ダーツを水泳や卓球のようなポジションへ。スポーツの定義に苦労

▲小学校でダーツを教える長嶋

私は現在、株式会社ダーツライブの「スポーツダーツプロジェクト」運営者として、夜の遊びというイメージが強いダーツとは違うアプローチで、ダーツが年齢や性別・身体能力の差に関係なく楽しめるスポーツだと認知してもらう活動をしています。   

プロジェクトは、2020年に本格始動しました。活動を一言でいうなら「スポーツとしてのダーツ」をデザインすること。 私は長くデザイン業に携わってきたのですが、デザインというものは、見た目を整えることは手段でしかなく、本来の目的は本質的な問題を解決するためのものだと考えています。

ダーツをスポーツとして再デザインしていくことで、ダーツ市場の課題を解決できるかもしれない。「ダーツは好きだけどダーツバーは苦手」という方に、どうしたらプレイしてもらえるかというデザイン設計を組んでいる感覚があります。   

そのための草の根活動として、子どもや高齢者を対象に体験会などを実施し、メディアでの発信を行っています。 

イベントについて今期(2021年度)は、学校や児童館でダーツに触れてもらう中高生向けの体験会から、高齢者向けイベントへの参加などシニア層を対象としたものまでさまざまです。まずは東京を中心に仕掛けて、モデルシティを作っていこうと計画しています。   

ダーツはマスクを付けたままでもできますし、基本的に接触がなく密になりにくい競技。オンラインによる対戦もできるので、コロナ禍においてもイベントを開催しやすく可能性を感じています。   

プロジェクトで苦労しているのは、スポーツの定義。人によって定義が曖昧で、認識が違うのです。 例えば体育とスポーツ、ゲームとスポーツの境界はどうでしょう?ぼんやりしているのではないでしょうか。  

そんなこともあり、仮にダーツをオリンピック種目にする案や体育の授業に取り入れようという話が出たとしても、遊びの場でプレイする印象の強いダーツを「スポーツ」だと捉えてもらうことが難しい部分があります。そうなると「ダーツってゲームだよね?」という結論になりがちです。 

また、ダーツだけに限った話でも「お酒を飲まなければスポーツ」と考える人もいますし「二次会などでワイワイ遊ぶダーツだってスポーツダーツだ」という人もいますから、概念を育てていくことには苦労していますね。 

その上で、ダーツをスポーツとして確立していくには「(競技の先にある)目標」と「育成」が大切だと思っています。 

ダーツのプロ団体は既に存在するので、「目標」はある程度示すことができていると思いますが、「育成」に関してはまだまだ。現状でダーツをプレイする場所のメインはダーツバーなので、20歳を超えない限りダーツをする機会はほぼありません。   

もし幼少期からの育成環境が整えば、小学生からダーツを始めた超一流のプレイヤーも現れてくるかもしれません。そうすればプロ選手の活躍の幅は広がるでしょうし、ダーツ全体の市場も活性化すると考えています。  

分かりやすくいうと、ダーツを水泳や卓球のようなポジションまで引き上げたい。 

もちろんジュニア層による盛り上げだけではありません。イベントでシニア施設にもよくお邪魔するのですが、どこでも麻雀とダーツは人気です。気軽に勝負事を楽しめるというのが、その理由のようです。  

また、車椅子の方でもダーツは投げられますし、年齢や障がいの有無、身体能力の差に関係なく勝負を楽しめるという点もダーツの強みだと思っています。

ダーツのスポーツ化は人生で達成したいことの一つ

▲2010年頃、ダーツ仲間と国際大会に参加したときの様子

ダーツをスポーツにしていくのは、会社でのミッションというより、私自身の人生を賭けて達成させたいミッションでもあります。  

仮にこのプロジェクトが無くなると言われたら、「やるべきことは終わった」という感じがするので会社を辞めてしまうかも知れません(笑)。言い換えれば、それほどまでに会社が応援してくれる限り全力でやりたいと思っています。 

