日々進化し多様化する「決済」。ブランドごとに最適な支払手段の拡充へ

ファーストリテイリングは、ユニクロをはじめ、ジーユーやセオリーなど、グループブランド全体で、年間で約13億着を販売している。2020年度の年間売り上げは2兆円強。このすべては、世界中にある3,500以上の店舗と、21の国と地域で展開しているECで、1枚1枚の服を販売した積み重ねである。この瞬間も、世界各地でお客様が服を買うために「支払い(ペイメント)」をしている。

このすべてのペイメント機能を、グローバルで管理するヘッドクォーターとしての役割と、日本で急速に進むキャッシュレス化に対応した決済手段の拡充を進めているのが、グローバルデジタルコマース(GDC)部のEC事業開発・グローバルペイメントチームである。そのリーダーが山崎雄也だ。 

山崎「ファーストリテイリングのどのブランドにも共通することですが、私たちの本質は、お客様に服を手に取っていただき、機能性や素材、デザインにご満足いただいた上で買っていただくことです。なので「支払い」は、あくまでも黒子に徹する必要があります。

逆に言えば、決済は出来るだけストレスフリーでスピーディに提供し、レジに並ぶ時間を作らず、もっと服選びに時間を割いていただけるよう注力すべきと考えています。

そのため、決済インフラの改善とともに、お客様には、ご自身にとって最も望ましい支払方法を選んでいただけるように、常に決済手段の拡充をはかっています。

また、私たちはグローバルで、店舗とECを展開しています。国や地域が異なっていても、どこでも同じように快適にお買い物ができる環境と体験を提供しなければなりません。それは、ペイメントにおいても同じです。私たちのチームは、海外各国の店舗やECで、必要な決済手段などを管理しながら、ペイメント機能の改革・改善を進めています」

お客様にはあまり意識されない部分だが、店舗でのスムーズな決済のためには、最新のレジシステムや決済端末、通信環境などを用意する必要がある。店舗でもECでも、安心・安全な決済には、高度なセキュリティと堅牢性をともなうシステムが必須だ。

そこで、ファーストリテイリングは、管理部門にあったペイメント領域を、事業側のGDC部内に移した。お客様の利便性の向上を含む、課題解決のスピードを速めるためだ。山崎もまた管理部門から異動し、この領域をリードしている。

お客様への貢献がダイレクトに実感できる。それがモチベーションを高める

ファーストリテイリングでは、日々変化するお客様からの要望や購買行動に合わせて、店舗とECという垣根を越えて、お客様起点での様々な新しい取り組みを行っている。

山崎「私たちは、店舗とECの融合をさらに進め、シームレスにつながることを目指しています。O2Oの取組みなど、今後も、多くの新しいサービスや顧客体験を提供することができると考えています。実際にユニクロでは、店舗とECを併用されるお客様が増えています。

ペイメント領域においても、店舗とECでシームレス化を進め、利便性を高めることで、より良い顧客体験の提供につながると考え実行しています。お客様に、良い買い物ができたと実感していただければ、来店頻度も購買回数も増えていく。実際に取り組んだことの反響は、毎回目に見える形で表れますので、お客様に貢献できたことを、ダイレクトに実感できます」

1枚の服を売ることの繰り返しでしか会社は成長しない。至極当たり前のことだが、これが山崎のファーストリテイリングへの転職を決定づけた。

山崎は、大手の金融機関からファーストリテイリングに転職してきた。前職では、法人営業で各業界の最大手企業を数多く担当し、経営者と直接商談する機会も多かった。

山崎「鉄道や航空、小売、旅行など様々な業界を担当していたのですが、小売業界が今、大変革期にあることを実感し、お会いする経営者との話を通じても、ビジネスそのものが大きく転換していくダイナミズムに溢れる業界であることを確信しました。

一方で、金融業界は、サービスがコモディティ化しており、海外への広がりが乏しいことに限界を感じていました。自分の仕事内容も、顧客企業から手数料を頂くビジネスだったので、世の中に直接貢献している実感も沸かず、このままずっと金融にいては、自分の成長が止まってしまう、という強い閉塞感と危機感がありました。

転職を考える中で、ファーストリテイリングは、当時から本気で世界一の衣料品小売になろうとしていた活気のある会社でした。一方で、経営層から一般社員まで、一人ひとりが1枚の服を売ることの積み重ねでしか会社が成長しないという愚直さを根底に持ち合わせています。この会社でなら、大きな変化の波に揉まれて、自分の限界をはるかに超えるチャレンジができ、成長できると考えました」

