学生時代にWEBサイト制作事業を立ち上げ、マーケティングの世界へ

▲前職時代(写真左)

インターネットが一般家庭にも普及し、多くの企業がWEBサイトをビジネスに生かし始めた1990年代後半、伊藤は大学で経営学を学ぶかたわら、友人から誘われサイト制作に携わっていました。卒業と同時に友人5人とWEBプロダクションを起業。大手企業のコーポレートサイトなどを手がけ、コーディング、システム構築や開発、データベース作成、インテグレーションなどに関わるようになります。

ベンチャー企業ならではの「自分でなんでもやる」をベースに挑戦を続ける日々。いつしか20年弱が経ち、300人ものメンバーが集う企業に成長しました。

そんな順風満帆な日々に、大きな変化が訪れます。それは恩師から入った一本の連絡でした。

伊藤 「NTTドコモ、電通、NTTアドの3社が共同出資して設立した世界初のモバイルマーケティング企業『D2C』へのお誘いでした。NTTドコモ利用者のデータを活用して、ターゲットごとにカスタマイズした広告を表示させるデジタルマーケティング事業を立ち上げたばかりなのだが、なかなかスケールしない。そこにジョインしないか、と。

たった4人のメンバーでどう黒字化していくかを模索している様子を聞いて、社内ベンチャー的な要素を感じたんです。ベンチャーでの経験が生かせること、もう一度ベンチャーのワクワク感を味わいたいという想いが背中を押し、転職を決意しました」 

あえて厳しい環境に身を置き、新しい可能性を自分の手で見つけたい──そんな想いでD2Cに飛び込んだ伊藤は、D2Cのメンバーたちと共に予想を超えるスピードで黒字化を成し遂げたのです。

できることはただひとつ、各データの持つ意味を理解し尽くすこと

データを活用してユーザーごとにカスタイマイズした広告を表示させる──そのための技術的な課題よりも大きな壁が、D2C入社時に伊藤の目の前に立ちはだかっていたと伊藤は話します。

伊藤 「実は当時、D2Cがどのようなデータを所有していて、おのおのにどういう意味があるのか、体系的に把握できている人がいない状態でした。ですから持っている膨大な量のドコモデータの一つひとつのテーブルを見て、これはなんのデータか?何に使えるか?をひたすら調べて……正解がない中でひたすら答えを探しだす作業は果てしなく、苦労の日々でした」

何よりもまず、データを整備すること。それにより意図するデータの抽出やデータ種類と人数の紐付けができるようになり、広告の効果を最大限に発揮するための分析が可能になります。つまりカスタムセグメントを“つくる”前に、データを“分析する”ための土台をしっかり整備する必要があったのです。

もうひとつ、伊藤の学生時代や前職での経験が生かされた業務があります。それが、広告制作におけるクリエイティブディレクションです。カスタムセグメントの基本となるデータ分析だけでなく広告制作も同時に行なうデジタルマーケティング事業部で、コーポレートサイトの制作経験が生かされました。

伊藤 「データ分析によって導き出されたカスタムセグメントは、広告を制作するときにどんなビジュアルデザインにすれば良いか、どんなUXにする必要があるかを考える材料になります。多くのコーポレートサイト制作の経験をもとに、『この層に響くデザインはこうじゃないか?』といった話をクリエイティブ部門と直接話すことができたのは良かったですね。より効果的なメッセージを発信することにつながりますから」

広告を見た人が、実際に店舗に足を運ぶーー数字で見る達成感

データ分析、戦略、クリエイティブと多様な業務に関わる伊藤ですが、広告は決して制作・出稿がゴールではないと強調します。

伊藤 「僕らにとって広告とは、戦略立案から効果測定までPDCAを回し続けるべきもの。つまり、全プロセスにデータが密接に関わってくるのです。データアナリストが分析した結果に基づいて『誰に、どんな広告を、どう伝えるか』という戦略を考え、それに応じたクリエイティブがつくられる。そして、セグメントに合わせてメディアプランを組み立て、広告を配信します。

