ロビイストは膨大な情報から国の動きと自社の戦略を合致させる重要な調整役

富士フイルムシステムサービスが社会課題の解決を目指す新規事業として取り組む、防災・減災DXプロジェクト。

防災の観点だけでなく、災害が起こった際に必要となる罹災証明を効率よく発行するために、ドローンとAI技術で罹災状況を判断するシステムを開発するなど、さまざまな角度から防災と向き合っています。

西谷 「このプロジェクトにおける私の主な役割は、防災・減災という社会課題の解決に向けて、国や自治体様、当プロジェクトの3者間の状況を踏まえた調整を行っていくということです。

開発中のシステムはそれ単体に閉じた話ではなく、自治体様や国のシステムとの連携など、行政の動向や実態に合わせて調整を施すことが重要です。また逆に、国の政策との整合性の観点から、国の要職や有識者の方々に『富士フイルムシステムサービスでこんな事業を行っている』という認知を頂く必要もあります。今はまだ政府から見て当社のプレゼンスが十分にない状態。適切な形、タイミングでアプローチをすることが求められます」

内閣府をはじめとして中央省庁では防災に関するさまざまな政策が展開されているため、それらのテーマや方向性、考え方がどうあるかをしっかり把握しておく必要があります。そうでなければ、提案内容が合致せず十分に検討されないリスクが発生してしまうからです。

そんな中、西谷のミッションは国の動きを適宜判断しながら、開発中のプロジェクトが行政に受け入れられやすい形になるよう、調整を図ること。

西谷 「政策は概ねホームページ上に公開されているため、隈なくチェックすることは欠かせません。国の動向や自治体様における現場感などを総合的に俯瞰しながら、当社プロジェクトの方向性が最適であるよう検討、調整を図ります」

防災という社会課題を取り扱う意義の大きなプロジェクトでは、単なるひとつの製品を売り込むような方法では進み難いという西谷。国や自治体、関係団体等の動向を正しく掌握し、適切に判断する思考が求められる重要なポジションを担っているのです。

経済産業省時代の経験・人脈を活かし、国とのパイプ役を担う

2001年に富士フイルムビジネスイノベーションへ入社した西谷は、東京で4年・大阪で3年という期間をSEとして過ごしました。

そして顧客用のシステム開発やソリューション企画などの経験を積み、その後は人事部に異動となります。

西谷 「人事部には10年間在籍しました。採用担当にはじまり、その後は組織人事として事業本部などを担当し、組織改正や異動、人事考課、昇格等のほか従業員の個別事案の対応等、多岐に渡る人事案件を担当しました」

その後は全社の人事制度企画も担当した西谷。販社整員管理や制度・規程統合、またダイバーシティ推進を経験。元SEであることから採用プロセス改革や、ワークフローシステム、RPAの実装など人事部内のICT生産性向上にも多数貢献しました。

そして、2018年に経済産業省に赴任。同省では約3年間、デジタル・トランスフォーメーション(DX)の企画調整を担いました。

西谷 「各府省はデジタルガバメント中長期計画を策定しており、それを踏まえて経済産業省や中小企業庁にDX室が発足しました。また外部IT人材登用の方針が掲げられ、私が参画することになりました。

企画調整官(室長)として、戦略策定から中小企業庁内プロジェクトのマネジメント、省内外の調整・折衝など、DX企画・調整全体を担当しました」

経済産業省でのこうした経験を経て、2021年の4月に現在のポジションを任された西谷は、公共領域での事業を推進する上で、国とのパイプ役として自分の経験が活かせていると実感しています。

西谷 「経済産業省時代の人脈が役立てられていると感じることは多いです。中小企業庁の長官や次長、部長のもとで、重要な政策として位置づけられた『DX』の本質からあるべき姿まで議論し、民間事業者や支援者、行政や関係団体、有識者の皆様など、年間200名以上の方とお会いし積極的に意見交換をしてきました。現在も国の中枢にいらっしゃる方々と直接お話しができているのは前職で得たご縁のおかげだと思います」

開発中のシステムを提案する難しさ。提案のロジックは堅固に組み立てる

西谷 「人脈というアドバンテージはありますが、当然課題はあります。例えば、提案したいシステムが目下開発中であるため、実装のイメージを理解いただく難しさは感じています。本来であれば完成したものを見せるのが一番分かりやすいのですが、だからといって完成まで待っていると時機を逸してしまう可能性もあり、一筋縄にはいきません」