私はダーツが好きですし、ダーツ文化を衰退させたくない。いずれ自分が老人になっても、ダーツが投げられる場所が欲しいと思いますね。おじいさんにダーツバーは、なかなかハードルが高いでしょうから(笑)。 

でも自分がスポーツダーツの第一人者になりたいというわけではないのです。  

私はあくまで会社のイチ社員で、もちろん利益など結果を求められる立場にあります。そういう人間よりも、もっとピュアな気持ちでダーツのスポーツ化に対して、自分よりも熱い思いを持っている方がいたら、その方に先導を託したいなと考えていて。   

私は既に42歳で人生の後半戦なので、そういう部分はこれからの未来を担う若者にやってもらったほうが健全だと思います。もしそういう人が現れたら、自分は陰で支えていく感じで構いません。とにかくダーツのスポーツ化成功に向かうならそれで本望です。  

なぜそんなにダーツを?と思われるかもしれないのですが、理由は単純です。私がダーツを通して出会ってきたコミュニティが、自分にとって大切な存在だからです。   

私がダーツを始めたのは2005年頃、ちょうどソフトダーツが盛り上がってきていた時期でした。 

20歳で岡山から上京してデザインの仕事に就いたのですが、そこから5年ほどは家と会社の往復だけの生活で、それこそ終電で帰宅するのが当たり前の生活を送っていました。  

25歳くらいになって少し余裕ができてきたのですが、仕事しかしてこなかったのでこちらに友達もいなくて。それで友達づくりにと思ってダーツバーへ行ってみたのです。  

通ううちに知り合いが増えていき、当時全盛期だったmixiでの交流も重なって、ダーツのコミュニティが自分のサードプレイスとなっていきました。   

30代になってデザインスキルを活かすことができることと、大好きなダーツを仕事にできるというところから、ダーツライブに転職。入社後しばらくはデザインチームにいたのですが、ダーツが好きゆえに勝手に企画なども出していたら、メディアやプロモーションなど本質的なところにも関わるようになりました。 

時代の変化に合わせながら、ダーツファンの一人としてダーツを盛り上げてきたという感覚はあります。   

これからは、この会社でスポーツとしてのダーツの未来を作っていきたいと考えているので、今はそこに向かって走っている段階です。   

プライベートでも2006年に東京・町田市でダーツチームを立ち上げ、いまでは小中学生を中心に公民館でダーツを教えています。そう考えると、私にとって仕事とプライベートの境目は本当になくて。決して無理しているというわけじゃなく、24時間ダーツのことを考えています。

時代を追い風に、ダーツの世界を拡大していく

▲国土交通大臣政務官の朝日 健太郎議員が「スポーツダーツプロジェクト」アンバサダーに。 (写真右が朝日氏、中央は衆議院議員の馳浩氏、左から2番目が長嶋)

スポーツダーツプロジェクトを発表したのは2020年ですが、その3、4年前から水面下では動いていて「スポーツダーツプロジェクト」という呼び名もありました。   

ダーツのプロモーションをしていくときに単発的な盛り上げもいいのですが、もっと中長期的な視点で打ち出していかなければ新しいユーザーは増えにくいだろうな、という想いがずっとありました。  

もっと根本的に何かを変えないといけない。新しいダーツの未来を作っていくためにはどうしたらいいのだろうと考え続けていて、事あるごとに上司に構想を話したり、会社に提案したりを繰り返してきました。

そして、さまざまなタイミングが重なって昨年より本格始動したわけですが、時代の流れが追い風になっていると感じるのは、国が掲げているSDGsの2030年までの目標と私の描いている10年計画が合っていること。

