谷。

医療の品質を向上させるための、新しいソリューションづくりに邁進する日々の中で、これからもエネルギッシュに走り続けます。