政府の元に、毎日色々な事業者やベンダーから提案が持ちかけられることは、自身も在籍時代に経験していたという西谷。数ある提案の中から関心を惹きつけるためには、新しさや独自性があると断言できる提案を持っていく必要があります。

西谷 「災害分野に取り組んでいるベンダーはいくつかありますが、地震の罹災証明という領域で、ドローン撮影・画像解析技術を用いた提案は、恐らく私たちしかできないもの。省庁の職員様、特に経済産業省は現場の情報を重視しているため、最先端の技術動向や自治体様の現場感など、職員の方々にとって役立つ情報を提示することが大切です。

私たちが進めるこのプロジェクトで目指す究極の姿は、ドローンや衛星画像等によって罹災状況を精緻に判断し、人が現地調査へ赴くことなく即時で罹災証明を発行できるようになること。現地調査は従来通り実施するとしても、証明発行にかかる工数を半分以下にまで効率化できるという試算が出ているため、提案に対しては確かな自信を持っています」

確固たる自信を持つ一方で、まだ見ぬシステムゆえに、提案の難しさを感じていると西谷は言います。

西谷 「完成したシステムが、他社にはない未来を描けるというイメージを見せる必要がある一方で、実装という点ではまだ不確定な部分があり、どの程度の完成形を見込んで話をするかのさじ加減が難しいところです

また、自治体様に提案をする際は、実務ベースでの提案になりますから、プロジェクトが完成すれば、みなさんが抱えている職務がどれだけ便利になるかというストーリーを描くと共感を得ることができます。

しかし、国への提案は、現場レベルの課題ではなく、国としての課題の解決を示す必要があるのです。芽出しをしつつテーマ・論点として認識してもらうことから始め、理論やロジックをしっかり組み立てた上でビジョンを共有することを目指しています」


全社の期待を担う大規模事業を精鋭メンバーと高め合いながら推進する充実感

政府が打ち出す政策はさまざまな取り組みや検討会があり、目指すべき方向性の議論が日々行われています。

西谷たちが目指す罹災証明の迅速化は、まさにそうした行政のDXという問題意識に合致した内容です。このような社会的な価値を提供できるプロジェクトに、西谷は大きなやりがいを感じています。

西谷 「現在、富士フイルムグループでは新たな社会課題に挑戦しようと、積極的に新規事業に取り組んでいます。富士フイルムシステムサービス、富士フイルム、富士フイルムビジネスイノベーション──3社の技術と人材を集めて力を注ぐこのプロジェクトは、全社的にも注目されているのです。

プロジェクトの中心である富士フイルムシステムサービスについて、着任以前は、会社のことを概要レベルでしか理解できていなかったのですが、取り組みの中で歴史をひも解き、これまで培ってきた技術や知見に触れることで、社会から求められていることや、素晴らしい技術を持っていることを肌身で感じています」

 プロジェクト内に魅力的で優秀なメンバーが多くいることにも刺激を受けている西谷。

西谷 「周囲を見渡した時に、リーダーシップや知見、判断力など、心から尊敬できる、魅力的な方々と一緒に仕事ができるのも大きな喜びです。会社全体・グループ全体が新たな方向に進もうとしている中で、学ぶべき点も多く、貴重な経験をしているなと感じます」

そんな西谷の目下の目標は、開発が進むにつれ生じる課題の影響を最小限に、プロジェクトの調整を図っていくことです。

西谷 「コロナ禍で自治体様が突発的な対応を迫られ、計画通りに進捗しないということもあるかもしれません。そういったところで国や関連機関にまつわる情報を管掌し、メンバーに適宜適切な情報を伝え、プロジェクトの調整をしっかりと図っていきたいですね。

また、防災・減災DXプロジェクトではドローンの活用を視野に入れていますが、他の事業部でもインフラのメンテナンスでドローン活用を検討しています。それらの取り組みを大括りにした更なる事業拡大などにも取り組んでいきたいと考えています」

防災・減災DXプロジェクトにおけるロビイングは、政府や社内のさまざまな状況の変化を敏感に察知し、柔軟に調整を行うことが求められる難易度の高い職務。

そしてこのプロジェクトには、西谷のように高い専門性を持ち、高みを目指す精鋭のメンバーが集まっています。プロジェクトの成功を目指し、互いを高め合う日々はまだまだ続きます。