入社して、「想像以上の変化の連続だ」と山崎は言う。しかし、ペイメント領域を変革することで、お客様と会社の両方に貢献している実感が、山崎のモチベーションを高めている。

グローバルに、様々な分野で広がる、ペイメント領域での新しいチャレンジ

グローバルペイメントチームの業務と、関わる領域は広い。

日本においては、顧客満足の高い決済環境の整備を、店舗とECで進めている。海外では、各国事業のCEOやCFOなどのマネジメント層と密にコミュケーションをとり、決済手段の充足や、コスト適正化のための調査や管理による最適化をはかっている。

また、国内・海外ともに不正利用被害を防ぐためのモニタリングや情報管理体制の強化と、具体的な対策の立案・実行も行っている。

グローバルペイメントチームは、攻めと守りの両面から、ペイメント領域の企画立案と実行をする組織なのだ。

山崎「これまでペイメントの業務は、主に各国縦割りで行われていました。これからは、グローバルヘッドクォーターからのガバナンスを強化することで、日々の膨大な決済を安定的に運用できるようにし、業務効率を格段に上げていきます。たとえば、不正利用の事例や対策をグローバルで共有して、より安心・安全な決済環境を築いていきます。

何よりも私たちはグローバル企業であり、世界中に店舗とECの拠点がある。このスケールメリットを活かさない手はありません。たとえば、決済ゲートウェイや端末を集約することで、グローバル統一の運用を実現し、開発や導入のコストを下げることができます。様々な改革の結果、商品の品質やサービスを向上し、お客様に還元していければと思います。実はペイメント領域は、とてもイノベーティブであり、新しいチャレンジがたくさんできます」

新しいチャレンジは、社内とは限らない。実際、ペイメント領域でも、他社との新たな協働が進められている。

山崎「最適なペイメントの仕組みをつくるには、私たちの力だけでは足りません。今後は、様々な分野の世界トップクラスの企業と協働して、ペイメントでの新しい顧客体験を提供していきたいと考えています。こうしたパートナー企業との交渉やプロジェクト推進も、グローバルペイメントチームで行っていきます。

私は、自分の経験や培ってきた能力を、閉じた業界だけではなく、幅広くグローバルで発揮して、明らかな成果を出せることに、多くのやりがいや達成感を感じ、この会社に来て良かったという充実感を得ながら、毎日仕事をしています」

最高のECをつくり、店舗とECをシームレスにつなぎ、世界一を目指す

今回、EC事業を推進するGDC部の4人を取材して、改めてファーストリテイリングの強さの核心に触れたように思った。

ファーストリテイリングには、ユニクロという世界的に知られる強いブランドがあり、店舗とECという顧客接点を持っている。ものづくりから販売までを自社で行っているため、すべてのプロセスを自社で管理・コントロールできる。店舗とECに集まる情報を元に、お客様や社会の変化を素早くつかみ、最適化をはかることができる。しかもグローバルに、だ。

そして何よりの強みは、3,500を超える店舗と、今後さらに展開国を拡大していくECという、2つのプラットフォームを自社で持っていることだ。 

山崎「本当に店舗とECがシームレスにつながったら、その規模も効果も計り知れないくらい大きい。そして、店舗とECをシームレスにつなぐことによる具体的な価値を、おそらく最初に提供できるのがペイメントだと思っています」

ファーストリテイリングのEC事業は急成長しており、国内でのユニクロアプリのダウンロード数は、延べ3,000万を超え、アプリ経由でのEC売上は、日に日に伸びている。

山崎「これからも、必要なペイメントのあるべき姿を想像して、最短・最速での実現が必須です。社内外の様々なステークホルダーを巻き込んで、説得して実行していくためには、多様な経験と才能のある新しい仲間が必要です。解決していかねばならない課題は山積みですが、それだけ挑戦する価値があります」

産業構造や業界の勢力図は、今後、急速に変わっていくだろう。ファーストリテイリングのEC事業に、その兆しが顕著に表れている。

▼グローバルデジタルコマース(GDC)部のコンテンツ

【第1回】 野田 隆広/ECを本業に。世界一のECをつくり、情報製造小売業を目指す

【第2回】 増田 直/グローバル統一デジタルコマースの基盤を自社で開発。全世界への展開を進める

【第3回】 岡山 拓/EC事業を新規展開国で立ち上げ。世界中のお客様がユニクロを待っている

【第4回】 山崎 雄也/お客様一人ひとりの購買体験を、ペイメントの力でよりシームレスで便利なものに