その結果、ユーザーのCTR(=Click Through Rate:クリック率)と消費行動にはどのような成果があがったかなど、広告配信の結果を分析します。データ分析から始まり、データ分析によって次につなげる……というイメージですね」

とくにデータアナリストとして責任と達成感を感じるのは、クライアントに広告の効果測定結果を報告するタイミングだと伊藤は語ります。 

伊藤 「以前、とあるポイントカード加盟店への来店促進のプロジェクトで、広告接触者の来店率が跳ね上がった分析結果が出たことがありました。チームで導き出した戦略がかっちりハマった喜びは非常に大きかったですし、クライアントからの信頼も得られ、次のプロジェクトも受注。達成感につながりました」

データアナリストとしてデータを武器に最大限の成果を生み出す。そういった積み重ねはもちろん、データを生かしたビジネスチャンスの広げ方について、D2Cに入社して気づきます。

伊藤 「膨大な量を誇るドコモデータを活用できることを強みに、ビジネスチャンスを取りこぼさないD2Cの営業のスキルがすごいんです。人間関係のつくり方や握り方に長けていると感じます。

僕は直接クライアントとやりとりする機会は多くないですが、その分、営業担当者にとっても“武器”となるようなデータの分析や活用をしていかなければ、と思っています」

営業部門から「こんなデータある?」この分析にはどのくらい工数が必要?」といった問い合わせが来たら、伊藤はただ回答するだけでなく『こんな使い方をしたらもっと効果が出るかも』といったプラスアルファの提案も積極的にするようにしているといいます。

“データドリブン”の文化を、日本中に広めたい

▲2020年現在

2020年4月にD2Cのグループ会社であるD2C Rに移籍し、これまで以上にモバイルデバイスに特化したマーケティング戦略の立案、プロモーションの提案、広告運用までの支援を行うことになった伊藤。ちょうど新型コロナウイルス感染拡大によって社会が揺れ動いている時期と重なったこともあり、データへの向き合い方がより真摯になったと話します。

伊藤 「D2Cでは、ユーザーの属性に関するデータの量や信頼性の点で、世界的にも優れたドコモデータを扱ってきました。D2C Rでも同様に、ドコモデータの強みとデジタル広告配信メディアを活用するのはもちろん。さらに、D2C Rが独自で持っているビッグクエリやデータウェアハウスを生かしたいですね。

結果、一人ひとりのユーザーが本当に必要としている内容を、効果的なタイミングで、刺さるクリエイティブで届けられればと。そういった意味では、D2C Rは『最高のデジタル広告』を実現する可能性を持った唯一の会社だと僕は思っています」

一方、これまで扱ってきたドコモデータだけでなく、その他のデータにも目を向け、データ分析環境や使い方を構築していきたいという想いを、さらに強くしています。

伊藤 「新型コロナウイルス感染拡大を受けて、データ分析の重要性を改めて実感したんです。感染者数の推移、感染者の属性、抗体保有率……などのデータが判断材料になったし、世間でもデータ分析の重要性が広く認知されるようになった。こういった“データドリブン”な文化をもっと広めたい、というビジョンを持つきっかけになりましたね」

“データドリブン”文化を根付かせるために必要なのは、誰でもデータを分析して活用できる環境。「専門家だけでなく、誰もが気軽にデータを扱える環境をつくらないといけない」と伊藤は前を見据えます。 

伊藤 「データとひと口に言っても、各自がバラバラのデータを見ていたら意味がない。そのため、僕が目指すのは各自が分析・判断を行うための一次ソースをつくることです。データに基づいて正しく判断することが当たり前の社会になるように、まずはD2C R内で“データドリブン”の文化を浸透させていきたいと考えています」

何が正解で、何が誤りなのか──世の中が揺れ動く今だからこそ、「データ」が生きる。伊藤のデータとの向き合い方と生かし方は、社会を少しずつ変えていく重要なヒントになるはずです。