一見ダーツとは縁が遠そうな健康と福祉の項目、街づくりとしての側面も生涯スポーツとしてのダーツなら合致しているのです。

さらに今の若い世代の人にたちは、お酒もタバコも好きじゃない人が多くなっていますよね。これからもこの傾向は強くなると思うので、健康的に楽しめるダーツ空間がないとダーツ市場も尻すぼみになってしまうと感じています。

ダーツをスポーツとして再構築していく上で大変なのは、ナイトエンタメ側からの賛否両論があること。スポーツダーツの浸透でダーツ業界が盛り上がっていくことを期待する声もある一方で、スポーツ色を強く出すことに懸念を示す意見もあります。   

私は、ダーツバーも大切な場所ですし絶対に必要だと思っています。でもダーツバー以外の選択肢が増えていけば、プレイヤーが好みや気分に合わせてダーツをしやすくなりますよね。お店側としても、それぞれの特徴に振り切ることができるので、より楽しい空間づくりができると考えています。  

水泳を例に挙げると、市民プールやフィットネスジム、海水浴場やナイトプールなど、それぞれの好みで泳げる場所がありますよね。ダーツにおいても市民プールのような場所を作れば、そこから競技志向になる人も出てくるだろうし、逆にダーツバーに行く人もいるだろうし、いろいろな入り方・楽しみ方の選択肢が増えることで市場は拡大していくのだと思います。   

ダーツはナイトエンタメ市場でブームになって独自の進化を続けてきました。ここからもっとメジャーにするためには、ダーツの世界を広げていくしかありません。時間はかかりますが、本気なのだというところをずっと見せていきたいですね。 

全国の仲間と繋がってダーツのスポーツ化を成し遂げたい

プロジェクトで嬉しい瞬間は、綺麗事に聞こえるかもしれませんがダーツに触れて楽しんでいる方の笑顔を見るとき。そんなとき、自分の考えは間違っていなかったと実感できるからです。   

スポーツ庁の方の来訪や、小学校で子どもたちにダーツ講座をするなんて、一昔前のダーツライブでは考えられなかったこと。想像すらできなかった夢物語を実現できていることに、喜びとプロジェクトの勢いを感じています。  

意外だったのは、行政施設の職員さんの反応が思ったよりもよかったことです。例えば自治体が運営している児童館でダーツを取り入れてくれるかどうか、提案するまで不安でした。もちろん「そんな不良の遊びなんか」という否定的な方もいましたが、多くが「ダーツ、いいね!」という反響だったんです。

2021年6月には「生涯スポーツとしてダーツを推進する議員連盟(https://dartslive.co.jp/jp/release/20210608/)」が発足され、スポーツダーツプロジェクトの目指す未来にまた一歩近づく広がりを見せています。今後は高校などにダーツ部を作っていきたいですね。  

ダーツをきっかけに、子どもたちにもチャンスが広がると思っています。子どもがスポーツで輝けるのって、野球やサッカーといったフィジカル系の種目が多い。ですがダーツは、どちらかというとフィジカルというより集中力のある子に向いているので、違う分野で才能を開花できる可能性を感じます。   

病院やリハビリ施設にダーツマシンを設置するのも良いですね。ダーツは1人でも楽しめる遊びだからか、実は看護師さんのプレイヤーも多いのです。病院に置けば、看護師さんと患者さんが一緒に楽しむことも出来るかもしれませんよね(笑)   

児童館や病院のように、今まで縁がなかったけれど実はダーツと相性が良い場所はたくさんあると思います。企業や組織の取り組みにダーツを導入してみたいという方と、どんどんつながっていきたい。    

そのためにも、プロジェクトの仲間作りを2021年度から2022年度で集中的に行っていければと考えています。全国に少しずつでも仲間が増えれば、全国大会やダーツの甲子園のようなものも生み出しやすくなるのではないかなと。  

スポーツダーツプロジェクトが本格始動して2年目。これからも支援してくれる人や同じ未来を望む方を増やしながら、ダーツのスポーツ化というミッションを成し遂げていきたいと思います。